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第2部 第1章 アメリカ (7/7)

4.青少年のインターネット環境の課題への対応

(5)各家庭の取組

ア 親による青少年インターネット利用状況の確認行為

今日、思春期の子供を持つ親たちは、子供同様にデジタル機器を利用している。Pew Research Centerが2014年と2015年に実施した調査149によれば、13歳~17歳の青少年を持つ親で、デスクトップ又はラップトップ型のコンピューターを所持している割合は94%、スマートフォン76%、Facebook利用率72%、またスマートフォン、タブレット端末機器等によるオンライン利用率は84%である150。彼らは、青少年たちのオンライン環境の確認にも積極的で、同調査対象の親のうちの6割は、子供がアクセスしたウェブサイトやソーシャルメディアのプロフィールをチェックしたことがあり、過半数は、Facebook等のソーシャルメディアで子供をフォローしたり、また約半数は子供の携帯電話の通話履歴やテキストメッセージをチェックしたことがある151

イ 親によるフィルタリング利用率152

上述のように、回答者の親の大多数は、子供のオンライン使用の監視に積極的である。上記の調査によれば、子供の電子メールアカウントのパスワードを知っている親の割合は48%、携帯電話のパスワードは43%、またソーシャルメディアアカウントのパスワードは35%であった。このように、実際に親自身が子供のアカウントに入って直接監視する方法が好まれている一方で、フィルタリングソフトウェア等のテクノロジーを駆使して、不適切なサイトをブロックしたり、閲覧履歴をチェックしたりする方法を利用する割合は39%、携帯電話の使用制限は16%、携帯電話で子供の居場所をチェックする割合は16%と比較的少ない。また、13歳~14歳の中学生くらいの子供を持つ親のほうが、15歳~17歳の高校生の子供を持つ親よりも、ウェブサイト履歴の監視や、ペアレンタルコントロールの機能を使う割合が多かった153。[図6・図7参照]

図 6 13歳~17歳の子供に対する親の監視状況(1)

出典:Pew Research Center 2016


図 7 13歳~17歳の子供に対する親の監視状況(2)

出典:Pew Research Center 2016


ウ 親子間の話し合い、ルール設定等

(ア)罰則、しつけの手段

Pew Reseach Centerの調査によると、近年テクノロジーが青少年の交友関係の中心的役割を担うようになるにつれて、親の子供に対するしつけや罰則の手法も変化している。


図 8 罰と携帯電話・インターネット

出典:Pew Research Center 2016


65%もの親が子供を罰するのに携帯電話を取り上げ、インターネットへのアクセスを遮断している。全体で55%の親が、子供の態度の良し悪しにかかわらず、1日にインターネットを使用する時間を制限しているが、13歳~14歳の青少年の親では69%と多く、15歳~17歳の青少年でも46%の親がインターネットや携帯電話を利用して子供のしつけを行っている。[図8参照]


(イ)話し合い

同じ調査によれば、青少年を正しい方向に導くため、ほぼすべての親が彼らと何らかの話し合いをし、その56%は頻繁に話をするが、その内容は学校、家庭、又は交友関係等の実際の問題に関するものである。同様に、94%の親は適切なオンライン利用について話し、また92%はネット上での他者に対する態度について話したと回答している。


図 9 ティーンに対する親の指導内容

出典:Pew Research Center 2016


その頻度は学校や家庭での態度等に関する話し合いに比べて少なく、15歳~17歳の青少年の親では、ネット上で閲覧するコンテンツ等について頻繁に話し合う親は32%、ネット上での他者に対する態度、行動について頻繁に話し合う親も32%にとどまり、年齢が低い13歳~14歳の青少年の親では、その割合がそれぞれ49%、43%とやや多くなっている154。[図9参照]

エ 親の介入(ペアレンタルコントロール)における日米の違い

Intel Securityが2017年1月に発表した世界14か国の家庭における子供のネット管理に関する調査結果によれば、デバイスを親が管理し、自分の目の届く範囲でしか子供にデバイスを使わせないと回答した日本の保護者は、14か国平均の35%を下回る20%であった。子供のネット行為を監視するソフトウェアを導入している親の割合はわずか8%、ネット上のリスクについて話し合った親の割合も64%で、両者とも調査対象国の中で最下位であった。また、子供がインターネット上で搾取され、犯罪に巻き込まれたりする可能性を心配している親は、14か国平均80%だったのに対し、日本の親の割合は61.5%と全体で2番目に低かった155

