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第3部 オーストラリア(2)

第二章 青少年のインターネット利用環境に関する制度、法令・罰則規定等による対策と事例

1.各法整備に至る背景と法整備による対策の現況一般

(1)オンライン安全促進法(Enhancing Online Safety Act 2015)成立の背景

 2015年7月、アボット自由党・国民党連立政権の下、子供のオンライン安全促進法(Enhancing Online Safety For Children Act 2015)が施行され、「子供のためのeセーフティー監督官事務所(Office of Children’s e-Safety Commissioner)」が設立された。

 連立政権は、当時野党だった2012年にディスカッションペーパー「子供のためのオンライン安全の促進(Enhancing Online Safety for Children)」を作成した。その中で、オーストラリアの青少年の間でネットいじめが深刻化していることを指摘し、ネットいじめが原因で自殺に至った青少年の事例を挙げるなど、こうした問題に対して適切な対処法が講じられていないことを主張した。

 また、ネットいじめには教育機関レベルで解決できるものと警察の対応を必要とするものとの間に「明確な隙間」が存在し、ネットいじめの被害を受けた子供の保護者が警察に起訴を求めても、警察は財政や人手不足等の資源的制約から、被害が最も深刻な事例にしか対応することができないという現状が指摘された。同ディスカッションペーパーでは、こうした問題解決のため、中立的な立場の独立した第三者機関として「子供のためのeセーフティー監督官」の必要性が唱えられていた144。オンライン安全促進法は、上記ディスカッションペーパーの内容を具体化したものである。

 2017年6月、同法律の対象が子供だけではなくオーストラリア全国民へと拡大され、「2015年オンライン安全促進法(Enhancing Online Safety Act 2015)」が成立、監督官の権限が拡大されると同時に、その名称が「eセーフティー監督官事務所(Office of eSafety Commissioner)」に改称された145

 こうした監督官の権限拡大や改称で、インターネットの安全利用に関わる問題についての助言や助力を求める場所としての同事務所の認知度が高まった。現状では、青少年だけでなく、多くの成人がリベンジポルノやトローリング等インターネットを介した様々な嫌がらせについて同事務所に問い合わせを寄せるようになってきている。

(2)オンライン安全促進法の主な内容

 2015年オンライン安全促進法で定められるeセーフティー監督官の機能は以下のとおりである。

(a) オーストラリア市民のオンラインの安全性を促進
(b) オーストラリアの青少年に対するネットいじめコンテンツの苦情申立て制度の運営
(c) 青少年のオンラインの安全に携わる連邦政府の省、当局、関係機関の活動の調整
(d) 1992年放送法に基づいたオンラインコンテンツスキームの運営

2.青少年に対する有害情報の閲覧の実例とその対策における制度・法令・罰則規定等

(1)ポルノサイトへの誘導事例

 2010年にオーストラリア連邦議会により設立されたサイバーセーフティー両院合同特別委員会(Joint Select Committee on Cyber-Safety)が発表した2011年の中間報告書に次のような実例が記載されている。

 7歳の少女がマスレティックス(Mathletics)と呼ばれるネット上の算数学習プログラムにアクセスするため、マスレティックスへのリンクをクリックしたところ、ポルノサイトが開かれた。マスレティックスのウェブアドレスがハッカーまたはウイルスに襲われ、子供をポルノサイトに誘導していたのだ。幸運なことにこの事例では、誘導先のサイトがあからさまな性描写を閲覧するには成人であることの同意を必要とするものであったため、少女がさらなる有害情報を閲覧することは免れた146

 マスレティックスはオーストラリアの学校や家庭で広く使用されており、上記は青少年が意図的のみならず偶発的に有害情報を閲覧する可能性を浮き彫りにした事例と言える。

(2)ポルノ閲覧に対する法令改正の背景

 1999年、それまでテレビやラジオ放送等を規制していた「1992年放送サービス法(Broadcasting Services Act 1992)が改正され、「1999年放送サービス改正(オンラインサービス)法(Broadcasting Services Amendment (Online Services) Act 1999)の附則5号によりオンラインサービスを規制する枠組みが誕生した。

