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第2部 ドイツ(2)

(注)
「ドイツ・オーストラリアにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査(HTML版)」は、テンプレートの仕様により、
ドイツ語の は A、B、U、Oと表記されている。

第二章 青少年のインターネット利用環境に関する制度、法令・罰則規定等による対策と事例

1. 各法整備に至る背景と法整備による対策の現況一般

(1)青少年メディア保護州際協定(Jugendmedienschutz-Staatsvertrag; Staatsvertrag uber den Schutz der Menschenwurde und den Jugendshutz in Rundfunk und Telemedien)改定の背景

 青少年メディア保護州際協定は、放送とテレメディアにおいて、児童と青少年の発育、教育を阻害、脅かす情報から児童と青少年を保護し、彼らの人間の尊厳と刑法典に定められた権利とを包括的に保護することを目的とする(1条2項)。

 携帯メディアに関する青少年保護が青少年保護法の規律対象である一方、放送、通信分野については本協定が規律する。前者が連邦法であるのに対して、後者は各州間の協定という形をとる。このような相補的管轄の考え方は、基本法30条の「州の文化主権(Kulturhoheit der Lander)」に基づく。文化、すなわち、言語、学校、教育、芸術、放送に係る施策については、州が特に連邦から指示を受けることなく決定できる。一方で、州は連邦と州とのサブシディアリティー(補完性)の範疇を超える州の自立性は認めていない。

 2002年の制定後、2010年に同協定の見直しをめぐる議論が起こった。同年6月、州首相らが第14回放送法則改正州際協定(Rundfunkanderungsstaatsvertrag)に調印、これによって青少年メディア保護州際協定が改正された。

 この論点は、インターネットコンテンツに関する年齢表示導入の是非であった。反対派はかねてより実用的でなく、法的に不安定であると主張。そもそも年齢表示の導入が、青年保護の強化につながるのかどうかが疑わしいと論じた。もともと映画やテレビについての規則を無理やりインターネットにも応用しようとしているだけではないかと主張した。さらに、改正前の協定でもウェブサイトの運営者は内容の年齢適性を推定して、内容に応じた対応することが義務付けられていた(同協定5条3項)。このため、年齢表示は形式の追加に過ぎないとした。情報法の専門家のThomas Hoeren、弁護士のUdo Vetter両氏はさらに進んで「このようなラベル貼りをし、中央から統制可能とすることは将来的な検閲インフラの強固な布石となり危険」と批判した。

 一方、賛成派らはコンテンツを自ら分類することは自主規制原則の強化になると考えた。例えば、この分類によりオンラインでの放映時間の制限ができて実践的であるとした。

 2010年12月、当時のノルトライン・ヴェストファーレン州の政権(SPD党と緑の党)は、青少年メディア保護州際協定の改正に反対することを表明した。さらに、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州では協定改正に関する話合いが議題から外されてしまった。そこで、協定改正は破綻した。結局のところ、今日までインターネットサイトにおける年齢制限表示は行われていない。

 2015年12月3日、州首相らは第19回放送法則改正州際協定に調印した。これにより青少年メディア保護州際協定の改定が改正され、2016年10月1日に施行された。

(2)改正のポイント(年齢制限認証における確認手続の導入)

 協定の改正後、年齢制限認証(レイティング)について新しい確認手続(Bestatigunsverfahren)が導入され、携帯メディアとテレメディア両方の領域で年齢制限評価の標準が統一された43

 これまでは映画、ゲームなどの携帯メディアは映画ビジネス自主規制協会とソフトウェア事前審査機構によって青少年保護法に基づく、年齢制限認証を受け(青少年保護法12条、14条)、その評価が、青少年保護州際協定の5条4項に基づき、テレビなどテレメディアの分野で、推定的に適用され、該当する放映時間帯に割り当てられてきた。

