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第3章 支援対象者の理解
  第1節 若者を取り巻く現状  

3 雇用・就労をめぐる現況

(1)失業

拡大基調にあった景気が大幅に後退する中で,若者の就業状況も急激に悪化している。雇用状況の判断のうえで最も一般的な指標といえる完全失業率の最近の状況を見ると,2002年の5.4%を底に2007年平均では3.9%まで回復したが,2009年には5.1%と再び悪化した。これは若年層にも当てはまり,図3−5に示すとおり,最近の急激な悪化は明らかである。

ここで改めて注目したいのは,壮年層(40〜54歳)に比べると,若ければ若いほど失業率は高く,また,その傾向は,景気変動の下でも変わらないということである。壮年層に比べれば,その2倍〜3倍程度の水準であることも変わらない。

図3−5 年齢段階別完全失業率の推移

図3−5 年齢段階別完全失業率の推移

資料出所:総務省統計局「労働力調査」

1980年代初めには,年齢による完全失業率の差は顕著でなかった。それが,80年代半ば頃から15〜19歳層の失業率が大幅に高まり,壮年層の4倍近くまで悪化し,さらに,1990年代末からは20〜24歳層の失業率も上昇幅が大きくなり,それ以上の年齢層との差が大きくなった。この年齢間で大きく開いた差が,景気変動が大きい昨今でもおおむね維持されているということである。

若年失業者の増加は,この頃から多くの先進諸国が経験してきたことである。背景には,経済のグローバル化が進展し,それまで若者が就いていた熟練を要さない仕事の機会が先進諸国から発展途上国へと移転したり,あるいは,労働力そのものが国際間移動したことがあったと考えられる。その後90年代にかけて,多くの国で若年失業が問題となり,さまざまな対策がとられるようになった。

わが国の場合,80年代後半以降,10代の失業率は他の年齢層に比べて特に高い状況が続いてきたが,2000年代までは若年失業問題としては意識されないできた。この対応が他の先進諸国と異なるのは,失業率の水準が他の国に比べれば低く,また,新規学卒採用の慣行が学校卒業時点で失業者になることを防いできたこと,さらに,家族がこうした若者を扶養する役割を果たしてきたことなどが大きいだろう。当時,若者の労働問題として指摘されていたのは,就職してもすぐ辞める「早期離職」であり,若者の職業意識形成が課題とされてきた。

(2)非典型雇用

1990年代には,就業している者についてもその就業形態に大きな変化が起こった。すなわち,アルバイトやパート,あるいは派遣社員,契約社員などの正社員以外の雇用形態で働く若者の著しい増加である。中高年女性のパート比率は,すでに80年代から高かったが,1990年代には,図3−6に示すように,若年層にパートやアルバイト,契約社員,派遣社員等の正社員以外の雇用形態(=非典型雇用)の者が大幅に増え,昨今では,15〜24歳(在学中の者を除く。)男性の約3割,同女性の約4割が,こうした正社員以外の雇用形態で働いている。

図3−6 若年非典型雇用者の推移

図3−6 若年非典型雇用者の推移

「フリーター」は,こうした非典型雇用者の一部に注目した名称である。

「フリーター」という言葉は,1980年代末にアルバイト情報誌が作った造語で,当初は夢の実現のためにあえて正社員にならない若者をイメージした言葉だという。しかし,1990年代の急激な非典型雇用者の増加の中でその実態が変わり,2001年の調査によれば,「夢追及型」のフリーターは12%にとどまり,正社員として応募しても採用されなかったなどの理由による「やむを得ず型」が41%,自分に合う仕事を探すためなどの「モラトリアム型」が47%だった(日本労働研究機構,2001)。