アリゾナ大学マクレランド研究所の調査によれば、親の子育てに対する考え方や方法は、青少年を取り巻く社会環境、学校制度、文化的な要因による違いが大き い。アメリカの一般的な白人家庭における理想的な子育ては、サポートとコントロールの併用と考えられている。すなわち、青少年の考えを尊重し褒め、抱擁し愛情表現しつつ、学業や道徳等に対し明確な基準、親の望むあり方と水準を示し、適度な制限を設けることである156

前述のPew Research157の調査において、適切なオンライン利用について話したことがあると回答したアメリカの親は94%、ネット上の他者に対する適切な態度について話したと回答した割合が92%であった。この背景に、アメリカの親がコントロールの一環として、青少年たちに明確なインターネット使用の基準、ガイドライン、制限を伝える努力を行っていることがあるとしている。また、罰則として、スマートフォン等のデバイスの使用を制限したり、取り上げたりするしつけを行う親の割合が65%と高いのも同じ要因によると考えられるとしている。

アメリカには親が学校教育に関与するほうが子供の成績がよいという調査結果がある158。Pew Researchの2015年調査でも、調査対象の親の半数以上(54%)は、「子供の教育に関与し過ぎということはない」と回答しており、特にミレニアル世代159の若い親ではその割合が60%以上になる160。また、過去12か月に子供の学業について話したことがある親の割合は85%、PTA等のミーティングに参加したことがある親の割合は64%、特別な行事やプロジェクトに参加した親の割合は60%であった161

保護者は、学校が指定した成績アプリをダウンロードし、履修科目すべてのプロジェクトや宿題の期日、提出の有無、成績、テストやクイズの日程及び点数、出席状態等の詳細を定期的にチェックし、子供の学業の進捗状況162を常に把握し、サポートすることが求められている。アメリカの親たちの学校教育への高い関心に加え、今日のアメリカの子供たちの学校成績をはじめとするすべての記録がオンラインで管理されている点も、親が積極的に子供のオンライン行動を管理することと関連があると見られる。

(6)課題への具体的な対応例

ア ネットいじめ

(ア)連邦及び地方政府による対応

反いじめに関する連邦法は存在しないが、反いじめ法はすべての州にある。ただし、表39に見られるとおり、刑罰を含まない法律もある。他方、この10年間ほどで被害が急増しているネットいじめに関する法整備が間に合っていない状態で、適用される法律がすべてネットいじめを含んでいたり、学校外で起こったいじめに適用されたりするわけではなく、州によって規定も異なる163。連邦政府による対応としては、教育省(ED)や保健福祉省(HHS)等、複数の省庁が連携し、様々ないじめに対する情報、対処法、アドバイスを提供するウェブサイト、stopbullying.gov164や国土安全保障省(DHS)のStop. Think. Connectキャンペーン165等がある。[表39参照]


表 39 全米50州におけるネットいじめに関する法律166
州名 反いじめ法167 「ネットいじめ」を含む法168 「電子的ハラスメント」を含む法169 刑罰の有無 学校における処罰の有無 学校規則への義務化 学校外でのいじめに適用170
アラバマ × × ×
アラスカ × × ×
アリゾナ × × ×
アーカンソー
カリフォルニア ×
コロラド × ×
コネチカット ×
デラウェア × × ×
フロリダ ×
ジョージア 審議中 × 審議中
ハワイ 審議中 ×
アイダホ × ×
イリノイ ×
インディアナ × × ×
アイオワ × ×
カンザス × ×
ケンタッキー 審議中 ×
ルイジアナ
メイン × ×
メリーランド × ×
マサチューセッツ ×
ミシガン 審議中 × ×
ミネソタ ×
ミシシッピ × ×
ミズーリ ×
モンタナ × × × ×
ネブラスカ 審議中 × 審議中
ネバダ × ×
ニューハンプシャー × ×
ニュージャージー ×
ニューメキシコ × ×
ニューヨーク 審議中
ノースカロライナ ×
ノースダコタ × ×
オハイオ × × ×
オクラホマ × × ×
オレゴン × ×
ペンシルベニア × × ×
ロードアイランド × ×
サウスカロライナ × × ×
サウスダコタ × ×
テネシー
テキサス × × ×
ユタ × × ×
バーモント × ×
バージニア × ×
ワシントン ×
ウエストバージニア × × ×
ウイスコンシン × × ×
ワイオミング × × ×
州合計 50 23 48 18 46 49 14
連邦政府171 × 審議中172 審議中173 審議中174 × × ×
ワシントンD.C. × ×