 改正後は、映画ビジネス自主規制協会とソフトウェア事前審査機構だけでなく、青少年メディア保護委員会から認可された自主規制機関のUSK、FSM、USK.online、FSK.onlineによる年齢制限評価も必要となる。それは、その内容が携帯メディアの対象になりうるからである。したがって、青少年メディア保護委員会の確認手続(Bestatigungsverfahren)が必要となり、最終的に上級州青少年局(OLJB)に管轄されることになった。つまり、テレメディアの放送番組やドラマ、オンラインゲームなどが、テレビでの放映を終えた後に、ネット上や、DVD、ブルーレイなどで公開されるケース等があるからである。

 確認手続を申請できるのは、認可された自主規制機関および年齢制限について確認を取りたいと考えている第三者である。新しい青年メディア保護州際協定はレイティングの確認手続の期限を、申請が正式に受理されてから14日以内としている。迅速な手続きを可能とするために、青少年メディア保護委員会の委員長が審査官を名乗り、個別ケースの対応のために、各州メディア監督機関であるLMK、MAHSH、NLM、BLM内に設置された、4つの審査グループ会リーダー(Prufgruppensitzungsleiter)を動員している。確認作業は7日以内に完了することになっている。

 確認作業では、申し込みベースで、自主規制機関が行ったレイティングが、判定基準の枠を超えていないかを審査する。実際に内容を閲覧し、各年齢制限の判定基準の枠から出ていないかどうかを確認する。各審査グループ会リーダーの確認作業に基づき、青少年メディア保護委員会の年齢制限判断が適切でないとした場合、そのコンテンツは別途青少年メディア保護委員会の審査にかけられる。

(3)青少年メディア保護州際協定における閲覧制限

 同協定では、有害メディアの取り扱いについてコンテンツを3つに区分している。それらは、絶対に許可されない提供物(4条1項)(absolut unzulassige Angebote)、単純に許可されない提供物(4条2項)(einfach unzulassige Angebote)、成長を阻害する提供物(5条)(entwicklugsbeeintrachtigende Angebote)である。

 成長を阻害する提供物あるいは(単純に)許可されない内容を提供する一般アクセス可能なテレメディア運営者及び検索エンジン運営者は、青少年保護委任者(Jugendschutzbeauftragter)を任命しなければならない(7条1項2文及び2項)。従業員数が50名未満または月間アクセス数が平均1000万回を超えない運営者については、任意の自主規制機関(Freiwillige Selbstkontrolle)に加入していることを条件にこの義務が免除される。

  1. 絶対に許可されない提供物(Absolut unzulassige Angebote)(4条1項)

     「絶対に許可されない提供物」はどのような条件においても表示されてはならない。大抵の場合、これらは刑法典で処罰対象とされているものある。児童・青少年だけではなく、成人も許されていない対象として以下のものがある。

    ・児童、もしくは青少年を対象とし、不自然に性を強調したポーズで表出しているもの(4条1項1文、No. 9)。
    ・ポルノグラフィーで、暴力、児童、もしくは青少年の性濫用、もしくは人間と動物の性行為を対象としたもの(バーチャルも含む)(4条1項1文、No. 10)。
    ・青少年保護法18条リストのパートB、あるいはパートCの内容、あるいは本質的に内容がこれに準じる内容(4条1項1文、 No. 11)。

    以下は、青少年保護法18条のリストの分類についての説明である。

    1. パートAにはパートB、C、Dに分類されていない全ての携帯メディアが分類される。
    2. パートBにはパートDに分類されていない携帯メディアで、連邦有害メディア審査会の推定により刑法典86条、130条、130a条、131条、184a条、184b条 184c条にある青少年有害情報とされるものが分類される。
    3. パートCには、公開自体が青少年を害するため24条3項2文に基づくリスト掲載の公開ができないという理由でパートAに載せられず、またパートDにも分類されない携帯メディアが分類される。
    4. パートDには、公開自体が青少年を害するため24条3項2に基づくリスト掲載の公開ができないという理由でパートBに載せられず、また連邦有害メディア審査会の推定により刑法典86条、130条、130a条、131条、184a条、184b条 184c条にある青少年有害情報とされるものが分類される。

