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ユースアドバイザー養成プログラム
第3章 支援対象者の理解
  第1節 若者を取り巻く現状  

4 若者のライフスタイル

(1)若者のライフコースの特徴

若者のライフコースは大きく変化している。若者が大人としての役割を負い,責任を果たせるようになる時期はずっと遅くなっている。そのため,思春期の子どもたちが抱えている問題は,「役割の喪失」だといわれている。学校教育が長期化し,現実社会での体験機会が遠いものになり,なかでも労働の世界が非日常的なものになることによって,働くことの意味が理解しにくくなる。しかも,学校教育終了後の若年労働市場の流動化が進み,経済的社会的に容易に自立できなくなっている。

1990年代末にパラサイトシングルが流行語となったが,親元に同居する期間が長くなっている傾向はどこの国でも指摘されている。若年労働市場の失業率が高く,仕事に就いても不安定で低賃金の時期が長くなっていることが背景にある。しかし,親元同居の傾向が顕著である日本,韓国,南欧のイタリア・スペインなどでは,30歳を過ぎても未婚で親と同居する若者が多く,そのことが自立意識の形成に影響を及ぼしていることが指摘されている。また,これらの国は共通して婚姻率が低下し超低出生率の国になっている。

(2)子どもの自立・若者の社会参加の実態

子どもの自立に対する親の考えをアメリカ,ドイツ,スウェーデンと比較してみると,「子どもが15歳のときにできると思うもの」と親が考えるものが,日本の場合著しく低い。「家族のための食事を作る」(8.3%),「ボランティア活動をする」(35.5%),「アルバイト等で報酬を得る」(26.6%)で,他の3か国では過半数を超えているのと比較して著しく低い。また,「将来子どもにしてほしくない家庭生活像」として,親との同居に関して,日本は1割強と少ないのに対して,他の3か国は4割から7割と高い割合を示している。家族に関する慣習の違いを表しているが,日本の場合若者が親の家にとどまる(パラサイト)ことに歯止めをかけ自立を促すという行動をとりにくい意識がある(内閣府,2004)。

若者の社会参画は,先進諸国の重要な政策となっているが,日本では政策上も実際的にも取り組みは遅れている。青少年のボランティア活動への参加率を見ると,15歳から24歳で13.4%,25歳から34歳で19.5%であるが,この数値はアメリカ,イギリス,フランスと比較すると著しく低い。小学5年生,中学2年生を対象とする子どもの社会体験活動に関しても「買い物の手伝い」,「困っている友達の相談にのる」,「体の不自由な人やお年寄りの手助けをする」,「働いてお金をもらったこと」において顕著に低い割合を占めている(文部科学省,1999)。また,地域社会への愛着度,政治への関心度も,アメリカ,スウェーデン,ドイツと比べて低い状態にある。

自立の時期が遅くなっている一方で,消費社会の拡大にともない,子どもが消費市場に参入する時期はずっと早くなっている。金銭との関係,性体験,商業市場との接触に関して,大人と子どもの境界はなくなりつつある。子ども期と青年期の境界,青年期と成人期の境界のどちらもあいまいになり,子ども期,青年期,成人期の区分は単一の尺度で測ることが難しくなっている。特に結婚制度が流動化したため,成人期とは何かを定義することが容易ではなくなっている。しかし,高学歴社会になっていることや,若年労働市場が流動化・不安定化しているために,成人年齢に達しても自立できない若者が増えている。

若者が自分自身のライフコースを選択し,生活基盤を作り,社会的自立を達成できるような社会的環境の整備が重要になってきている。

(3)子どもの貧困化の実態

グローバル経済競争が激化する中で,途上国だけでなく先進国においても社会的格差が拡大し,貧困に陥る家族や家庭ももてない人々が増加している。OECD加盟国の子どもの貧困率は2000年に約12%で増加傾向にある。ここで子どもは18歳未満を指し,貧困とは,各国の中位可処分所得水準の半分未満の所得で生活している場合をいう(OECDによる定義)。子どもの時期の貧困は,その後の成長に負の影響を及ぼすことが多く,ひいては社会の発展にとっても障害となる重大な問題である。

子どものいる世帯の貧困率を国別に比較すると,北欧諸国は4%未満と最も低く,フランス,スイス,チェコがこれより少し高い。他方,メキシコ,アメリカ合衆国,トルコは20%を超える高い割合で,ニュージーランド,イギリス,ポルトガルもそれに近い。日本は14.3%で,上位グループほどではないとはいえ,決して低くはない。

日本では,無業世帯の子どもの貧困よりも,働いている世帯における貧困(ワーキングプア)の方が多い。子どものいる夫婦で共働きをしているケースの10分の1は貧困状態にあり,低賃金・低収入の勤労者世帯の増加が,子どもの貧困化を進めているところに日本の特徴がある。また,日本でも離婚による母子世帯が増加し,子どもの貧困化の原因になっているのは海外と共通している。既婚女性の低賃金がその背景にある。

図3−9は,子どもの出生年齢集団別に,年齢と貧困率の関係を表したものである。バブル崩壊以後,年齢が上がるに従って貧困率が上昇している。

図3−9 子どものコーホート・年齢別貧困率

図3−9 子どものコーホート・年齢別貧困率

【引用文献】

内閣府,2004,『第7回世界青年意識調査報告書』,内閣府政策統括官(総合企画調整担当)

文部科学省,1999,「子どもの体験活動等に関する国際比較調査」,文部科学省


  放送大学教養学部教授 宮本みち子
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