出典:Cyberbullying Research Center 2016


(イ)民間による対応

アメリカの場合、ネットいじめに対する実質的な対応は、表40に示したとおり、事業者、各種民間団体による情報提供、警鐘、自己防衛策等の啓発、ならびに被害者の相談等によるものが主流である。


表 40 民間の取組内容
対応制度・取組等 内容
CyberBully411.com175 ネットいじめにあっているティーンを救うための情報サイト。Center for Innovative Public Health Research が Community Foundation Technology of Californiaの資金援助で作った。
CyberBully.org176 オンライン上のいじめに関する情報サイト。子供と親のためのいじめ対策、アドバイス等を掲載する。親のためのワークショップも全米各地で開催する。
SAFEKIDS.com177 オンライン上の危険についての情報、子供や親へのアドバイス、相談サイト等の情報を提供する。
ConnectSafely.org178 オンラインの安全な使用についてのアドバイス、親のガイドブック、関連ニュース、政策等に関するコメント等を掲載する。毎年2月6日の「安全なインターネットの日(Safer Internet Day)」を開催する。Facebookの安全諮問委員会(Safety Advisory Board)のメンバーでもある。

イ 性的搾取・性犯罪

(ア)連邦及び地方政府による対応

性犯罪に関し施行されている連邦法及び地方政府の対応は、それぞれ表41と表42のとおりである。


表 41 連邦法
法律名 内容
1977年性的搾取に関する法律(Protection of Children against Sexual Exploitation Act 1977)179 16 歳以下の児童をわいせつな描写物等を制作する目的で使用することを禁じた。
1986年児童性的虐待ポルノ法 (Child Sexual Abuse and Pornography Act of 1986)180 児童ポルノ適用年齢を18歳に引き上げ、非営利目的の児童ポルノ制作・頒布も罰し、法の適用範囲を広げた。
1990年児童保護復旧及び刑罰強化法(Child Protection Restoration and Penalties Enhancement Act of Abuse)181 コンピューターによる児童ポルノの伝達・流通・受領を違法とし、違憲判決を受けて施行されなかった「1988年児童保護及びわいせつ強制執行法」を強化し、児童ポルノの営利目的の所持、又は3つ以上の児童ポルノの単純所持を刑事罰の対象とした。
1998年性犯罪者から児童を保護する法律(Protection of Children from Sexual Predators Act of 1998)182 コンピューターの使用を含めた児童性的搾取、ポルノ犯罪の刑罰加重、さらに再犯者についても加重。サービス・プロバイダーによる児童ポルノの通報義務化が規定された。
1998年児童オンラインプライバシー保護法(COPPA) 13歳未満の児童の個人情報を保護しようとするもので、児童を対象としたウェブサイト事業者やオンラインサービス事業者が、その児童の個人情報を収集、利用、開示する際には、その児童の親に通知し、同意を得なければならない。
2000年児童インターネット保護法(CIPA)183 学校と図書館において子供がインターネットにアクセスする際に、児童ポルノ等有害情報へのアクセスを制限することを目的に、連邦政府による資金補助(E-料金プログラム)の利用条件として、学校や図書館内のコンピューターにフィルタリング・ソフトのインストール等が義務付けられた。
2006年アダム・ウォルシュ児童安全法(The Adam Walsh Child Protection and Safety Act of 2006?) 児童をだまして有害なウェブサイトに誘い込むことを目的に、紛らわしい言葉や画像を載せることを犯罪としている。
2007年児童ポルノの効果的起訴法(Effective Child Pornography Prosecution Act of 2007) 性犯罪者を効果的に起訴できるように法を改正した。
2008年キッズ法(Keeping the Internet Devoid of Sexual Predators Act of 2008又は the KIDS Act of 2008) 2006年アダム・ウォルシュ児童安全法で規定された性犯罪者の登録と告知の内容が強化された。
2008年児童保護法PROTECT: (Providing Resources, Officers, and Technology to Eradicate Cyber Threats to) Our Children Act of 2008 インターネットを介した性犯罪、誘拐等の児童搾取の危険から子供を保護するため連邦、州、地方の捜査・法執行機関、戦略の強化。
2008年21世紀児童保護法(Protecting Children in the 21st Century Act) CIPA内容の強化。