「フリーター」の数については,最近では『労働経済白書』に毎年推計が掲載されている。2008年では170万人と,最も多かった2003年の217万人からは減少しているが,2003年までは,1997年の151万人,1987年の79万人と急増を続けてきた。なお,この白書では,2003年以降の「フリーター」数は,総務省「労働力調査」を用いて推計しており,その際の定義は,15〜34歳の男女(女性は既婚者を除く。)で,<1>雇用者のうち「パート・アルバイト」の者,<2>完全失業者のうち探している仕事の形態が「パート・アルバイト」の者,<3>非労働力人口で,家事も通学もしていない「その他」の者のうち,就業内定しておらず,希望する仕事の形態が「パート・アルバイト」の者である。

「フリーター」の定義は,用いる統計調査などによって,あるいは,人によって異なることがあるが,おおむね「アルバイト・パート」に就く若者だという点は共通しているだろう。図に示した非典型雇用者のうち,「アルバイト・パート」がそれに当たるとすると,近年の「フリーター」数の減少には,「アルバイト・パート」以外での非典型雇用の増加が寄与している部分があろう。

「フリーター」の働き方については,就業機会が多いという利点がある一方,平均的労働時間は残業のない正社員並であるが年収は半分程度で,働き方としては不利であることが指摘されている。

また非典型雇用者の増加は,企業の雇用管理が正社員の採用を抑制し,非正社員を増やしていることが最も大きな要因といえる。企業を対象にした調査から非正社員の雇用理由を見ると,1990年代は一日の繁閑の差や業務の増加の理由が多かったが,2000年代に入ってからは人件費の削減を狙った導入が最も多くなった。労働時間や雇用契約期間と処遇のバランスが課題となっている。

(3)不就労

数年前から注目され始めたのが,就業していない若者,すなわち,「ニート」である。『労働経済白書』(2006年)では,この数の推計も行っているが,2008 年はおよそ64 万人となっている。この定義と数も,用いる統計や考え方により若干異なるが,非労働力(=就業者でも仕事を探している失業者でもないもの)に注目している点は共通している。

そもそも「ニート」という言葉は,日本労働研究機構(2003)が若者就業支援政策の国際比較研究の中で紹介したもので,イギリスで新たな政策対象となっている若者たちである。すなわち,若者への職業訓練を重点的に行ってきたイギリスで,1999年,16〜18歳の若者の9%が,学校に行かず,仕事もしていないし職業訓練も受けていないニート状態であることが明らかになった。そこでイギリス政府は,新たに,相談を重視した個別対応の包括的な若者支援政策を展開するに至っている。

小杉・堀(2003)は,こうしたイギリスの政策研究を背景に,日本においては積極的な求職活動をしていない無業の若者は公的支援の対象としては見過ごされてきたことを指摘し,わが国でもこれまでの政策では活性化できていない無業の若者たち,すなわち日本型ニートが存在することを指摘した。

さて,こうしたニート状態の者については,統計分析からいくつかの特徴が指摘されている。まず,性別には男性が多いが,女性の「主に家事をしている未婚者」を加えれば,男女の数は変わらない。学歴は,多様な者が混在しているが,中卒の学歴の者が4分の1を占め,大卒は1割と少ない。親と同居している者が8割弱で,こうしたニート状態の子を抱えた親の世帯の収入は,正社員の子どものいる世帯より全般に低い。特にニート状態の子どもが中卒の場合は年収300万円未満の世帯が36%,高卒の場合は28%と親の家計状態は厳しい場合が多い(労働政策研究・研修機構2009)。

また,ニート状態の者のこれまでの就業経験を見ると(表3−1),1年前に主に仕事をしていた者は,男性の9.6%,女性の15.4%にすぎず,1年以上ニート状態にある者が多い。特に男性の20代後半以降では8割前後と多い。さらに,これまでに仕事をした経験がない者も,ニート状態の男性の57.7%,女性の55.9%を占める。年齢別には,若い者に経験のない者が多いが,これは卒業などで学校を離れてからの期間が短いことを考えれば,当然の傾向である。むしろ30歳代前半でも就業経験がない者が半数近いことが問題で,彼ら,彼女らの今後の労働市場への参加は大きな困難がともなうことが予想される。

