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ユースアドバイザー養成プログラム
第3章 支援対象者の理解
  第1節 若者を取り巻く現状  

1 若者の人口と世帯構造(少子化・晩婚・非婚化をめぐる状況)

(1)出生数と出生率

わが国の年間出生数は,第一次ベビーブーム期には約270万人,第二次ベビーブーム期には約210万人だったが,1975年に200万人に割り込み,その後減少が続いて現在に至っている。これを出生率でみると,第一次ベビーブーム期には合計特殊出生率が4.3を超えていたが,1950年以降急激に低下した。その後安定期を経て1975年に2.0を下回ってから低下傾向が始まり,それ以後低下が続いて,2005年に1.26まで落ち込んだ。近年では,欧米諸国と比較しても極めて低い水準となっている。

出生率の低下は晩婚化と晩産化によるところが大である。図3−1は,年齢階級別に見た出生率の年次推移を示しているが,生む年齢が30代へと推移していることが読み取れる。2006年には新生児の過半数(53.9%)は30代の母親から生まれている。1975年には出生児の8割が20台の女性から生まれていたことと比較してみると,晩婚化・晩産化の進行が理解できる。

図3−1 年齢階級別に見た出生率の年次推移

図3−1 年齢階級別に見た出生率の年次推移

資料:厚生労働省「人口動態統計」

(2)結婚・家族形成の動向

少子高齢化が進むにしたがって,18歳未満の児童のいる世帯の減少が続いている。全世帯に占める児童のいる世帯の割合は,1986年の段階で半分よりやや少ない状態だったが,2008年(平成20年)の時点で3割を切るほど少なくなった。特に,児童が2人または3人いる世帯の減少は1人の世帯に比べて著しい(図3−2)。

図3−2  児童の有(児童数)無別に見た世帯数の構成割合の年次推移

図3−2  児童の有(児童数)無別に見た世帯数の構成割合の年次推移

資料:厚生労働省「国民生活基礎調査」

注:平成7年(1995年)の数値は, 兵庫県を除いたものである。

日本の少子化は諸外国と比較しても顕著で,先進産業国の中でも中国・韓国・台湾・シンガポールと並んで極めて出生率の低い国になっている(超低出生率国)。少子化の原因となっている結婚の動向を見ると,晩婚化だけでなく婚姻率自体が低下している。婚姻件数は,第一次ベビーブームが25歳前後の結婚適齢期に達した1970年から1975年にかけて年間100万組を超える結婚ブームがあった。この時期と比較すると近年の婚姻率は半分近くまで低下している。婚姻率が低下していることは,未婚率が上昇していることを意味している。2005年の国勢調査によれば,男性の場合,20代後半で71.4%,30代前半で47.1%,30代後半で30%が未婚者で,女性の場合,同じく59.0%,32.0%,18.4%である。また,生涯未婚率(50歳の時点で一度も結婚した経験のない割合)は,男性で2.1%(1975年)から15.4%(2005年),女性は4.3%から6.8%へと上昇している。この数字は若い層では一段と高い。

少子化の原因となっている若年者の結婚観を見ると,男女共に9割近くが「いずれ結婚するつもり」と考えている。結婚に対する意欲は他の先進国と比較しても非常に高い。国立社会保障・人口問題研究所が継続して実施している「出生動向基本調査(独身者調査)」によれば,未婚にとどまっている理由として,「必要性を感じない」や仕事・学業・趣味を優先する意識や,「自由や気楽さを失いたくない」などが主な理由になっているが,20代後半以上になると,半数程度が「適当な相手にめぐり合わない」を理由に挙げている。また,男性の場合は,「結婚資金が足りない」を挙げる者が多く,男性の経済事情が結婚の障害になっている。特に,非正規・不安定雇用の男性の未婚率は著しく高い。女性の場合は,「仕事に打ち込みたい」を挙げる者が増加している。

若者期は,学校を卒業し,仕事に就き,社会人としての基礎を固め,やがて結婚して家庭をもつ時期とみなされてきた。現代ではこれらのプロセスに伝統的な制約がなくなっている。仕事に就くか就かないか,どのような働き方をするのか,結婚をするかしないか,どのような結婚をするのかなどに関して,個人の選択が拡大し自由度が高まっている。しかしその一方で,雇用の不安定化が進み,さらに結婚したくてもできない状況が見られる。選択の自由を手に入れた恵まれた若者と選択の自由のない中で従来の安定したレールに乗ることもできない若者がいるというように,若者の中の格差拡大あるいは二極化が見られる。

(3)離婚・同棲・婚外子の動向

欧米先進産業国では,離婚,同棲や事実婚,婚外子の増加など「新しい家族行動」が広く見られる。一方,日本では今のところ限定的である。たとえば2006年に生まれた子どものうち,98% は嫡出子(法律上の結婚をした夫婦間に生まれた子)で,婚外子は極めて少ない。そのかわりに「できちゃった婚」が増加する。子どもは結婚した夫婦の下に生まれ育つべきという規範が強いためである。しかし近年,若年層を中心に離婚率が上昇を続けていて,今後海外先進国と同じような「新しい家族行動力」現象となるのかどうか注目すべき点である。

18歳以下の青少年が一人親である比率は,1999年で8%であり,他の欧米先進国と比べると低い。しかしその後離婚率は上昇を続けていて一人親家庭は増加しつつある。各国で一人親家庭(大半が母子家庭)の貧困問題を抱えていることから見ても,今後日本でもより大きな課題となるだろう。

(4)将来人口の推計

予想を上回る勢いで少子化が進んでいるため,日本の将来人口は世界トップの少子高齢化社会になると予想されている。一般に将来推計人口として利用されている中位推計(出生率中位・死亡率中位)では,合計特殊出世率を,2055年に1.26になると仮定しているが,その結果,2005年に1億2,777万人から長期の人口減少過程に入り,2055年には8,993万人になると見込まれている。少子高齢化することは,単に人口が減少するだけでなく,人口構成上の高齢化を進める。65歳以上の老年人口は,2007年の21.5%から上昇を続け,2055年には40.5%に達すると予想されている。一方,15から64歳の生産年齢人口は2007年の8,301万人(65.0%)から減少を続け,2055年には4,595万人(51.1%)となる。

図3−3 わが国の人口構造の推移

図3−3 わが国の人口構造の推移

資料:実績値(1920〜2006年)は総務省「国勢調査」,「人口推計(各年10月1日現在推計人口)」,推計値(2007〜2055年) は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)」の中位推計による。

注:1941〜1943年は,1940年と1944年の年齢3区分別人口を中間補間した。1946〜1971年は沖縄県を含まない。


  放送大学教養学部教授 宮本みち子
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