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第4章 さまざまな社会資源─関係分野の制度,機関等の概要,関係機関の連携等─
  第1節 関係分野の制度の概要,関係法規等(社会の仕組み)  

5 児童福祉の仕組み

(1)児童福祉の仕組み

ア 児童福祉の対象

児童福祉の総合的かつ根本的な法律である児童福祉法では,「すべて児童は,ひとしくその生活を保障され,愛護されなければならない」と規定されている。同法では,「児童」の定義を「満18歳に満たない者」と規定している。 11)

児童福祉の対象となる施策は,保育や健全育成などのすべての子どもや家庭を対象とした施策から,子ども虐待などの特別なニーズを持つ子どもや家庭への対応まで幅広く,関係施策も多岐にわたる。また,法律上は「児童」という言葉が使われるため,本稿では児童福祉という言葉を使用する。しかし,「子どもの権利条約」等が示す子どもの権利の観点と,子どもを取り巻く環境,特に家庭も視野に入れて考える必要があるため,「子ども家庭福祉」とも表現される。つまり,子ども本人に関することから,その子どもを取り巻く家庭や地域までもが対象といえる。

イ 児童福祉の総合法としての児童福祉法

児童福祉法は,昭和22年に制定され,平成19年に制定60周年を迎えた。同法は,基本精神として,すべての子どもを対象とした福祉の積極的増進,あるいは健全育成を基本理念とし,その時々の社会のニーズに合わせて改正を繰り返しながらも,現在まで児童福祉の基盤として位置づけられている。

児童福祉法は6章構成となっており,「総則」(第1章),「福祉の保障」(第2章),「事業及び施設」(第3章),「費用」(第4章),「雑則」(第5章),「罰則」(第6章)で構成されている。

表4−2 児童福祉法の構成

内容
第1章 総則 定義/児童福祉審議会の設置/実施機関/児童福祉司・児童委員・保育士の養成
と資格要件
第2章 福祉の保障 療育指導等/居宅生活の支援/助産施設;母子生活支援施設及び保育所への入所
/障害児施設給付費,高額障害児施設給付費及び特定入所障害児食費等給付費
並びに障害児施設医療費の支給/要保護児童の保護措置等/雑則
第3章 事業及び施設 児童自立生活援助事業/相談支援事業/放課後健全育成事業/児童福祉施設
(助産施設,乳児院,母子生活支援施設,保育所,児童厚生施設/児童養護施設
/知的障害児施設/知的障害児通園施設/盲ろうあ児施設/肢体不自由児施設
/重症心身障害児施設/情緒障害児短期治療施設/児童自立支援施設
/児童家庭支援センター),里親
第4章 費用 費用の負担・徴収(国庫/都道府県/市町村)
第5章 雑則 機関の連携/保育所の拡充/児童福祉施設の運営報告など
第6章 罰則 児童福祉法違反事項等

児童福祉法の総則には,「すべて国民は,児童が心身ともに健やかに生まれ,且つ,育成されるよう努めなければならない。」(第1条),「すべて児童は,ひとしくその生活を保障され,愛護されなければならない。」(第1条第2項)ことが規定されている。また,その責任は保護者だけのものではなく,「国及び地方公共団体は,児童の保護者とともに,児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。」(第2条)とされる。これらについては,「児童の福祉を保障するための原理であり,この原理は,すべて児童に関する法令の施行にあたって,常に尊重されなければならない。」(第3条)と規定されている。

ウ 児童の虐待等の防止に関する法律

厚生労働省は1992年から全国の児童相談所における子ども虐待対応件数を集計,公開している。 子ども虐待対応件数の急激な増加により,議員立法によって2000年に児童の虐待等の防止に関する法律が成立した。

(2)児童福祉に関わる主な施策の体系と仕組み

先述のように,児童福祉の総合法として児童福祉法が制定されているが,その他にも対象に応じていくつかの法律が制定されている。なお,障害者施策については,本書の「障害者福祉の仕組み」を参照されたい。

