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第3部 オーストラリア(3)

第三章 青少年のインターネット利用環境に関しての行政・事業者・学校・家庭・民間機関の対策と啓発の取組

1. 青少年保護の為のインターネット上の技術的対応策、各機関の取組概要(ペアレンタルコントロール、フィルタリング、 レイティング、ラベリング・ゾーニング等)

(1)ペアレンタルコントロール

 eセーフティー監督官事務所は、そのウェブページでペアレンタルコントロールについての情報提供を行っている181。以下、同事務所が提供するペアレンタルコントロール情報をわかりやすくまとめる。

【eセーフティー監督官事務所によるペアレンタルコントロール情報】表A3-1
種類 対象機器 フィルタリング機能概要
コンピューター PC/Windows Windows Parental Control:子供のコンピューター使用時間や使用できるアプリ、閲覧可能なウェブサイトを制限することができる。
MacOS OSX Parental Controls:子供のコンピューター使用時間、閲覧可能なウェブサイト、チャット相手を管理、モニタリング、及び制限することができる。
タブレット端末 iPad OSに組み込まれている機能制限をオンにすることでブラウザやアプリ、アプリ内課金、SNS、インターネット上の不適切なコンテンツ、データ共有(写真や場所等)、メディアストリーミング、オンラインゲームへのアクセスを制限することができる。
Android Google Playにアクセスすることにより、コンテンツ閲覧、ダウンロードのブロッキング、アプリ購入を無効にするなどの設定が可能。このほか、制限付きプロフィールを使ってセキュリティ管理や個人情報を保護することができる。
スマートフォン Google Googleファミリーリンク:13歳未満の子供を持つ家庭向けに開発されたアンドロイド端末用アプリ。
Googleデジタルウェルビーイング:スマートフォンの利用状況の詳しい情報を収集し、バランスの取れたスマートフォン利用を促進するアプリ。
iPhone Screen Time:iOS12に搭載されているペアレンタルコントロール。アプリの使用時間の制限、アプリ使用状況の監督、使用可能アプリの制限、アクセスできるウェブサイトの制限、アプリ内課金のブロッキングなど、様々な機能を備えている。

出典: eセーフティー監督官事務所のウェブサイトの情報を基に作成。

(2)フィルタリング

 オーストラリアではフィルタリングの使用が義務付けられていないため、希望者はISPが提供するフィルタリングに任意に加入する、あるいは個人的にフィルタリングソフトウェアを購入することになる。

 コミュニケーションズ・アライアンスは「家庭向けフィルター(Family Friendly Filters)」と呼ばれる認証制度を設けている。これはフィルタリングソフト等が家庭向けフィルターとして適切か否かを認証するもので、認証を受けるためには、有効性、使いやすさ、eセーフティー監督官事務所からの要請があった場合フィルタリングの更新が可能か等の厳しい選考基準を満たさなければならない。

その認証されたフィルターでは、以下の4レベルのレイティングがされている。

  • eセーフティー監督官の禁止URLフィルターリストにあるウェブサイトのブロック: 18歳以上向け
  • クラス116歳以上の子供向け
  • クラス2: 10歳から15歳までの子供向け
  • クラス3: 10歳未満の子供向け

 現在、「家庭向けフィルター」の認証を受けているフィルターは以下の3つである182

【認証を受けている家庭向けフィルター】表A3-2
フィルター名 認証クラス 認証取得日
Norton Family Premier 16歳以上の子供向け(認証クラス1) 2017年10月
Family Zone 10歳未満の子供向け(認証クラス3) 2018年7月
Australian Private Networks 16歳以上の子供向け(認証クラス1)
*ISP事業者である同社のインターネットサービスの一貫として提供
2018年6月

出典:Communications Alliance, https://www.commsalliance.com.au/Activities/ispi/fff

(3)レイティング及びラベリング・ゾーニング

 オーストラリアでは、第一章で述べた国家格付スキームに基づいた分類がレイティングに当たり、ゾーニングについてはアクセス制限システムがこれに相当する。以下に、オーストラリアにおけるインターネット上のコンテンツのレイティングとゾーニングの分類をまとめた。

【eセーフティー監督官事務所によるレイティングとゾーニングの分類】表A3-3
レイティング アクセス制限システム(Restricted Access System)の適用 格付委員会によるレイティング eセーフティー監督官による評価
RC 対象外 禁止コンテンツ 潜在的禁止コンテンツ
X18+ 対象外 禁止コンテンツ 潜在的禁止コンテンツ
R18+ 適用 許可コンテンツ 許可コンテンツ
適用されない 禁止コンテンツ 潜在的禁止コンテンツ
MA15+
・テキスト及び/又は静止画像から構成されていないもの
・有料
・営利目的
・携帯電話のプレミアムサービスが提供するもの
適用 許可コンテンツ 許可コンテンツ
適用されない 禁止コンテンツ 潜在的禁止コンテンツ
MA15+(その他) 対象外 許可コンテンツ 許可コンテンツ
G, PG, M 対象外 許可コンテンツ 許可コンテンツ
制限カテゴリー2(出版物) 対象外 禁止コンテンツ 潜在的禁止コンテンツ
制限カテゴリー1(出版物) 対象外 禁止コンテンツ 潜在的禁止コンテンツ
制限の課されていない出版物 対象外 許可コンテンツ 許可コンテンツ

出典:eセーフティー監督官事務所ウェブサイトの情報を基に作成183

 アクセス制限システムとは、年齢制限が必要なR18+及びMA15+のコンテンツへのアクセスを制御するもので、それぞれ以下のような最低条件を満たしたアクセス制御システムが施されていなければならない184

MA15+

  • コンテンツへのアクセス申請を要求する
  • 申請者による16歳以上であることの宣言を要求する
  • コンテンツの内容に関して警告を表示する
  • コンテンツへのアクセスを制御する方法を安全情報として保護者に提供する
  • 暗証番号を使用するなど、コンテンツへのアクセスを制限する

R18+

  • コンテンツへのアクセス申請を要求する
  • コンテンツプロバイダーはアクセス申請者が18歳以上であることを確認するための適切な措置を講じる
  • コンテンツの内容に関して警告を表示する
  • コンテンツへのアクセスを制御する方法を安全情報として保護者に提供する
  • コンテンツへのアクセス申請者が18歳以上であることを確認する適切な手続きを組み入れる
  • 暗証番号を使用するなど、コンテンツへのアクセスを制限する

