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第2部 ドイツ(1)

(注)
「ドイツ・オーストラリアにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査(HTML版)」は、テンプレートの仕様により、
ドイツ語の は A、B、U、Oと表記されている。

第一章 青少年のインターネット利用環境に関する実態

1. 青少年の年齢の定義

 ドイツで青少年を意味する単語「Jugend」の年齢の定義は法律により若干異なるが、一般的には14歳以上18歳未満とされている。青少年犯罪の犯罪罰則基準を定めたドイツ青少年裁判法(Jugendgerichtsgesetz: JGG)では 、第1条2項にて青少年を14歳以上18歳未満と定義している1 。ドイツ青少年労働法は、青少年は15歳以上18歳未満と定めている。また、社会法典8巻(SGB VIII)は、14歳以上18歳未満を若者と定義している(第7条1項2)。2

 ドイツでは、法律上14歳未満を児童(Kinder)と定めている。しかしながら、本報告書で扱った調査対象年齢は必ずしもこの法的な青少年の年齢を厳守しているわけではない。それは、小学校を卒業して大学に入学するまでの年齢(12歳から18歳)までを対象としている資料や小学生から大学に入学するまでの年齢(6歳から18歳)を対象としている調査など様々なデータが存在するからである。しかし14歳未満のみを対象とした調査・統計資料等は使用していない。質問の設定上、児童が対象となる場合(例えば児童ポルノなど)、その参考資料の年齢対象等を本文中に記載している。

2. 青少年のインターネット利用環境に関する管轄組織とその役割

(1)メディアの定義

  ドイツではメディアの種類、つまり物理的なキャリアがある媒体か、またはない媒体かによって、青少年保護について管轄する組織やその根拠法が異なる。以下は、これをまとめたものである。

 物理的なキャリアがある媒体 → 携帯メディア(Tragermedien)

  • 媒体の種類: 雑誌、本、CD、オーディオ・ビデオ、アナログ・デジタルの記録媒体(ハードディスク、CD-ROM、DVD、Blue-Ray)
  • 管轄: 連邦家族、高齢者、女性、青少年省(連邦家族省)
  • 根拠法: 「青少年保護法」

 物理的なキャリアがない媒体 → 放送、テレメディア (Telemedien)

  • 媒体の種類:
    1. 全てのICTサービス(インターネット): ホームページ、インターネット検索エンジン、ニュースグループ、チャットルーム、オンラインゲーム
    2. テレビ・ラジオ放送: 放送番組、テレビショッピング、ビデオについては、個別に呼び出しが可能なビデオ・オン・ディマンド、映画データ、ビデオプラットフォーム。
  • 管轄: 州メディア監督機関
  • 根拠法: 各州の合意として「青少年メディア保護州際協定」

 連邦家族省の直下に置かれた「連邦青少年有害メディア審査会」は、青少年有害情報リストの登録を行っている。 ここでは、携帯メディア、テレメディア両方を取り扱う。テレメディアでの有害リストの登録については州が管轄するため、 メディア統括局に置かれた委員会の意見を聞いてから行う。州当局側は、青少年有害メディア審査会に対して、 テレメディアの有害リストの登録を直接申請することができる。有害リスト登録を受けた各メディアコンテンツへの対処も、 携帯メディア、テレメディア、テレビ・ラジオ放送それぞれで異なる。

 連邦家族省は、メディアリテラシー育成(インターネットも含め、全てのメディアコンテンツに対して節度と責任を持って 利用する能力の育成)も重要な政策項目として挙げている。これについては次章にて詳しく見ていく。

 インターネット上での児童売春(児童ポルノ)も広義では有害メディアの一つと見なされるが、犯罪、つまり刑法の取り扱いとなり、 連邦内務省内の連邦刑事庁が管轄する。

 以下、携帯メディア、テレメディア(インターネット)、そして児童ポルノメディアの青少年保護それぞれについてもう少し詳しく見ていく。

(2)携帯メディアの青少年保護 (連邦省)

  連邦家族、高齢者、女性、青少年省 (Bundesministerium fur Familie, Senioren, Frauen und Jugend: BMFSFJ)3 が、その施策を行う。同省による政策は、青少年保護のみではなく、家族関連、高齢者介護、男女同権など多岐に渡る。

 同省の直接の管轄下に連邦青少年有害メディア審査会(Bundesprufstelle fur jugendgefahrdende Medien: BPjM)が設置されている。その設置根拠は、青少年保護法(Jugendschutzgesetz: JuschG)による。同審査会では、あるメディアコンテンツの内容が青少年に有害であるかどうかを審査、指定し、それをリストに記載している。このリストはフィルタリングソフトウェアなどに反映され、ウェブ上での表示が制限される。同審査会内には、児童・青少年メディア保護、予防、広報活動推進部(Weiterentwicklung der Kinder- und Jugendmedienschutzes, Pravention, Offentlichkeitsarbeit)という専門部署が設置されている。同部署は、長期展望にたった青少年保護の課題に取り組んでいる。つまり、メディアの有害指定という実践的なノウハウの蓄積を、広報活動を通じて世論に働きかけていく、あるいは予防教育の施策に生かしていくという社会的なフィードバックを担う部署である。

(3)テレメディア(インターネット)の青少年保護 (州メディア監督機関)

 州メディア監督機関(Landesmedienanstalten)は、民間テレビ・ラジオ、ICTメディア(以下、インターネット)を規制監督している。ドイツではテレビ・ラジオ放送は州管轄であるため、原則として、各州メディア監督機関がある4 。現在、全16州で14の州メディア監督機関が設置されている。その連合組織として州メディア監督機関連盟があり、連邦レベルでの問題を協議する。民間のラジオ・テレビ放送局の許可、周波数割り当てなどを行うほか、各州間で調印された放送州際協定、青少年メディア保護州際協定(Jugendmedienschutz-Staatsvertrag)、州メディア法の遵守を監督する役割も担う。

 なお、州メディア監督機関は法的に「公法上の営造物 (o?ffentlich-rechtliche Anstalt)」という性格をもつ。公法上の営造物とは、行政に様々な関係者を参加させることにより、多角的な決議を可能にした組織であり、より効果的に国民・住民の利益を実現させることを目的としている。行政的な機能を担うが、官庁の管轄からは独立している。

 インターネットにおける有害表現からの青少年保護については、青少年メディア保護州際協定が規律している。既出の携帯メディアにおける「青少年保護法」を根拠法としているのと異なるので、注意が必要である。

 州メディア監督機関連盟内の「青少年メディア保護委員会 (Kommission der Jugendmediaschutz)」が、青少年メディア保護州際協定への遵守に責任があり、テレメディア運営者への対応を決定する役割を担う。同委員会の役割は、以下の通りである。

  • 民間テレビ・ラジオ放送とインターネットコンテンツの監督。
  • 番組プログラムの放送時間の決定。
  • 新しいインターネットサイト閲覧ブロック技術、暗号技術の認可。
  • 青少年適正番組として認定を受けるための評価基準の決定と定義。
  • 連邦青少年有害メディア審査会への青少年有害メディアのリスト登録申請。
  • 連邦青少年有害メディア審査会が行うリスト登録申請に対しての意見表明。
  • 自主規制機関の認可と自主規制機関が尊重すべき規約・ガイドラインの作成。

 既出の連邦青少年有害メディア審査会は、テレメディアを対象とする場合、リスト登録の決定前に青少年メディア保護委員会の意見を求めることになっている。これは、テレメディアの主管轄が州であるためである。また、青少年メディア保護委員会側がリストアップのための申請を行うこともある。

 青少年メディア保護州際協定の基本的な考え方は、「ルールに基づく自主規制」である。つまり、同委員会は、放送・インターネット運営者の責任意識を強化することを目的とする。青少年メディア保護委員会を含むメディア統括局が全てのコンテンツに直接目を光らせるのではなく、同委員会は自主規制機関(Anerkannte Kontrolleinrichtung)を認可し、州当局の介入を最小限に抑え、業界の対応・運営に任せる。自主規制機関は、放送、インターネット運営者の責任意識を強め、事前修正の機会を与える働きを持つ。青少年メディア保護州際協定で認められた許容範囲を超えると、自主規制機関は当局の対応を要請する。

