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ユースアドバイザー養成プログラム
第3章 支援対象者の理解

第3章のねらい

ユースアドバイザーとして若者支援に当たるためには,支援対象について理解する必要がある。個人を理解するためには,その人と話し合って,これまでのことや今の気持ちを聞き取ること,あるいは,同じ時間を過ごして,見えていること,感じていることを共有することも大切だろう。

そうした目の前の個人に向き合うと同時に,支援者としては,一歩引いた視点から,その背後にあるものを理解する必要がある。それは,病気であったり,障がいであったり,非行経験だったり,学校中退だったり,貧困だったりと多様だが,その専門的,社会的,歴史的文脈を理解することが,目の前の個人をより理解することを助ける。さらに支援対象者と同じ地平で悩んで出口が見えなくなることを避けさせたり,場合によっては,医療などの専門機関に早くつなぐ必要のある人を気づかせたりして,支援の効果を高めることになる。

本章は,そうした意味から,現代の若者たちを囲む社会や家族などの環境の変化と若者行動の変化,さらに,支援を要する若者たちが抱えがちな特定の課題について,それぞれ専門的な立場から現状や問題点について記述したものである。ただし,それはガイダンス的な範囲にとどまり,そのまま支援に使えるノウハウ集ではない。精神的な疾患という例を考えれば,数ページの記述で語られるところはその疾患を理解するための糸口にとどまることは理解していただけるだろう。

むしろ本章の狙いは,今,読者の方々が行っている方法に対して,ほかにもある考え方や対象者の行動のとらえ方を知る,あるいは,他にもある支援者の存在を知るというところにある。これが本章の狙いであると同時に限界である。

まず前半は,若者を取り巻く環境の変化と若者の現状を明らかにする。

取り上げるのは,以下の4点である。第1に,少子高齢化が進む中で若者の家族形成がどのように変化しているのか。第2に,雇用環境が変わる中で,学生から職業生活に移行する過程に何が起こっているのか,就労の状況と無業や失業の状況,また,よく「7・5・3問題」といわれる早期離職傾向など,若者の労働問題はどう変化しているのか。第3に,若者の意識やライフスタイル,社会の情報化が進むなかでの生活や行動,メンタルヘルス,非行・犯罪の動向など,若者の意識と生活レベルでは何が起こっているのか。第4に,政策として始まっている自立支援の現状はどのように展開しているか,である。

後半は,支援を要する若者たちに集中しがちな,特定の経験や障がい・病気などについて論じる。これらは,一人の若者に複合的な課題となっていることが少なくない。

まず,不登校・高校中退などの学校時代に起こる問題,そして社会的ひきこもり,薬物乱用,非行・犯罪,摂食障害や自傷行為・自殺行動,HIV感染症,身体障がい,知的障がい,発達障がい,精神障がいなどについて,それぞれ現場の専門家が状態の理解と対応を論ずる。

全体として,対象者を理解するための基礎知識編という位置づけになる。


  独立行政法人労働政策研究・研修機構人材育成部門統括研究員 小杉礼子
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