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ユースアドバイザー養成プログラム
第2章 制度の概要及び業務の内容
  第1節 ユースアドバイザーとは何か?  

成人に達する年齢層の若者を対象とするサービスが開始されたのは2000年代に入ってからである。それ以降,各地でさまざまな取組が広がったが,これから解決すべき課題として浮上しているのは,関係諸機関が機能別に分離していて相互の連携が十分ではないという問題である。このような壁を打ち破って,地域ごとに「若者支援ネットワーク」を構築する必要がある。

「若者支援ネットワーク」とは,若者自身のニーズを中心に諸機関のサービスが統合され,連携のある有効な支援ができる体制である。ネットワークのセンターとして,個々人の自立の課題に沿って継続的に支援をする調整機関を置く。ここには,若者のニーズに対応できるスタッフ(たとえば臨床心理士,キャリアコンサルタント,ケースワーカーなど)とともに,若者の全体像を理解し,諸機関の連携プレーを推進する要となる「ユースアドバイザー(以下「YA」という。)」を配置する。YAは,地域の包括的なサポート体制が有効に作動するために不可欠な役割を果たす人材である。また,YAは調整機関だけでなく,ネットワークを構成する専門機関やNPO等の民間団体にも配置される。この構想は内閣府が設置した「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」(平成16年9月〜平成17年6月)が提言した地域の包括的なサポート体制構想を踏まえている。

この構想のモデルになったのは,英国のコネクションズ・サービスをはじめとする海外の事例であるが,それらの事例に共通するのは,個々の若者を十分に把握し,地域の連携体制の下で自立のための包括的・継続的な支援を個人ベースで行うという手法である。コネクションズの具体的内容に関しては本章の後半で紹介する。

●若者支援ネットワーク構想の経緯

若者の社会的自立支援は近年の重要な行政施策となってきた。平成15年の「青少年育成施策大綱」では,青少年行政の重点課題として「社会的自立の支援」及び「特に困難を抱える青少年の支援」を掲げた。「社会的自立の支援」とは,青少年が就業し,親の保護から離れ,公共へ参画し,社会の一員として自立した生活を送ることができるように支援することである。大綱は,若年層の失業者・フリーターが急増するという時代背景を踏まえて,社会的自立の中の最優先課題として「就労による自立の実現」を置き,そのための具体的な方策の一つとして,地域における就労支援のためのワンストップサービスセンター(関係機関の窓口の一元化,関連情報の集約化による包括的な一時相談の窓口)の整備など,教育施策と雇用施策の連携を強化することを掲げた。また,「特に困難を抱える青少年の支援」は,非行等の社会的不適応を起こしやすい状況にあるなど,特に困難を抱える青少年に対して,その環境や条件が改善されるよう,特別な支援を行うものとすることで,そのための具体的な方策の一つとして,医療,福祉,教育の専門家による適切な助言・指導の援助を充実することと,低所得・一人親家庭への就労支援,社会保障給付等を掲げた。

その後,内閣府が開催した「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」(平成16年9月〜平成17年6月)は,就労の不安定化や親への依存の長期化など,若者の社会的自立の遅れに関する踏み込んだ検討作業を行った。この検討作業が行われた期間にも,平成15年の4府省大臣の連名による「若者自立・挑戦プラン」を受けて,若者の悪化する雇用状況に対する国の取組が始まり,各地で支援サービスが開始された。

先の検討会から提出された報告は,座長名で次のように結んでいる。

「欧米先進国に比べて,若者の雇用問題の発生が遅かった我が国では,大人への移行の長期化に内在する諸問題を認識するのが遅かった。近年ようやく社会的関心が高まり,国としても対策に乗り出した段階にあるが,それらは雇用対策が中心となっているのが現状である。また,現在の若者問題は,景気が回復すれば解消されるという楽観的な見方や,原因を若者自身の自立意識の甘さからくるものとする見方も根強くある。しかし,これらは木を見て森を見ない認識といわざるを得ない。若者の実態はもっと複雑で,総合的視野で理解する必要性のある問題であることを指摘したい。むしろ工業化時代に形成された,社会で一人前になるための仕組みが消滅しつつある中で生じている現象と理解し,長期的視野に立って若者の自立支援方策を確立すべき段階にあるという考えに立って提言を行った。

若者の中でも,仕事に就けず社会的にも孤立した若者が特に自立の困難に見舞われている。社会階層格差の拡大という傾向は,若者の中でも明確に進行しているのである。本報告は,これらの若者が存在することに注意を喚起し,支援体制を早急に整えることを提言した。これらの若者の問題を,大人への移行の困難として再確認し,より正確な実態把握を進めながら,取組を強化することが必要である」。

この中で特に強調されているのは,最も困難を抱えた若者に対する支援体制を整備することで,次のように述べている。

「近年,各地で官民それぞれに,若者の就労支援の取組が進められているが,これらはまだ単発的であり,諸機関・団体の連携は限られている。そのため,自立するまでの継続性のある有効な支援ができてはいない状況にあり,特に若者の複合的問題(例えば家庭の複雑な事情が原因となって,学校も続けられず,仕事にも就けないなど)に対処することができないという問題を抱えている。既存の行政の壁を打ち破り,教育・生涯学習・就労・社会保障・家族・健康医療等を包括する自立支援の仕組みこそが有効性を発揮するはずである。このような仕組みを作るための具体的検討作業を,各地で官民一体となって開始するべきであることを提言する」。

そこで,なぜこのような仕組みが必要とされるのかを更に述べよう。

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