     刑法典86条は「憲法に違反する組織のプロパガンダ手段」を規定している。130条は「民族を扇情する内容」、130a条は「犯罪の手引き」、131条は「暴力描写」について規定する。184条は「ポルノ文書」についての罰則であり、184a条は「暴力ポルノ・動物ポルノ」、184b条 および184c条は「児童・青少年ポルノ」を詳しく規定する。(各条文については、第一章 3.に詳述。)

  2. (単純に)許可されない提供物(Einfach unzulassige Angebote)(4条2項)

     単純に許可されない提供物とは、提供者側によって適切に管理され、成人のみアクセスできるテレメディアのことをいう。提供者は、児童、青少年の目に触れさせないように対処する必要がある。提供者は、年齢確認システム(Altersverifikationssystem: AVS)の利用が前提となる。このカテゴリに分類されうる内容として、以下のものが挙げられる。

    ・4条1項にあたらないポルノグラフィー。
    ・成長を阻害する提供物とは青少年保護法18条リストのパートB、あるいはパートCの内容、あるいは本質的に内容がこれに準じる内容のものである。(4条2項1文)
    ・拡散メディアの特殊な効果を考慮して、児童、青少年の発達、あるいは自己責任性、社会性のある人格への教育を脅かすことが明らかとされる提供物。
  3. 成長を妨げる提供物 (5条)

     成長を妨げる提供物とは、児童、青少年の発達、あるいは自己責任性、社会性のある人格への教育を妨げると考えられるものである(5条1項)。このような内容は、同協定の5条2項に基づき児童青少年の年齢制限に応じて規制される(レイティング)。

     さらに、広告とテレショッピングにおける青少年保護は、青少年メディア保護州際協定の6条にて規定されている。有害メディアに該当するような内容の広告は、児童向けの提供物(児童用のテレビ番組やコンテンツなど)に表示されてはならない。また児童、親に対して直接的な購買勧誘(unmittelbare Kaufaufforderung)をしてはならない。

    罰則規定

    4条2項1文3号と同項2文に違反する表現を行った者は、1年以下の懲役刑又は罰金に処される。過失の場合は減刑される(23条)。その他の有害表現の公表には、最高50万ユーロの過料が科される可能性がある(24条)。

(4)ネットワーク執行法(Netzwerkdurchsetzungsgesetz、俗称: Facebook法)44

SNSでの法執行を改善するための法律(Gesetz zur Verbesserung der Rechtsdurchsetzung in sozialen Netzwerken)

 2015年9月、連邦法務省、および連邦家族省はインターネット上の違法なヘイトスピーチに関する対応を協議するワーキンググループ(Umgang mit rechtswidrigen Hassbotschaften im Internet)を立ち上げた。当時、SNS上でのヘイトスピーチに関する問題が深刻になったこと、Twitter、Facebook上の有害コンテンツの削除が効果的に行われていなかったことが挙げられる。Heiko Maas法務大臣当時は当初立法を考えておらず、企業の自主管理を尊重する予定であった。

 しかし、苦情情報の処理時間をめぐり企業側とMaas大臣との間で意見が対立。企業側は24時間以内に苦情内容を「審査する」との対応を提起したが、政府側はそれでは遅いとした(実際には24時間以内にブロック、削除が義務付けられた)。2017年、Jugendschutz.netは1月、2月の2ヶ月間で、代表的なSNSの苦情処理に関する調査を行った45。Facebookではユーザーから寄せられた苦情で、処罰対象となる情報が、削除もしくはブロックされた割合は39%にとどまり、24時間以内に削除されたコンテンツは33%であった。Twitterでは1%が削除され、24時間以内の対応はゼロであった。これに対してYouTubeでは90%の処罰対象の苦情情報が削除され、82%が24時間以内に対応されていた。この調査結果から連邦政府は企業の自主管理では不十分であるとの判断をし、立法に踏み切った。

 最初の法案は曖昧な表現が多く、また一部のメールプロバイダーやメッセンジャーの運営者も対象となっていたため各方面の反対にあい、これら団体を外したのち2017年6月30日、選挙前最後の連邦議会にて法案が可決された。