 この背景として、地域社会や政府間から子供のポルノ閲覧を懸念する声が高まったことがあり、同法律の主要目的の一つがポルノ等子供には不適切と考えられるインターネットコンテンツから子供達を保護することであった147。しかし、同法令はインターネット上の蓄積コンテンツを規制するもので、ライブコンテンツや携帯電話を介したコンテンツは対象とされていなかった。

 2006年、テレビ局Channel 10のリアリティー番組「ビッグブラザー(Big Brother)」がきっかけとなり、インターネットのさらなる規制を求める声が高まった。このテレビ番組は、十数人の男女が外部から完全に隔離された家で生活する様子をテレビカメラに収め放映するというものであった。同番組は、テレビ放映に不適切な場面をウェブサイトでストリーミング配信していた。あるエピソードの中で出演者男性二人がある女性出演者に対し卑猥な行為に及び、それが同番組のウェブサイトからライブでストリーム配信された。しかしながら、この場面はテレビで放映されなかったこと、ライブストリーミングのためデータの蓄積もなかったことから、違反事例ではないと判断された。この事例がきっかけで、当時インターネットの規制を所掌していたACMAの権限を拡大するべきだとの声が高まり、2007年通信改正法へとつながっていった148

 その結果、2007年に「2007年通信改正(コンテンツサービス)法(The Communications Legislation Amendment (Content Services) Act 2007 )が成立し、附則7号が追加されると共に附則5号が改正され、蓄積コンテンツに限らずライブコンテンツや携帯電話及びコンテンツへのアクセスを提供するサービスへと規制の枠組みが拡大された149。 以下にその流れを表に纏めて示す。

【インターネット規制に関わる法改正の流れ】表A2-1
1992年放送法(Broadcasting Services Act 1992)

1999年放送サービス改正(オンラインサービス)法
(Broadcasting Services Amendment (Online Services) Act 1999 )
・オンラインサービスを規制する附則5号が加わり、インターネット規制の枠組みが誕生

2007年通信改正(コンテンツサービス)法
(The Communications Legislation Amendment (Content Services) Act 2007 (Content Services Act)
1999年放送サービス改正法で追加された附則5号の改正及び附則7号の追加

出典:「2007年通信改正(コンテンツサービス)法(The Communications Legislation Amendment (Content Services) Act 2007 )を基に作成。

【1992年放送サービス改正法附則5号及び7号の主な内容】表A2-2
附則5号の概要 150 附則7号151
  • eセーフティー監督官がオーストラリア国外でホスティングされているオンラインコンテンツが禁止コンテンツまたは潜在的な禁止コンテンツに該当すると判断した場合、監督官は、
    a. コンテンツが法執行機関への照会が必要と判断される極めて深刻なものだった場合、オーストラリアの警察当局に通知する。
    b. ISP事業者が業界規範及び業界基準が明記する処理手続き(例えばこれらコンテンツのフィルタリング等)に従って対処できるよう、ISPに当該コンテンツを通知する。
  • インターネット業界におけるISP事業者を代表する団体及び協会は業界規範を策定する。
  • 監督官は業界規範が存在しない場合、又は業界規範が不十分である場合、業界基準を策定する権限を有する。
  • 監督官はISP事業者を規制する何らかの決定(online provider determinations)を行う権限を有する。
  • 禁止コンテンツ、または潜在的な禁止コンテンツについて監督官に苦情を申立てることができる。
  • 監督官は禁止コンテンツまたは潜在的な禁止コンテンツについて以下の措置を取ることができる。
    a. ホスティングサービスの場合は、削除通達を発する。
    b. ライブコンテンツサービスの場合は、サービス停止通達を発する。
    c. リンクサービスの場合は、リンク削除通達を発する。
  • 禁止コンテンツ(電子出版物を除く)の定義(第一章のレイティングスキームを参照)
  • 電子出版物から成るコンテンツは、当該コンテンツがオーストラリアレイティング委員会によりRC、制限カテゴリー2、制限カテゴリー1に分類される場合、禁止コンテンツである。
  • 一般に、潜在的な禁止コンテンツとは、レイティング機関によってレイティングがなされていないコンテンツで、レイティングが行われた場合に禁止コンテンツとみなされる可能性が高いものを指す。
  • コンテンツ業界を代表する団体及び協会は業界規範を策定する。
  • 監督官は業界規範が存在しない場合、又は業界規範が不十分である場合、業界基準を策定する権限を有する。
  • 監督官は特定のコンテンツサービス及びホスティングサービス提供事業者を規制する何らかの決定を行う権限を有する。