 また、青少年メディア保護委員会は自主規制機関が尊重すべき、規約、ガイドラインを作成する。この中には、利用グループを限定すること、あるいはコンテンツに関する表示義務などが含まれる。この自主規制機関としての認可を受けるためには、委員会に申し込みを行い、適性審査を受ける。例えば、自主規制機関の審査官が青少年保護について影響力を持つ人物であることや、専門知識を持つ評価者をおくことなどが求められる。

(4) 児童ポルノメディアへのアクセスを制限する機関(連邦刑事庁)

 ドイツは連邦制を敷いているため、犯罪捜査、防犯に関する警察組織は州の権限に属している。刑事警察の中央官庁として、連邦刑事庁(Bundeskriminalamt)5 が存在する。連邦刑事庁を管轄するのは内務省であり、その設置根拠は「連邦刑事庁法」による。その活動内容は、以下の通りである。

  • 刑事捜査で複数州の調整が必要な場合や州管轄の警察からの要請があった場合。
  • INPOLデータベースの管理、犯罪情報の収集と解析。
  • テロ活動、過激派、スパイ活動、経済犯罪の事件捜査。
  • 要人の護衛。(近接警護部隊による)目撃者の身柄保護。
  • 中央官庁として国政刑事警察機構(ICPO)、欧州刑事警察機構(Europol)等に対するドイツ事務局の役割。
  • 児童の性犯罪犠牲者に関する画像と情報を特定し、分析を行う情報交換機関としての役割。

 また、検察庁の下にコンピューター犯罪のタスクフォースとして設置された中央インターネット犯罪対策室(Zentralstelle zur Bekampfung von Internetkriminalitat: ZIT)6 がある。通常、地方警察と地方検察がインターネットの犯罪捜査にあたるが、大規模で専門性の高いコンピューター知識を必要とする犯罪については同対策室が動員される。特に、児童ポルノ犯罪の摘発、児童ポルノの被害者の児童の同定に動員される。

3. 青少年の閲覧が望ましくないとされている情報(有害情報及び違法情報)の現状

(1)青少年保護法に定められた有害・違法情報

 青少年保護法(Jugendschutzgesetz)では、特定の情報グループを青少年有害情報として規定しており、これに該当する対象は連邦青少年有害メディア審査会のリストに記載され、青少年への提供が厳しく制限される。青少年保護法は、以下のように有害・違法情報を定める。

有害情報
  • 残忍性を煽るもの(Verrohende Wirkung)
  • 暴力行為を誘発するもの(Anreizen zu Gewalttagikeit)
  • 犯罪を誘発するもの(Anreizen zu Verbrechen)
  • 人種差別を誘発するもの(Anreizen zu Rassenhass)
  • それ自体を目的とした詳細な暴力描写(Selbstzweckhafte, detaillierte Gewaltdarstellungen)
  • 私的制裁を安易にするもの(Nahelegung von Selbstjustiz)
  • 不道徳性のあるもの(Unsittlichkeit)

以下は、青少年保護法に定められた青少年有害情報の各概念の定義である。

  1. 残忍性を煽るもの

     残忍性を煽るメディアとは、サディズム、暴力行為、陰険さ、不幸を喜ぶことを喚起する、あるいはこれらを奨励するようなメディアのことをいい、児童や青少年に残忍な影響を及ぼすものをいう。さらに残忍性という概念には、他者を尊重しながら社会的な共生を営むための感性を鈍らせることも含まれる。年少者が暴力を目にすることを強要されることそのものではなく、こうしたメディアにより、他者への共感が削がれる、他人の痛みが分からなくなることが要点である。さらには暴力を美化した演出、怪我や殺人をシニカルでおもしろおかしく描くことも含まれる。

  2. 暴力行為を誘発するもの

     刑法典131条により、暴力行為の概念は、直接、間接的に物理的な力を行使し、心身の安寧を阻害する、あるいは具体的に危険にさらすような方法で、人体に影響を与えるアグレシブかつ積極的な行為とされている。

  3. 犯罪を誘発するもの

     犯罪行為の無価値さや不当性が十分に描かれず、描き方が犯罪を肯定するような傾向にある場合、このような犯罪描写は児童や青少年を社会的離反へと導くとされる。重要なのは青少年がその描写を模倣する恐れがあるからではなく、これらのメディアを享受することで、青少年が誤った憲法観を持ち、犯罪を否定することを疑問視する恐れがあるからである。

  4. 人種差別を誘発するもの

     人種差別を誘発するメディアという概念は、基本法3条3項1文の憲法上の差別の禁止を具体化したものである。人種(Rasse)は広義の概念である。人種差別は、単なる否定や差別を超えて、国家、宗教、民族により規定されるグループを敵視する姿勢のことである。このような姿勢がこれらのグループに対する実力行使の前提となることがある。

     人種差別を誘発するメディアとは、その中で人間が民族、国家、信条、あるいはこれに類似する帰属により卑下、軽蔑され、人種差別を模倣できるように描いたものである。

  5. それ自体を目的とした詳細な暴力描写

     それ自体を目的とした、との概念は特定の行為がある特定の目的のために行われるのではなく、その行為をすること自体に意思が向けられている場合を言う。

     暴力行為の視認にフォーカスしている、例えば、近接、視覚に訴える効果を使い、それにより見たものが、暴力行為の詳細をつぶさに視認することを可能にすることである。

  6. 私的制裁を身近にするもの

     私的制裁(Selbstjsutiz)とは法律に反する、不当と受け取られる状態に対しての法基準を逸脱した行動、あるいは国家の武力独占の限界を軽視した振る舞いのことを指す。例えば、主人公が「報復者」として、制裁する立場に立ち、法を盾に罰を与えるものである。

     私的制裁に該当しないのは、正当防衛、応急処置、非常事態の描写である。なぜならこれらは法秩序に則っているためである。同様に青少年に有害であると見なされるのは、無法地帯で行動が描かれている、例えば、終末モノ、破滅モノなどと言われる映画のジャンルで、国家秩序が崩壊した状態が描かれている場合である。

  7. 不道徳性のあるもの

     「不道徳(unsittlich)」と言う概念は、一般的なモラルと言う意味ではなく、性的な意味で理解される。不道徳的メディアとは性的、エロチックな内容であり、その内容や表現が客観的にみて、羞恥心や道徳感情を著しく傷つけるが、ポルノの犯罪対象としての要件がまだ揃っていないものをいう。

     連邦青少年有害メディア審査会の実践例では、例えば社会的な関係から逸脱した人間が、単に性的対象として汚される、あるいは小児性愛の集会や雑誌などの中で、性犯罪を正当化するような大人と児童の性的接触を容認する描写も含まれる。

     また、自らの性的欲求を満たすために、性行為で暴力の行使が根本的に容認されている、相手の同意を得ず行為に及ぶことも含む、印象を青少年に与える話も不道徳とされる。このような話は、未成年の暴力傾向を増長し、他者の身体の無事を考慮し尊重することに矛盾する。

     新しい実践例によれば、明確なルールと取り決めの範囲で行われる大人同士のSM行為などは、青少年にとっての有害メディアとは見なされない。しかしながら、人物を極端に卑下したり、辱めたりしているもの、激しい暴力を描いているものはこの限りではない。

(2)青少年保護法外の有害情報

 さらに、法的に規定されてはいないが、連邦青少年有害メディア審査会の実例から青少年に有害であると指定されているケースグループがある。法的規定がない代わりに、個別ケースでの意見表明により、該当するコンテンツは有害メディア指定を受けることになる。以下が、「拡張された有害情報」と呼ばれるそうしたケースグループである。

拡張された有害情報
  • 人間の尊厳を傷つけるもの(Verletzung der Menschenwurde)
  • ある人間のグループの差別(Diskriminierung von Menschengruppen)
  • 国家社会主義(ナチス)の礼賛(Verherrlichung des Nationalsozialismus)
  • ドラッグ使用の奨励(Verherrlichung von Drogenkonsum)
  • 過剰な飲酒の奨励(Verherrlichung von exzessivem Alkoholkonsum)
  • 自傷行為を身近にするもの(Nahelegen von selbstschadigendem Verhalten)

(3)極めて有害な情報

 青少年の健全な発達にとって特に危険度が高いものは、極めて有害として連邦青少年有害メディア審査会によるリストへの記載がなくても、有害情報と同じく青少年への提供が厳しく制限される。以下のようなケースが、これに相当する。

  • 刑法86, 130, 130a,131184,184a,184 または184cに該当する内容
  • 戦争を美化すること
  • 人間の尊厳を傷つけるような現実を描出すること
  • 暴力シーンが多くを占めるメディア
  • 児童が不自然に性を強調するような姿勢をとっているもの
  • 明らかに青少年にとって有害な内容