2. 青少年の情報リテラシー向上のための活動

(1)eセーフティー監督官事務所による取組

 オーストラリアでは、eセーフティー監督官事務所が青少年の情報リテラシー能力向上を目的としたさまざまな取組を行っている。以下に主だったものをまとめた。

【eセーフティー監督官事務所による青少年の情報リテラシー能力向上のための取組】表A3-4
Young & eSafe185 立ち直る力、尊敬、共感、責任、批判的思考能力の5つのテーマを基にした青少年主導のプラットフォーム。インターネット上での体験を積極的にコントロールする能力開発を目指すもので、青少年の実体験や専門家のアドバイスが掲載されている。
YeS Project186 eセーフティー監督官事務所が2018年に立ち上げた教育者向けの新たな教育資料。ME(自分)、YOU(友人やクラスメート)、WE(学校や地域社会)の3つのテーマごとに、デジタル社会について学びそれをポジティブなものに変えていくことを目的とし、教育者向けにワークショップの進め方などのガイドラインを詳しく説明している。
The Lost Summer187 eセーフティー監督官事務所のイニシアチブで開発された11歳から14歳向けのロールプレイングゲーム。デジタルインテリジェンスの育成を目的とするもので、現実の世界で起こりうる様々なシナリオに対処し、ゲームを通じてデジタル社会に不可欠な技能を身に着けていくことを目的とする。
iParent188 eセーフティー監督官事務所による保護者向けのサイト。子供の安全なインターネット利用を助ける様々な情報やアドバイスが掲載されている。
eSafe spaces189 eセーフティー監督官とオーストラリア図書館協会(Australian Library and Information Association, ALIA)が共同で実施しているイニシアチブで、図書館を利用する子供たちに対してネットいじめの問題をはじめ、安全なインターネット利用全般に関わるサポートを提供できるよう、図書館職員を訓練する。首都特別地域で試験的に実施され、2017年2月にはタスマニアで導入されるなど、国レベルでの導入を目指す。

出典:eセーフティー監督官事務所ウェブサイトの情報を基に作成。

 この他にも、eセーフティー監督官事務所のウェブサイトでは、教育機関が利用できる様々な教材を幅広く提供している(アウトリーチプログラム)。これらは、教育関係者がどこかに出向かずにインターネット上で受けられるプログラムである。以下は、そのプログラムである。

【eセーフティー監督官事務所によるアウトリーチプログラム】表A3-5
教育者向け学習プログラム(Professional Learning Program)190 教育者を対象とした無料のオンラインセミナー。インターネット上での人間関係、ネットいじめ、安全なインターネット利用の3つのトピックについて学ぶことができる。
仮想教室(Virtual Classrooms)191 学生向けのオンラインセミナー。eセーフティー監督官事務所のプレゼンターがビデオカメラを介してライブでセミナーを行う。
地域社会向けプレゼンテーション(Community Presentations)192 保護者、精神保健従事者やソーシャルワーカー、企業、法執行機関、スポーツ団体等、それぞれの団体に特化した無料のプレゼンテーション。保護者向けのプレゼンテーションでは、ネットいじめとその通報手段、カウンセリングなどを提供する支援団体、その他安全なインターネット利用に役立つ情報を提供する。
教員養成プログラム(Pre-service Teacher Program)193 教員を目指す学生に対して、教師の立場から見た安全なインターネット利用やネットいじめについて、また自身の評判管理やオンライン上でのコミュニケーションについてなどを解説する。

出典:eセーフティー監督官事務所ウェブサイトの情報を基に作成。

(2)民間団体による取組

 青少年の情報リテラシー能力向上を目的とした民間団体による活動としては、学生、保護者、教育機関、地域社会を対象としたプレゼンテーションやワークショップ等が挙げられる。以下にその主だった団体による活動をまとめた。

【青少年の情報リテラシー能力向上を目的とした民間団体による活動】表A3-6
団体名 ウェブサイト 内容
シンクユーノウ(ThinkUknow) www.thinkuknow.org.au インターネットに関わる問題について青少年や保護者に情報提供を行っている。また、保護者と教育者を対象とした大人向けのプレゼンテーションと、初等・中等教育機関の学生を対象としたプレゼンテーションを無料で提供している。
eスマートスクール(eSmart Schools) www.esmart.org.au アラナ・アンド・マデリン財団が学校でのサイバーセーフティー向上といじめ対策として構築したプログラムで、安全で賢く責任あるテクノロジーの使用を促す教育環境を作り出す手助けをするもの。教育機関は安全なネット利用のための「効果的な学校の組織体系」「学校の計画、方針、手順」「互いを気遣い尊重する学校環境」「効果的な教育方法」「eスマートカリキュラム」「保護者と地域社会とのパートナーシップ」の6つの分野での改善を図り、校長、教育者、学生、保護者のために様々なツールと情報を提供する。現在オーストラリア全体で初等・中等教育機関を合わせて全体の約25%となる2,300超の学校が同プログラムに参加している。