表 42 連邦・地方政府による対応
名称 内容
Stop.Think.Connect キャンペーン184(国土安全保障省(DHS) より安全なインターネットの利用について国民を啓発するキャンペーン。DHSのウェブサイトには、親と教育関係者用にオンライン犯罪から児童を守るための安全対策に関する情報ソース、ツールが紹介されている。
Project iGuardian185 (移民税関捜査局、国土安全保障調査(Immigration and Customs Enforcement’s (ICE) Homeland Security Investigations (HSI)) Project iGuardianは、児童たちをオンラインによる性的搾取から守ることを目的に、ウェブサイトで年齢別に楽しめるゲームを通して、安全なオンライン使用の教育と啓発を行う。
Innocence Lost National Initiative186 (FBI, DOJ, NCMEC) FBIとDOJの児童性的搾取及びわいせつ課(Child Exploitation and Obscenity Section)、NCMECが共同で立ち上げたイニシアティブで、国内における児童の性的人身売買の問題を社会に知らしめ、全国400以上の法執行機関と連携し被害者を救出する。
児童に対するインターネット犯罪調査委員会プログラム187(The Internet Crimes Against Children Task Force Program (ICAC)) ICACは、州や地方自治体の法執行機関が、児童を狙ったオンライン上の性的搾取や犯罪に対し、迅速にかつ効果的に対処できるように創設されたプログラムで、全国4,500の連邦、州、地方自治体の法執行機関及び検察機関を代表する61の調査委員会で構成される全国的ネットワークであり、2008年児童保護法によって、法執行機関、検察機関に対するトレーニング、及び児童や親に対する教育も強化されることになった。

(イ)民間による対応

民間における非営利団体等による対応は表43のとおりである。


表 43 民間の対応内容
団体名 内容
CyberTipline(NCMEC)188 オンライン上で進行中の青少年の性的搾取について一般ユーザーやインターネットのサービスプロバイダーから報告を受ける仕組み。
Enough is Enough189 市民の啓発、政府や企業への働きかけを通して、オンラインポルノ、性的搾取、オンラインいじめ等を中心としたオンラインの危険から青少年たちを守ろうとする非営利団体。
全米教育協会(NEA: National Education Association)190 幼稚園から大学院までの公立学校の300万人もの教員が加入するアメリカ最大規模の専門職協会であるNEAは、メンバーに無料でオンラインいじめやセクスティングを含む、セクシャルハラスメントやいじめ対策、及び関連法等についてトレーニングを提供している。
StopItNow!191 青少年の性的搾取を防ぐための啓発サイト。安全なオンライン使用を含む、青少年や親向けの各種アドバイスを掲載。
Protect Children Online192 オンラインに潜む性的搾取の危険を訴え、青少年たちにセクスティングの抑制等のアドバイス、親の監視、会話の重要性を説く啓発サイト。
Darkness to Light193 青少年の性的搾取を防ぐための成人に対するアドバイス、対処法、トレーニング、情報等を掲載する。
Parenting Safe Children194 青少年の性的搾取を防ぐための親や教育関係者等に対するアドバイス、有料のトレーニングや情報を提供する。
Child Rescue Network195 青少年の性的搾取を防ぐための大人に対するアドバイス、オンライン上の安全を含む教育、コミュニティへの啓発活動等を行う。

ウ テロリスト等に対する事業者の取組196

(ア)YouTubeの対応

2017年後半に、YouTubeは突然規制を強化し、コンテンツの内容にかかわらず、テロリストに関わると米英両政府が認証する人物による動画のすべてを削除する、とする新しい政策に踏み切った。これは、両政府や人権団体からの圧力によるものであり、同年6月にドイツで制定された反テロリスト法で、悪意に満ちた投稿が即座に削除されない場合に5千万ユーロ(5.7千万ドル)の罰金がソーシャルメディアに科せられるとする法律に類似するものである197