「刑法刑法86, 130, 130a,131,184,184a,184 または184cに該当する内容」は、以下の通り。

86条: 憲法に違反する組織のプロパガンダ手段
連邦憲法裁判所によって禁止された政党、それらを代理する組織のシンボル、挨拶、パロディや言葉を使用することを禁じている。例えばハーケンクロイツ、これに類似したハーケンクロイツを想起させるシンボル、SS隊のシンボル、ヒトラーの肖像画などを使用することは禁じられている。同様に、Sieg Heilなどのナチスの挨拶言葉を口にすることも禁じられる。

130条: 民衆を扇動する内容
ある国籍、種族、宗教、倫理などの出自によって特徴付けられるグループ、ある民族の一部、ある呼称を持つグループへの所属について憎悪を増幅させ、暴力や差別的な行為を扇動し、公共の平和を乱す者に対して適用される。また、人間の尊厳を傷つけ、ある民族の一部分、あるいはある呼称を持つグループへの所属について、非難する、差別する、詆ることにより公共の平和を乱す者に対して適用される(130条1項)。同罪により3ヶ月から5年までの懲役刑に処せられる可能性がある。前出の第1項に関する言葉、素材、画像などを公共の場で公開することは禁じられている(130条2項)。またナチス、支配の下で行われた集団殺害(ユダヤ人虐殺)を公共の場において支持したりすることにより公共の平和を乱すことを禁じられている(130条3項)。第4項はナチスの暴力、暴政を支持し、礼賛、正当化することにより被害者の尊厳における公共の平和を乱すことを禁止している。第4項は2005年の改正により新設された。  
背景にはドイツ再統一後のネオナチ勢力の台頭やホロコースト記念碑建設反対運動などの動きがあった。

130a条: 犯罪の手引き
犯罪の手引きでは、刑法典126条に規定されている以下の犯罪について、公共の平和を乱す危険性のある違法行為全般が対象となる。

  • 殺人
  • 撲殺
  • 重傷
  • 重度の公安妨害
  • 強盗と強盗的恐喝
  • 放火
同罪は罰金刑、もしくは3年までの懲役刑に処せられる可能性がある。

131条: 暴力描写
公共に対して暴力描写へのアクセスを可能にすること、暴力描写の流布をすることは刑罰の対象となる。 暴力描写とは「残酷で非人間的な、人間もしくは人間に類する生物に対する暴力をある様式で描写し、こうした暴力行為を賛美し、被害を矮小化して表現すること、あるいはその過程の残酷さ、非人間的さで人間の尊厳を傷つけるような描写をすること」と法的に定義されている(131条1項)。流布やアクセスの形式は、動画、インターネット、特にSNS、テレビ、芸術作品などである。同罪は罰金刑、もしくは1年までの懲役刑に処せられる可能性がある。

184条: ポルノ文書
ポルノ全般にわたり以下の様な罰則が適用される。
1.ポルノ文書 7 (pornographische Schriften)を18歳以下の青少年に提供する、譲渡する、アクセス可能とすること。
2.ポルノ文書を18歳以下の青少年が立ち入り可能な、あるいは覗き込むことができる場所において、アクセスを可能とすること。
3.商店以外での取引において、あるいはキオスクやあるいは子供が立ち入りを禁じられている商店で、宅配サービス、レンタル書籍、読書サークルなどにおいて、ポルノ文書を他人に提供、譲渡する者。
3a. 18歳以下の青少年が立ち入りを制限されている店舗、あるいは彼らが覗き込むことができない場所以外で、商業的なレンタルやこれに準ずる商業行為を行い、ポルノ文書を他人に提供、譲渡すること。
4.ポルノ文書の宅送サービスを企てること。
5. 18歳以下の青少年が立ち入り可能な、あるいは覗き込むことができる場所において、ポルノ文書を無償で流布することによって営業行為を行うこと。
6.相手からの要請もなくこれらを押し付けること。
7. ポルノ文書を公共の映画上映で上映し、性描写の上映のために対価を求めること。
8. 1から7の意味におけるポルノ文書やその一部を利用する、あるいは第三者に対して利用を可能とするため、ポルノ文書の製造、引用、配給、保管すること。
9. ポルノ文書やその一部を外国でその地の罰則に違反して流布し、公共にアクセス可能する、もしくはそのような利用を可能とするためにポルノの公開を企てること。
同罪は1年から3年の懲役刑、あるいは罰金刑に処せられる可能性がある。

184a条: 暴力ポルノ・動物ポルノ
暴力、動物と人間の性行為を対象とするポルノ文書を
1. 流布する、あるいは公共にアクセス可能とすること、
2.1項の意味あるいは184d条1項1条の意味でポルノ文書やその一部を自ら利用する、あるいは第三者が利用できるように、これらを製造、引用、配給、保管し、提供、獲得、あるいはこれらの文書の輸出入を企てること。以上の犯罪について1年から3年の懲役刑、あるいは罰金刑に処せられる可能性がある。

184b条  児童ポルノ文書の流布、取得、所有
1項
以下の犯罪について、3ヶ月から5年の懲役刑あるいは罰金刑に処せられる。
1.児童ポルノ文書を流布する、あるいは公共にアクセス可能とすること。児童ポルノとは以下のような内容を含むものとする。
a)14歳未満の者(子供)の性行為、子供との性行為、子供の前での性行為。
b) 全裸あるいは部分的に衣服を着た子供が不自然に性的に強調された姿勢で写っているもの。
c)子供の衣服に覆われていない性器、あるいは衣服に覆われていない臀部を性的に描写しているもの。
2.第三者に対して、実際のあるいは実際に近い出来事を描写した児童ポルノ文書の所有をさせること
3. 実際に起きた出来事を描写した児童ポルノ文書を製造すること。
4.文書あるいはそれらの一部を184d条1項の番号12号の意味において利用し、第三者にこのような使用を可能とするために、その行為が3号の罪状によって問われていない限りにおいて、児童ポルノ文書を製造、引用、配給、保管し、提供、獲得、あるいはこれらの文書の輸出入を企てること。
2項
1項についてその行為が営利目的、あるいは連続性のある組織的犯行として行われた場合で、さらにその文書が1項12、4号のケースで、実際のまたは実際に近い出来事を描写している場合、6ヶ月から10年までの懲役刑に処せられる。
3項
実際のまたは実際に近い出来事を描写している児童ポルノ文書を所有しようとすることは、3年までの懲役刑あるいは罰金刑に処せられる。
4項
未遂も処罰の対象となる。ただしこれは1項2、4号および3項には適用されない。
5項
1項2号, 3項は法律的な以下の要件を満たす行為については適用されない。
1. 国の任務である場合、
2. 権限のある、国の機関との合意による任務である場合、
3. あるいは業務、職業上の義務による場合。
6項
1項2号、あるいは3号、あるいは3項に関わる対象物については74a条が適用される。

184b条  児童ポルノ文書の流布、取得、所有
1項
以下の犯罪について、3年以下の懲役刑あるいは罰金刑に処せられる。
1.青少年ポルノ文書を流布する、あるいは公共にアクセス可能とすること。青少年ポルノとは以下のような内容を含むものとする。
a)14歳以上のしかし18歳未満の者(青少年)の性行為、青少年との性行為、青少年の前での性行為。
b) 全裸あるいは部分的に衣服を着た14歳以上18歳未満の者が不自然に性的に強調された姿勢で写っているもの。
2. 第三者に対して、実際のあるいは実際に近い出来事を描写した青少年のポルノ文書の所有をさせること。
3. 実際に起きた出来事を描写した青少年ポルノ文書を製造すること。
4.文書あるいはそれらの一部を184d条1項の番号12号の意味において利用し、第三者にこのような使用を可能とするために、その行為が3号の罪状によって問われていない限りにおいて、青少年ポルノ文書を製造、引用、配給、保管し、提供、獲得、あるいはこれらの文書の輸出入を企てること。
2項
1項についてその行為が営利目的、あるいは連続性のある組織的犯行として行われた場合で、さらにその文書が1項12、4号のケースで、実際のまたは実際に近い出来事を描写している場合、3ヶ月から5年までの懲役刑に処せられる。
3項
実際のまたは実際に近い出来事を描写している青少年ポルノ文書を所有しようとすることは、2年までの懲役刑あるいは罰金刑に処せられる。
4項6項(略)