就業経験がない者の比率は,この調査の5年前,10年前の調査の方が高かった。すなわち,増加しているのは,いったん就業しながらニート状態になった人であり,ここには労働環境の問題などがあることも考えられる。

表3−1 ニート状態の者の1年前の就業状況とこれまでの就業経験

  1年前の就業状況  
仕事を主に
していた
進学・家事
などの
かたわらに仕事
通学
していた
家事を
していた
その他 不詳 就業経験の
無い者の比率
15-34歳計 9.6 1.4 13.8 0.8 72.4 2.0 57.5
男性 15-19歳
20-24歳
25-29歳
30-34歳
5.4
13.2
10.2
7.4
2.1
2.0
0.9
1.0
60.3
10.1
4.4
1.4
0.2
0.6
0.9
1.2
30.7
72.4
81.1
87.0
1.3
1.8
2.4
2.0
80.8
60.0
53.3
46.5
15-34歳計 15.4 1.2 14.9 5.9 61.9 0.8 55.9
女性 15-19歳
20-24歳
25-29歳
30-34歳
4.8
16.2
20.6
14.7
3.2
0.7
0.9
0.7
60.5
15.4
2.4
0.2
3.1
4.8
8.0
6.5
27.4
62.2
67.2
77.4
1.1
0.7
0.8
0.6
81.3
60.2
44.4
48.5

資料出所:労働政策研究・研修機構(2009)。

元データは,総務省統計局「平成19年就業構造基本調査」。

現在,求職活動をしていない理由は,就業経験のある者の場合は,まず「病気やけが」と「探しても見つからなかった」が多い。就業経験がないままニート状態でいる場合は,「病気やけが」,「探したが見つからない」は相対的に少なく,「希望する仕事がありそうにない」,「自分の知識・能力に自信がない」が多い。仕事経験がない場合の理由は,本人の意識に関わる部分が大きい。

(4)正社員からの離職と正社員への移動

若者の労働問題では,早期離職が常に問題視されてきた。新規学卒者就職者の就職から3年目までの離職状況は,厚生労働省が雇用保険の得失状況を基に把握して公表している。およそ中卒者の場合は7割,高卒者の場合は5割,大卒者の場合は3割の者が卒業後3年のうちに辞めていることから,「7・5・3離職」といわれる。図3−7には,大卒についてのみ男女別に分けて推移を示した(大卒以外は男女の差が小さい。)。これを見ると,<1>90年代初めの好況期に就職した者の離職率が低く,その後数年に就職した者の離職率が高まった,<2>97,98年に就職した者で若干低下している。ここから,不況期に就職した者で離職する傾向が高いことが分かる。卒業が不況期であったために納得がいく就職先ではなく,好況になって転職した可能性もある。離職には,低い職業意識の問題とは決め付けられない面もある。

また,図からは,大卒男性だけが特に離職率が低い状況が続いていることも分かる。このほか,企業規模により離職傾向は明らかに異なり,企業規模が小さいと離職者は多い。職場での将来の可能性や処遇の問題など,多様な要素が離職の背景にあることが考えられる。

若者のキャリアという面からとらえると,離職が転職につながっている場合は大きな問題ではないと思われるが,それが,長期の無業につながったり,短い期間に職を転々として職業能力の蓄積ができない状態に陥っているとしたら問題である。実際,離職後,次の仕事は非正社員である移動が増えている。キャリア形成の面から冷静に離職を考えるように促す,相談などの機会の提供が重要だろう。

