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ユースアドバイザー養成プログラム
第2章 制度の概要及び業務の内容
  第2節 自立の困難を抱える若者の実態と支援サービスの課題  

2000年代に入って以降,急増するフリーター及びニートに対する新しい支援機関(厚生労働省事業)として,各地にヤングジョブスポット,ジョブカフェ,地域若者サポートステーション,3か月合宿の若者自立塾が開設された。これらの活動と並行して,非営利法人(NPO)によるさまざまな取組も活発に繰り広げられた。このように若者に対する支援活動が進むにしたがって,これまで十分には分からなかった若者の実態が次第に把握されるようになった。把握できたのは支援機関を利用した若者という限界があるとはいえ,特に自立の困難を抱える若者は複雑な問題を抱えて“働けない状態”にあり,就労に限定した支援では効果が薄いということが分かってきた。また,学校教育が終わる年齢の場合,社会的関係が断ち切られがちであり,加齢とともに仕事や社会への復帰が困難になっている。したがって,支援が有効性を発揮するためには,早期に発見して速やかに支援を開始し,継続的で段階的な支援を続けることが必要であるが,そのためには諸機関の連携が不可欠である。最近では諸機関のネットワークづくりに積極的に取り組む地方自治体も出てきている。

ここでは主に若者自立塾,地域若者サポートステーションの支援活動を振り返り,そこから見えてくる若者自立支援の課題を整理してみよう。記述に際して,平成19年に厚生労働省が全国の若者サポートステーション及び若者自立塾の利用者並びに支援スタッフを対象に実施した調査結果を参照する((財)社会経済生産性本部,2007)。

若者自立支援には,発見(来所)−参加−出口の三つのステップがある。支援現場は入口(早期発見と誘導)及び出口(就職またはその他の社会参加)の両方で多くの課題を抱えている。

1 入口 : 早期発見と支援開始

支援機関が対象とする若者は,1年以上無業(ニート NEET: Not in Education, Employment or Training)であった者が多数を占めている。日本では,学校に行かず仕事にも従事していない若者にとって,第三の選択肢はないに等しい。

欧州連合(EU)では1997年のルクセンブルク雇用サミットで,若年者を6か月以上にわたる失業状態に放置せずに,ニュースタートという訓練プログラムへと誘導することを申し合わせ,各国が具体的施策を講じてきた。スウェーデンの“若者保証”はその期間がより短く3か月としている。職歴の初期段階にある若者にとって長期にわたる失業・無業はダメージが大きいからである。

無業のまま放置せずに,相談支援や職業訓練プログラムを経て求職活動へと向かわせる施策を実施している国と,そのような施策がほとんどなかった日本では,無業・失業の実態が異なっている。日本のように若年失業に対する明確な政策を持たない状態にあっては,生計維持の責任のない若者は,失業者ではなく無業者(ニート)になりやすい。特に,高校中退者や高卒者の場合,その年齢からして,若者の過半数が働き始める20代中盤までは無業のまま放置されやすい。しかもこの年齢の失業率は高齢者と並んで最も高く,安定した仕事に従事することが困難だという状況もある。支援機関の利用者に30歳前後が多いのは,就職氷河期世代であるということに加えて,その年齢まで若者を対象とする支援サービスが不在だったことも原因となっている。

支援機関が広く認知されて初めて,ニーズを持った若者に手を差し伸べることができるようになるが,二つの支援機関は数が少ないうえに社会的認知度が低いため,どのようにして利用者を拡大するかが課題となっている。地域若者サポートステーションは,地域の関係機関の連携体制の要となることに意義がある。しかし開設されたばかりで,今のところ若者自立塾と同様に周知度は低い。特に大きな課題は学校との連携,とりわけ中退や無業のまま卒業する生徒を多く抱えた地元の高校との連携がないことに,大きな問題がある。現状では1年間に8万人が中退をしている。一部の普通高校や通信制高校や定時制高校で中退者が多いことや,学校から仕事への移行の困難者を抱えているにもかかわらず,連携ができていない状態にある。教育行政と労働行政との連携した取組,そして学校と地域若者支援機関との連携が極めて重要である。

支援機関に来るきっかけは,自分から(48.3%),親や家族に言われて(38%)で,それ以外のきっかけは少ない。地域若者サポートステーションに比べ,若者自立塾に自分から来る例は少ない。問い合わせの9割近くが親(母親)からで,本人自身の問い合わせは極めて少ない。また,親が入塾を決意してから,子どもが入塾するまでに相当な時間を必要としているのが実状である。このように,現状では親を通して子どもを支援機関に誘導する方法で入塾を果たす例が多い。各地で親セミナーが開催され多くの親が参加している。親の意識改革とエンパワーメントによって,支援機関を積極的に利用しようという気持ちに変わることが子どもの立ち直りのきっかけとなっている。一方,子どもを抱え込み,他者の介入を望まない親も多いのが実状である。このような状況をみる限り,家族がどのような困難を抱えどのようなニーズを持っているかを見極め,適切な支援をすることが必要とされている。

一方,このような方法には限界もある。親の熱心さと行動力がない場合には放置されるからである。実際のところ,学校や社会から断絶した状態にある若者の家庭は,親に意識・情報・経済力が不足している例が少なくない。その中で親に依拠した支援は,その条件のない若者を見捨てることになりかねない。経済的な余裕のない家庭の場合,経済支援の必要性があることが必要と分かっていてもその手立てがない。その点で,現在の若者支援は中流層向けのサービスになっている。また親を通した誘導は,親の決意に時間がかかるためニートの状態が長引き年齢が高くなる傾向がある。早期支援開始のためには,問題の芽が生まれる学校段階で,学校と支援機関とが連携をとって早期介入することが何よりも有効であり,学卒後も早期に発見できるシステムの構築が必要であろう。

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