(イ)Twitterの対応

Twitter は2015年半ばから、ユーザーからの通報や既存のテクノロジーによって割り出されたテロリストや暴力的な過激思想家たちのアカウントの調査を開始した。その結果、2016年8月には、総計36万のアカウントが停止されることになった。また、同社は、通報を受けた違反コンテンツを調査するスタッフを増やし、より迅速に問題のアカウントを停止できるようにしたほか、暴力的な過激思想に対抗するためのチームも増員するなどして、国内外の批判に対応している198

(ウ)Jigsawの対応

ISISによる悪質なコンテンツに対抗する最新の技術として、Googleの親会社となったAlphabet社のシンクタンクJigsawが開発した「リダイレクト(the Redirect method)」があり、2017年7月から使用されている199。これは、過激思想のコンテンツを探している若者を、反過激思想のYouTubeコンテンツに誘導する仕組みである200。同社が17年2月に発表した「パースペクティブ(Perspective)」は、オンラインメディア上のコメント内容を理解し、悪意ある可能性を数値化するAPIで、過去に人間が行った数十万もの評価コメントを学習したPerspectiveを基準に対象コメントを評価する。これを使えば、問題のあるコメントを探知して人間のモデレーターに伝え、コメントした人に対しそのコメントがコミュニティに与えるかもしれない影響について警告する機能や、読者が有害コメントを非表示にできる機能を追加でき201、有害コメントの一掃に一役買うことが期待されている。

エ リベンジポルノに対する民間の対応

昨今問題になっている性的搾取のリベンジポルノ(復讐ポルノ)は、元交際相手や元配偶者の性的な写真・動画等を、インターネット上で本人の許可なく不特定多数の人に公開する性的嫌がらせを意味し、オンライン上のセクシャルハラスメント、又はオンラインいじめの形態の一種とみなされている。

リベンジポルノについて摘発されると、大抵の場合misdemeanor(軽罪)が適用されるが、ケース又は州法によってはfelony(重罪)が適用される場合もあり、被害者が18歳未満の場合は罰則がより厳しくなる。2017年12月現在、38州でリベンジポルノに対する法律が整備されている。罰則の内容については、州によって異なり、比較的新しい法律であるため、現在も進化中であるが、ほとんどの州で、リベンジポルノ罪には、「性器、肛門、女性の胸部又は性的行為の画像が含まれる動画の出版又はオンライン配信による意図的な嫌がらせ」の行為が対象となる202

民間による対応としては、ソーシャルメディア大手のFacebookが、2017年4月、リベンジポルノに該当する写真や動画が拡散するのを防ぐ写真適合技術(photo-matching technology)を導入した。これは、通報により削除された写真や動画が、Facebook及び同社のInstagram、Messengerサービス間でその後も繰り返し共有され続けないようブロックする仕組みである。また、ユーザーがリベンジポルノを発見した場合に簡単に通報できる通報ボタンも新たに加えた。その他、通報を受けた画像を検閲させるため、特別にトレーニングを受けたスタッフで構成する専門チームも配置し、通報を受けると直ちに画像を吟味、削除し、アカウントを不能にする体制をとっている203

その他のソーシャルメディアや検索サイト等でも、リベンジポルノは問題となっており、Google, Twitter, Microsoftでもリベンジポルノ画像の通報及び削除のプロセスを簡素化しようとする試みが行われている。Googleでは、被害者から通報を受けると、検索結果から問題の画像を削除するよう対処している。またTwitterは、これまでも本人の同意なしの性的画像を投稿することを禁じていたが、2017年10月にはその禁止画像の内容をより具体的に定め、かつ違反者のアカウントを削除すると発表した204。Microsoftでは、簡単なフォーム205に記入すれば、Bing、OneDrive、Xbox Liveにおけるリベンジポルノの通報ができるようにしている206

連邦政府によるリベンジポルノ規制法はまだ制定されていないが、2017年11月27日、カリフォルニア州選出の上院議員、ハリス上院議員らによって、リベンジポルノ連邦法案であるEnding Nonconsenual Online User Graphic Harassment Act of 2017、通称ENOUGH法案が提出された207


