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第2部 第1章 アメリカ (6/7)

4.青少年のインターネット環境の課題への対応

(2)行政機関の取組

ア 連邦政府の取組

連邦政府の省庁別・事業別の内容を表34に示す。連邦政府のISIS関連オンラインコンテンツに対する対応としては、2016会計年度外国諜報活動偵察法(Intelligence Authorization Act for Fiscal Year 2016)で、インターネットプロバイダーにテロリスト関連コンテンツをFBIに通報するよう義務付けた603条(SEC. 603)がある97


表 34 連邦政府の取組内容
省庁 教育・啓発事業 内容
国土安全保障省(DHS) Stop. Think. Connectキャンペーン98 サイバー上の危険を国民に知らしめ、より安全なインターネットの利用について国民を啓発しようとする、DHS主導の官民が協力して実施されているキャンペーン。
全国サイバー安全意識月間(National Cyber Security Awareness Month(NCSAM))99 国民のサイバー上の安全に関する意識を高めるため、指定された月に集中して啓発活動を行う。2017年は10月に実施され、毎週決められたテーマに重点をおいて啓発活動が行われた。
司法省(DOJ) Amber Alertシステム100 誘拐等で失踪した児童を救出するための全国的なアラームシステムで、2013年1月よりスマートフォン所持者に自動的にアラームが鳴る仕組みになっている。17年11月の時点で、897人もの児童を捜し出した。16年9月、FCCは、失踪した児童の写真や連絡先等の情報へのリンクも同時に配信されるよう、携帯電話会社に要求し、19年までに導入される予定である。
National Sex Offender Public Website101 性犯罪者の居住地等の情報を国民に提供するウェブサイト。モバイル用アプリも提供している。
SMART (Sex Offender Sentencing, Monitoring, Apprehending, Registering, and Tracking)102 2006年に成立したアダム・ウォルシュ児童安全法によって作られた事務局で、全国の司法機関に同法の適用について指導、または地方行政府や官民団体に対し技術的な補助を提供する。また常に性犯罪関連の法律や情報を更新する。
司法省、The Information Technology Association (ITAA) cybercitizenship.orgウェブサイト103 司法省が非営利のITAAと提携して作ったウェブサイト。児童たちに、ネット犯罪の怖さを知らせ、オンラインの安全な利用、倫理等を教育する。
連邦捜査局 (FBI) FBI Safe Online Surfing (SOS) Internet Challenge104 全米失踪・被搾取児童センター(National Center for Missing and Exploited Children: NCMEC)との協力による子どものインターネット安全に関する啓発プログラムで、学齢に応じて作られた児童向けクイズ形式ウェブサイト。オンライン性犯罪対策としてFBIが取り組む「イノセント・イメージ国家イニシアティブ(INI)」の一環。
連邦取引委員会(FTC) OnGuardOnlineウェブサイト105 消費者保護の観点から安全なインターネット利用について情報発信を行う。協力省庁:DHS、DOE(エネルギー省)、DOD、DOJ、DOC(商務省)等
Protecting kids Onlineウェブサイト106 児童の安全なオンライン利用に関する親のための情報サイト。
国防省(DOD) Department of Defense Education Activity:DoDEAウェブサイト107 インターネットの安全な利用方法やインターネット犯罪者に関する教育的情報を学校機関に提供している。
教育省(ED)保健福祉省(HHS)司法省(DOJ) stopbullying.govウェブサイト108 複数の省庁が連携して運営するウェブサイト。ネットいじめを含む様々ないじめに対する情報、対処法、アドバイスを提供する。
連邦通信委員会(FCC) FCC Smartphone Security Checker109 スマートフォンの機種ごとに安全性を確かめるためのチェックリスト、アドバイスを掲載。

イ 州・自治体政府

州と自治州政府の取組として、バージニア州、アリゾナ州、テキサス州、フロリダ州の事例を表35に示す。


表 35 州・自治体政府の取組
州・自治体 内容
バージニア州教育省インターネット安全110 安全な学校環境構築の一環としてインターネットの安全に関する情報を提供している。
アリゾナ州法務長官(Arizona Attorney General)ウェブサイト111 防犯教育活動の一環としてインターネット安全関連情報を提供。親向けに英語・スペイン語版を作成している。
テキサス州ヒューストン学校区のウェブサイト112
生徒、保護者、教育者のために、様々なサイバー上の安全に関するトピック(いじめ、セクスティング、オンラインゲーム、ソーシャルメディア等)について、英語・スペイン語で情報を掲載し、動画等により啓発と情報提供を行う。
フロリダ州司法省113
Safe Floridaのウェブサイト
Safe Floridaは、インターネット利用における安全についての情報、アドバイス等を学校、保護者、ティーン、低学年用にそれぞれ提供する。また、低学年の児童用のインターネット安全啓発サイト、KidsZone114は、ゲーム感覚でインターネットの安全について学べる仕組みになっている。

