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第2部 第1章 アメリカ (4/7)

3.青少年のインターネット環境に関する課題

青少年のインターネット環境に関する課題として、インターネット利用による被害及び犯罪について、前節と同様に各種データを用いて説明する。主な課題としては、1ネットいじめ、2セクストーション、セクスティング、リベンジポルノ等の性的搾取、3個人情報の漏えい・窃盗等、4インターネット依存を挙げている。これらの課題について具体的な事件やメディア等の論調等も含めた最新の動きを紹介する。

(1)インターネット利用による被害・犯罪

ア ネットいじめ

図2と図3は、Cyberbullying Research Center が2016年7月から10月にかけて、全米の12歳~17歳の中学生及び高校生約5,700人を対象に行った調査結果である15

(ア)ネットいじめの被害内容

全体の約3割が何らかのネット被害を一時的又は継続的に経験している。[図2参照]

図 2 ネットいじめの被害内容

出典:Cyberbullying Research Center 2016

(イ)性別のネットいじめ状況

性別によるネットいじめの加害・被害経験率は女子の方がやや多い。[図3参照]

図 3 男女別の加害・被害経験率

出典:Cyberbullying Research Center 2016

(ウ)性別・人種・学年別のネットいじめ状況

2015年にアメリカ保健福祉省の疾病管理予防センター(Center for Disease Control and Prevention)が全国の高校生を対象に行った調査結果は表19のとおりである16。人種別には白人、性別では女子、全体的には白人女子に多く、ネットいじめ被害が報告されている。

表 19 人種・学年・男女別のネットいじめ被害の状況
電子機器上のいじめ17 学校におけるいじめ18
人種・学年 女子 男子 合計 女子 男子 合計
白人 26.0% 10.8% 18.4% 29.1% 18.1% 23.5%
黒人 11.9% 5.6% 8.6% 15.1% 11.2% 13.2%
ヒスパニック 16.7% 8.1% 12.4% 19.3% 13.7% 16.5%
9年生 22.7% 11.0% 16.5% 29.0% 18.3% 23.4%
10年生 23.2% 9.9% 16.6% 25.5% 16.1% 20.8%
11年生 21.4% 8.4% 14.7% 24.2% 16.4% 20.3%
12年生 19.5% 9.2% 14.3% 19.8% 12.1% 15.9%

出典:Youth Risk Behavior Surveillance-United States, 2015, p. 67

2014年にHowlett-Brandon氏が発表した、人種、性別、民族、環境によるネットいじめに関する研究報告19では、いじめの内容やいじめにあう人口比率等において、人種(白人と黒人)間でほとんど違いがないという結果が出た。

同じ調査によると、性別ではやはり女子の被害率が男子のそれに比べて3倍と高く、特に女子は電子メール、テキストメッセージやインスタント・メッセンジャー等を使ったいじめが顕著なのに対し、男子はオンラインゲームを通じたいじめが目立った。また、全体では、白人女子の被害率が最も高く、次に黒人女子、白人男子、と続き、一番低かったのは黒人男子であった。報告書の著者は、それまでの研究者の異なる調査結果を引用した上で、性別による被害状況の相違について、様々な調査の結果で得られた情報は矛盾する20ものだが、女子に高いという結果が大半だと述べている。さらに、人種別のネットいじめの状況についても、これに関するデータがまだ少なく、確実な原因は不明だとしている。

上記Howlett-Brandon氏の報告書では、この分野における問題として、ネットいじめ(cyberbullying)は複雑な問題で、研究者間で異なる結論が出されており、性別による差異、成績または出席率への影響について、コンセンサスがないことを挙げている。さらに、この時点では、研究者間でネットいじめの定義、使用電子媒体、いじめの意図の有無、繰り返す回数において一定でないことが指摘されている。

(エ)主要都市別の電子メールによるいじめ状況

表20は、前述のHowlett-Brandon氏の調査に基づいた主要都市別の電子ツール(電子メール、チャット、インスタント・メッセンジャー、ウェブサイト、テキスティング)によるネットいじめの状況を示したものである。いじめ率の合計の中央値(女子12.8%、男子8.9%、合計11.2%)以上の都市を太字で示している。これらのデータから何らかの地域差や背景にある要因を読み取ろうとしたが、一貫性のある根拠は得られなかった。例えば、一般的に多様な人種が集中し、移民に寛容で政治的、社会的にリベラルとされる西・東海岸の都市ではいじめが比較的少なく、保守的な南部は多くなるかと想定したが、西海岸のサンディエゴ市で中央値を大きく上回り、南部のジョージア州でかなり下回っている。