4. 青少年のインターネット(スマートフォン含む)利用数・利用率

 ここでのデータは、信頼性の高い二つの統計資料から抜粋した。一つは青少年、情報、マルチメディア。ドイツ12歳から19歳までのメディアとの付き合い方に関する基礎研究 (Jugend, Information, (Multi-) Media. Basisstudie zum Medienumgang 12- bis 19-Jahriger in Deutschland)である8 (以下、JIM調査)。「ドイツ南西部メディア教育学研究協会(Medienpadagogische Forschungsverbund Sudwest: mpfs)」が、毎年発行している。アンケートに基づく統計調査の他、青少年のデジタルメディアをめぐる今日的な問題についての報告がなされている。なお、同調査の対象者数は、1200人である(n数=1200)。

 もう一つは、ドイツICT業界最大の事業者団体であり、約2600社が加盟する情報経済・テレコミュニケーション・新メディア連邦協会(Bundesverband Informationswirtschaft, Telekommunikation und neue Medien e.V.:Bitkom)が、2017年5月に公開した調査報告書「デジタル世界における児童と青少年(Kinder und Jugend in der digitalen Welt)」9 である(以下Bitkom調査)。同報告書は、2014年に続き2回目の調査となっており、6歳から18歳までの対象者926人(n数=926)におけるデジタル媒体の保有率、インターネットアクセスの初体験年齢、スマートフォンやインターネットの利用目的、また親の監督状況などについて報告している。

(1)JIM調査 (2017年)

まずJIM調査から見ていく。以下のグラフは、家庭でのデジタル端末機器の所持状況を示している。

【家庭でのデジタル端末機器保有率(2017年)】図G1-1

母数: 質問者(n数=1200)
出典: JIM 2017 パーセント表記

 ほぼ100%の家庭が、スマートフォン、コンピューターを所持し、インターネットアクセスに接続している。ラジオ(87%)、DVDプレーヤー、ハードディスク(85%)も多くの家庭が所持している。Playstation、Wiiなどに代表される家庭用ゲーム機(Feste Spielkonsole)などの保有率も58%と半数を超えている。携帯用ゲーム機(Tragbare Spielkonsole)の保有率は、54%となっている。前年の調査(2016年JIM調査)との比較では、SmartTV機器は6%増となり、タブレットPCの保有率も4%増となっている。逆に、MP3プレーヤー/iPodの保有率は10%減となっている。これは、同じ機能がスマートフォンに吸収されたためと考えられる。

【青少年のデジタル端末機器保有率(2014-2017年)】図G1-2

母数: 質問者(n数=1200)
出典: JIM2014- JIM2017 パーセント表記

 デジタル端末機器の保有率を年齢別(12-13歳, 14-15歳, 16-17歳, 18-19歳)に分けて表示したものが以下の表である。

【青少年のデジタル端末機器保有率(2017年)】図G1-3

母数: 質問者(n数=1200)
出典: JIM2017 パーセント表記

 スマートフォンの保有率は調査対象で最も低い年齢層の12から13歳ですでに92%に達し、 青少年期に入る14歳以降では98%から99%の対象者がスマートフォンを所有している。ノートブック型コンピューターは年齢が高くなるのに比例して保有率が高くなり、12から13歳のカテゴリーでは33%であるのに対して、18-19歳ではその保有率は倍の66%にまで上がっている。家庭用ゲーム機とデスクトップコンピューターも年齢とともに保有率が高くなる傾向を示す。ただし、タブレットにはこのような傾向は見られない。逆に、ラジオ(Radiogerat)は年次とともにその保有率が下がる傾向にある。

(2)Bitkom調査 (2017年)

 Bitkom調査では、6歳から18歳までの児童と青少年が対象となっている。「どの様なデジタル端末機器を利用するか」という問いに対して、2014年と2017年の調査結果を比較している。

【スマートフォン・タブレットの使用率(2014年、2017年)】図G1-4

母数: 6-18歳のインターネット利用者(n数=815)。複数回答可能。
出典: Bitkom Reserach

 2014年に比べ、2017年ではスマートフォンとタブレット共にその使用率が上がっている。この傾向は全ての年齢層で言えることであり、児童・青少年の間で両機器がより定着していることを示している。

 次のグラフでは、年齢ごとの各保有率が比較されている。グラフからわずか10歳で半数以上が自分のスマートフォンを持っていることがわかる。

【年齢別青少年のデジタル端末機器保有率(2017年)】図G1-5

母数: 6-18歳のインターネット利用者(n数=815)。複数回答可能。
出典: Bitkom Reserach

 次のグラフでは、インターネットに接続する際にどのツールを使用することが最も多いかを回答させている。この結果から、現在の児童、青少年はスマートフォンでインターネット接続することが最も多いことがわかる(77%)。2017年と2014年の調査結果を比較すると、スマートフォンでのインターネット接続は65%から77%へと大きくポイントを上しているのに対して、ノートブック型コンピューターでのインターネット利用は逆に65%から49%へ、デスクトップコンピューターでは46%から35%へと後退している。

【インターネットを利用する際に使うデジタル端末機器(2014年、2017年)】図G1-6

母数: 6-18歳のインターネット利用者(n数=815)。複数回答可能。
出典: Bitkom Reserach

5.青少年のインターネット利用に伴う青少年の生活等への影響に関する専門家の捉え方

 現在、インターネット、スマートフォンの利用は青少年の生活の一部になっている。それが彼らの生活に与える影響については、心と体に与えうる影響や若者自身がデジタル生活をどのように感じているのかといった様々な観点から研究が行われている。

 まず、身体に与える影響として、運動不足による肥満が挙げられる10。また長時間にわたりスマートフォン画面を見続けることにより、「首や背骨の関節部分などに負担がかかる」、「事故に遭う危険性も高くなっている」との報告がある。

 児童の心に与える影響としては、2015年にマインツ医療大学の精神身体医学学部が12歳から18歳までの児童、青少年約2,400名を対象として行ったアンケート調査を行った11。調査を主導したManfred Beutel教授は、「オンラインでゲームやセックスポータルを利用する青少年は、友人に対するつながりが薄い。コミュニケーションが少なく、友人をあまり信頼せず、他人からより強い疎外感を受けていると感じている。これらが社会的な孤立を生んでいる」と調査結果を総評した。また、SNSについては、同年代同士の関係やつながりを促進する可能性があるとしつつも、依存的に使用することは、現実界でのつながりにむしろネガティブな影響を与えるとした。

 アンケートに答えた被験者の3.4%がインターネットを依存的に使用しており、1日6時間以上をオンライン上で過ごしている。彼らはコンピューターや携帯電話に多くの時間を費やすことで、個人、家族、学校での生活に支障をきたしている。依存ほどではないがその境界にいるとされる被験者は13.8%に上った。

 調査によれば、男女ともに同程度の依存状況が確認さてれるが、その内容は異なるものであったという。女子は、インターネットを社会的な情報交換、リサーチ、オンラインショッピングに費やすのに対し、男子はオンラインゲームが主たるものであった。Beutel教授は、ゲーム依存について「早急な子供と親の治療が必要である」としている。「社会的に不安定で気後れがしている青少年ほど、オンラインでの活動に没頭する傾向がある」とし、「親と教師が子供たちに対してメディア利用の発達を見守り、社会的な関係を尊重することも同時に指導する役割がある」としている。

 それでは、若者の側では現在のメディア生活をどのように感じているのだろうか。これについて、民間調査団体のSinus研究所が行った調査「2016年若者の動向は?(Wie ticken Jugendliche 2016?)」がある。12同研究所は2008年、2012年にも青少年の社会文化生活に関する実態調査を実施してきた。統計調査ではなく若者の実際の声をヒアリングすることで、この世代に特徴的な考え方を浮き彫りにしていく。その調査内容は、デジタル生活以外にも、モビリティー、環境保護・気候温暖化・消費社会について、恋愛、信仰と宗教、歴史感、国家、移民・難民など多岐に渡る。調査の結果から分かってきたのは、多くの若者はインターネットをすでに生活の一部として捉えており、社会生活を送るための前提条件とすら考えているということである。例えば、彼らは日常生活でスマートフォンがないと、外に出た時に不安を覚えるという。大人たちは前出の調査のように「携帯ばかり見ていないでもっと外で友達と遊びなさい、社会的ではない」と言うが、青少年にしてみれば携帯によるコミュニケーションがないことの方が、よほど非社会的である。同時にオフラインでいる間に何かに乗り遅れるのではないかとの不安や焦燥感を常に感じているという。