(3)事業者の取組

事業者による取組の代表的な例を表36に掲載する。


表 36 事業者の取組内容
事業者 取組 内容
Google Be Internet Awesome115 NPO(iKeepSafe, ConnectSafely, Family Online Safety Institute (FOSI))との協力により、インターネットの安全使用について啓発する児童用ゲーム116や教育者用の児童啓発プログラムのカリキュラム等を提供している。
Microsoft YouthSpark Hub117
YouthSparkHubは、学校、家庭に対してインターネットの安全な利用法等についてのアドバイスや情報提供、またリサーチ等を行う同社のウェブサイト。
Symantec Corporation Kids’ Safety118 インターネットの安全性のアドバイスを提供する。
AT&T Internet Safety Games for Kids119 AT&Tが開発したオンラインゲームにより、インターネットの安全な利用法等について小学生にわかりやすく教授する。
Adina’s Deck
Adina’s Deck DVDシリーズ120 スタンフォード大学が開発した、9歳~14歳の児童対象の学校向けDVD教材。ネットいじめや性的搾取等、児童たちが陥りやすいオンライン問題を取り上げている。
Yahoo! Yahoo! Safety Center121 オンラインの安全な利用法及びアドバイスを保護者、教育者、ティーンに対し、世界26か国、14言語で提供している。
YouTube YouTube Safety Center122 YouTube安全チームが、プライバシー、パスワード保護、ネットいじめ、オンライン詐欺等、3種類の安全に関するビデオを英語とスペイン語で制作している。
Sprint 4NetSafety123
NSTeens124
ネットいじめ、オンライン詐欺、プライバシー、セクスティング、ソーシャルメディア、ウェブカム等のオンライン上の安全に関する情報を児童や保護者に配信している。

(4)各種団体の取組

ア 各種団体の取組

非営利団体等の取組内容は表37のとおりである。


表 37 非営利団体等の取組内容
各種団体 取組 内容
アメリカ小児科学学会(American Academy of Pediatrics, AAP) healthychildren.org125 AAPは2016年10月、児童のメディア使用に関する新ガイドラインを発表し、過度なメディア使用は健康や成長に影響を及ぼすと報告。同学会の運営するウェブサイトhealthychildren.orgでは、児童のメディア使用に関する保護者へのアドバイスやメディア使用時間を各児童の生活スタイルに応じて算出するツールを提供している。
全米失踪・被搾取児童センター(NCMEC) NetSmartz, NetSmartzKids ウェブサイト126 Boys and Girls Club of America(BGCA)と共同運営する5歳~17歳向けのウェブサイトでは、ゲーム等を通して、安全なインターネット利用に対する意識向上を目指す。
全米失踪・被搾取児童センター(NCMEC) The Cyber Tiplineの運営 オンライン上で進行している児童の性的搾取について、一般ユーザーやインターネットのサービスプロバイダーから報告を受ける仕組み(the Cyber Tipline)。サービスプロバイダーからの報告が最も多く33%、被害者自身24%、保護者22%であった(2013年10月~16年4月)127
全米サイバーセキュリティ連盟 (National Cyber Security Alliance)128 Stop. Think. Connectキャンペーン、全国サイバー安全意識月間、データ・プライバシーデー(Data Privacy Day)等 DHSや民間企業と提携して安全なオンライン利用について国民を啓発する活動を行う。
家族のオンライン安全機関(Family Online Safety Institute: FOSI)129 FOSIウェブサイト 児童のインターネット利用における安全に関する教育、意識の啓発、親に対する情報提供、研究調査等を行う。
iKeepSafe130 オンラインプログラムがCOPPAやFERPA等のプライバシー保護法を遵守しているか認証 児童が安全にテクノロジーを利用できるような学習支援プログラムや学校と教育者のためのツール等のオンラインソフトウェアがCOPPA、教育省FERPA(Family Educational Rights and Privacy Act)、諸州のプライバシー保護法を遵守した製品であることの認証を行う。
Commonsense Media131 各種メディアコンテンツのレイティング、教育ツールの提供、啓発活動 全国レベルの非営利団体で、児童や家族に必要とされるメディアに関する情報や教育とそれらに関する見解や調査報告、データを提供している。児童の年齢別に、独自のレイティングで推薦する映画、ゲーム、アプリケーション、テレビ番組及びウェブサイトのレビューも行う。
学校用のデジタル教育ツール、K-12 Digital Literacy and Citizenship Curriculumは、生徒に安全なオンライン使用を指導するもので、52万人の教育者が登録している132。現在最も力を入れている活動133は、児童たちのテクノロジー中毒に警鐘を鳴らし、健全なテクノロジー利用を社会に呼びかけ、啓発するキャンペーンである。
2018年2月7日「テクノロジーの真実:テクノロジーはどうやって児童を虜にしたか(Truth About Tech: How Tech Has Kids Hooked)」と題して、政治家、公共医療関係者、メディア業界を交えた第1回目の会合を開催した134。夕食時に電子機器を使わないようにするキャンペーン「デバイスフリーディナー」135も推進し、各種主要メディア・企業等がサポートしている。
NotMyKid136 児童が抱える様々な問題について児童と親に対しアドバイスや情報を与える。インターネット関係では、児童が陥るオンライン上のいじめやオンラインのポルノに関する対策やアドバイスがされている。
Business Software Alliance (BSA) B4USurf137
非営利のオンライン安全利用のための情報サイト。児童対象の安全な利用のためのアドバイス、倫理、ゲームの他、学校での指導教材も提供する。
CyberBullyHelp CyberBullyHelp.com138 学校心理学者の3人が立ち上げたネットいじめ対策に関する非営利サイト。保護者や教育者を対象にした教育、講演、ワークショップ等を提供する。
The Information Networking Institute MySecurityCyberspace139 カーネギーメロン大学が設立したThe Information Networking Instituteと同大学研究機関CyLabが行う啓発活動。インターネットの安全で責任のある使い方を子供から大人まで年齢別にウェブサイトや地域のワークショップ等で指導する。
The Internet &Televsion Association
& Television Association(NCTA/全米ケーブル・電気通信協会)
Cable Puts You in Control140 全米のケーブル事業者90%を代表する全米ケーブル・電気通信協会(NCTA)により設立された。消費者にインターネットの安全な利用を啓発し、ペアレントコントロール等のサービスを提供する。