表 20 都市別・男女別の被害状況
都市・州 女子 男子 合計
ボルチモア市(メリーランド州) 10.3% 8.2% 9.6%
ボストン市(マサチューセッツ州) 10.0% 5.9% 8.1%
ブロワード郡(フロリダ州) 15.8% 9.1% 12.5%
クリーブランド市(オハイオ州) 17.7% 9.3% 13.8%
デカルブ郡(ジョージア州) 10.6% 6.6% 8.8%
デトロイト市(ミシガン州) 19.4% 12.6% 16.3%
ワシントンD.C. 9.2% 6.2% 7.9%
デュバル郡(フロリダ州) 18.7% 11.6% 15.4%
フォートワース市(テキサス州) 12.1% 5.6% 8.8%
ヒューストン市(テキサス州) 13.5% 9.0% 11.2%
ロサンゼルス市(カリフォルニア州) 11.7% 6.9% 9.3%
マイアミ・デイド郡(フロリダ州) 11.6% 7.8% 9.8%
ニューヨーク市(ニューヨーク州) 15.2% 8.9% 12.1%
オークランド市(カリフォルニア州) 12.0% 9.5% 10.6%
オレンジ郡(フロリダ州) 15.8% 7.9% 11.8%
パームビーチ市(フロリダ州) 17.1% 10.2% 13.5%
フィラデルフィア市(ペンシルベニア州) 11.0% 8.1% 9.6%
サンディエゴ市(カリフォルニア州) 17.4% 10.7% 14.0%
サンフランシスコ市(カリフォルニア州) 12.8% 9.2% 11.2%
中央値 12.8% 8.9% 11.2%

出典:Youth Risk Behavior Surveillance-United States, 2015, pp. 68-6

なお、犯罪率の高い都市にはいじめも多いと想定した場合、2017年の犯罪率が全米第1位だったデトロイト市21が高くなるはずである。確かに同調査におけるネットいじめ率は最も高いが、犯罪率が全米第3位のオークランド市22のネットいじめ率は、中央値よりかなり低く、一概に犯罪率とネットいじめ率を結びつけることはできない。

イ 児童買春・児童ポルノ等の性的搾取

(ア)セクストーション

セクストーション(sextortion)とは、ヌード写真等の性的な写真や動画を騙し取り、ゆすりやたかりに用いる脅迫の手口である。Sex(性)にextortion(脅迫)をかけた造語である。NCMEC(The National Center for Missing and Exploited Children)の調査によれば、2013年にセクストーション被害を記録し始めて以来、毎年その数は増加の一途をたどっており、2014年から2015年の間は90%増え、さらに2016年の前期と2014年の同時期を比較すると2016年で150%へと増加している23

2016年6月にニューハンプシャー大学のCrimes Against Children Research Centerは、非営利団体のThornと共同で被害者1,631人を対象に調査し、その結果24を発表した。被害者へのアンケートは、Facebook上で回答協力者を募集する形で行われた。回答者の年齢は18歳~25歳で、本章の対象年齢と若干ずれるが、その40%は18歳、16%は19歳、10%は20歳、9%は21歳で、10代が全体の約半数を占めている。[表21参照]

表 21 セクストーションが始まった年齢
オンライン交際 通常の交際 全回答者
13歳以下 3% 3% 3%
14歳・15歳 10% 9% 10%
16歳・17歳 30% 35% 33%
18歳・19歳 29% 28% 28%
20歳~22歳 15% 16% 16%
23歳~25歳 6% 6% 6%
26歳以上 0% 0% 0%
未成年者(17歳以下)の割合 43% 47% 46%
終了した 70% 65% 67%
終了していない 10% 12% 11%
終了したかわからない 18% 21% 20%