eスマート図書館(eSmart Libraries)
https://www.esmart.org.au/esmart-libraries/ 「eスマートスクール」と同様にアラナ・アンド・マデリン財団が図書館に対して提供しているプログラム。現在オーストラリアの75%以上の図書館で導入されている。
eスマートデジタルライセンス(eSmart Digital Licence) https://www.digitallicence.com.au/ 青少年のインターネットリテラシー能力向上を目的に開発されたアラナ・アンド・マデリン財団が提供するサービス。教育者や保護者が学生・子供のためにライセンスを購入し、子供たちは安全で賢く責任あるインターネットの利用方法をクイズ形式学び、修了時にデジタルライセンスの証明書が授与される。
レイジングチルドレンネットワーク(Raising Children Network) Raisingchildren.net.au 子育てに関する幅広いアドバイスを提供するウェブサイト。安全なインターネット利用については、3歳~5歳、6歳~8歳、9歳~11歳、12歳~18歳の年齢別にページを設け保護者への情報提供を行っている。
また、明確なリスク分類を設定している194
1) コンテンツリスク: ポルノ、現実または仮想の暴力、ヘイトサイト、テロサイト、薬物使用・自傷行為・自殺・ネガティブなボディイメージ等のユーザー作成の有害コンテンツ
2) コンタクトリスク: インターネットを介して知らない相手からの接触、実際に会うことの要求、ネット詐欺の被害者となるリスク
3) 行動リスク: ネットいじめ、セクスティング、他人のパスワードの悪用、ネット上で他人になりすます行為、他人の金融情報を悪用した無断の購入、他人の情報を漏らすコンテンツの作成
リーチアウト(ReachOut) au.reachout.com 青少年や若者のメンタルヘルスに関してインターネット上でサポートを提供する。また保護者向けや学校向けのページを設け、安全なインターネット利用についての情報も提供している。
サイバーセーフキッズ(Cyber Safe Kids) www.cybersafekids.com.au 青少年の安全なインターネット利用に関して教育者、保護者、学生向けにセミナーを提供している。教育者向けのセミナーでは、安全で責任ある倫理的なインターネット利用について、オーストラリアの学校のカリキュラムに沿った教授法を指導する。
キッズヘルプライン(Kids Helpline) www.kidshelpline.com 5歳から25歳の青少年・若者に対して24時間体制で無料の電話・インターネットカウンセリングを行っている。またウェブサイトでは5歳~12歳、13歳~17歳、18歳~25歳の年齢別、及び保護者や学校向けのページを設け、安全なインターネットの利用やネットいじめに関する情報を提供している。このほか、通信事業者Optusと提携し、デジタルメディアリテラシーやネットいじめ、インターネット上での人間関係等、様々なトピックのワークショップを教育機関に無料で提供している。
ブレイブハーツ(Bravehearts) Bravehearts.org.au 児童保護を目的とするオーストラリア有数の慈善団体。児童保護に関わる教育訓練やカウンセリングを提供している。またそのウェブサイトで子供の安全なインターネット利用についてのアドバイスも提供している。
プロジェクトロックイット(Project Rockit) https://www.projectrockit.com.au/ 初等・中等教育機関に対しネットいじめを含むいじめ全般についてワークショップを提供している。女姉妹、ロージー&ルーシー・トーマスが設立した若者主導の団体。トーマス姉妹はサイバーセーフティーに関わる様々な賞を受賞している他、オンライン安全諮問作業部会やTwitterTrust & Safety 協議会などにも参加している。

出典:各団体のウェブサイトの情報を基に作成。

(3)安全なインターネット利用を促進するイベント

 オーストラリアでは、安全なインターネットの利用促進を目指して様々なイベント日や特別週間を設けている。以下、それらをまとめた。

【安全なインターネット利用を促進するイベント】表A3-7
ステイスマート・オンラインウィーク(Stay Smart Online Week) オーストラリア政府主催のイベント。関係機関、産業、企業やコミュニティ団体が参加し、安全なインターネット利用を呼び掛ける。
セーファーインターネットデー(Safer Internet Day) 安全なインターネット利用を促進する世界規模の年次イベント。オーストラリアではeセーフティー監督官事務所が主体となって様々なイベントを行う。
いじめ撲滅の日(National Day of Action against Bullying and Violence) いじめ撲滅の日。安全で協力的な学校社会のワーキンググループ(Safe and Supportive School Communities (SSSC) Working Group)がオーストラリア全土の学校に参加を呼び掛ける。
ホワイトバルーンデー(White Balloon Day) 慈善団体ブレイブハーツが主催するイベントで、児童に対する性的暴行の防止を呼び掛ける。
児童保護週間(National Child Protection Week) オーストラリア児童虐待育児放棄防止協会(National Association for Prevention of child Abuse and Neglect (NAPCAN)主催のイベント。児童虐待や放置の防止呼び掛け、地域社会の意識向上を目指す。
ダニエルの日(Day for Daniel) 子供たちへの身の安全保護の教育を目的とするDaniel Morcombe Foundation主催のイベント。教育機関、ビジネス、地域社会が参加し、子供の安全を促進するイベントが各地で開かれる。

出典: eセーフティー監督官事務所および各協会の情報より作成。

3. 学習の機会への取組

(1)国レベルでの取組

  オーストラリア政府は、eセーフティー監督官事務所の認証を受けた民間業者が提供するインターネットの安全利用に関するプログラムに参加する学校に対し、資金援助を行ってきた。しかし、同援助は2018年6月30日をもって終了している。従来、eセーフティー監督官事務所の認証制度は2018年12月31日で終了するものとなっていたが、その後延長され、現時点では2019年6月30日まで継続される予定となっている195。2018年6月30日時点で、以下の36団体が認証を受けており196、これの団体を中心に初等・中等教育機関で学生、教員、保護者を対象としたセミナーが開催されている。

Alannah and Madeline Foundation Limited

Baptist Care SA

Brainstorm Productions Pty Ltd

Bravehearts Foundation Limited (Bravehearts)

Bully Zero Australia Foundation

Carly Ryan Foundation

Center for Internet Safety Pty Ltd

Classroom Connections

Cyber Owls Pty Ltd

Eyes Open Social Media

FYI Education

INESS Pty Ltd (Internet Education Safety Services)

Internet Safe Training Pty Ltd

Interrelate Limited

Jacinta Docherty

Jeremy Kalbstein (Cyber Safe)

John Wiley & Sons Australia Ltd (Jacaranda)

Jonny Shannon

Jordan Foster (ySafe Solutions)

Life Education Australia

Martine Oglethorpe (The Modern Parent)

OnDigital Pty Ltd (SchoolTV)

Optus Administration Pty Limited (Optus Digital Thumb Print Program)

PROJECT ROCKIT Pty Ltd

Quality Workplace Practices Pty Ltd

Rachel Downie

Roar Film Pty Ltd (Roar Film and Roar Educate)

Safe on Social Pty Ltd

SAL Consultants & Investigation Services (Vic.) P/L (Cyber Safe Solutions)

Sex Education Australia

South Eastern Center Against Sexual Assault (SECASA)

Student EDGE Pty Ltd

The Cyber Safety Lady

WA Child Safety Services

Whitelion Inc. (Stride)

Yourtown Limited (Kids Helpline @ School)

(2)州レベルの取組

 第一章で述べたとおり、安全なインターネット利用に関する取組について、いずれの州においても、基本的には州内で統一されたプログラムの導入は行われておらず、公立・私立にかかわらずそれぞれの学校が自発的にプログラムの導入やセミナー及びワークショップ等への参加を行っている。

 しかしながら、ビクトリア州はその例外であり、同州政府は、アラナ・アンド・マデリン財団が提供する「eスマート」プログラムの参加を奨励している。2018年2月には、これまでの1220万ドルに加えて250万ドルの追加資金を投じ、私立を含むビクトリア州のすべての学校が同プログラムを無料で導入できる体制を整えると発表した197