出典:「2007年通信改正(コンテンツサービス)法(The Communications Legislation Amendment (Content Services) Act 2007 )を基に作成。

3.青少年のネットいじめの実例とその対策における制度・法令・罰則規定等

(1)ネットいじめの事例

 以下2つのネットいじめによる青少年の自殺事件は、メディアで取り上げられオーストラリア全土に大きな衝撃を与えた近年の事例である。どちらのケースも、SNSが関与したネットいじめ事件である。こうした事件は、現在、オーストラリア全土に数多く存在している。

  1. エイミ・エベレット(Amy Everett)事件

     2018年1月、ノーザンテリトリーで14歳の「ドリー(Dolly)」ことエイミ・エベレット(Amy Everett)は、当時通っていたクイーンズランド州の寄宿学校でのいじめが原因で自殺した旨が報道された152

     ドリーは中等教育校スコッツPGCカレッジ(Scots PGC College)入学以来、ある生徒達からのいじめの標的となっていた。特に入学2年目には、ある男子生徒から自身の不適切な写真を撮って送るよう要求された。Snapchat(自動消滅系SNSアプリ)を介して送られたこの写真は他の学生の間でも共有された。これがきっかけとなり、女子生徒グループからもいじめを受けるようになった。ここから身体的・精神的いじめとネットいじめが悪化したと報じられている153

     エイミ・エベレットは、6歳の時にオーストラリア内陸部のライフスタイルを象徴するアクブラハットと呼ばれる帽子のメーカー「Akubra」の宣伝広告に出演し、オーストラリア国内で知られていた。そのため、彼女のような有名人の死はオーストラリア全土で波紋を呼び、ネットいじめ対策を求める動きが活発化した。これを受けてニューサウスウェールズ州では2018年11月、「ドリーの法律」と呼ばれる法改正が成立した。同法に関しては、下記(2)を参照のこと。

  2. クロイ・ファーガソン(Chloe Fergusson)事件

     2013年、タスマニア州で当時15歳のクロイ・ファーガソン(Chloe Fergusson)が長年の身体的・精神的いじめとネットいじめが原因で自殺した。この事件は、人気報道テレビ番組『60 Minutes』の中で大きく取り上げられたため、オーストリア全土で注目を集めた。

     クロイは7歳の時に母親を亡くして以来、母親がいないことを理由にいじめを受けるようになった。中等学校に上がると身体的いじめとネットいじめが始まり、彼女に対するいじめは深刻化していった。

      2013年9月10日の暴行事件が、クロイを自殺に追いやったきっかけとなった。この日クロイは、ショッピングセンター前のバス停で彼女を待ち伏せしていた同じ学校の女子グループに襲われ、殴る蹴るの暴行を受けた。その様子をグループの一人が携帯電話のカメラで撮影し、クロイはその動画をSNSに投稿すると脅された。暴行事件後わずか3時間以内でクロイのFacebookのページは、コメントで溢れかえった。「ついにクロイを殴ってやった。この機会を待ちに待っていた。クロイ・ファーガソンが殴られているところを見たい人。笑」とのコメントには2日間で45の「いいね」のリアクションがあった。暴行事件の2日後、クロイは自身の命を絶った154

(2)いじめに対する制度・法令・罰則規定等

 いじめに関する規制としては、各州の刑法に基づく、暴行、ストーカー行為、嫌がらせ、名誉毀損、通信サービスの悪用などの条項が適用される155

 ニューサウスウェールズ州は、オーストラリアで唯一学校でのいじめを対象とした法律を定めているが、これもネットいじめに特化したものではない。「1900年犯罪法」(The Crimes Act 1900)第60E条は、学生や職員が学校にいる間に学校の敷地内で行われた暴行、ストーカー行為、嫌がらせ、脅迫を違法行為としているが156、これは学校の敷地内で発生したいじめに限られるため、ネットいじめへの適用は困難となる。