表4−3 児童福祉施策の概要

  主な児童福祉施設等 目的 主な法律

要保護児童施策(児童自立支援施策/相談援助事業等も含む)

乳児院

乳児(保健上,安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には,幼児を含む。)を入院させて,これを養育し,あわせて退院した者について相談その他の援助を行うこと

児童福祉法/児童虐待防止法/DV法/児童売春防止法

児童養護施設

保護者のない児童(乳児を除く。ただし,安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には,乳児を含む。以下この条において同じ。),虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて,これを養護し,あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うこと

里親

保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童を養育すること

児童自立支援施設

不良行為をなし,又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ,又は保護者の下から通わせて,個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い,その自立を支援し,あわせて退所した者について相談その他の援助を行うこと

児童家庭支援センター

地域の児童の福祉に関する各般の問題につき,児童,母子家庭その他の家庭,地域住民その他からの相談に応じ,必要な助言を行うとともに,児童福祉法第二十六条第一項第二号及び第二十七条第一項第二号の規定による指導を行い,あわせて児童相談所,児童福祉施設等との連絡調整その他厚生労働省令の定める援助を総合的に行うこと

助産施設

保健上必要があるにもかかわらず,経済的理由により,入院助産を受けることができない妊産婦を入所させて,助産を受けさせること

児童健全育成施策

児童厚生施設

児童遊園,児童館等児童に健全な遊びを与えて,その健康を増進し,又は情操をゆたかにすること

児童福祉法

保育施策

保育所

日日保護者の委託を受けて,保育に欠けるその乳児又は幼児を保
育すること

特に必要があるときは,日日保護者の委託を受けて,保育に欠けるその他の児童を保育すること

児童福祉法/次世代育成支援対策推進法/少子化社会対策基本法/就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律

母子保健施策

保健所,保健センター,母子保健センター等

母子保健に関する各種の相談に応ずるとともに,母性並びに乳児及び幼児の保健指導を行い,又はこれらの事業にあわせて助産を行うこと

母子保健法/地域保健法/児童福祉法

母子・寡婦福祉施策

母子生活支援施設

配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子及びその者の監護すべき児童を入所させて,これらの者を保護するとともに,これらの者の自立の促進のためにその生活を支援し,あわせて退所した者について相談その他の援助を行うこと

児童福祉法/児童扶養手当法/母子及び寡婦福祉法/DV法/生活保護法

障害児(者)施策

知的障害児施設

知的障害のある児童を入所させて,これを保護し,又は治療するとともに,独立自活に必要な知識技能を与えること

児童福祉法/障害者自立支援法/障害者基本法/知的障害者福祉法/知的障害者福祉法/特別児童手当等の支給に関する法律

知的障害児通園施設

知的障害のある児童を日々保護者の下から通わせて,これを保護するとともに,独立自活に必要な知識技能を与えること

盲ろうあ児施設

盲児(強度の弱視児を含む。)又はろうあ児(強度の難聴児を含む。)を入所させて,これを保護するとともに,独立自活に必要な指導又は援助をすること

肢体不自由児施設

肢体不自由のある児童を治療するとともに,独立自活に必要な知識技能を与えること

重症心身障害児施設

重度の知的障害及び重度の肢体不自由が重複している児童を入所させて,これを保護するとともに,治療及び日常生活の指導をすること

情緒障害児短期治療施設

軽度の情緒障害を有する児童を,短期間,入所させ,又は保護者の下から通わせて,その情緒障害を治し,あわせて退所した者について相談その他の援助を行うこと

児童福祉法により,地方自治体は児童福祉審議会を設置し,子どもの福祉等に関する調査審議を行うこととされている。子どもに関する相談や子ども虐待問題への対応は,市区町村及び児童相談所等の相談援助機関が実施する。なお,児童相談所は,都道府県,政令指定都市,一部中核市に設置されている。また,施策ではないが,各地域での子育てネットワーク等の組織 12) や母親グループ,あるいは児童養護施設入所経験のある当事者団体 13) ,民間団体などは,交流やセルフヘルプなどを通じて重要な役割を果たしている。また東京,神奈川では子どものシェルター 14) も設立された。