イ 民間の取組に関する評価指標と効果の測定

民間の取組で大きな役割を果たしているNPOは、その運営資金の主要な部分を、個人や企業からの寄付で賄っているため、それぞれの取組が成功しているかどうかを何らかの指標を用いて測り、支持者へ報告することは彼らの大切な義務の一つであるが、通常それは年次報告書という形で提供される。ここでは、子供たちに安全なインターネット環境を提供しようと創立し成功しているNPOの代表として、コモンセンスメディアの2016年年次報告書141を基に、どのような評価指標が使用され、どのように効果が測定されているかを考察する。

コモンセンスメディアの主要な取組は、1各種メディアのレイティング、2安全なオンライン使用に関する教育、3連邦、地方政府等への働きかけや啓発活動、4リサーチである。コモンセンスメディアは、これら各取組における成果を数字でわかりやすく表し、いかにそれらが成功しているか、支持されているか、拡大しているか等を以下の各評価指標のもと成果を強調している。[表38参照]


表 38 コモンセンスメディアの評価指標

評価指標1:各種取組の利用者・参加者数が増加しているかどうか。

  1. 年間6,800万人ものユーザーによってサービスが利用された。
  2. 50万人の教育者、また全米の小、中、高校の50%以上、1,800万人の生徒によって教育ツールが利用された。
  3. 全米50州で啓発活動を展開。11,000人が参加。
  4. 総計35億件の感想が寄せられた。

評価指標2:新しい取組が行われているか。またその成果は出ているか。

  1. 新たに2,600のメディアに対するレイティングが加えられ、レイティングの付いたメディア総数は29,000に増加した。親へのアドバイス記事は600以上、ビデオによるアドバイス件数は1,500に拡大した。また、スペイン語による情報も新たに追加。夕食時に携帯等のデバイスを使用しないキャンペーン、Device Free Dinnerを開始。NBCUniversal等メディア企業からの支持を受け全米に展開中。コモンセンスメディアのアドバイス配給契約を交わしたパートナー企業は大手企業を含め50社。
  2. 小・中・高校用の教育カリキュラム、ダウンロード数、300万回。生徒によるデジタルコンパスゲーム使用回数900万回。
  3. 地方及び連邦法のレイティングプログラムを新たに作り、保護者や教育者の意見が反映されるようにした。児童関連の法案37件が認可されるためのオンラインキャンペーンを25件行った。カリフォルニア州の児童関連17法案に関するコモンセンスメディア投票者ガイドをリリース。
  4. 3本の研究報告書、「テクノロジー中毒:心配、論争、両立の模索(Technology Addiction: Concern, Controversy, and Finding Balance)」、「繋がりと抑制:低所得層のマイノリティ青少年と親のメディア使用に関するケーススタディ(Connection and Control: Case Studies of Media Use Among Lower-Income Minority Youth and Parents)」、及び「(コモンセンスメディア人口調査:プラグイン状態の両親とトゥイーンとティーン(The Common Sense Census: Plugged-In Parents of Tweens and Teens)」の発表。