 また、ビクトリア州も、ネットいじめに特化したものではないが、いじめに関する法律を制定している。2006年に職場でのいじめが原因で自殺したブロディ・パンロック(Brodie Panlock)の事件がきっかけで、2011年に1958年犯罪法(Crimes Act 1958)が改正され、「ブロディ―法」と呼ばれる新たな条項が盛り込まれた。

 これは、ストーカー行為を犯罪とする第21A条に追加項目を盛り込んだもので、被害者の脅迫、被害者の罵倒、被害者に対する不快な行為、身体的または精神的危害を及ぼすと考えられる行為や被害者の身の安全に危険を感じさせる行為など典型的ないじめ行為を違法としている。最高で懲役10年の罰則が課される157

(3)ネットいじめに対する制度・法令・罰則規定等

  1. 規制

     オーストラリアでは、ネットいじめに特化してこれを規制する法律は現在のところ存在しない。ネットいじめに関連する法律としては、連邦レベルでは1995年刑法典(Criminal Code Act 1995)の第474条が以下のように定めている。

    【1995年刑法典(Criminal Code Act 1995)の第474条(要約)】表A2-3
    第474.14条 通信ネットワークを利用した深刻な違法行為の実行 Using a telecommunications network with intention to commit a serious offence
    第474.15条 通信サービスを利用した脅迫 Using a carriage service to make a threat
    第474.16条 通信サービスを利用した虚偽の脅迫 Using a carriage service for a hoax threat
    第474.17条 通信サービスを利用した脅迫、嫌がらせ、侮辱 Using a carriage service to menace, harass or cause offence

    出典:「2007年通信改正(コンテンツサービス)法(The Communications Legislation Amendment (Content Services) Act 2007 )を基に作成。

     また、上記(2)で記載したいじめに適用される各州法の刑法がネットいじめにも適用され得る。

  2. 2015年オンライン安全促進法に基づく苦情申立て制度

    (a)概要

     2015年オンライン安全促進法は、オーストラリアの青少年を対象としたネットいじめコンテンツの苦情申立て制度の運営をeセーフティー監督官に委ねている。同法律の下、青少年は18歳未満と定義されており、ネットいじめの被害者本人または保護者がeセーフティー監督官事務所に苦情を申立てることができるようになっている。

     eセーフティー監督官は寄せられたネットいじめの申立てが深刻なものと判断する場合、当該事例の調査を行い、当該のネットいじめコンテンツが早急に削除されるようSNS事業者に協力を求めるほか、必要に応じて学校や警察に通知する158

     2015年オンライン安全促進法は、オーストラリアの青少年に対する深刻な脅迫、威嚇、嫌がらせ、侮辱をネットいじめコンテンツと定義し159、eセーフティー監督官は言葉遣い、語調、コンテンツの影響度、主な内容、態度、公開された情報、コンテンツ配布の範囲及び期間、投稿の頻度等を基に苦情が寄せられたネットいじめが調査を必要とするか否かケースバイケースで判断する。

    (b)苦情申立て制度

     苦情申立て制度は、Tier 1とTier 2と呼ばれる2つの階層から成る。SNS事業者を対象とした「階層スキーム(Tier Scheme)」とエンドユーザーを対象とした「エンドユーザースキーム(End Use Scheme)」の二つである。eセーフティー監督官は、事例毎にそれぞれ適した解決策を講じている。以下にその内容をまとめる。

    (i)階層スキーム

    a. Tier 1

     SNS事業者が任意で参加する。Tier 1に登録するためには監督官に文書で申請をし、当該サービスが2015年オンライン安全促進法第20条の定めるオンライン安全規程に遵守していることを証明しなければならない。

    b. Tier 2

     eセーフティー監督官の勧告を受けて、通信大臣が特定のサービスをTier 2サービスに指定する。SNS事業者が希望した場合、SNS事業者が大規模なものである場合、あるいは監督官からTier 1への申請を要請されたにもかかわらず28日以内に申請が行われない場合、当該のSNS事業者はTier 2に指定される。