 調査では、デジタル端末機器、特にスマートフォンの日常生活への浸透はすでに完了し、その次の段階に入っていると理解している。若者にありがちな冒険的なネット利用は減少し、インターネットの便利さを理解し、そのリスクについても知っている。さらに彼らはデジタルメディアを利用するだけではなく、その世界をより深く理解したいと考えている。そして、学校に対してインターネットの危険のみを強調する指導ではなく、安全になおかつ自立してインターネットを使うための助言を期待している。具体的には、個人データの保護について学校で指導してほしいという声が聞かれた。ただ、生徒たちは教師が現状でその能力を持っているとは思っていない。また、インターネットについての学習は実践を通じて学んでいるケースがほとんどであると生徒達はいう。スマートフォンの利用が日常生活に浸透するにつれて、それを利用するエチケットも定着してきている。例えば、友達にいきなり電話をするのはエチケット違反であり、最初にメッセージなどで前置きをしてから電話するというのは、若者の間ではもはや常識である。友達と会っている時や食事の席で携帯ばかり見ているのも今ではクールではないとされる。

 同調査では教育現場のデジタル化について、次章に示すように、親はインターネットの応用について懐疑的であることが多いとの結果も出ている。これらの調査から明らかになることは、当事者である青少年と彼らを取り巻く大人たちの間でインターネットの利用についてまだ見解の相違があることである。親をはじめとする大人達は、ネットとの接触を管理することで安全性を確保しようとする傾向がある。一方子供達にとっては、インターネットはすでに与えられたものであり、いかに利用するかを学ぶことで、安全を確保しようとしている。

6.インターネット上のウェブサイトを利用した犯罪(児童ポルノ等の実状とその数)

(1)児童ポルノ等の実状

 インターネットを利用した児童売春については、未成年者が自分の性的行為の場面を相手に送り、それが後日ポータルサイトで拡散されるなどの被害がある。送信者は知人のこともあれば、チャットなどで知り合った面識がない個人の場合もある。また、取得した性的な画像、映像を拡散すると脅したり、個人の住所を特定していることをほのめかして、相手の恐怖心を掻き立てる事件もある13。さらに、親が児童に対して自己あるいは第三者との性行為を強要し、その動画を撮って児童ポルノサイトに投稿させるなどのケースもある。あるいは、チャット等の相手が未成年者と知らず、性的な動画や画像を送付させた結果、その所持から自らも知らないうちに加害者となるケースもある14

 2017年6月、約111,000人の閲覧者をもつ児童ポルノプラットフォームのElysiumが摘発され、連邦刑事庁、検察庁により閲覧が禁止された15。この時、起訴された運営者は40歳から62歳までの4人の男性であった。このプラットフォームは、性濫用の画像、動画がユーザーの趣向別に分類している他、男児、女児、年齢層に分けたリアルタイムのチャットルームが複数言語で用意し、非常に専門的かつ構造的にネットを運営していた。

 さらに検察の調べによると、Elysiumはこれまでの摘発例としてはもっとも大規模な児童ポルノの写真と映像を交換する取引市場「The Giftbox Exchange」にも参加していたことがわかった。オーストラリア警察とアメリカ当局が2016年に同取引市場を摘発。「The Giftbox Exchange」の運営者らは逮捕されていたが、ドイツの管理者らがElysiumとして独立していたのだ。「The Giftbox Exchange」がElysiumと異なる点は、「認証義務」がない点である。通常、児童ポルノのユーザーとなるためには、ユーザー自らが児童ポルノの映像・画像をアップロードし、仲間として認識される必要がある。しかし、Elysiumではその必要がなく、アカウントの設定のみでコンテンツにアクセスできた。このためElysiumはわずか半年の間に111,000ユーザーを獲得するに至った。

 連邦刑事庁自らも認めているように、他国に比べドイツの摘発力は弱い16。例えば、米国ではGoogleがユーザーのデータをスキャンすることが義務付けられている。全米行方不明・被搾取児童センター(National Centre for Missing and Exloreted Children: NCMEC)17にある児童ポルノデータバンクにて自動的に照会され、一枚の画像でもヒットすれば警察の目に留まる仕組みになっている。しかし、ドイツではこのようなモニタリングプロセスは「通信の秘密(Postgeheimnis)」(基本法10 条1 項)により禁じられているため、NCMECなどからの情報提供を受け、米国Googleからの報告により初めて発覚するケースがほとんどである。

 検察庁のタスクフォースとして設置された「中央インターネット犯罪対策室(Zentralstelle zur Bekampfung von Internetkriminalitat: ZIT)18では、コンピューターで合成された児童ポルノ写真を投稿し、ユーザーとして登録、その写真を悪用した個人の発信源を探るおとり捜査を実施し、違法サイトの検挙に役立てようとしている(2018年8月現在)。各国でもこうした対策は取られているが、合成写真は比較的容易に見破られるため、どの程度の効果が見込めるのかは未知数である。

(2)児童ポルノ等に関する統計

  1. 連邦刑事庁による児童ポルノに関する統計(2017年)19

     連邦刑事庁がドイツ警察に対して行ったアンケート調査によると、ドイツ警察は2017年にインターネット上で6,512件の児童ポルノ犯罪記録があったと報告している。しかしこの件数は全数ではない。さらに8,400件の米国非営利団体からの情報提供による件数がこれに加わる。このほとんどは犯罪統計に記録されず、従って解決が図れないケースである。IPアドレスはドイツ国内のものではあるが、ある州の具体的な人物を同定するための情報が欠如していることが多く、特定の州に帰することができないため警察の記録に残せない現状である。このような未登録の件も含めると、国内、国外の件数を合わせ、2017年にドイツ警察が把握している児童ポルノの件数は14,900件に上る。2017年の警察犯罪統計(PKS)に登録されたケースの解決率は90%だが、海外のケースを含めると、その率は40%まで衰退する。海外からの児童ポルノコンテンツに関する情報は、そのほとんどが米国のNPO団体、NCMECから寄せられるものである。同センターはインターネットプロバイダー、あるいはFacebook、Microsoft、Yahoo、Googleなどのサービスプロバイダーと連携しており、同センターが保有する児童ポルノデータバンクとの自動比較によって継続的に性濫用の写真、動画をスキャンしている。検出されたデータはインターネットサイトから速やかに削除され、その情報がNCMECに送られる。同センターはIPアドレスを元にして情報を収集し、各国の警察の中央官庁(ドイツでは連邦刑事庁)とその情報を共有している。

     上記のように、警察犯罪統計には情報として寄せられたもののうち条件が揃った一部のものしか登録されていない。検証の結果、犯罪ではないとみなされる場合もあれば、プロバイダーから送られてくるIPアドレスのデータが保持されていないために、ドイツ連邦州のどの州なのかが特定されず、犯罪として認知されないため統計には残らないという現状がある。ドイツでは、 統計上の犯罪数が実質犯罪数を反映したものとは言えない状況である。

  2. Jugendschutz.netによる統計2021

     州メディア監督機関が運営するポータルサイトJugendschutz.net(青少年保護ネット)は、毎年「年次報告書」を発行している。以下、2017年と2016年の報告書に基づきJugendschutz.netにて把握された青少年保護法違反の状況について紹介する。

     Jugendschutz.net では、サイト上に寄せられた苦情情報と独自のモニタリングシステムにより、2017年に102,423件のコンテンツを審査した(2016年: 121908件)。そのうち青少年保護メディア州協定違反としてJugendschutz.netがリスト登録を行った件数は7,513件(2016: 6,011件)であった。そのうち901件については、運営者がドイツ国内であると同定された。Jugendschutz.netへの削除対応要請のケースは、2017年1072件であった。そのうち748件が速やかにコンテンツの削除を行った。その成功率はドイツ国内の運営者に関しては83%と、昨年の74%から実績をあげている。海外については、6,612件の違反ケースを認め(2015年5,109件)、削除対応要請は9,044件であった。そして、そのうちの80%が削除された。この値は、2016年の64%、2015年の41%から大きく改善されている。

