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ユースアドバイザー養成プログラム
第3章 支援対象者の理解
  第2節 若者の抱える問題(コンプレックスニーズを持つ若者の理解のために)  

7 身体障害

身体障害とは身体機能に何らかの障害があることを言い,身体障害者福祉法により障害の範囲と程度が規定されている。身体障害と認定された者は身体障害者手帳の交付を受け,障害者自立支援法等の各種サービスを利用することができる。本稿では主な身体障害の特徴と身体障害を持つ若者の悩み,具体的な支援方法等について説明する。なお,身体障害者福祉法による障害程度等級には記載されていないが,近年クローズアップされている高次脳機能障害を主な身体障害の特徴の中に追加している。

(1)主な身体障害の特徴

ア 肢体不自由

身体障害の中で,四肢体幹に永続的な障害があるものを肢体不自由という。身体障害者障害程度等級表に示されるように範囲はさまざまで,部分的なものから全身に至るものまである。障害原因としては,脳性まひ,脳血管障害,脊髄性疾患,骨関節疾患,進行性筋萎縮性疾患や脊髄損傷,切断,頭部外傷などの疾病または外傷によるものがあり,障害の発生時期も先天性・後天性による別がある。先天性や幼児期に発生した場合,発達の状況も障害に影響することがある。

障害内容は,上肢の機能障害,下肢の機能障害,体幹機能障害,不随意運動や失調,片まひ,四肢麻痺等があり,他の身体障害(視覚障害,聴覚・言語機能障害,内部障害)や知的障害,発達障害,精神障害が重複する場合もある。

併せて,障害と合併して発生する疾病状況についても把握する必要がある。たとえば,てんかん発作や体温調節機能の障害,進行性疾病による障害の重度化などがあり,服薬管理を行っていることもあるため,健康管理面の確認も重要である。対象となる若者の個々の障害状況を的確に把握し,支援することが大切である。

さらに障害状況及び程度によって,車椅子や杖,装具等の補装具を使用する場合が多い。その他の主な補装具として,義肢(義手・義足),歩行器,座位保持装置,意思伝達装置などがあり,それぞれの使用方法や対応方法についての知識も必須である。

イ 視覚障害

視覚障害とは,生まれつき(先天性)あるいは人生の半ば(中途)で,病気や怪我などにより視力や視野といった「眼で物を見る力」が,低下(弱視)あるいは完全にない(全盲)状況のことを指す。人間が得る情報の8割は視覚に頼るものであると言われるほど,眼で物を見ることは人間の生活にとって重要であり,個人の乳幼児期から成長期には事象の概念形成に,また青年から中年期には自立した社会生活力の形成に障害の有無が大きく影響を及ぼす。したがって支援に当たっては,まず本人の視覚の状況(どのような見え方なのか)と障害を負った時期を把握することが,本人の行動特性を理解するうえで重要である。

また,一般的に視覚障害者は聴覚や触覚,臭覚といった感覚器官を視覚の代償手段として活用しているが,さらに白杖や盲導犬,点字,音声ガイドの付いた家電,音声や点字でパソコン画面を表現する機器環境等,個人に合った道具を日常生活に取り入れることにより,自立した社会生活を実現している場合が多い。このような道具の紹介や必要な訓練を受ける場所については,地域にある点字図書館や市区町村役場にて情報を得ることが望ましい。

より積極的な社会参加を目指す視覚障害者にとって,情報技術の発展は大きな支えとなっているが,その一方で家庭や地域等の諸事情により在宅生活を送らざるを得ないケースや,一般就職を希望しても職業選択の幅が狭く,個人の夢をなかなか実現できずに生活しているケースも少なくないのが現状である。    

ウ 聴覚障害

聴覚障害者とは,聴感覚に何らかの障害があるため「全く聞こえない」,あるいは「聞こえにくい」状態である方々の総称である。聴覚障害の特性(聞こえの状態)から,「ろう者」,「難聴者」,「中途失聴者」と一般的に区別しているが,実際には,その方の聞こえなくなった背景や時期,自己認識,家庭環境,教育環境等によって,個々の状況はさまざまであるということを十分認識しておくことが重要である。さらに,聴覚障害は,「聞こえない,あるいは,聞こえにくいから不便」という側面だけではない。聞こえないことによる次のような二次的障害こそが本当の意味での聴覚障害と言える。

 <1>言語習得の遅れ  

 <2>コミュニケーションの障害  

 <3>情報の障害

通常の音声言語の概念を習得する時期は2〜3歳と言われている。その時期に,耳から生の言葉を十分に聞くことができないという状況は,音声言語習得のマイナス要因となり,いわゆる「言葉の遅れ」につながる(<1>)。結果として,音声言語を介して円滑に行われるコミュニケーションの側面から見れば,人間関係を構築していくうえで非常に深刻な障害となる(<2>)。また,情報保障の面から見ると,日常生活において,「聞こえ」の問題に由来する制限や制約は多々存在する。たとえば,電車事故時の車内放送が聞こえないために,適切な対処方法が分からず無駄な時間や労力を費やしてしまうなど不利益を被るような事態が生ずることは多い。これは,単に聞こえるかどうかの問題にとどまらず,情報が十分に保障されていないが故の障害と言える(<3>)。また,聴覚障害者は,音声言語だけでなく,手話や指文字,筆談や口話(読話・発語)といったコミュニケーション手段をさまざまな場面や相手に応じて,使い分けたり併用したりすることで総合的に活用している。したがって,支援の際に注意すべきは,聴覚障害者だからこの方法でと固定的に考えるのではなく,相手の状況に合わせ柔軟に工夫する配慮が必要である。