(3)権利主体としての子ども

児童福祉の目的は,子どもの福祉,更に言うと子どもの最善の利益を保障することであり,「権利主体としての子ども」という視点が重要である。この視点は,昭和53(1978)年にポーランドが草案を提出し, 1989年の国連総会で採択され,わが国も158番目の締結国として平成元(1989)年に批准した「子どもの権利に関する条約」の趣旨に沿う。なお,「権利主体としての子ども」という言葉は,批准に先立つ平成5(1993)年に「厚生省子どもの未来21世紀プラン」報告書に盛り込まれた。たとえば一時保護所や児童養護施設などの入所型施設において,「子どもの権利(・責任)ノート」が作成・配布されている。また,児童養護施設内の虐待事件の発覚も重なり,児童福祉施設最低基準に施設側からの過度な人権侵害を防止し,子どもの権利を護るため「懲戒権の濫用の禁止」(9条の2),「苦情への対応」(14条の2)が盛り込まれた。行政,施設,あるいは子どもから見て中立的な立場に立つ第三者委員会 15) やオンブズパーソン 16) 等も一部自治体で実現されている。加えて, 平成19(2007)年の「児童虐待防止法及び児童福祉法の一部を改正する法律」(平成20年施行)により,法律の目的に「児童の権利利益の擁護に資すること」が明記されることとなった。

(4)児童福祉に関する最近の主な動向

ア 次世代育成支援対策推進法及び少子化社会対策基本法

わが国の急速な少子化の進行と,その影響を踏まえ,次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ,育成される社会の形成を図るために次世代育成対策とその総合的な実施に向けて, 平成15(2003)年に策定された。目的及び基本理念が策定され,国,地方自治体,事業主,国民の責務や雇用環境の整備,保育サービスの充実等の基本施策の策定などが盛り込まれた。

次世代育成支援対策推進法により,区市町村,都道府県,そして一部事業主は次世代育成支援対策推進計画を策定することとなっている。平成21(2009)年度には,次世代育成支援対策後期計画が策定され,平成22年(2010)年度より実施される予定である。

イ 認定子ども園

平成18(2006)年に,保育と教育を一体的に行い,地域において子育て支援を行う「認定子ども園」事業がはじまった。

ウ 要保護児童に関しての児童福祉法,児童虐待防止法等の改正

平成9(1997)年には,児童養護施設と児童自立支援施設は,それまでの保護・養育に加え,子どもの自立支援を行うこととされた。また,平成16(2004)年には,乳児院,児童養護施設,児童自立支援施設,情緒障害児短期治療施設について,退所後のアフターケアの実施等が役割として加えられるとともに,虐待の定義の拡大,国及び地方自治体の責務の強化,通告要件の拡大,警察への援助依頼,要保護児童対策地域協議会の設置等が盛り込まれた。さらに, 平成19(2007)年の改正により,児童相談所が児童の安全確認等のための立入調査等の強化,保護者に対する面会・通信等の制限の強化,保護者に対する指導に従わない場合の措置の明確化等が盛り込まれ, 平成20(2008)年度4月に施行される。改正にともない,保護者援助のガイドライン等のツールが作成され,児童相談所運営指針等に盛り込まれた。

平成21(2009)年には,法務省により子ども虐待対応についての検討が行われ,課題の整理が行われた。子どもへ虐待を行なった親に治療義務を課すための「親権一時停止」などが検討されるなど,今後大きな改正の可能性があり,同行に注目する必要がある。

エ 里親に関する支援の強化

他の先進諸国と比較して,日本では保護された後,施設で養育される子どもの割合が極めて高い。厚生労働省は,家庭的な養育の推進を目指して施設の小規模化,里親施策の充実を推進してきた。里親手当の総額や都道府県・指定都市・児童相談所設置市による里親支援機関,およびその委託実施ができるようになるなど,里親支援の強化が行なわれている。