    【階層スキームの仕組み】表A2-4
    Tier 1及びTier 2のSNS事業者に直接ネットいじめの苦情を申立てる。

    当該のネットいじめコンテンツが48時間以内(または特定の時間内)に削除されない。
    または、
    当該のSNS事業者の解決策が満足のいくものではない。

    eセーフティー監督官事務所に苦情を申立てる。

    監督官が、当該コンテンツを法が定めるネットいじめの定義に該当すると判断。

    (ここから、Tier 1とTier 2に分かれる。)
    Tier 1: 監督官に寄せられた苦情のネットいじめコンテンツを48時間以内に削除するよう求める。
    Tier 2: 監督官は「ソーシャルメディアサービス通告(social media service notice)」を発行し、 48時間以内にコンテンツの削除を求める

    「ソーシャルメディアサービスサービス通告」に遵守しなかった場合Tier 2サービスには罰金(100ペナルティー・ユニット160(AU$17,000)」が科されるか、 あるいは監督官が正式な警告を発行する。

    出典:eセーフティー監督官事務所ウェブサイトの情報を基に作成。

     Tier 1サービスについては、上記削除要請に従わなかったことにつき、直接の制裁はないが、過去12カ月間のうちにTier 1のSNS事業者がネットいじめコンテンツ削除要請を再三にわたり無視した場合、あるいは、監督官が、SNS事業者が基本的なオンライン安全要件に遵守していないと判断した場合、当該サービスのTier 1ステータスを取消され、当該サービスはTier 2指定を受けることになる161。さらに、2015年オンライン安全法40条に基づき監督官はeセーフティー監督官事務所のウェブサイトに通知を掲載することができる162

     SNS事業者によるTier 1登録は任意であるが、またTier 2とは異なり法的制裁は科されない。しかし、SNS事業者はTier1に参加することで a) ネットいじめ対策へのコミットメントを示す、b) 何らかの安全対策が講じられていることの証明となる、c) SNS事業者自身がその利用規約の下にコンテンツを評価する能力を有している、これらについての証明をすることができ、これらをユーザーに対して訴求しうる等のメリットが得られる。

     2015年オンライン安全促進法は、全てのSNS事業者に対して階層スキームへの参加を義務付けているわけではないが、先に述べたようにeセーフティー監督官は、大規模なSNS事業者や監督官がTier1参加を求めたにもかかわらずその申請を行わなかったSNS事業者に対し、Tier 2指定を勧告できるようになっている。

     Tier 1及びTier 2のそれぞれのカテゴリーに属しているサービス事業者は、以下の通りである163

    【Tier 1及びTier 2に属しているサービス事業者】表A2-5
    Tier 1 Tier 2
    airG Facebook
    Roblox Instagram
    Yubo Google+
    ASKfm Youtube
    Snapchat  
    Yahoo!7 Answers  
    Flicker  
    Twitter  
    Yahoo!7 Groups  
    Musical.ly  

    出典:eセーフティー監督官事務所ウェブサイトの情報を基に作成。

    (ii)エンドユーザー通告制度(End-user notice scheme)

     ネットいじめコンテンツを投稿した人物(エンドユーザー)に対して、当該コンテンツの削除、苦情申立て人である被害者に対する投稿の自制、被害者に対する謝罪(口頭又は書面での遺憾又は悔恨の意の表明)を要求することができる制度である。監督官は、ネットいじめコンテンツを投稿したエンドユーザーを特定し、通告が最も適した対処法であるかを判断しなければならない164。特にエンドユ―ザーが青少年である場合、監督官は問題解決に柔軟に対応する必要がある。

    (iii)異議申立て

     「ソーシャルメディアサービス通告」や「エンドユーザー通告」等の内容に対してeセーフティー監督官による決定に異議がある場合、SNS事業者及びエンドユーザーは、行政控訴裁判所(Administrative Appeals Tribunal)に異議の申立てができる165

4.青少年が性行為の斡旋事件等に巻き込まれた実例とその対策における制度・法令・罰則規定等

(1)カーリー・ライアン(Carly Ryan)事件

 インターネットを介して青少年が巻き込まれた犯罪として、オーストラリア全土で最も有名な事件は、カーリー・ライアン事件である。この事件は、性的行為を目的とした青少年斡旋の事例である。