  1. 規制される情報の内容

     本法で規制されるのは以下の20の刑法典にある犯罪である。有害メディアに該当するものに加え、誹謗・中傷、脅迫に該当する情報も対象となる。具体的には、違法組織のプロパガンダ手段を流布すること(86条)、違法組織のマークを使用すること(86a条)、国家を重大な危険にさらす暴力行為の企て(89条)、国家を重大な危険にさらす暴力行為を指導すること(91条)、国全体を陥れるようなデマ(100a条)、犯罪行為を公共で求めること(111条)、犯罪行為の予告により公共の平和を乱すこと(126条)、犯罪組織の結社(129条)、海外犯罪、テロ組織への加入(129条)、民衆扇動(130条)、暴力騒動(131条)、犯罪行為の褒賞、是認(140条)、宗教上の侮辱(166条)、児童ポルノの流布、獲得、所持(184b条)。ポルノコンテンツをテレビ、テレメディアなどで提供することや、児童、青少年ポルノのコンテンツをテレメディアで閲覧すること(184d条)、侮辱罪(185条)、誹謗・中傷罪(186条、187条)、画像撮影によるプライバシー侵害(201a条)、脅迫(241条)、公的データの捏造(269条)

  2. 同法のポイント46

    (a)効力のある苦情処理手続き

     効力のある透明性のある苦情処理管理を行う。SNS事業者は、以下のような義務を負う。利用者に対し認識しやすい、直接届く、そして常に利用可能な苦情相談の手続きを提供する。ユーザーの苦情を速やかに認識し、処罰の重要度について検討する。

     明らかに処罰対象となる内容については、苦情が入ってから24時間以内に削除、あるいはブロックする。いかなる処罰対象となりうる内容も、苦情を受けてから通常7日以内に削除、閲覧禁止、あるいは承認された自主規制機関に渡し、その指示に従う(自主規制機関は7日以内に苦情内容の処罰性に関して判断する)。ユーザーに苦情内容に関するあらゆる決定をも情報提供し、その根拠を示す。

    (b)報告義務

     SNS事業者は、刑法上重要な苦情の対応状況について半年毎に報告する義務がある。この報告書は苦情件数、ネットワークの決定事例、苦情を担当する課の人数、スキルについての内容を含む。報告は、インターネット上で公開しなければならない。

    (c)罰則規定

     SNS事業者は、効力ある苦情管理を全くあるいは正しく実施していない場合、特に処罰対象の内容を全くあるいは完全に削除しない、決められた期間内に削除しない場合、500万ユーロまでの過料がこの苦情手続きに責任ある人物に対して科されうる。法人に対しては、5,000万ユーロまでの過料が科されうる。過料は、SNS事業者が報告義務を全くあるいは完全に果たしていない場合にも科される可能性がある。

    (d)交付全権委任者

     SNS事業者は、法執行を円滑にするため、過料手続きと、民事法手続きの宛先として国内に交付全権委任者(Zustellungsbevollmachtigte)を任命し、プラットフォームに公開する。訴追当局への情報照会に応じるため、受取りの権限を持つ窓口担当者(empfangsberechtigter Ansprechpartner)をドイツ国内に任命する。ネットワークは、照会に速やかに対応できるようにしなければならない。交付全権委任者と受け取り権限者の任命義務に違反すると過料が科される。

    (e)SNS被害者の情報提供要求

     本法の適用範囲で、また一般的な個人権利において迫害を受けた者は、SNS事業者から権利侵害者について情報を求めることができる。情報提供の要求は、一般的な民事法の原理に基づくものである。SNS事業者は、権利侵害者の申込みデータを被害者に開示する権限をもつ。

  3. ネットワーク執行法第一回報告書

     2018年7月27日主要なSNS事業者より、ネットワーク執行法導入後初めての報告書が提出され、各社が受け取ったヘイトスピーチなどの届け出件数、実際にブロックされた件数が報告された。各社の対応状況は以下の通りである。