(5)要保護児童対策地域協議会の設置

要保護児童地域対策協議会は,地域の関係機関が連携し,ネットワークを構築することにより,援助のニーズのある子どもや家庭を早期発見し,問題が深刻化する前に対応することと,加えて複数の機関による多様な視点からの情報と援助方針の共有を図る目的で法制度化された。法制度化以前より,子ども虐待対応のためにそれぞれの自治体や地域独自でネットワークを構築する動きはあった。平成16年の児童福祉法改正より,設置が進められてきたが,さらに平成19年(平成20年4月施行)の改正では,区市町村に設置の努力義務が課せられた。

協議会への参加機関としては,地域の福祉・保健・医療機関(児童相談所,保健所,自治体,病院等),司法・警察機関(弁護士会,警察),保育・教育機関(教育委員会,保育園,幼稚園,小・中学校等),地域のサービス資源(民間団体,民生児童委員等)などが想定される。協議会の有効な活用に向けて,ただネットワークの形式を整えるだけでなく,実効的な関係作りや情報共有を行う必要がある。また,事例のたらい回しを防ぐために,事例や状況に応じて,主たる担当機関,調整機関を定めておく必要もあろう。さらに,多様な機関が参加するため取り扱われた情報が不必要に漏らされることのないよう,参加機関,及び参加者には守秘義務が課せられる。

要保護児童地域対策協議会の有機的な運用のために,以下のような三層構造が推奨されている。

ア 代表者会議(年数回程度)

地域のさまざまな機関の代表者が出席し,各関係機関同士の取り組みを理解し,参加機関同士の理解と連繋を進める。要保護児童地域対策協議会の在り方について実務者会議での政策提言を審議したり,互いの要望等を共有・検討する。

イ 実務者会議(月1回程度)

地域のさまざまな機関の実務者,及び相談・援助担当者が出席し,新たな事例と,これまで見守り等で情報共有,及び対応してきた事例の経過の確認等を行う。(月1回程度)

ウ 個別ケース検討会議

新たな事例,あるいは見守り等で情報共有,及び対応してきた事例について,関係機関で情報共有や援助方針・対応についての協議が必要な状況が生じた際に,必要に応じて開催される。

【参考文献】

高橋重宏・山縣文治・才村純編,2007,『子ども家庭福祉とソーシャルワーク(社会福祉基礎シリーズ)』,有斐閣

厚生労働省,2007,「「要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)スタートアップマニュアル」の公表について」,厚生労働省(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv14/)

厚生労働省,「児童虐待防止法及び児童福祉法の一部改正法の概要」,(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/

pdf/dv-boushikaisei19-gaiyouzu.pdf)

加藤曜子,2005,『市町村児童虐待防止ネットワーク−要保護児童地域対策協議会へ』,日本加除出版


  日本子ども家庭総合研究所研究員 有村大士

11) 一部の施設では,児童養護施設から大学等へ通う場合など,個別の理由により,18歳以上でも児童福祉法の対象となる場合がある。
12) 代表例として,「新座子育てネットワーク(http://ccn.niiza-ksdt.com/)」などがある。
13) 代表例として,児童養護施設生活経験者による「日向ぼっこ(http://hinatabokko2006.main.jp/)」「なごやかサポートみらい
(http:nagoyakamirai.web.fc2.com/)」や里親のもとでの生活経験者による「さくらネットワーク」などがある。
14) 「カリヨン子どもセンター(http://www.h7.dion.ne.jp/~carillon)」や「子どもセンター・てんぽ(http://www3.plala.or.jp/tempo/)」などがある。
15) 代表例として,神奈川県「子ども人権審査委員(http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/13/1359/jinken/ryouiku4.html)」などがある。
16) 代表例として,「川西市子どもの人権オンブズパーソン事業(http://www.city.kawanishi.hyogo.jp/post/kdm_onbs/)」などがある。
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