出典:Crimes Against Children Research Center, University of New Hampshire, 2016

全体の46%がセクストーションの始まった時期が17歳未満(13歳以下3%、14歳~15歳10%、16歳~17歳33%)、28%は18歳、19歳であったとしているため、74%の回答者が10代で被害にあったことになる25。性別では、女性の回答者が83%を占め、人種的には白人が圧倒的に多く78%であった。また、セクストーションは実際の交際から発展する場合と、オンライン上で知り合い被害にあう場合の二通りがあり、前者が全体の60%を占め、交際前から知り合いだったケースがほとんどである一方、後者は残りの40%で加害者とは他人であり、一度も実際に会わないで被害にあう回答者もいた。さらに全回答者の約3割は継続中、又は終わったかどうかわからないと答えている。

1セクストーションに使用される媒体26

実際の交際から、又はオンライン上の出会いから始まる交際で使用されたメディア媒体は図4のとおりである。Facebook、Twitter、Instagram等のSNSや、Snapchat等のメッセージング・写真アプリによるものが主流となっている。

図 4 セクストーションに使用される媒体

出典:Crimes Against Children Research Center, University of New Hampshire, 2016

2セクストーション、ゆすり、たかりの手口

セクストーションの手口としては、オンラインを使用したものが圧倒的に多く、特に、オンライン交際における最初の段階の脅迫で被害者の性的な写真を使ったものが約7割を占める27。また、何らかの脅迫を受けた被害者のうち44%に対し、それらの脅しが実行に移された。表22は、その内訳である28

表 22 セクストーション被害者の被害内容
被害内容 オンライン交際 通常の交際 全回答者
オンライン、携帯電話へ執拗にコンタクト 60% 77% 71%
被害者の性的な写真を第三者へ送信 40% 48% 45%
被害者の性的な写真をオンラインに掲載 51% 35% 40%
被害者の個人情報をオンラインに掲載する 28% 25% 26%
被害者のオンラインアカウントをハッキング 21% 25% 24%
被害者の家族の情報を入手 21% 18% 19%
被害者のアカウントや写真を偽造 19% 14% 15%
被害者の写真を使った手口(合計) 69% 65% 66%
ストーキング、面と向かった脅迫 21% 52% 41%
職場や学校で又は法的に貶め 26% 42% 37%
殴打、レイプ、その他暴力 13% 43% 33%
被害者家族、友人等への脅迫、被害 9% 14% 12%
被害者家族へのゆすり行為 11% 10% 11%

出典:Crimes Against Children Research Center, University of New Hampshire, 2016

3脅迫に対して被害者がとった方法29

セクストーション被害者の約4割が家族を含む交友関係に支障をきたし、約4分の1が医療機関に助けを求める等、引っ越しや転職、転校を余儀なくされた被害者はそれぞれ約1割前後であった30。表23はサイバー上で被害者が加害者から逃れるためにとった方法である。

表 23 セクストーション被害者の加害者からの逃避方法
逃避方法 オンライン交際 通常の交際 全回答者
パスワードの変更 39% 44% 42%
ユーザー名表示の変更 42% 29% 34%
SNSアカウントの閉鎖 35% 30% 32%
携帯アプリの削除 36% 30% 32%
特定ウェブサイトへのアクセス停止 44% 23% 32%
携帯電話番号の変更 21% 31% 27%
オンラインのセキュリティ機能追加 32% 27% 29%
位置情報を知らせる機能を停止 27% 24% 25%
電子メールアドレスの変更 23% 20% 21%
写真のタグを削除 17% 25% 21%

出典:Crimes Against Children Research Center, University of New Hampshire, 2016

(イ)セクスティング31

Cyberbullying Research Centerが、2016年に全国の中高生(12歳~17歳)5,539人を対象に実施した調査によれば、12%の生徒が一度はセクスティングを送信したことがあると回答し、また高学年になるほどセクスティングに関わる人数が増え、17歳で受信したことのある生徒は、4人に1人の割合に達した。[図5参照]

図 5 中高生のセクスティング32

出典:Cyberbullying Research Center 2016

セクスティングも最近聞かれるようになった社会問題であるが、全米において何らかの法規制33が適用されている。例えば、他の性的犯罪と区別し、セクスティングだけの法規制がない州においては、セクスティングは、児童ポルノ法を犯したという罪で罰せられる。未成年の性的写真の単なる所持、配信(未成年の被写体である本人が送信する場合も適用される)、宣伝、勧誘に関わる者は、すべて同法で罰せられるのである。罰則内容は、例えば、未成年者が自分の裸の写真を友達に送信した場合、3つの重罪(性的画像の所持、配信、宣伝)を犯したことになり、もしも起訴されれば懲役刑を受ける事態になりかねない。