4. コンテンツ制作者・運営者および通信事業者における、青少年に対するガイドラインの内容と現状及び課題

(1)業界規範

 オーストラリアの通信産業では、共同規制(co-regulation)と呼ばれる規制の枠組みに基づく取締が行われている。これは業界団体が業界規範を策定し、これを政府の規制機関が施行するというものである198。インターネットに関しては、インターネット産業協会(Internet Industry Association, IIA)により策定された業界規範をeセーフティー監督官が管理している。インターネット産業協会は、オーストラリアのインターネット産業を代表する業界団体であったが、2014年3月に業務を停止しその業務をコミュニケーションズ・アライアンス(Communications Aliance Ltd)が引き継いでいる。

 ISPやコンテンツプロバイダー、モバイル通信事業者には、2つの業界規範が適用される。インターネット及びモバイルコンテンツに関するインターネット業界規範(Internet Industry Codes of Practice-Internet and Mobile Content)とコンテンツサービス規範(Content Services Code)がそれにあたる。インターネット及びモバイルコンテンツに関するインターネット業界規範は、2005年に認証され、コンテンツホスト、ISP、モバイル通信事業者を規制する枠組みとされている。これら2つの業界規範における青少年のインターネット利用に関わる規定を以下にまとめる。

  1. インターネット及びモバイルコンテンツに関するインターネット業界規範

    青少年の保護に関わる条項199は、コンテンツホストの義務、ISPの義務、モバイル通信事業者の義務と3つの分野にまたがっている。

    (a)コンテンツホストの義務

     コンテンツホストとは、インターネットコンテンツのオーストラリア国内のホスト先を指し、ここではモバイル通信事業者も含まれる。コンテンツホストの主な義務は、未成年による不適切なコンテンツの閲覧を防ぐことを目的とした、エンドユーザーの年齢確認、コンテンツの警告・ラベル付けの奨励、コンテンツ削除通知への対処法の構築等である。以下、該当する条項の要約である。

    6.コンテンツホストの一般的な責任
    6.1コンテンツホストは、オーストラリア放送庁(Australian Broadcasting Authority; ACMAの前身となる政府機関)から特定のニュースグループが児童ポルノや児童性愛に関連するという通知を受けた場合、ニュースリーダー用サーバーがそのようなニュースグループからのフィードを受け取らないことを確実にするため、適切な措置を講じる。
    6.2 コンテンツホストは、自身がホスティングする年齢制限のあるコンテンツが未成年に提供されないことを確実にするため、以下のような適切な措置を講じる。
    (a) エンドユーザーに有効なクレジットカード情報の提示を要求する。
    (b) エンドユーザーが未成年でないことを証明する何等かの身分証明書の提示を要求する。身元証明書の例としては、有効な運転免許証、パスポート、出生証明書が挙げられる。
    (c)未成年がコンテンツにアクセスする前に、保護者や教師、あるいは他の責任ある成人による同意を得ることを前提としてコンテンツが販売されていることを明確に示す警告をサイト(または販促資料)に表示する。
    (d) コンテンツにアクセスする過程に、アクセスを希望する者が青少年でないことを確認する手順を含める。
    (e) モバイルコンテンツに関しては、本規範の条項15及び16に従う。
    6.3コンテンツホストはオーストラリア国内でホスティングサービスを提供する顧客に対して以下を行う。
    (a) 格付法及び関連する格付ガイドラインに基づいて未成年に不適切だと考えられるコンテンツには、それらが禁止または潜在的禁止コンテンツではなくとも、適切な警告及び/又はラベリングを使用するよう奨励する。
    (b) オーストラリアの州・準州、又は放送サービス法を含む連邦法に反するコンテンツを掲載しないよう、顧客に適切に通知する。
    (c)エンドユーザーに対するチャットルームのリスクを最小限に食い止めるための情報提供を奨励する。
    6.5 コンテンツホストはユーザーに対して以下のような情報を提供する。
    ・児童のインターネットコンテンツへのアクセス管理・監督方法についての情報
    ・「家庭向けフィルター」についての情報
    ・禁止及び潜在的禁止コンテンツについての苦情申立てについて
    7.削除通知の手順
    ・コンテンツホストはオーストラリア放送庁から削除通知を受けた場合、一定期間内に対処する対処法を擁していなければならない。

    (b)ISPの義務

     ISPの主な義務は、アカウント開設の際の年齢確認、「家庭向けフィルター」に関する情報提供、コンテンツプロバイダーに対するコンテンツの警告・ラベル付けの奨励、エンドユーザーに対する安全なインターネット利用についての情報提供等である。以下、該当する条項の要約である。

    10.アカウントの開設
    ISPはインターネットにアクセスするためのアカウントを保護者の同意なしに未成年に提供してはならず、そのために以下のような適切な対策を講じる。
    (a) アカウント開設には有効なクレジットカードを必要とする。
    (b) 免許証やパスポートなど申請者の年齢を確認する身分証明書を求める。
    (c) 未成年は保護者の同意が必要だという明確な注意書きをする。
    (d) 「家庭向けフィルター」の情報を提供する。
    (e) 申請者が未成年でないこと、またはアカウント使用前に保護者の同意を得ていることを確認する登録手続きを義務付ける。
    保護者から同意していない旨の連絡を受けた場合、ISPは当該のアカウントをできるだけ早く無効にしなければならない。
    11.コンテンツプロバイダーへの情報提供
    ISPは子供の閲覧に不適切だと思われるコンテンツについて警告/ラベル付けをコンテンツプロバイダーに対して奨励する。
    12.エンドユーザーへの情報提供
    ISPはそのホームページに「オンラインの安全性(Online Safety)」と明確に表示された項目を設け、子供のインターネットコンテンツへのアクセス管理や「家庭向けフィルター」についての情報、禁止又は潜在的禁止コンテンツの苦情申立てについての情報等を提供しなければならない。

    (c)モバイル通信事業者の義務

     モバイル通信事業者の義務は、制限コンテンツを提供する際のエンドユーザーの年齢確認、制限コンテンツと評価される可能性が高いコンテンツの評価、子供のモバイルコンテンツのアクセスの監督手段、チャットルームを使用する際のリスク軽減方法、禁止コンテンツに関わる苦情申立てについて等のエンドユーザーへの情報提供等である。以下、該当する条項の要約である。