YouTube

 YouTubeでは既存の苦情システムを法改正に適合させた上で利用している。報告書47によれば、執行からの半年で215,000の苦情が寄せられた。そのうち27%、つまり件数にして約58,000件が審査官により正当なものとして認められた。そのうちのほとんどが「ヘイトスピーチ、政治的過激主義」にカテゴリーされ、「個人の権利侵害、侮辱」であった。該当する動画、コメントなどは削除されるか、ドイツ国内でアクセス不可能とされた。

 YouTubeで取られた対応に削除とアクセス不可がある理由はYouTube内で実施される2重の審査方法による。YouTubeは苦情内容についてYouTubeのコミュニティーガイドラインに照らして違反している場合はサイトから削除し、ガイドラインには違反していないが、ネットワーク執行法に照らして違反が認められる場合は、ドイツ国内でのみブロックをかけているのである。後者のケースではしたがって、海外からはアクセスが可能である。しかし、実施にはこのような判断が分かれるケースは稀であるという。

 YouTubeでは法施行前のデータを開示していないため、法施行の前後で摘発状況がどのように変わったのかは把握できない。27%のブロック率が甘いのかどうかもわからない。なぜなら苦情を寄せるユーザー側に法的な知識がなく、母数の苦情件数が多いだけかもしれないからである。

Twitter

 TwitterもYouTubeと同様に既存の苦情システムを法改正に適合させた上で利用している。寄せられた苦情の件数は264,000件であり、報告書48によれば29,000件と10%程度しかブロック、あるいは削除されていない。また処理された600ケースが法律で定められた24時間以内に処理されているが、37件では7日以上かかっている。TwitterでもYouTubeのようなダブルスタンダードがあり、まずはTwitter規則、あるいは一般取引条件などに照らして違反性を判断し、ドイツ用にネットワーク執行法向けの審査を行なっている。YouTube同様にネットワーク執行法の違反のみ認められる場合はドイツ国内での閲覧不可能の対応を取っている。

Facebook

 Facebookは前出の2社とは全く異なる処理方法をとっている。つまりネットワーク執行法の違反に対して専用の処理系統を設けている。通常の苦情については既存の苦情センターに届け出をし、Facebookの利用標準に基づいて評価される。ネットワーク執行法の違反として届け出られたコンテンツも、Facebookの利用標準からも審査を受けている。そのためかこの半年で寄せられたネットワーク執行法の違反苦情件数はYouTube、Twitterに比べて少なく1704件であり、そのうちの362件が削除もしくは国内にてブロックされている。つまり約80%はFacebookの観点からは違法ではなかったとの判断がなされたことになる49

 ネットワーク執行法の施行前、専門家らは24時間以内の処理は時間的にタイトであることと過料を恐れて、SNS事業者は詳しい審査をせず、苦情として届け出されたコンテンツはとりあえず全て削除にするのではないかと予測していた(「過剰な削除(オーバーブロッキング)」と呼ばれる状態)。しかし、少なくとも第1回目の報告書を見る限り、そのような状況は確認されない。連邦法務省では即時的な法律改正はせず、今後しばらく各社の透明性報告書を継続して見ていき、2020年に法律の効果に関する評価を行いたいとしている50

2. 青少年に対する有害情報の閲覧の実例とその対策における制度・法令・罰則規定等

(1)極右勢力のリクルートの実例51

 ネオナチ・ラッパーJulian Fritsch(27歳)は、極右的な曲「Makss Damage」をインターネットで無料配信したことが民衆扇動罪となり700ユーロの罰金刑を受けた。この曲は公開から48時間で10万回再生され、400件の「いいね」がつき、620回転送された。この動画の中では、戦時中の強制収容所ブーヘン・ヴァルトへの強制収容の模様が描かれており、Fritsch自身もナチスが遺体の一部からランプシェードや石鹸を作ったという事実を美化し、歌詞にしたと供述している。かつて極右勢力は学校で青年らをリクルートしていたが、現在はインターネットを使用している。Facebook、Twitter、Instagram、YouTube などの青年が好むプラットフォームを利用し、ライフスタイル、サブカルチャー、音楽などに彼らの考え方を織り交ぜて行く。例えば、オンラインゲームやヒップホップ音楽も青少年にアプローチする媒体となっている。現在、極右勢力は反抗的でクールな演出をし、トレードマークの編み上げのブーツ、ボンバージャケットなどを封印するよう指導している。こうした極右勢力が絡むネットの事件は、増えている。2016年、jugendschutz.netに寄せられた苦情件数は1800件であり、2年前の倍に達している。苦情の1678件は民衆扇動についてであり、2014年の4倍に達している。