評価指標3:取組に対するレビュー、感想、反応、質問等

  1. デジタル時代の子育てに関する親からの質問に対し、記事による回答及びアドバイスが600件以上、ビデオによるアドバイス及び回答が300件以上。
  2. 新デジタル教育ツールに関し、編集レビューが3,000件、教育者からのレビューが9,500 件寄せられた。
  3. コモンセンスメディアによって構築された、地方及び連邦議員との直接的なオンラインパイプ等の努力をサポートすべく、カリフォルニア州の主要地区20人の親の代表が運営する、子供や家族に関する法律に各家庭から影響を与えようとする、California Kids Campaignと呼ばれる草の根運動が発足。
  4. 「コモンセンスメディア人口調査」報告書に関し、およそ10億件の感想が、「テクノロジー中毒」報告書に関しては、わずか3日で20億件の感想が寄せられた。

評価指標4:メディア露出度

取組がメディアで取り上げられる頻度が多いほど、それらが社会に与える影響や人々の関心が大きく、またその取組に対する社会的信頼や評価も高いといえる。コモンセンスメディアによる多くの取組は、これまで多くの主要なニュースメディアで取り上げられてきた。以下はその例である。

  • POLITICO「児童擁護団体が法律のレイティングシステムを開始(Child-advocacy group launches rating system for legislation)」142 2016年3月3日
  • コモンセンスメディアは、州の法律にも子供たちに有益か否かを基準にしたレイティングを与えると発表。カリフォルニア州から開始し、他州にも拡大予定。
  • Washington Post 「デジタルデバイスなしの夕食に耐えうるか?(Can you survive a device-free dinner?)」143 2016年8月5日
  • コモンセンスメディアは、全米の家庭に夕食時にデジタル機器を使わないように呼びかけるキャンペーンを開始。
  • CNN「親もスクリーンに向かう時間はティーンエイジャーと同じ(Parents Spend As Much Time on Screens As Teenagers)」144 2016年12月6日

コモンセンスメディアが実施した調査によると8歳から18歳の子供を持つ親は1日に平均9時間以上デジタル機器のスクリーンに向かっており、そのうちの80%は仕事ではなく、テレビ、ビデオゲーム、SNS、ウェブサイトの閲覧等で、子供と同じくらいデジタル機器に依存している実態が明らかになった。

さらに、2016年にリリースされたこれら3つの調査報告に関する記事や報道総数は1,000万件に及び、「人口調査報告書」がリリースされた週には、CNNやTIME等を含む、850のニュースメディアで報道された。

評価指標5:スポンサー、パートナー、寄付・補助金

スポンサー企業や個人が多いということは、取組が各々のスポンサーにとって重要な意味を持ち、かつ効果的であると評価されているからである。コモンセンスメディアの場合、2016会計年度の財源1,910万ドルのうち補助金30%、寄付金19%で、全体の収入の約半分を占める145。予算は過去5年間で多少の増減は見られるものの、5年前と比較すると増加した。また、コモンセンスメディアと提携して啓発活動に協力するパートナー企業には、アップル、アマゾン、AT&T、ロサンゼルスタイムズ等、大手ハイテクメーカーやメディア企業等が名を連ねる146。このことも同団体の取組が高く評価されている証であり、信用にもつながる。

出典:Common Sense Media 2017


なお、各種団体の取組内容を評価するため、GuideStar147はアメリカの慈善団体やNPOに関する情報を収集している。主に特定のNPOに寄付や助成金を付与することを検討している企業や個人等が、事前に対象団体の経営や運営の健全さをチェックできるようにするためのものである148

同サイトには、主にアメリカ内国歳入庁(IRS)にNPOとして登録している180万以上の団体のデータが保有され、取組内容や財政状態等の情報を常にアップデートしている団体は、提供された情報の量や詳細によって団体の透明性が測られ、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズの4段階の格付けが行われている。団体名、連絡先、住所、理念、活動及びプログラム概要、会計報告書等の基本的な組織の情報に加え、ゴールド以上の格付けを得る指標として、Charting Impactと呼ばれる5つの質問に対し回答する必要がある。これは、GuideStarと同業者である、BBB Wise Giving AllianceやIndependent Sectorとの共同プロジェクトでもある。以下はその質問メモの内容である。


NPOの存在意義、長期的な目的。何を達成しようとしているか。

  • その目的達成のための具体的な戦略
  • 目的達成を可能にするための財源・コネクション・人材等の能力の有無
  • 目的達成のために進歩しているかどうかの測定方法
  • これまでに達成した業績、又は達成できていない事業

これらの質問から、NPOに求められているものは第一に組織の透明性であり、さらに組織の掲げる理念がぶれずに、効果的な戦略と実践によって成果を生み、理念を達成又は達成に貢献しているかが重要視されているといえる。


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