    15.モバイル通信事業者はエンドユーザーが未成年でないことを確認する適切な手段を講じた場合に限って、制限コンテンツを提供する。適切な手段とは、有効なクレジットカード、免許証、パスポート、出生証明書等の確認が挙げられる。
    16.評価者と評価過程
    16.1 評価者は以下の資格を有していなければならない。
    (a) オーストラリア在住者
    (b) 直近の過去7年間に最低12カ月間格付審査委員会のメンバーを務めている者
    (c) OFLC(Office of Film and Literature Classification )、IIA、またはIIAが指定する他の団体が提供する適切なコースを修了していること
    (d) 本規範に基づいてコンテンツを評価する能力を有していることをIIAに証明できる者
    1994年に設立されたオーストラリアレイティング委員会の監督機関。2005年に解散され、その役割は法務省に移行された。
    16.2 評価者はモバイル通信事業者またはコンテンツプロバイダーの社員または委託者である。
    16.3 モバイル通信事業者が提供するコンテンツが性行為、暴力、ヌード、薬物使用等を含む制限コンテンツと評価される可能性が高い場合、モバイル通信事業者は当該コンテンツをエンドユーザーに提供する前に評価者による評価を依頼しなければならない。
    16.4モバイルコンテンツがリアルタイム又はライブのものである場合、評価者はそのコンテンツの性質を予想して評価を行う。リアルタイム又はライブのモバイルコンテンツが性行為、暴力、ヌード、薬物使用等を含む可能性が高い場合、エンドユーザーに対して適切な警告をしなければならない。
    16.6モバイル通信事業者は禁止コンテンツがエンドユーザーに提供されないよう、適切な処置を講じなければならない。
    17. エンドユーザーへの情報提供
    モバイル通信事業者とコンテンツプロバイダーはエンドユーザーに対し以下の情報を提供するための適切な処置を講じなければならない。
    ・モバイルコンテンツへの子供のアクセスを監視・監督する方法
    ・チャットルームに関連するリスク軽減の方法
    ・禁止または潜在的禁止コンテンツの苦情申立ての方法

  2. コンテンツサービス規範

     コンテンツサービス規範は、コンテンツサービス事業者及びホスティングサービス事業者を規制する枠組みである。同規範は、1992年放送サービス法附則7号の要求事項に準拠するものであり、2008年7月にACMAによって認証された。以下、青少年の保護に該当する条項の要約である。

    Part B: コンテンツの評価とレイティング
    6.訓練されたコンテンツ評価者(Trained Content Assessors)
    訓練されたコンテンツ評価者は、課金制のコンテンツサービス提供事業者の社員または委託者であり、訓練されたコンテンツ評価者になるための情報はIIAが提供する。
    7.評価
    指定されたコンテンツ/ホスティングサービス事業者*はコンテンツの評価を訓練されたコンテンツ評価者に依頼するかもしれない。課金制のコンテンツサービス事業者は以下の第8項が要求する場合、訓練されたコンテンツ評価者にコンテンツの評価を依頼しなければならない(ニュースや時事情報は除く)。訓練されたコンテンツ評価者は格付法、及びそれが定める格付ガイドラインと格付コードに基づいて評価を行うものとする。(*指定されたコンテンツ/ホスティングサービス事業者(Designated Content/Hosting Service Provider)とはホスティングサービス、ライブコンテンツサービス、リンクサービス、及び課金制のコンテンツサービス事業者を指す。)
    8. 課金制のコンテンツサービス事業者の義務
    ・課金制コンテンツサービス事業者は、格付審査委員会がRC、 X18+、R18+、MA15+に分類する可能性があるコンテンツを提供しない。
    ・課金制コンテンツサービス事業者は、エンドユーザーへの提供を考慮しているコンテンツについて、それが禁止又は潜在的禁止コンテンツに分類される可能性が高いと考えられる場合、訓練されたコンテンツ評価者に当該コンテンツの評価を依頼する。
    Part E: オンラインの安全性
    14.エンドユーザーへの情報提供
    ・課金制のコンテンツサービス事業者やライブコンテンツサービス事業者でホストサービスを行っている事業者は、オンラインの安全を推進しなければならない。
    ・課金制のコンテンツサービス事業者やライブコンテンツサービス事業者は、子供のチャットサービス使用に関わる安全性の問題について保護者に情報を提供する。
    ・課金制のコンテンツサービス事業者やライブコンテンツサービスが提供するコンテンツへの子供のアクセスを管理・監督するための情報を保護者に提供する。
    ・新たなコンテンツサービスを開発する際には、子供の安全を考慮する
    Part F: アクセス制限システム
    17.指定されたコンテンツ/ホスティングサービス事業者はMA15+、R18+に分類されるコンテンツについてアクセス制限システムを課すことができる。
    18.アクセス制限システムを実施する際には、エンドユーザーに対してコンテンツがMA15+、R18+であることを警告する。保護者が適正年齢以下の青少年による当該コンテンツへのアクセスを制限するための情報提供をエンドユーザーに対して行う。
    19.年齢確認及びリスク分析
    ・指定されたコンテンツ/ホスティングサービス事業者は年齢確認の証拠が適正年齢未満の年齢者によって使用される可能性についてリスク分析を行う。
    ・指定されたコンテンツ/ホスティングサービス事業者は、エンドユーザー本人名義のクレジットカード番号を取得する、本人名義の高等教育機関が発行した身分証明書、免許証、パスポート、出生証明書を確認する、等の手段を使って、身分証明が適正年齢未満の者によって使用されるリスクを軽減することができる。
    20.アクセス制限
    ・エンドユーザーに暗証番号を提供することで、アクセス制限が課されているMA15+やR18+コンテンツへのアクセスを許可することができる。
    21.事前に年齢証明申告を提出する
    ・MA15+についてはエンドユーザーが事前に15歳以上である年齢申告をした場合、R18+についてはエンドユーザーが事前に年齢証明を提出し、それが指定されたコンテンツ/ホスティングサービス事業者によって査定され受諾された場合、エンドユーザーは当該コンテンツにアクセスすることができる。
    22.品質管理措置
    アクセス制限システムには、エンドユーザーが年齢規程に準拠していないことが判明した場合にMA15+、R18+コンテンツへのアクセスを即座に禁止する措置が講じられていなければならない。
    23.チャットサービス
    チャットサービスを提供する課金制のコンテンツサービス事業者は、子供と大人間の違法な接触を最小限に抑え、そのリスクに対処するための安全対策を講じていなければならない。安全対策には以下が挙げられる。
    ・チャットサービスの年齢制限を18歳以上とする
    ・人間のモデレーター
    ・人間による監督
    ・電子フィルタリング
    ・チャットサービスへのアクセス登録をするユーザーのプロフィールの精査
    ・プロフィールの情報の制限
    ・サイトが18歳未満のユーザーによるネット検索に表示されないよう、検索結果の制限
    ・リクエストとレスポンスの手順を義務付けることで、ユーザーへのコンタクトの許可の管理
    ・ユーザーがディレクトリに表示されることに同意したプロフィールのみ検索結果に表示されるよう、検索結果の制限
    ・ユーザーが望まない接触をブロック可能とすること