     特に悪質なケースとして、青少年メディア保護委員会(Kommission fur Jugendmedienschutz)への報告と監督、過料手続きを受けたケースが41件(国内のサイト運営者が対象)あり、ここでも2015年の118件、2016年の91件と比較すると確実にその件数が減っている。海外コンテンツについてはこうした手続きを取ることができないため、青少年メディア保護委員会に申請して連邦青少年有害メディア審査会のリストへの登録を要請する。このリスト登録により、当該の提供物は検索サイトに表示されず、青少年向けコンテンツから排除される。Jugendschutz.netが2017年、この青少年メディア保護委員会への申請、すなわち連邦青少年有害メディア審査会のリスト登録を要請したケースは188件であった。こちらも2016年の294件から件数が大きく低下している。

     Jungendschutz.netにて登録された違反ケース7,513件のカテゴリーを見てみると、児童ポルノが41%で1位を占め、過去2年に比べ約4倍近くに増えている(2016: 13%, 2015: 15%)、政治的過激主義に関するものが20%(2016: 38%, 2015: 15%)、14%がその他ポルノに関わるもので(2016: 21%、2015: 26%)であった。2017年、青少年有害コンテンツ16%(2016: 16%、2015年: 20%)となっている。そして、それに続くカテゴリーとして、暴力6%、サイバーいじめ4%、その他15%と続いている。

     特に児童ポルノについて、Jugendschutz.netは2017年に2.982件の登録を行った。これは2016年の約4倍の件数であった。そのうちの86%(2,550件)が外国のサーバーによるものであった。その国別の内訳は、米国33%、オランダ24%、ロシア22%であった。そしてその削除成功率は、国内サーバーでは100%、外国サーバーでは92%であった。ドイツ国内では削除までに平均4.8日、海外では7.8日かかっている。

     違反コンテンツは、その約半数がプラットフォーム上で検出されている。特に大手のFacebook(14%)、YouTube(10%) 、Twitter(6%)、Instagram(5%)、Tumblr(4%)が、大きな割合をしめていた。

7.青少年のインターネット利用の際のフィルタリング・他の防御システムの種類と実態

(1)フィルタリングについて(Jugendschutzprogramm)22

 フィルタリングは、2003年にテレメディアの「成長を妨げる提供物(entwicklungsbeeintrachtigenden Angeboten)」に該当するコンテンツの閲覧に対して導入された。これにより、家庭内で児童の年齢に合ったウェブサイトを選択し表示することが可能となった(青少年メディア保護州際協定11条)。2016年の青少年メディア保護州際協定の改正以降、青少年メディア保護委員会は自主規制機関とともにフィルタリングソフトの適正に関する要求仕様を定め、自主規制機関がフィルタリングソフトの適性判定を行っている。

 フィルタリングに求められる要求事項とは以下のようなものである。なお、これらの要求事項はまだ 暫定的なものであり、現状に合わせて変更も可能である。

  • レイティング(Alterstufen)に応じて区別されたアクセスを可能とすること。
  • インターネット上の提供物に付記された年齢制限表示(Alterskennzeichnungen)を識別し読み取れること。
  • 「成長を妨げる提供物」を認識できること。
  • 認識の技術に標準化されたものを採用していること。(例えば拡張子age.xml / age-de.xml)
  • ユーザーが使いやすく、自主的に使えること。

 以下、自主規制機関が認めたフィルタリングの一例としてJusProg23というフィルタリングソフトを見ていく。

 JusProgは、JusProg協会が開発・運営する13歳以上の青少年を対象とした無料フィルタリングソフトである。2003年、JusProg協会は青少年向けフィルタリングソフトを開発する目的で、 インターネットプロバイダー数社によって設立された。

 2012年、JusProgは青少年メディア保護委員会が認めたフィルタリングソフトとしての承認を受けた。2017年3月には、青少年メディア保護委員会から承認の権限を引き継いだ自己管理機関の「マルチメディアサービスプロバイダー協会(FSM)」からも承認を受けた。

 ソフトの仕組みとして、JusProgはあるウェブサイトが読み込まれると、そのアドレスをソフトウェア内のフィルターリストと比較する。もし当該のウェブサイトがソフトに設定されたユーザー年齢よりも高い年齢層向けである場合、そのウェブサイトは表示されない仕組みとなっている。フィルターリストは、インターネット上で青少年の閲覧に不適切とされるあらゆるテーマ、コンテンツのジャンルを含んでいる。読み込まれたウェブサイトのアドレスは以下の優先順位にしたがって比較をうけ、表示の是非が決められる。

  1. 連邦青少年有害メディア審査会のリスト登録を受けているサイト(絶対に表示されない)
  2. 親のリスト(親が個別に表示するかどうかを設定)
  3. 年齢制限ラベル(age.xml/age-de.xml)のあるもの
  4. その他JusProgのフィルタリストに登録されているもの

 年齢制限ラベルの「age-xml/age-de.xml」とは2010年に標準化されたドイツのウェブサイトのレイティング拡張子である(本稿3章「ラベリング」の項を参照)。

(2)フィルタリング利用実態

 青少年(13歳以上)の年齢層を対象としたフィルタリング利用の実態を示すデータは見当たらない。しかしながら、児童(6歳から12歳)の親を対象としたドイツ南西部メディア教育研究協会(MPFS)の「Kim Studie 201624」の調査が存在する。同調査によると、何らかのフィルター機能(ここではソフトだけではなくアプリや自己設定、検索トップページの限定なども含む)を利用していると回答した親は27%であった(調査総数831人: n=831)。全体の約20%の親がデスクトップコンピューター・ノートブック型コンピューターでフィルター機能を利用していると答え、10%がスマートフォン、7%がタブレットで対策を行っていると答えた。さらにゲーム機についても2%がフィルター機能を利用していると回答した。

 831名の親のうち20%がフィルタリング用ソフトをインストールしていると回答し、スマートフォンに6%、タブレットに6%の親がそれぞれに相応するアプリをインストールしていると答えた。利用者が自らブロックするコンテンツを設定していく方式については、上記の専用ソフトの使用よりも少なく、14%がデスクトップコンピューター・ノートブック型コンピューター、7%がスマートフォンで、5%がタブレットで使用していると答えた。

 次に、Windowsなどのシステムにオプションで組み込まれたソフトウェアコンポネントを利用する方法があるが、これらはあまり積極的に利用されていない。13%の親がこれらを利用していると答えた。

 さらに簡単な方法として、最初のトップページを児童向けのものに限定し、ここから児童に検索させる方法がある。しかし、93%の親はこの方法をとっていない。この方法は、特に若年(6歳から8歳ぐらい)の児童をもつ親に選択されている。こうしたトップページとして、児童向けポータルサイト「FragFINN」25「Klick-Safe」26「KIKA」27などが選ばれている。FragFINNは、同名の協会が運営する主に6歳から12歳を対象とした検索エンジンである。この中には、5,000の児童向け優良サイトが登録されている。児童向け優良サイトの基準として、FragFINNは同検索サイトに登録されるための評価項目一覧を作成し公開している。ユーザーにも児童向け優良サイトの推薦を募り、彼らの「ホワイトリスト」の拡張を目指している。Klick-Safeは欧州委員会の委託により、児童のインターネットリテラシーを推進するためのイニシアチブとして運営されているポータルサイトである。2014年に開始されたEUプログラム「Connectiong Europe Facility (CEF)」の一環として運営されている。KIKAはテレビ局ARD、ZDFが運営する児童向けテレビチャンネルのオンライン版である。

8.青少年のインターネット利用に関する教育機関としての取組と主たる実態

(1)インターネットリテラシーについての教育

 現在、ドイツのインターネットリテラシーについての教育はほぼ個別の学校に任されている状態であり、連邦や州全体で体系的に導入されていない。教育現場におけるインターネット教育に関する具体的な立案はこれからの課題として認識されている。2016年12月、各州の文化大臣が集まる会議(Kulturministerkonferenz: KMK)が開催され、その中で2021年までの学校内でのインターネット教育についての方針について合意した。以下は、同会議での合意内容である。

 2017年から2021年までの予定で実施される「デジタル世界におけるリテラシー(Bildung in der digitalen Welt)」28では、全州で実践すべきインターネット教育の骨子について合意した。その主旨は、インターネットリテラシーのための教科を設けるのではなく、現在の教科科目全てにインターネット使用を盛り込み、その中からインターネットの正しい扱い方を学ぶという実践的な方策をとることである。そしてその目標は、児童達が主導権を持って危険なくインターネットの中で行動できるようになることである。ドイツにおけるデジタルリテラシーとは、情報の検索、編集、保存という単純な能力、インターネットによりコミュニケーションを取る、協力する、さらには自らもコンテンツを作成し発信する能力も含まれる。どの能力においても、個人情報を保護する、デジタルツールやプログラムを評価して使用する、デジタルメディアを分析する、反映させることが必要となる。