また、性的描写の写真等を受け取った未成年も、それを自分が要求した場合でなくともポルノ画像を所持したことになり、またそれを誰かに転送した場合、配信した罪にも問われる。さらに、その一人が18歳以上である場合は、付き合っている相手が未成年であっても、大人として扱われ、より厳しい罰則が適用される。もしも起訴されれば、重罪が適用され、性犯罪者として登録されることにもなる34

ウ 個人情報の漏えい・窃盗等

連邦取引委員会(Federal Trade Commission、以下「FTC」)Consumer Sentinel Networkの2016年報告書によれば、2016年1月~12月に、FTCが受けた全苦情3,050,374件の13%にあたる382,625件が個人情報(ID)の漏えい・窃盗に関するものであり、そのうち19歳以下の苦情数は全体の4%に相当する15,496件であった。35[表24参照]

表 24 19歳以下のID窃盗苦情件数の推移36
2014年 2015年 2016年
苦情数 15,537 20,957 15,496
19歳以下の苦情数が占める割合 6% 5% 4%

出典:Consumer Sentinel Network, FTC

近年、青少年のID窃盗事件が増加している37。青少年はクレジットカードや銀行口座等を持っていることがあまりないため、狙われるIDは、ほとんどの場合、社会保障番号(social security number)である。アメリカでは、誕生時に10桁の社会保障番号が与えられ、それは将来、医療やその他社会保障の申請、大学の願書、奨学金、雇用、クレジットカード、各種ローンの申請、銀行口座の開設等に不可欠だが、子供や親の知らないうちに、何者かによってそれが何年も悪用されることがある旨、Consumer Sentinel Network の2016年報告書は述べている。

青少年の社会保障番号が狙われる理由は、クレジット履歴が全くないため、大人の場合のように悪いクレジット履歴から詐欺防止用データベースに捕捉されることがなく、青少年が成人するまでほとんどチェックされないため長期間悪用されやすいからである。また、生年月日を変えて使用すれば、偽IDを作ることが容易であり、探知されにくい点にある38。被害者の中には、親や親せき、里親等、身近にいる大人が、その青少年の社会保障番号を使ってローンを組むか、又は医療等の社会保障を受けている場合も少なくない。被害にあった青少年たちは、成人後に長い年月をかけてクレジットの支払履歴を修復しなければならない39

エ 青少年のインターネット依存症

コンピューターやインターネットへの過依存により、生活や精神に障害をもたらすような状態は、俗に「インターネット中毒」又は「テクノロジー中毒」等と呼ばれている。インターネットゲーム障害(internet gaming disorder:以下「IGD」)の定義、診断の不明瞭さゆえに、賛否両論あるが、「精神障害の診断と統計マニュアル(the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders /the DSM-V)40」において、精神疾患と特定はされないが、さらなる研究が必要な分野として記載された41。一方、世界保健機関(WHO)による診断マニュアルで、2018年にリリース予定のICD-11(国際疾病分類 第11版)42に、ゲーム障害(gaming disorder)が追加される予定である43。IGDの特徴は、過剰なゲーム利用による激しい疲労、引きこもり、交友関係や学業及び仕事への悪影響等で、IGD患者の脳は薬物やギャンブル依存症患者のそれと類似している。その他、複数のインターネット接続機器を一度に使用するメディアのマルチタスクも問題視されており、それによって集中力や記憶力の低下が指摘されている44

(2)その他関連被害・犯罪

ア ソーシャルメディアに関連した事件

ソーシャルメディアが青少年の日常生活で必要不可欠なものとなる一方で、いじめ、差別等の悪質又は不適切な利用による問題も多く発生している。2017年7月付のEducation Weekの報告によれば、2016~2017学業年度(16年9月~17年6月)に高校生が起こした主なソーシャルメディア関連の事件は表25のとおりであった45