(2)ISPによる取組

 多くのISPが安全なインターネット利用に関するツールや情報の提供を行っている。以下に、オーストラリアの4大ISPによる取組の概要をまとめた。

【オーストラリアの4大ISPによる安全なインターネット利用に関するツールや情報提供の概要】表A3-8
ISP
iiNet ・フィルタリングに関する情報を提供200
・オーストラリアのカリキュラムに基づいて開発された「サイバーセーフティー(Cyber Safety)」と呼ばれる安全なネット利用の教材を無料で提供している201
Optus ・安全なインターネット利用に関する情報を提供。
・Optus Digital Thumbprint: オプタスが中等教育機関を対象に提供する3回にわたる無料セミナー。安全なインターネットの利用方法、個人情報保護、ネット上における責任あるふるまいなどを教示する202
Telstra ・サイバーセーフティーに関する情報を提供。
・児童の安全なインターネット利用を助ける保護者向けの情報を提供。
・携帯電話アプリ「Telstra Mobile Protect」を提供。インターネットフィルタリングの適用、時間制限、指定したウェブサイトへのアクセスを阻止するなどの機能を備える。
・2015年6月30日以降に家庭用ブロードバンドサービスに加入した家庭に無料で(それ以外は有料で)「Telstra Broadband Protect」を提供。マルウェアなどをホスティングするウェブサイトから端末を保護するほか、ペアレンタルコントロールの設定や児童のSNS使用を監督する機能などが搭載されている203
・「eスマート図書館(eSmart Libraries)」はテルストラ・ファウンデーション(Telstra Foundation)がアラナ・アンド・マデリン財団とのパートナーシップの元、2012年に開始したイニシアチブで、図書館における賢く安全で責任あるデジタル技術の利用を促進する。テルストラ・ファウンデーションは1500の公立図書館を対象とする「eスマート図書館」の実行に800万ドルを投資しており、オーストラリアでこれまで行われてきた地域社会レベルでのネット安全については最も大規模な試みの一つに数えられる。
TPG ネット上の安全性について一般的な情報を提供。

出典: コミュニケーションズ・アライアンスのウェブサイトウェブサイト情報を基に作成204

(3)SNS事業者による取組

 SNS事業者はその利用規約において、その大半の年齢制限を13歳としている。これは児童オンラインプライバシー保護法(Children’s Online Privacy Protection Act of 1998)という米国の法律に基づく。同法は、13歳未満の児童の個人情報の収集と保存を禁止するものである。以下、eセーフティー監督官事務所が提供する情報を基に、主たるSNSやアプリによる年齢制限をまとめた205。なお、Apple社のApp StoreとGoogle社のGoogle Playの年齢制限も同時に記載した。

【主たるSNSとApple Store及びGoogle Playの年齢制限】表A3-9
SNS 最低年齢規定 App Storeの年齢制限 Google Playの年齢制限
Facebook 13歳以上 12歳以上 12歳以上
Facebook Messenger 13歳以上 12歳以上 3歳以上
Google+ 13歳以上 17歳以上 12歳以上
Instagram 13歳以上 12歳以上 12歳以上
Minecraft 年齢制限なし
(13歳未満のユーザーはMojangアカウント作成に保護者の許可が必要)
n/a M – Mature*
(Pocket Edition)
Moshi Monsters 年齢制限なし
(6歳から12歳を対象。13歳未満のユーザーは保護者のメールアドレスが必要)
4歳以上 G - General*
Skype 18歳以上(17歳までは保護者の許可が必要) 12歳以上 3歳以上
Snapchat 13歳以上 12歳以上 12歳以上
Twitter 13歳以上 17歳以上 12歳以上
WhatsApp 16歳以上 12歳以上 3歳以上
Yubo 13歳以上(17歳までは保護者の許可が必要) 17歳以上 12歳以上
YouTube 13歳以上 17歳以上 12歳以上

出典:eセーフティー監督官事務所ウェブサイトAge Guide to Social Media

(4)レイティングによる取組

  1. 国際年齢評価連合(International Age Rating Coalition、IARC)のレイティング

     IARCは、デジタル配信されるゲームとアプリの国際的なレイティング団体で、複数国のレイティング機関によって2013年に設立された。

     ゲームやアプリの開発業者は、ネット上でIARCのアンケート形式の質問に答え、それを基に自動的にレイティングが算出される。国のレイティング機関がIARCに加盟している場合は、その国のレイティング基準に即したレイティングがなされる。

     オーストラリアでは、オーストラリアレイティング機関がIARCに加盟しているため、オンラインゲーム及び/又はモバイルゲームに限ってオーストラリアレイティング機関を通さずIARCが算出するレイティングを使用することができる。上の表にあるMinecraftとMoshi Monstersがその例である。Google Play, Nintendo eShop、Windows Storeのオンラインストアで販売されるオンラインゲームにはこのレイティングが表示される206

  2. Google Playのレイティング

     Google社は、国際年齢評価連合(International Age Rating Coalition、IARC)のレイティングシステムを導入している。Google Playで提供されるアプリのレイティングは、これに準ずる。

  3. App Storeのレイティング

     Apple社のApp Storeでは、同社独自の4種類のレイティングを適用している。以下は、それらのレイティングの分類である。

    4+: 倫理的に好ましくないコンテンツは含まれていない。
    9+: 軽度の暴力、大人向けの内容、ホラー等9歳未満の子供には不適切なコンテンツを含む。
    12+: 乱暴な言葉使い、暴力、ギャンブル等12歳未満の子供には不適切なコンテンツを含む。
    17+: 性的コンテンツ、ヌード、アルコール、たばこ、薬物等17歳未満の子供には不適切なコンテンツを含む。17+のアプリを購入するには17歳以上でなければならない207

(5)コンテンツ制作者・運営者および通信事業者における課題

  1. オーストラリア法制度改革委員会による報告書

     オーストラリア法制度改革委員会(Australian Law Reform Commission、ALRC)は、2012年に「コンテンツ規制とコンバージド・メディアのレイティング(Classification- Content Regulation and Convergent Media)」と題した報告書を発表した。この中で、1992年放送サービス法によるコンテンツ規制の問題点を指摘している。その主たるものは、同法律が適用されるのは商業目的のコンテンツプロバイダーのみであるにも関わらず、オンラインコンテンツの大半が無料であること、またそれらが企業ではなく個人が作成したものであるという点である208