 したがって、教師は教育現場でのデジタルメディア利用の第一世代となる。デジタルメディアを有効に活用しながら、本来の授業内容も専門的、教育的に伝えることができなければならない。この教育方針については、今後の文化大臣会議で中長期的に教員養成、教員研修の標準を構築していくことになる。

 この「デジタル世界におけるリテラシー」の実施に際しては、学校のデジタルインフラが前提となる。州の文化大臣らは早急に学校のデジタル環境の実態を調査することになった。学校のデジタルインフラ敷設について、連邦はすでに50億ユーロ規模のデジタルパケットの予算を採択している。29しかしながら、実際のコストはそれをはるかに上回り、州も負担を強いられると想定されている。ハンブルクの文化大臣Ties Rabeは、自州内ですでにインターネット教育の取組が進んでいる学校に絞って工事したとしても年間の投資額は30億ユーロ規模に上ると試算している。

 ドイツの親は学校教育にインターネットを導入することについて懐疑的な態度をとることが多い。この点について、学校外で児童がいつからどのような形でインターネットに接触するのかを決めるのは親であるが、学校内は州の権限下にあるので、学校教育計画に対して親が口出しする権利を持たない、ということを合意書文に記載した。

(2)スマートフォンの学校への持ち込みについての議論3031

 ドイツの隣国であるフランスでは、2018年秋から法律で学校での携帯利用が法律で禁止された。小学校の準備学校、小学校、中学校でも禁止され、唯一この法律の対象とならないのはリセと呼ばれる後期中等教育機関に通う16歳以上の青少年達である。

 ドイツでは各州が教育制度を管轄するため、携帯電話の持ち込みについても州に決定権がある。最も厳しいのはバイエルン州であり、2006年から州学校法(das baylische Schulgesetz)で携帯の禁止が決められている。それによれば「校舎、校内での携帯電話、授業での使用目的ではないデジタル端末機器の持ち込みを禁止する」とある。

 しかし、法律で明文化されていなくても、実際には校則で何らかの携帯電話禁止規則があるのが普通である。ミュンヘン工科大学が2015年に実施した調査32では、アンケートに答えた生徒のうちの84%が学校内では携帯電話利用の禁止があると答えている。ノルトライン・ヴェストファーレン州では、教師がいつ携帯電話を使用しても良いかに関する規定まである。サイバーいじめなどが発覚した場合には、長期的に携帯電話の使用を禁じる場合もあるという。

 携帯電話の禁止を支持するものは、過度な使用が授業の邪魔になるからだと主張する。文化大臣会議でもこの点は支持されている。同会議では、「授業妨害ということで教員が携帯を没収することは、教育的指導の一環であり許可される」としている。しかし、フランスのような全面的禁止については繰り返し反対する姿勢をとっている。同様に、学校連盟であるドイツ教育協会(VBE)も学校での携帯持ち込み禁止には反対している。政治サイドでは、近い将来、学校の授業もデジタル化していくことが明らかで、法律的な禁止が無意味になると考えている。全州合意のもと、教育現場でのデジタル化が進められている中で、携帯禁止の法律は矛盾した州法と映る。また、少なくとも生徒が授業中の携帯使用禁止など、すでに何らかの禁止措置を受けているので、さらに法律で禁止することは余剰であると考えている。

 これとは反対に、ドイツ教員連盟(DL)は14歳までの生徒について、学校内への携帯持ち込みを禁止すべきであるとの見解を明らかにしている33。その主張は、携帯電話はサイバーいじめの主たる道具だからであるという。現代のいじめはほぼ100%サイバーいじめであると言っても良い。学校内でも休みなく自己否定にさらされれば最悪のケースとして生徒が自殺を選ぶ危険性もあるという。

9.青少年のインターネット利用に関するワーキンググループ等民間の取組と主たる実態

(1)マルチメディアサービスプロバイダー自主規制協会

 マルチメディアサービスプロバイダー自主規制協会(Freiwillige Selbstkontrolle Multimedia-Dienstanbieter e.V.: FSM)34は、「青少年メディア保護委員会 (Kommission der Jugendmediaschutz)からの認可を受けた、自主規制業界団体である。同協会に加盟することで、青少年保護法に基づく運営を義務付けられる代わりに、当局からの追及・秩序違反等の仲裁などを受けることができる。

 行動規範は一般的な「ソーシャルコミュニティーズ行動規範」、さらに加盟社の業種別に「検索エンジン行動規範」、「携帯プロバイダー行動規範」、「チャット提供者行動規範」に区分されている。協会は所属する加盟社に対してこれらの規範を遵守させることにより、業界の自主性を保ち、加盟社は青少年メディア保護委員会(州当局)からの直接的な制裁から守られる関係にある。以下は、それぞれの規範の簡単な説明である。

  • ソーシャルコミュニティーズ行動規範
     一般的な行動規範であり、青少年利用者のコンタクトやコミュニケーションリスクにおける具体的な対処法を含む。特にコンテンツ内でプライバシー保護の設定が可能であること、利用者に対する啓発の実施などに関する規範である。
  • 検索エンジン行動規範
     特に検索エンジンを運営する企業についてこの行動規範が適用される。この行動規範は、連邦青少年有害メディア審査会により有害な内容を含むとして「リスト登録」されたURLを速やかに閲覧禁止とすることを規定する。
  • 携帯プロバイダー行動規範
     携帯プロバイダーはこの行動規範により、青少年保護に関する以下のような措置を導入することを義務付けられる。すなわち、青少年ホットラインの設置、青少年インターネット利用啓発のためのウェブサイトの設置である。
  • チャット提供者行動規範
     この行動規範は、チャット利用による性被害、ネットいじめなどのリスクから青少年を保護する措置を導入することを含む。

(2)苦情相談室

 マルチメディアサービスプロバイダー自主規制協会はインターネット経済協会(Verband der Internetwirtschaft e.V.: eco)と共同で、インターネットサイトについての苦情相談室(internet-beschwerdestelle.de)を設けている。このインターネット経済協会は、青少年有害情報に照らして苦情を審査する団体である。審査結果として違反が認められた場合、協会は会員に対して以下のような制裁を科すことができる。

  • 指摘
  • 勧告
  • 懲戒
  • 除名

 ただし上記の処置が下される場合の判定基準などは設けられていない。

 一般からインターネット苦情相談室に寄せられた情報はまず法律家の審査を受ける。仮に情報が青少年メディア保護法または関連する刑法による規制に該当する場合、インターネット苦情相談室は次の措置をとる。コンテンツの提供者に対して直接内容の変更を求める、つまりホストプロバイダーにコンテンツの削除を依頼する。悪質なケースの場合、苦情を青少年メディア保護委員会に持ち込む。ドイツ以外のサーバーにある違法コンテンツの場合、ecoとFSMは情報をINHOPEホットライン35に送付する。また同時に、連邦青少年有害メディア審査会にも伝える。海外由来の有害メディアをリストに登録した際、そのテレメディアで認証された自主規制機関にその情報を渡し、フィルタリングソフトウェア(例えば、JusProg.eV.)の非表示リストに反映させる。

 インターネット苦情相談室ではecoとFSMとで苦情内容の担当を以下のように区別している。

FSM: ウェブサイト、携帯電話アプリ、チャット
eco: ニュースグループ、スパムとメール、フォーラム、Peer-to-Peer(P2P)

 苦情相談室はEUの「Safer Internet Center」のドイツ内センターの一つとしてEU委員会から支援を受けている。また欧州委員会からの助成による閲覧者年齢の自動認識のためのプロジェクトMIRACLEにも参画する36

(3)フィルタリングソフトウェアの認証

 マルチメディアサービスプロバイダー自主規制協会(FSM)は、2016年よりフィルタリングソフトウェアの認証業務を行っている。青少年メディア保護委員会が定めた要求事項に基づき審査を行い、認められた製品は以下のロゴを貼り販売することができる。