(2)不正な勧誘: オンラインロールプレイゲーム「Runes of Magic」の実例52

 連邦消費者センター協会(Verbraucherzentrale Bundesverband)は、ゲーム中のアイテム・ショップの広告が、子供に対して不適切な購入勧誘を含むとしてオンラインゲーム運営者のFrogster社を起訴した。ベルリン地方裁判所はこの訴えを退けたが、2013年7月連邦通常裁判所がこの訴えを妥当なものと認めた。

 Runes of Magicは、「このセールの機会を利用して君の装備と武器にちょっとしたものを加えよう」と子供に向けた購入広告を行っていた。そのリンクをクリックすると、新しいインターネットページが開き、ゲーム上で使う装具が購入可能だった。この様な子供に向けられた直接的な購入勧誘は、法律で禁じられている(青少年メディア保護州際協定)。

 連邦消費者センター協会は、ロールプレイングゲームへの参加を楽しむために追加アイテムを購入させるという考え方が、子供の購買行為に関してその未熟さを利用しているものであり、介在しているリンクをクリックしなければ(つまり閲覧する意思がなければ)そのページに飛ぶことができないというロジックは直接的な勧誘行為であることを退ける理由とならないと判断した。また、明らかに子供を対象としている根拠として「言語的に親称の2人称形である『君』『お前』のような呼びかけを使用しており、子供達に典型的な概念をくだけた英語などを混ぜつつ表現している」ことも挙げた。

(3)その対策における制度・法令・罰則等

  1. 極右勢力のリクルートの実例に対する制度・法令・罰則規定等

     「ナチス礼賛(Verherrlichung des Nationalsozialismus)」は、青少年保護法の中で直接的に規定されていないものの、連邦青少年有害メディア審査会の実践例から青少年に有害であるとされるケースとして指定されている(連邦青少年有害メディア審査会による「拡張された有害情報」)。

     また、青少年保護法に違反するケースで特に危険度が高いものは、極めて有害な情報とされている。 刑法典86条「憲法に違反する組織のプロパガンダ手段」、130条「民族を扇動する内容」などがこれによりあたる。本件は何れにしても処罰の対象となるケースである。

     青少年メディア保護州際協定では、4条1項1文にて放送、テレメディア(インターネット含む)について「絶対に許可されない提供物」を規定している。この中でも刑法典86条、130条の内容が対象となっている。同協定の24条「秩序違反」では対象コンテンツに対して、最高50万ユーロの過料を課している。

     ネットワーク執行法は、SNS事業者に対して苦情から7日以内の対応(削除、閲覧禁止)を義務付けている。さらに運営者は、効力のある苦情管理を全く実施していないあるいは正しく実施していない場合、つまり処罰対象の内容を削除しないまたは決められた期間内に削除しない場合、秩序違反となる。この場合、この苦情手続きに責任ある人物に対して500万ユーロまでの過料が科されうる。法人に対しては、5,000万ユーロまでの過料が科されうる。

  2. オンラインロールプレイゲーム「Runes of Magic」の実例に対する制度・法令・罰則規定等

     子供に対する直接的な購買行動の勧誘、子供に広告商品やサービスを買わせようとすること、親へのおねだりを促すことは不正競争防止法(Gesetz gegen den unlauteren Wettbewerb: UWG)で禁止されている(3条3項の付録28番)。オンラインゲームについては、青少年メディア保護州際協定(6条)は、子供、親に対して直接的な購買勧誘(unmittelbare Kaufaufforderung)をしてはならないとしている。同協定の24条にて最大50万ユーロの罰金を課している。