表 25 高校生に関わるソーシャルメディア関連記事
利用メディア 事件内容
YouTube ソーシャルメディアで活動するミュージシャンでもある某高校生が、学校から許可を得ずに、構内で撮影したミュージックビデオをYouTubeに掲載。ビデオでは卑俗な言葉が使われ、銃を撃つような仕草をする等、不適切な場面があり、本人及び関わった友人は停学処分を受けた。これに対し、他の生徒たちが退校によるストライキやオンラインによる処分帳消しを求める嘆願を行った。
Facebook,Twitter ミシガン州の某高校のトイレの水道蛇口から尿のような色をした水が出ているのを、携帯電話で撮影しソーシャルメディアに載せた女子学生が、トイレ内で携帯電話を使用したのは電子機器の不適切な使用であるという理由で3日間の停学処分を受けた。これに対し、他の大勢の生徒たちも同様な写真をソーシャルメディアに掲載し学校側に抗議したため、女子学生の停学処分は取り消され、同学校区は黄色い水の原因であった壊れた水道管を修理した。
Facebook コロラド州ボルダー市の複数の高校に在籍する12人の生徒が、白人至上主義的ナチスチャットサイトに、人種差別的な過激なコメントを投稿したとして、退学等を含む処分を受けた。同サイトが作られた後、関わった生徒の1人は自殺している。
Instagram オハイオ州の14歳の女子高校生2人が、偽物の銃と「ホームカミングで学校を銃撃しよう」と書いたポスターを掲げた自身の写真をInstagramに投稿。学校は本物の脅しではなく冗談と判断したが科せられる可能性がある。
Instagram ノースカロライナ州シャーロット市ブラッドフォード高校の生徒約20人が、「ブラッドフォードはいつか銃撃にあうだろう」とのInstagramの投稿に対し、お気に入り(liking)でレスポンスしたという理由で停学処分を受けた。学校は直ちに警察へ連絡、投稿主は拘置された。
Snapchat ミシシッピ州の5人の高校生が、教師を被写体としたデジタル写真をポルノ風に修正しSnapchatに投稿、共有したとして停学処分及び重罪で起訴された。同州はこの種の犯罪に対し罰金1万ドルと懲役最高5年を科しているが、未成年のため少年審判所で処理される。
Snapchat カリフォルニア州の高校の事務局長が、スポーツジムの更衣室で着替えているところを生徒に隠し撮りされ、それがSnapchatに掲載、共有された。当の生徒は逮捕されプライバシー侵害容疑で召喚された後、退学処分を受けた。写真を共有した他の生徒も停学処分を受けた。
Facebook, Twitter シカゴの高校生2人が、人種差別グループによるテキストメッセージのやりとりを他の生徒によってFacebook等に掲載され、それが学校に知られたため退学処分となった。これら生徒の親は、書き込まれたメッセージはプライベートなものであり、また他の生徒によって内容が変えられていた、として学校を相手取り100万ドルの訴訟を起こした。
Snapchat オハイオ州の高校生が、人種差別的なテキストメッセージをSnapchatで他人と共有したが、その際罰を受けたのは、メッセージを書いた本人ではなく、そのメッセージに対応するイメージを掲載し、人種差別を暴露した2人の女子学生であった。学校側のこの判断に対し、アメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union/ACLU)は、女子学生たちの行為は、キャンパスの外で、放課後なされたものであり、問題のあるメッセージを書いた生徒のプライバシーも侵害していないと反発。結局、これら女子学生に対する処分は取り消された。
Instagram コネチカット州の高校生が、クラスメートによるInstagramへの投稿内容に、黒人、身体障害者、及び数年前に銃撃事件のあった小学校の被害者を馬鹿にした写真や言葉が含まれていたとして、学校の事務局長に相談したが、対応してくれないため、投稿した生徒を学校から排除するよう学校当局に要求するオンライン嘆願を実施した。その結果、問題の生徒は停学処分を受けることとなった。

出典:Education Week 2017年7月付

これらの他、表25の事例のような不適切なソーシャルメディア利用の結果、メディアそのものが消滅したケースもある。Yik Yakは、2013年11月にサービス提供を開始したiOSとアンドロイド対応のスマートフォン用ソーシャルメディアアプリで、半径1.5マイル(約2.4km)圏内におけるコメント投稿・閲覧を匿名で利用できた。