  2. 通信芸術省によるディスカッションペーパー

      2018年6月、通信芸術省はオンライン安全促進法及びオンラインコンテンツスキームを見直すディスカッションペーパーを発表しており、その中でユーザー生成コンテンツやSNSなどのオーバー・ザ・トップと呼ばれる極端かつ不道徳な投稿者の激的な増加が、青少年がネット上で閲覧するコンテンツの規制を非常に困難にしているとの指摘をしている。ユーザー生成コンテンツが主体となるブログ、写真・動画を共有するウェブサイト、SNSなどで性的コンテンツがますます増加しているほか、禁止または潜在的禁止コンテンツに値する過激な暴力、自殺や憎悪犯罪を煽るもの、テロ関連サイトの情報などもユーザー生成コンテンツに蔓延していると指摘されている。

     その一方で、1992年放送サービス法の附則5号及び7号、及び先に述べた2つの業界規範はスマートフォンやSNSが主流になる以前のものであり、今日のインターネット社会の現実を反映したものとは言えないと点も指摘されている209

  3. コミュニケーションズ・アライアンスとオーストラリア携帯電話通信協会による共同文書

     上記の通信芸術省のディスカッションペーパーに応えるものとして、コミュニケーションズ・アライアンスとオーストラリアのモバイル通信事業者を代表する業界団体であるオーストラリア携帯電話通信協会(Australian Mobile Telecommunications Association、AMTA)は、通信芸術省に対し共同文書を提出している。

     その中で、青少年による携帯電話使用の激増、SNSなどを通じた、従来とは異なる形でのオンラインコンテンツの利用など現代の傾向が、オンラインコンテンツスキームに反映されていない点が指摘されている。また、オンラインコンテンツスキームの成立以来、違法コンテンツのホスト先が国内から海外ホストへと移行し、削除通知の有効性と価値が衰えたと述べ、 海外ホスティング経由での青少年による違法コンテンツへのアクセスに係る問題に対処できるようオンラインコンテンツスキームの見直しが必要だと主張されている。

     同時に、現在の業界規範が10年近く前のものであることについては、「インターネット及びモバイルコンテンツに関するインターネット業界規範」並びに「コンテンツサービス規範」が1992年放送サービス法の附則5・7号の規定に縛られており、これら2つの規範の改正が困難であると主張すると共に、今後オンライン安全促進法及びオンラインコンテンツスキームが改正されるようでれば、それらは原則に基づくものとし、業界規範を改正することができるように柔軟性を持たせる必要があると述べている。

     同文書には、最後に、附則5・7号を統合しオンライン安全促進法に組み入れること、またeセーフティー監督官が執行可能なテクノロジーとプラットフォームを偏りなく規制する単一の業界規範の策定を支持する旨が記載されている210

5. 事業者と民間の紛争の解決活動と実態

(1)禁止及び潜在的禁止コンテンツに対する民間からの苦情処理

 これまで述べてきたように、オーストラリアの場合、違法・有害コンテンツは1992年放送サービス法の附則5・7号、及び業界規範により規制されているため、民間から苦情があった場合はそれらに明記された手順で問題解決が行われる。

 2016~17年及び 2017~18年のeセーフティー監督官事務所の年次報告書によると、同期間中、禁止及び潜在的禁止コンテンツをホスティングしていたオーストラリア国内のホスティングサ-ビスは一つも存在しなかった。これはオーストラリアの国内の業者が規制に遵守していたことを示している。

(2)苦情処理過程

 エンドユーザーが禁止及び潜在的禁止コンテンツだと思われるコンテンツに遭遇した場合、ISP、モバイル通信事業者、コンテンツプロバイダーに直接苦情の申立てをするか、あるいはeセーフティー監督官事務所に申し立てることになる。先に述べた業界規範が定める苦情処理過程について以下にまとめる。

  1. モバイルコンテンツの処理過程

     「インターネット及びモバイルコンテンツに関するインターネット業界規範」は、附則2号でモバイルコンテンツの苦情処理過程を規定している211。以下は、これを要約したものである。

    1. エンドユーザーがモバイル通信事業者又はコンテンツホストにモバイルコンテンツに関する苦情を申立てる。
    2. 苦情の内容が以下に当てはまるか確認する。
    a. 制限コンテンツと評価されるべきであるにも関わらず制限コンテンツと評価されていない
    b. 禁止モバイルコンテンツと評価されるべきであるにも関わらず制限コンテンツと評価されている
    c. モバイル通信事業者またはコンテンツホストが苦情が善意のもので、嫌がらせや根拠のないものではない
    3. 2の条件に当てはまる場合、モバイル通信事業者又はコンテンツホストは苦情受付の24時間以内に当該コンテンツを非公開にし、当該コンテンツの再評価を行う。
    d. 評価者が当該のモバイルコンテンツの評価が不正確であったと判断した場合、モバイル通信事業者又はコンテンツホスト及びコンテンツプロバイダーにその旨を書面で通達し、モバイル通信事業者又はコンテンツホストはそれをエンドユーザーに連絡する。その後、コンテンツプロバイダーとモバイル通信事業者は評価者による再評価に従って当該のモバイルコンテンツを処理する。
    e. 再評価の結果、当該のモバイルコンテンツの評価が正確であったと判断した場合、モバイル通信事業者又はコンテンツホスト及びコンテンツプロバイダーにその旨を通達し、モバイル通信事業者又はコンテンツホストはそれをエンドユーザーに連絡する。

  2. 未解決の苦情

     同業界規範の中で、苦情処理過程に続いて、未解決の苦情についての対応規定が記載されている。以下は、これを要約したものである。

    1. モバイルコンテンツの再評価は可能な限り速やかに行う。
    2. エンドユーザーが再評価の結果に不満足の場合、モバイル通信事業者又はコンテンツホストはエンドユーザーに第三者による解決手段についての情報を提供する。
    3. モバイル通信事業者又はコンテンツホストは適切な機関が苦情について調査を行い当該コンテンツが不正確に評価されたと判断した勧告を受けた際には、モバイル通信事業者又はコンテンツホストは当該コンテンツを当該機関の勧告に従って処理する。
    4. 再評価にOFLCへの依頼を必要とする場合、モバイル通信事業者はOFLCの再評価にかかるコストを負担する。