3. 青少年のネットいじめの実例とその対策における制度・法令・罰則規定等

(1)Chiara失踪事件53の実例

 2014年、当時14歳のChiaraはコンピューターに遺書を残して姿を消した。原因は、長年にわたるいじめであった。しかしChiaraは発見され、幸運にもこの劇的な1日が、Chiaraと家族にとって最後の1日とならず、新しい一歩を踏み出すための1日となった。

 きっかけは、彼女の姉がいじめを理由に学校を辞めたことだった。その後、いじめの矛先が妹のChiaraに向けられたのだった。加害者らは、彼女の話し方や見た目をからかい、殴るなどの暴行も加えた。あるときは、体育時間の着替え中を撮影され、その画像をYouTube、Facebook、WhatsAppに流布された。ネット上には、「死ね」などの誹謗中傷がなされた。

 この頃からChiaraの様子が変わっていったと母親は言う。彼女は引きこもりがちになり、自傷行為を繰り返すようになった。いつの間にかドラッグも日常に入り込み、危険な人々と交流するようになった。 Chiaraには唯一味方となってくれる友達がいたが、グループの圧力の前になすすべもなく、何もできずにいた。いつしかChiaraの方から彼女に、友達でいない方が良いと告げた。そうしないと、彼女がいじめの標的にされてしまうかもしれないと考えたからだ。こうして彼女の唯一の友情関係も失われてしまった。この時、学校側は傍観するばかりか、むしろ彼女を突き放す態度をとった。ある教師はいじめについて訴えるChiaraに「ドラマの主人公気取りだ」と言い放った。

 Chiaraが失踪事件を起こしたのち、母親は学校側の勧めもあり、彼女といじめ加害者と学校側との仲裁を試みたが、結局、2015年に彼女を転校させることにした。2017年、彼女は実科学校を卒業した。

(2)インターネットいじめに適用される罰則54

 ドイツでは現在のところ、いじめ、ネットいじめを対象として裁く法的な制度はない。しかし現行刑法典(Strafgesetzbuch)を参照することにより、いじめ、ネットいじめも処罰の対象となりうる。適用されうる条項は侮辱罪(185条)、誹謗・中傷罪(186条、187条)、ストーカー行為(238条)、肖像権侵害(22条)、音声プライバシー侵害(201条)、非常に個人的な生活の場を写真撮影により侵害すること(201a条)、強要・脅迫罪(204条および205条)である。侮辱罪は最大1年(暴力行為が伴う場合は2年)の懲役刑、あるいは罰金。誹謗・中傷罪は1年から2年の懲役刑(公共の場、文書の形で行われる場合は2年から最大5年までの懲役刑)、もしくは罰金に処せられる。ストーカー行為は被害者、被害者の関係者を死の危険や、健康上の障害に陥れたかなどの重さにより、3ヶ月から5年までの懲役刑に処せられる。前記の肖像権侵害以下の罪についても、いじめがそれに該当すれば相応に罰せられる。

 SNS上のヘイトスピーチ規制については、「ネットワーク執行法」が発効されている。SNS事業者は、利用者が必ず目にする範囲内に苦情連絡ページを設けなければならず、刑法典に触れる内容は運営者によって24時間以内に削除、閲覧禁止とされることになっており、実施ができていない場合は過料を科される可能性がある。

4. 事件等に加害者又は被害者として巻き込まれた実例とその対策における制度・法令・罰則規定等

(1)被害者として巻き込まれた例55

 ドレスデン近郊の町プルスニッツに住む当時16歳のLinda W.は、2016年の夏、家族に内緒で家出をしトルコ経由でイラクに入った。彼女はイスラム国(IS)が運営するYouTubeや閉鎖的なチャットグループで勧誘を受け、ジハディストの花嫁になるべく現地に向かったのだ。チャットでは、実際に花嫁になった女性らが、闘争の中でいかに献身的に男性を支えているかを語っていた。彼女はもともと成績も良い生徒だったが、次第にイスラム音楽を聞くようになり、チャドルをまとうようになったという。