図3−7 新卒就職から3年目までの離職者比率

図3−7 新卒就職から3年目までの離職者比率

図3−8 正社員と非正社員間の移動

図3−8 正社員と非正社員間の移動

表3−2 フリーター経験者のうち正社員になろうとした者と正社員になった者

単位:%

  2001年 2006年
フリーター経験者中 フリーター経験者中
正社員になろうと
した者
やめて正社員に
なった者
正社員になろうと
した者
やめて正社員に
なった者
男性 18-19歳
20-24歳
25-29歳
37.7
63.1
84.9
27.0
43.2
66.2
16.7
45.9
67.3
1.3
23.2
46.3
年齢層 73.4 54.9 50.5 29.7
女性 18-19歳
20-24歳
25-29歳
30.3
41.0
61.9
16.9
18.7
27.9
15.2
34.0
45.3
1.3
15.4
28.9
年齢層 52.9 24.1 36.3 19.4
男女計 63.0 39.2 43.4 24.5

資料出所:労働政策研究・研修機構(2006)

また,逆の移動,非正社員から正社員への移動は,2003年以降増加の傾向があるが,長期的には低下している。フリーターから正社員になろうとしてもなかなかなれない現実がある。さらに,最近東京都内の若者を対象に行われた調査(労働政策研究・研修機構,2006)では,正社員になろうとする者の減少も認められた。表3−2には,この調査から,フリーターのうち正社員になろうとした者と,結果として正社員になれた者の比率を示した。先に2001年の調査結果を見ると,およそ男性フリーターの7割が正社員になろうとし,約半数が正社員になっていた。女性フリーターでは,約半数が正社員になろうとし,4分の1が正社員になっていた。これに対して,2006年調査では,フリーターを辞めようとした者の比率も,結果として正社員になった者の比率も大きく下がった。

この変化には学歴別の差異があり,高卒以下の低学歴層において,正社員になろうと試みる者が特に大きく減っていた。2006年調査では,高卒以下の低学歴層ではフリーター経験をする者が男性の6割,女性の7割を超えており,低学歴層については,フリーターを経験するほうが一般的になっていた。ここから,高卒以下の者にとっては,フリーターがごく普通の進路になっただけに,キャリア形成上の危機ととらえなくなったことも考えられる。さらに,正社員経験の全くないフリーターは,高卒以下あるいは学校中退者に多かった。

学校経験を含むこれまでのキャリアの在り方が,若者たちのこれからの希望を規定していることは明らかである。また,これまでの経験によって,社会が与える機会が制限されている実態も現実にある。事実を見ることから支援が始まるのではないかと思われる。

【参考文献】

独立行政法人労働政策研究・研修機構,2005,「若者就業支援の現状と課題―イギリスにおける支援の展開と日本の若者の実態分析から」,『労働政策研究報告書No.35』,独立行政法人労働政策研究・研修機構

独立行政法人労働政策研究・研修機構,2006,「大都市の若者の就業行動と移行過程―包括的な移行支援に向けて」,『労働政策研究報告書No.72 』,独立行政法人労働政策研究・研修機構

厚生労働省,各年版,『労働経済白書』,厚生労働省

厚生労働省,各年版,『新規学校卒業就職者の就職離職状況調査』,厚生労働省

厚生労働省,各年版,『新規学卒職者の労働市場』,厚生労働省

厚生労働省,2001,『パートタイム労働者総合実態調査』,厚生労働省

21世紀職業財団,2005,『パートタイム労働者実態調査』,21世紀職業財団

総務省統計局,各年,『労働力調査』,総務省統計局

日本労働研究機構,2001,「大都市の若者の就業行動と意識−広がるフリーター経験と共感−」,『調査研究報告書No.146』,日本労働研究機構

日本労働研究機構,2003,「諸外国の若者就業支援政策の展開―イギリスとスウェーデンを中心に」,『資料シリーズNo.131』,日本労働研究機構

小杉礼子・堀有喜衣,2003,「学校から職業への移行を支援する諸機関へのヒアリング調査結果―日本におけるNEET問題の所在と対応」,『JIL Discussion Paper Series03-001』,日本労働研究機構

リクルートワークス研究所,各年版,『大学求人倍率調査』,リクルートワークス研究所

文部科学省,各年版,『学校基本調査』,文部科学省


  独立行政法人労働政策研究・研修機構人材育成部門統括研究員 小杉礼子
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