 2007年、当時15歳だった南オーストラリア州在住のカーリーがインターネット上で知り合った50歳の男に殺害された事件である。男はカーリーの気を引くために18歳のミュージシャンを偽っていた。

 カーリーの死後、彼女の母親ソニア・ライアン(Sonya Ryan)はカーリー・ライアン財団を設立、インターネット等を介した斡旋から青少年を守るための法律成立に向けてキャンペーンを行った。

(2)カーリーの法律(Carly’s Law)

 カーリー・ライアン事件の10年後である2017年に、「カーリーの法律(Carly’s Law)」と呼ばれる「2017年刑法典改正(未成年オンライン保護)法(Criminal Code Amendment (Protecting Monors Online) 2017)」が成立した。

 この法律は、インターネットや携帯電話などの電気通信サービスを利用して16歳未満の青少年に対して危害を加える、斡旋する、性的行為に及ぶ準備・計画を犯罪行為とするもので、その目的で年齢を偽ることも違法とし、オンライン上で青少年の斡旋を試みる犯罪者を取り締まるものである。違反に智する罰則は懲役10年とされている166

  2017年6月の同法施行後、同年8月に初めて南オーストラリア州の警察が同法律を適用して、アデレード在住の男を逮捕した。

 また、2018年7月には南オーストラリア州でも、州刑法が改正され(Criminal Law Consolidation (Dishonest Communication with Children) Amendment Act 2018167)、連邦刑法と同様に青少年との不誠実なコミュニケーションを取り締まる条項が新たに組み込まれた。

【2017年刑法典改正(未成年オンライン保護)法】表A2-6
(「カーリーの法律(Carly’s Law)」)
1914年刑法典 第474条25C Criminal Code Act 1995 Section 474.25C
16歳未満の人物に対し、危害を加えること、性行為に及ぶこと、性行為を目的として斡旋を行う準備又は計画のために、電気通信サービスを使用すること 以下のいずれにも該当する行為を犯罪とする:
(a)以下を目的とした準備又は計画のための行為を行うこと
    (i)16歳未満の人物に危害を加える。
    (ii)16歳未満の人物と性行為を行う。
    (iii)性行為を目的に16歳未満の人物を斡旋する。
(b)実行者が18歳以上であること。
(c)行為に電気通信サービスが使用されること。
罰則:懲役10年
例: 16歳未満の相手に危害を加えることを目的として、インターネット上で年齢を偽る。
Using a carriage service to prepare or plan to cause harm to, engage in sexual activity with, or procure for sexual activity, persons under 16 A person (the first person) commits an offence if:
(a) the first person does any act in preparation for doing, or planning to do, any of the following:
   (i) causing harm to a person under 16 years of age;
   (ii) engaging in sexual activity with a person under 16 years of age;
   (iii) procuring a person under 16 years of age to engage in sexual activity; and
(b) the first person is at least 18 years of age;
     and
(c) the act is done using a carriage service.
Penalty: Imprisonment for 10 years
Example: A person misrepresents their age online as part of a plan to cause harm to another person under 16 years of age.

2017年刑法典改正(未成年オンライン保護)法168を基に作成。

(3)青少年斡旋及びグルーミングに関する連邦・州の法令・罰則等

 連邦政府及び各州政府は、それぞれ青少年の斡旋ならびにグルーミングを禁止する法律を定めている。これらの法律は、必ずしもすべてがインターネットに特化したものではないが、それぞれ厳しい罰則を定めている。以下に、そうした青少年斡旋及びグルーミングに関する連邦・州の法律をまとめる。

【青少年斡旋及びグルーミングに関する連邦・州の法律】表A2-7
条項 最高刑 青少年の年齢

連邦

連邦刑法(1995年)

Criminal Code Act 1995 s 474.25C

Using a carriage service to prepare or plan to cause harm to, engage in sexual activity with, or procure for sexual activity, persons under 16169