オ 個人情報の漏えい・窃盗等

個人情報の漏えい・窃盗対策として、連邦及び地方政府と民間における対応は表44及び表45に示したとおりである。


表 44 連邦及び地方政府の対応
法律・プログラム 内容
1998年児童オンラインプライバシー保護法(COPPA) 児童のプライバシー情報保護に関する連邦法。
Protecting Kids Online(FTC)208 児童の安全なオンライン使用のための親に対するアドバイスや情報を掲載。
Child ID Theft(FTCウェブサイト)209 青少年のID窃盗に関する警告、窃盗されないための方策、窃盗にあったか否かの確認方法、窃盗にあった場合の報告先、被害にあった後の対処法等の情報を掲載。
US-CERT(Computer Emergency Readiness Team)210(DHS) 家庭用コンピューターのセキュリティを守るためのアドバイス。アラート受信に登録するとインターネットセキュリティの最新情報を得られる。

表 45 民間の対応
機関・プログラム名 内容
Identity Theft Resource Center (ITRC)211 ID窃盗に関する情報の提供及び電話による相談を受け付けている
Fraud.org212 全国消費者連合(The National Consumers League)が作った非営利団体。オンライン詐欺、ID窃盗を防ぐためのアドバイスのほか、詐欺や被害にあった場合の通報窓口を設け、詐欺アラートシステム(Fraud Alert System (FAS))として各分野の法執行機関に自動転送される仕組みになっている。FASは、全米90の連邦、州、地方政府が使用している。
Stay Safe Online213 全国サイバーセキュリティ連盟(National Cyber Security Alliance)が立ち上げた非営利団体。ウェブサイトが提供するC-Saveは、幼稚園児から高校生までを対象に、サイバーセキュリティ、倫理等を教えるためのガイドラインを掲載している。
Family Online Safety Institute214 プライバシーに関する情報やソーシャルメディア、モバイル機器、オンラインの安全等に関する情報、アドバイス、リサーチ報告書を提供する。
Connect Safely215 インターネット利用者に安全な利用を啓発するためのウェブサイト。親や教育者に対するアドバイスやテクノロジーの最新情報を掲載する。
iKeepSafe216 青少年が安全にテクノロジーを利用できるような学習支援プログラムや学校、教育者のためのツール等を提供する。
Savvy Cyber Kids217 年代別に青少年や親に対するオンライン倫理に関する青少年用教本やセミナー、ワークショップ等を行う。

ID窃盗に関しては、すべての州において何らかの法律が制定され、29の州ではID窃盗に関する特別の賠償条項がある。また、アーカンソー、デラウェア、アイオワ、メリーランド、ミシシッピ、モンタナ、ネバダ、ニューメキシコ、オハイオ、オクラホマ、バージニアの11州では、被害者救済のためのプログラムが作られている。しかし、近年青少年をターゲットにしたID窃盗が増加していることで、各州はそれぞれの罰則を強化し、被害を受けやすい里親に預けられている青少年たちに関しては、彼らの社会保障番号が悪用されていないか確認するためにクレジットレポートを要求するか、被害にあった場合には、青少年の消費者レポートの凍結を要請できる権限を親や保護者に与える等、対策を講じている。

特に、フロリダ、インディアナ、ルイジアナ、ペンシルベニア州では、未成年に対する犯罪の罰則はより重いものになっており、特にフロリダとペンシルベニア州では、被害者が18歳未満の場合の犯罪は、通常の刑より1級罪が重くなる。例えば、フロリダ州では、成人のIDを悪用した場合には第3級の重罪が科せられるのに対し、未成年が対象の場合、第2級の重罪が適用される。また、インディアナ州でも、2009年より、青少年や扶養家族のIDを悪用した場合、従来の第6級から第5級の重罪が適用されている。また、カリフォルニア、コロラド、コネチカット、イリノイ、デラウェア、ネバダ、バージニア州では、里親に預けられている青少年たちには、16歳になると毎年、里親から離れて自立するまで、無料の消費者レポートが送られ、クレジットを含む自分の履歴をチェックすることができるように法律で義務付けられている218


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