【マルチメディアサービスプロバイダー自主規制協会によるフィルタリングソフト認証ロゴ】図G1-7

出典:マルチメディアサービスプロバイダー自主規制協会

(4)映画ビジネス自主規制協会オンライン (FSK.online)37

 映画ビジネス自主規制協会(FSK)は、2011年にインターネットサイトを対象とした自主規制機関として認可を受ける。FSKはもともと映画、DVD、Blue-Raysなどの映像メディアのレイティング機関であった38。現在もDVDやBlue-Raysの鑑賞年齢規制(0歳、6歳、12歳、16歳、18歳のカテゴリーがあり)は映画ビジネス自主規制協会の審査によるものであり、ドイツで流通・販売される全ての商品を審査対象としている。

 インターネットの自主規制機関としてのFSK.Onlineは、会員登録したネットコンテンツの提供者を当局の制裁などから守る一方、内部是正を促すことで当局の介入を仲裁する役割を果たす。会員は 法律に適合したネットコンテンツの作成について継続的にコンサルティングを受ける。FSK.Online会員は、ネットにFSK.Online公認サイトであることを示すロゴ(以下)を使用することができ、青少年に適切な情報源であることを利用者に示すことができる。年会費は、3,000ユーロ。またインターネットサイトの立ち上げ時に、コンテンツ、表現方法などが青少年保護法の観点から適正であるかどうかを事前にチェックしてもらうこともできる。審査料は、300ユーロ。

【映画ビジネス自主規制協会による認証サイトロゴ】図G1-8

出典: 映画ビジネス自主規制機関FSK(Filmwirtschaft Selbstkontrolle)https://www.fsk.de

(5)ソフトウェア事前審査機構オンライン(USK.online)

 2011年、USK.Onlineは青少年メディア保護委員会からインターネットサイトを対象とした自主規制機関として認可を受ける。現在、40社を会員としている。ソフトウェア事前審査機構(Freiwillige Selbstkontrolle Unterhaltungssoftware: USK)はもともとコンピューターゲームのレイティング機関であった。現在もコンピューターゲームの年齢制限(0歳、6歳、12歳、16歳、18歳のカテゴリーがあり)はソフトウェア事前審査機構の審査によるものであり、ドイツで流通販売される全てのコンピューターゲーム商品が審査対象となる。USK.Onlineはオンラインゲームを始め、SNS、映画の予告編ビデオ(トレーラー)、モバイルアプリなどの提供者らを会員とする。製作者が青少年保護の観点を全て熟知しこれを製品に完璧に反映することは難しい。USK.OnlineもFSK.Online同様、青少年保護法の観点からコンテンツ内容を鑑定し、不用意な当局からの介入から会員を守る役割を果たす。鑑定書は20ページから30ページほどのレポートとして会員に提出される。その中で、法から逸脱した表現の指摘のみならず、どのようにすれば、年齢制限をあげずに済むか、つまり技術的なブロック処置を行わずに済むかといったアドバイスを行う。

 2018年、青少年メディア保護委員会とソフトウェア事前審査機構(USK)は、Nintendo Switch39に搭載されたフィルタリング機能と年齢認証システムである「任天堂アカウントシステム」が青少年メディア保護州際協定への適性があると認めた。単体のシステムとしては初めての認可となった。

 任天堂のフィルタリングシステムは、個別のフィルター要素を相互に組み合わせたものだ。親はゲームへのアクセスを児童の年齢に応じて設定することができ、さらに児童のゲーム時間を管理することもできる。システムは設定された児童の年齢を参照し、適正年齢を超えるゲームをブロックする。このブロック機能はゲームの初期設定時に設定するか、のちにシステム設定から変更ができる。また、任天堂スイッチのオンラインショップへのアクセスでも、このフィルタリング設定が有効となる。オンラインショッピングの利用にはアカウントとPINコードが必要であり、利用者の年齢に合わせた商品のみが表示される。

(6)情報経済・テレコミュニケーション・新メディア連邦協会 (Bundesverband Informationswirtschaft, Telekommunikation und neue Medien e.V.: 通称Bitkom)

 Bitkomは、連邦最大のIT事業者団体として、青少年のインターネット利用に関する様々な取組を行っている。

(7)デジタル機会財団(Stiftung Digitale Chancen)40

 連邦家族省が取り組むインターネットリテラシー向上のための国家プロジェクト「メディアとともに健全な成長(Gutes Aufwachsen mit Medien)」の事務局が、デジタル機会財団内に設置されている。デジタル機会財団は、2002年にブレーメン大学とAOL Deutschlandによって発足した。さらに、Accenture、Hubert Burda財団、Dr. Herbert Kubicek教授、およびTelefonica Deutschland(ドイツの携帯電話プロバイダーの一社)も財団発起人である。そもそもあらゆる年齢層、社会層へのインターネット機会の普及を目指した政府政策プロジェクト「みんなのインターネット(Internet fur Alle)」(連邦経済技術省の政策)時に誕生した。連邦経済技術省および連邦家族省が、同財団を賛助している。

10.青少年のインターネット利用に関する家庭での話合い並びにルール設定等の傾向

 Bitcom調査(2017年)のインタビュー調査により、家庭でのインターネット利用のルール設定状況が明らかとなった。被験者となった815名の児童、青少年に対して複数回答可で、以下のような質問をしている。

【年齢別家庭でのインターネット利用に関するルール】図G1-9

母数6-18歳までのインターネット利用者(n数=815)複数回答可能。
出典: Bitkom Research

 まず、「親がインターネットの利用時間を制限しているか」という問いに対して、 「はい」と答えた生徒の数は年齢とともに減っている。青少年期と言われる14歳から15歳では23%が、そして16歳から18歳では10%未満が制限とされていると答えている。また、時間的な制限はほぼされていないことがわかる。この傾向を支持するのが「親はインターネットで何をしていても何も言わない」という設問であり、年齢とともに割合は上昇している。ただ、その割合も19%であることから、全く野放しの状態ではないこともわかる。

 8歳から9歳、10歳から11歳との間で大きく傾向が変化している設問として、「親がインターネットでやっていいこととダメなことを説明している」、「時々親からインターネットの禁止をされる」そして「親が、自分のプライベートのことをインターネットに載せ過ぎないようにという」が挙げられる。インターネットとの付き合い方について、親が家庭でも指導を始めるのがこの頃ということになるが、これは同じくBitKomの調査で、自身のスマートフォンの保有率が9歳から13歳の間で急激に増加する傾向と一致している。

 また、「親が、自分のプライベートのことをインターネットに載せ過ぎないようにという」という設問を肯定した被験者は年齢とともに増え続けるが、これはフェイスブックをはじめとするSNS利用を親が心配していることを反映している。

11.青少年のインターネット利用環境に関する実態における現状での問題点の把握

 現在、ドイツにおいては、青少年のスマートフォン保有率の高さから、ネット環境は青少年の生活の一部となっている。また、スマートフォン所有の若年化とともに、有害情報に晒される、あるいは性被害などが深刻化している。極右勢力によるプロパガンダや児童ポルノなどのインターネットを利用した犯罪が増加する傾向にある。

 こうした有害情報の流布については、外国籍のSNSが現在50%を占める。海外のコンテンツについては効果的な削除措置ができない反面、国内では措置がよく効いている また、インターネットリテラシーについて学校で学ぶ機会が与えられていない状況である。学校のデジタル化は、徐々に進む傾向にあるが、現状では個別の学校の取組に任されている。また、親たちはデジタル化にしばしば懐疑的な立場をとっている。

 そうした中、青少年のインターネット利用の新しい問題としてサイバーいじめが存在する。インターネットいじめは犯罪として規定されていないものの、特に青少年のインターネット利用で潜在化してきた問題である。青少年のスマートフォンの保有率の増加と様々なSNSツールの登場により、青少年同士の個人情報交換を通じて、インターネットいじめという新たな問題が生じ、社会問題になっている。

 2017年のJIM調査の中に「インターネットいじめに関する実態調査41」が記載されている。これによると、「対象者の周囲の者がインターネットでいじめられたのを経験した」という質問に対して37%が「YES」と答えている。特に年齢が上がるに連れてインターネット上のいじめ問題に遭遇することが多く、18歳から19歳では半数近くが周囲のネットいじめを経験している。ネットいじめに遭う可能性は教育環境にも関係している。本科学校(Hauptschule)、実科学校(Realschule)で45%であり、ギムナジウム(Gymnasium)の33%を大きく上回る42

【知り合いの中で携帯電話やインターネットでのいじめ対象になった者がいる】図G1-10

出典:2017年JIM調査資料「インターネットいじめに関する調査実態」

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