16歳未満の青少年に危害を加える、16歳未満の青少年と性行為に及ぶ、性行為を目的に16歳未満の青少年を斡旋する行為の準備又は計画に通信サービスを利用すること

懲役10年

16歳未満

Criminal Code Act1995 s 474.26

Using a carriage service to procure persons under 16 years of age

16歳未満の青少年の斡旋に通信サービスを利用すること

懲役15年

16歳未満

Criminal Code Act 1995 s 474.27

Using a carriage service to "groom" persons under 16 years of age

16歳未満の青少年のグルーミングに通信サービスを利用すること

懲役12~15年

16歳未満

オーストラリア首都特別地域

Crimes Act 1900 s 66- Grooming and depraving young people170

青少年に対するグルーミング及び淫行等

懲役7~12年

(青少年が10歳未満の場合9~12年、青少年が10歳以上16歳未満の場合は7年~10年)

16歳未満

クイーンズランド州

Criminal Code Act 1899 s 218A

Using internet etc. To procure children under 16171

16歳未満の青少年の斡旋にインターネットを利用すること

懲役10年

(青少年が12歳未満の場合は懲役14年)

16歳未満

ノーザンテリトリー州

Criminal Code Act

s 131

Attempts to procure child under 16 years172

16歳未満の青少年斡旋の試み

懲役3年~5年

16歳未満

Criminal Code Act

s 132

Indecent dealing with child under 16 years. (2) (d) procures a child under the age of 16 years to perform an indecent act

わいせつ行為を目的とした16歳未満の青少年の斡旋

懲役10年

(青少年が10歳未満の場合は懲役14年)

16歳未満

ニューサウスウェールズ州

Crimes Act 1900

s 66EB

Procuring or grooming child under 16 for unlawful sexual activity173

違法な性行為を目的とした16歳未満の青少年の斡旋又はグルーミング

s 66EB(2)

違法な性的行為を目的とした意図的な青少年斡旋

懲役12年(青少年が14歳未満の場合は懲役15年)

16歳未満

s 66EB(2A)

性行為でグルーミングした青少年に意図的に会い、又は会うために旅行すること、又は、これらの行為を違法な性的行為に青少年の斡旋の目的で行うこと

懲役12年(青少年が14歳未満の場合は懲役15年)

16歳未満

s 66EB(3)

青少年をグルーミングして、青少年にわいせつな文書・画像を閲覧させ、薬物を供与し、若しくは、経済的その他の物質的な便宜を供与すること、又は、これらの行為を違法な性的行為を目的とした青少年斡旋を容易にするために行うこと

懲役10年(青少年が14歳未満の場合は懲役12年)

16歳未満

南オーストラリア州

Criminal Law Consolidation Act 1935 s 63B

Procuring child to commit indecent act etc174

わいせつ行為等を目的とした青少年斡旋

懲役10~12年

17歳未満

Criminal Law Consolidation Act 1935 s139A

Dishonest communication with children175

青少年との不誠実なコミュニケーション

139A(1)

18歳以上の者が自身の年齢を若く偽り若しくは他者になりすまして青少年と知りつつ連絡を取り、当該の青少年と会うか、または会う約束をすること

懲役5年

17歳未満

139A (2)

18歳以上の者が、青少年に対し犯罪を行うことを意図して、自身の年齢を若く偽り若しくは他者になりすまして青少年と知りつつ連絡を取ること

懲役10年

17歳未満

タスマニア州

Criminal Code Act 1924

s 125D Communications with intent to procure person under 17 years176

17歳未満の青少年斡旋を目的としたコミュニケーション

法定刑は裁判官の裁量により異なる。最高懲役21年

17歳未満

西オーストラリア州

Criminal Code s 204B

Using electronic communication to procure, or expose to indecent matter, child under 16177

16歳未満の青少年の斡旋、またはわいせつな文書・図画等に晒すことを目的とした電子通信の使用

懲役5年

(13歳未満の場合は懲役10年)

16歳未満

ビクトリア州

Crimes Act 1958 s49M

Grooming for sexual conduct with a child under the age of 16178

性行為を目的とした16歳未満の青少年のグルーミング

懲役10年

16歳未満

出典:Australian Institute of Criminology179、Victoria State Government, Justice and Regulation180及び
Australasian Legal Information Instituteの連邦・州の法律を基に作成。


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