     また、「コンテンツサービス規範」は指定されたコンテンツ・ホスティングサービス事業者を規制するもので、苦情の申立てについては第9項で説明している。以下は、その第9項を要約したものである。

    第9項: 苦情処理
    エンドユーザーは指定されたコンテンツ/ホスティングサービス事業者にコンテンツの苦情を申立てることができる。指定されたコンテンツ/ホスティングサービス事業者は、苦情が寄せられたコンテンツが禁止または潜在的禁止コンテンツだと考えられるなど、苦情が妥当だと思われる場合は、当該コンテンツについて調査を行う。また、エンドユーザーはACMAに苦情を申立てることもできる。(現在の申立先は、eセーフティー監督官事務所。)

  3. 削除通知

     さらに、コンテンツの削除通知については、「コンテンツサービス規範」第10、11、12項で規定されている。以下は、これを要約したものである。なお、ここで言う電子出版物(Eligible Electronic Publication)とは、書籍、雑誌、または新聞、あるいはそれら文章の録音を指す。

    【最終削除通達、リンク削除通達、及びサービス停止通達の手順】図A3-10

    ホスティングサービス、リンクサービス、ライブコンテンツサービスへの最終削除通達

    (a) 電子出版物を除くコンテンツ

    (b)電子出版物

    【暫定的通達の手順】図A3-11

    ホスティングサービス、リンクサービス、ライブコンテンツサービスへの暫定的通達

    (a)電子出版物を除くコンテンツ

    (b)電子出版物

    タイプA是正措置: 当該コンテンツの提供またはホスティングを中止する。サービス停止通達の場合、ライブコンテンツサービスの提供を中止する。
    タイプB是正措置: 当該コンテンツの提供またはホスティングを中止する。サービス停止通達の場合、ライブコンテンツサービスの提供を中止する、またはコンテンツをアクセス制限システムの対象とする。

    出典: コンテンツサービス規範(Content Services Code)

(3)著作権や個人のプライバシー侵害、名誉棄損等の問題と事例

 このほか、民間と業者間で起こり得る紛争としては、著作権や個人のプライバシー侵害、名誉毀損等に係るものが挙げられるが、これらは被害者が訴訟を起こし裁判で解決されることになる。

 名誉毀損の事例としては、オーストラリア人男性がGoogleを被告として提起した名誉毀損の裁判が挙げられる。これは、2004年にメルボルンのレストランで背中を銃で撃たれたミロラド・トルクルジャ氏が、Googleの画像検索で自分の名前を検索すると彼の写真と共に犯罪組織メンバーの写真が検出されるとして、Googleを名誉毀損で訴えている事例である。

 トルクルジャ氏は2012年にビクトリア州最高裁で勝訴したものの、その4年後にビクトリア州控訴裁判所により判決が覆された。そして2018年には連邦最高裁判所が控訴裁の判決を覆し、Googleに対しトルクルジャ氏への裁判費用を支払うよう命じている212。この事例は、青少年に直接関わるものではないが、ISP、SNS事業者、モバイルキャリアーの責任を問うと言う意味で重要なものである。

6. 青少年に対して危険性があるインターネット上の情報についての相談や苦情等の受け皿としての活動とその目標

(1)eセーフティー監督官事務所のオンラインクレーム

 オーストラリアでは、eセーフティー監督官事務所のサイトから匿名で通報できるようになっている。以下は、eセーフティー監督官事務所のサイトで示されている苦情の分類カテゴリーである。

【オンラインにおけるクレームコンテンツ】表A3-12
内容に関する詳細を記入してください。
どのコンテンツが禁止されるべきと考えられますか?
(1) 児童性的虐待
(2) テロ行為の奨励
(3) 犯罪の促進
(4) 暴力
(5) 露骨な性描写のアダルトコンテンツ
(6) 過激又は攻撃的なコンテンツ
(7) 子供への不適切なコンタクト/グルーミングの疑い
(8) 人種差別等の差別
(9) 不正
(10) プライバシー
(11) 著作権違反/知的財産権侵害
(12) 名誉毀損/ネットいじめまたは嫌がらせ
(13) ウイルス

出典: eセーフティー監督官事務所のウェブサイトの情報を基に作成。

 上記の項目(1)~(6)に関してはeセーフティー監督官事務所に直接通報できるようになっており、項目⑦~⑫については、それぞれの項目を選択するとそれに応じた通報及び連絡先の情報が表示されるようになっている。例えば、⑦の「子供への不適切なコンテンツ/グルーミングの疑い」を選択すると、オーストラリア連邦警察のオンライン児童保護フォーム213にアクセスするための情報が表示される。また、⑫のネットいじめについては、eセーフティー監督官事務所はネットいじめに特化したウェブページを設けており、そこから通報できるようになっている214

(2)シンクユーノウ(ThinkUKNow)の「Get help!」

 ThinkUKNowは、「Get help!」と呼ばれるページを用意し、 オンラインコンテンツの通報手段を紹介している215。以下は、そこで示されている分類である。

  • ネット上の児童性的虐待
  • オンライン・グルーミング
  • 不適切または違法コンテンツ
  • ネット犯罪
  • ネットいじめ
  • ネット上の過激派情報

(3)ネットいじめへの苦情

 このほか、eセーフティー監督官事務所はSNS事業者とのパートナーシップの下、SNS上のネットいじめ対策に努めており、各SNS事業者はネットいじめに関わる投稿を禁止する利用規約、ネットいじめコンテンツを削除する苦情申立てメカニズム、ネットいじめコンテンツに関する苦情についてeセーフティー監督官事務所と連絡を取り合う担当者を設置するなど、それぞれネットいじめの安全対策を行っている。

7. その他(情報源に関する一覧・調査面談先一覧)

eセーフティー監督官事務所(Office of eSafety Commissioner)
ビクトリア州犯罪統計局(Crime Statistics Agency Victoria)
ニューサウスウェールズ州犯罪統計調査局(NSW Bureau of Crime Statistics and Research)
アラナ・アンド・マデリン財団(Alannah & Madeline Foundation)
オーストラリア犯罪学研究所
オーストラリア連邦警察オンライン児童保護フォーム
オーストラリア連邦警察
ビジネスインサイダーオーストラリア 
シドニー・モーニング・ヘラルド
コンテンツサービス規範
iiNet インターネット サービス プロバイダー
コミュニケーション アライアンス社(Communications Alliance)
ABCニュースオンライン(ABC News)
テルストラ社 (オーストラリア最大の公共・民間所有の通信会社)


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