 彼女は現地でISの兵士と結婚したが、夫は間もなく死んでしまい、彼女もまた負傷し捕らえられた。彼女は、現在ドイツへの帰国を望んでいる。しかし不法越境の試みはイラクの青少年刑法により、年単位の懲役に課される可能性がある。彼女以外にも同じ勧誘で、少なくとも4人のドイツ人女性がイラクに渡った。

(2)加害者となった例56

 バーデンヴュルテンベルクの学生Eugen S.(当時25歳)は、性的虐待、脅迫、児童ポルノ所持の疑いで逮捕された。被害の対象となったのは10歳から14歳までの多数の少女たちである。そのような犯罪はCyber Groomingと呼ばれており、手口は概ね決まっている。MSNのチャットルームで自らを様々な名前で呼称し、少女たちに声をかける。もちろんプロフィールであらかじめ若い女の子をターゲットとしている。相手がチャットに同意すれば、すでに罠に落ちたも同然だ。Eugen S.は素早く次の段階に移る。卑猥な質問を投げかけ、少女に裸になって自慰行為をするところをWebcamでとって見せるように求める。中にはとりあえず写真を送って来る子もいるが、そのうちコンタクトを拒否するようになる。すぐにコンタクトをブロックする子もいる。しかしそのような反応は犯人にとってはどうでも良いことだ。

 彼は全てのケースにおいて、被害者少女の名前と住所をひかえており、SNSを使って彼女らの知り合いをリサーチする。そして被害者にチャットの内容や、インターネットで送られた写真を周囲の友達に流布すると告げる。またその写真を印刷し、被害者の学校で拡散すると脅す。そればかりか、犯人は子供達の親に対しても殺人予告を行うなどした。脅しにとどまらず、実際に写真を自分のFacebookで公開したりもした。被害者からの脅しをやめてほしい、写真を削除してほしいとの懇願にも冷酷であった。

 2012年から約1年で70件の被害があった。ケンプテン地方裁判所は、2013年4月、検察官の5年の求刑に対して3年半の実刑判決を下した。

(3)その他の対策における制度・法令・罰則規定等

  1. イスラム国からの勧誘の実例に対する制度・法令・罰則等

     刑法典86条によって「憲法に違反する組織のプロパガンダ手段」は認められていない。また、放送、テレメディアに関する青少年メディア保護州際協定でも、この項目を絶対的に認可されない提供物(absolut unzulassige Angebote)に分類されるため、内容の表示が罪に問われる。

  2. 性的虐待、脅迫、児童ポルノの実例に対する制度・法令・罰則等

     刑法典184b条は、児童ポルノ情報の所持、拡散、公共にアクセスさせることは禁じている。放送、テレメディアに関する青少年メディア保護州際協定では、児童ポルノを絶対的に認可されない提供物(absolut unzulassige Angebote)に分類し、全面的な表示の規制を敷いている。刑法典184条bにより規定される児童ポルノグラフィーのコンテンツは以下のようなものである。

    児童ポルノとは、
    a) 14歳以下の人物の性的行為、あるいはその目の前での性行為、
    b) 完全にあるいは部分的に衣服を着た児童が、不自然に性的に強調された姿勢を取っている、
    c) 児童の何も身につけていない状態での性器、臀部を性的に表出することである。

     ある画像や映像を児童ポルノとみなすかどうかについては解釈に一定の振れ幅がある。したがって、裸の少年や少女が自然で普通の姿勢でベッドに寝ているというだけでは、児童ポルノとしての解釈が成立しない。また、自らの写真を撮って送った場合は、未成年者であっても罪に問われない。

     本規定への違反は、3ヶ月から5年までの懲役刑に問われうる。しかし、懲役刑は裁判官の視点から罰金では不十分と考えられる場合の「最後の手段」と考えられている。このため懲役刑が出るには一定の悪質性が必要である。

     また、2017年に施行されたネットワーク執行法でも、児童ポルノを削除義務対象としている。


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