全米の大学や高校で主に利用され、一時は最もダウンロードされた人気アプリ上位10位に入る勢いであったが46、いじめや差別等の温床となり、複数のメディアで非難を浴びると、利用を禁止する学校、学校区、大学が続出した。同社によるいじめ対策アプリも功を奏さず、2016年には利用者が前年比で76%も激減し、17年5月に閉鎖に追い込まれた47

イ 最新型オンラインいじめ:スワッティング

最近増加している犯罪にスワッティング(Swatting)がある。アメリカ警察の特殊部隊SWAT(Special Weapons And Tactics)が動詞化した語で、加害者が特定のもしくは適当に選んだ人物になりすまし、その人物の住所等で殺人事件や銃撃事件等が起きている、又は起こすつもりであるなど、虚偽の911緊急電話をかけ、SWAT部隊を出動させるというものである。Cyberbullying.orgのHinduja氏によれば、Swattingはオンラインゲーム上の言い争い等が原因の場合が多く、ネットいじめの一種である48

Swatting が殺人事件に発展してしまった例としては、2017年12月30日、カンザス州で起こった警察による誤射事件がある。犯人は25歳の男(カリフォルニア州在住)で、たびたびTwitter上でSwatting願望をほのめかしていたが、とうとうカンザス州ウィチタ市の警察に911緊急電話をかけ、言い争いの末、父親を射殺し、母親、妹、弟を人質にしているという偽通報をした。その通報を受けたSWAT部隊が、犯人が適当に選んだ住所に駆け付けた際、警察官の1人が玄関に現れた28歳の男性を犯人だと思い込み、発砲し射殺してしまった49。FBIは、「家をSwatしてやる」等という脅迫メールを受け取った場合、直ちに警察に通報するよう呼びかけている。

ウ 不適切・有害情報の閲覧

2017年6月、アメリカGoogleは同社傘下のYouTubeを含む同社サービスのテロ行為対策に関する取組について発表した。以下、その内容である50

特にYouTubeはテロリストがリクルート目的のプロパガンダ動画を投稿することがあり、08年ごろから問題になっていた。16年6月にはAI採用の自動ツールを採用したと報じられ、17年3月にはテロ関連を含む不適切な動画に広告が表示されたとして、大手広告主が多数YouTubeから広告を引き上げた。同社は既に機械学習による動画解析モデルを使っており、過去半年に削除したテロ関連コンテンツの50%以上はこのシステムで検出したものという。今後はより多くのエンジニアリングリソースを新しいコンテンツ分類学習の強化に投じるとしている。
AIの強化と並行して、人間による問題検出のプログラムも強化する。一般ユーザーではなく、第三者機関の専門家にTrusted Flagger(旗振り役)として問題コンテンツの報告で協力してもらっており、その協力先に新たに50のNGOと63の団体を追加する。一般ユーザーからの報告は誤認も多いが、Trusted Flaggerの報告は90%以上が正確という。
明らかにGoogleのポリシーに違反しているわけではないが問題がある動画の扱いを、従来に比べ厳しくする。例えば宗教的に扇動する、または至上主義的な主張をする動画などが対象になる。こうした動画には警告が表示され、広告が表示されず、お勧めリストにも表示されない。Googleは、この対策で表現の自由と攻撃的な情報への接続の間の正しいバランスがとれると考える、としている。
【ITmedia 2017年6月19日付】

アメリカのFacebookは6月15日、同社の社会的責任に関するHard Questions(難しい課題)について世界と共有するプロジェクトを開始したと発表した。同社の社会的責任については、16年の米大統領選における虚偽ニュースの拡散やテロリストによるプロパガンダ拡散、画像の不適切な削除等をきっかけにネット上でたびたび議論されている。同社が選んだ課題は以下の7つである。

  • 1.ソーシャルメディアはテロリストのプロパガンダ拡散をいかにして阻止すべきか
  • 2.ユーザーの死後、オンラインでのアイデンティティはどうあるべきか
  • 3.問題投稿をどの程度監視・削除すべきか、問題があることをどう判断するか
  • 4.虚偽ニュースの定義は誰が行うのか
  • 5.ソーシャルメディアは民主主義にとって良いものなのか
  • 6.人々の信頼を裏切らずにすべての人の利益のためにデータを使う方法は
  • 7.ユーザーに安全な環境で自己表現してもらう新しい方法とは
  • 【ITmedia 2017年6月16日付】51

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