エ 内部障害

内部障害は,心臓機能障害,腎臓機能障害,呼吸器機能障害,膀胱または直腸機能障害,小腸機能障害,ヒト免疫不全ウィルスによる免疫機能障害に分類することができる。それぞれの機能は生命を維持していく重要な機能であり,外見上は障害が見えにくいため誤解を受けたり,治療のため服薬している薬の副作用の影響を受けることも少なくない。また,長期間にわたって治療を継続している方が多く,学校生活や職業生活において,精神的,社会的にもハンディキャップを負っている。

したがって,重要なことは,それぞれの機能障害に対しての理解を深め,一人ひとりの抱えている制限や問題点等の状況を適切に把握することである。そのためには本人のみならずご家族,主治医の意見を十分聞くことである。そして,安心して学校生活や職業生活を送ることができるように,たとえば通院や体調面の配慮等関係機関,並びに関係職員との環境調整が必要である。

オ 高次脳機能障害

高次脳機能障害は,交通事故等による外傷や脳血管障害等による脳の損傷によって,記憶・注意・遂行機能,社会的行動など日常生活や社会生活を送るうえで重要な機能に影響が生じた状態である。たとえば,新しいことを覚えられない,物事に集中できずミスが多くなったり,計画的かつ効率的に作業を遂行できない場合や感情や行動を抑制することが困難になり,対人技能で問題となる場合もある。そのため,受傷前と受傷後の大きな変化により,本人,ご家族,周囲の人間が戸惑い途方に暮れることも少なくない。

交通事故等により高次脳機能障害となった若年者の方が,学校生活や職業生活の維持,新規就労をするためには多くの支援が必要になる。しかし,評価や検査により障害を正しく把握し,障害特性に合った代償手段を獲得,環境調整等を行うことにより,学校生活や職業生活を維持することも可能である。まずは高次脳機能障害支援拠点施設等の専門機関に相談し,適切なリハビリテーションを受け,各種制度を活用することである。さらには,ご家族が一番の支援者になるため,同じような悩みを抱えているご家族や当事者で構成されている家族会等が各地域で活動しているので,家族会等を活用するとよい。

(2)身体障害を持つ若者の悩み

障害を持つ若者は,障害に起因する悩みから,健常者の若者と同様の悩みまでを持っている。また,身体障害によりさまざまな制約を受け経験不足により自分に対して自信を持てないでいる若者も多い。その悩みに傾聴するとともに共感し,潜在的な若者のニーズを掘り起こし,時間をかけながらも自信が持てるよう支援を行う。下記に障害を持つ若者の悩みの一例を示す。

(3)具体的な支援方法

ア 支援計画

まずは,障害の有無に関わらず,支援対象となる若者,一個人として接する姿勢が大切である。人と人とのつながり(信頼関係)を築けなければ良い支援はできない。その上で,障害を持つ若者のニーズ,障害及び疾病の状況,ADL(日常生活動作)の状況,生育歴,家庭・社会環境等を十分に把握し,必要な支援につなげることが重要である。注意するべきこととして,自立を阻害する恐れがあるため,障害を持つ若者にとって必要のないことまで支援する必要はない。若者の声をしっかりと聴いて,表面上の悩みの解決だけではなく,潜在するニーズに対して,将来性も踏まえた上での支援計画を立てることが大切である。

イ 地域のネットワークの構築

障害を持つ若者への支援はライフステージに沿って継続する必要がある。地域のネットワークを活用し,専門機関にスムーズにつなげられるよう市町村の障害福祉関連部署,出身の特別支援学校,障害者支援施設,社会福祉協議会,就業・生活支援センター等の就労や生活に関わる支援団体等とネットワークを構築することが大切である。

【参考文献】

朝日雅也ほか,2006,『平成18年度障害者雇用ガイドブック』,独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構

国立身体障害者リハビリテーションセンター更生訓練所職能部,2004,『平成15年度職能訓練修了者就労状況等調査結果報告書』,国立身体障害者リハビリテーションセンター

牛山武久,2006,『高次脳機能障害者支援の手引き』,国立身体障害者リハビリテーションセンター

国立身体障害者リハビリテーションセンター病院 高次脳機能障害リハビリテーション委員会編,2006,『高次脳機能障害について理解を深めていただくために』,国立身体障害者リハビリテーションセンター

聴力障害者情報文化センター,2005,『聴覚障害者の精神保健サポートハンドブック』,聴力障害者情報文化センター


  国立身体障害者リハビリテーションセンター更生訓練所 三好尉史
 上野久美子, 丸山華子, 春日井中
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