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ユースアドバイザー養成プログラム
第4章 さまざまな社会資源─関係分野の制度,機関等の概要,関係機関の連携等─
  第1節 関係分野の制度の概要,関係法規等(社会の仕組み)  

6 教育制度の仕組み

わが国教育制度は,学校教育と社会教育に大別される。

(1)学校教育制度

ア 教育の機会均等と無償性

教育制度は,わが国においては学校教育と社会教育に大別されるが,いずれも法律によって制度化されている。最も基本的な法律は憲法で,その第26条において,「すべて国民は,法律の定めるところにより,その能力に応じて,ひとしく教育を受ける権利を有する。すべて国民は,法律の定めるところにより,その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は,これを無償とする。」と,教育の機会均等と義務教育について規定している。さらに具体的なことは法律で定めるとしているが,それは教育基本法と学校教育法である。

昭和22年に制定された教育基本法は平成18年に改正されたが,(昭和22年の)同法は第4条で「教育の機会均等」の原則として,「人種,信条,性別,社会的身分,経済的地位又は門地によって,教育上差別されない。」こと,国及び地方公共団体の義務として,障害のある者に対する支援,経済的理由による修学困難な者に対する奨学の措置が規定している。また,義務教育の無償性に関しては,第5条で国・公立学校では授業料を徴収しない旨が規定されている。憲法では義務教育を無償とする旨を定めているが,これは宣言的な規定であり,具体的に何をどこまで無償とするかは,別途法律で定めることになっているのである。教育基本法で規定している無償性は,国立と公立学校における授業料の不徴収までであるが,昭和38年に「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」が制定され,憲法が規定する無償性の範囲は義務教育諸学校(小学校,中学校,中等教育学校の前期課程並びに特別支援学校の小学部及び中学部)にまで拡大された。また,授業料の無償性は国・公立学校に限定されているが,教科用図書(文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書。文部科学省が著作の名義を有する教科用図書とは特別支援学校対象の図書のこと)は,私立学校も含め,すべての義務教育諸学校に適用されている。

なお,海外に設けられている日本人学校は,法律が属人主義でなく属地主義であることから,日本の国内法上は正規の学校ではないので,国内の私立学校と同じように授業料は徴収されているが,教科用図書は,教育を受ける権利を有する子女を保障するという精神に従って,海外子女教育振興財団(わが国の海外子女・帰国子女教育の振興を図るため昭和46年に外務省と文部省(当時)共管の財団法人として設立された公益法人)を通して海外子女に無償で配布されている。

なお,以上は該当するすべての者に対する平等の保障措置であるが,学校教育法第19条は,「経済的理由によって,就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては,市町村は,必要な援助を与えなければならない。」としている。

以上のような制度は,経済的地位などによって義務教育を受ける権利が阻害されないように保障することが目的であるという意味で保障義務といわれている。

イ 義務教育制度

前述したように,義務教育については無償性が憲法と教育基本法に規定されているが,その義務教育の範囲などに関しては,学校教育法が定めるところとなっている。

憲法第26条に規定されているように,義務を負うのは保護者(子に対して親権を行う者。親権を行う者のいないときは,未成年後見人)であって,教育を受ける子女にとっては権利としてとらえられている。これは子女を就学させる保護者の義務という意味で就学義務といわれる。また,教育基本法第5条3は「国及び地方公共団体は,義務教育の機会を保障し,その水準を確保するため,適切な役割分担及び協力の下,その実施に責任を負う。」としている。これは国及び地方公共団体の保障義務と設置義務を定めたものである。

義務教育を受ける権利を有する子女についての規定の仕方には,大別すると,年齢主義,課程主義,年数主義の三つがある。年齢主義は年齢による規定であり,課程主義は所定の課程を修了するまでの期間による規定,年数主義は年数による規定であるが,現在のわが国の義務教育規定は年齢主義によっている。すなわち,学校教育法は義務教育の期間を,満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから満15歳に達した日の属する学年の終わりまで,と規定している。これは年齢主義による義務教育規定で,万一,15歳に達するまでに小学校を終了できない場合には,そこで義務教育は終わることを意味している。

ウ 学校体系

学校体系の基本は,学校教育法が定めている。まず第1条が,この法律でいう学校の種類を,「幼稚園,小学校,中学校,高等学校,中等教育学校,特別支援学校,大学及び高等専門学校」としている。ここでいう大学は短期大学と大学院を含んでいる。これらの学校は第1条に定められていることから1条学校と通称されている。中等教育学校は,平成11年に導入された学校で,中学校と高等学校の教育を一貫して施すことを目的とした制度である。このほかにも学校教育法は,専修学校と各種学校について定めている。専修学校は,修業年限が1年以上など一定の条件を満たした教育施設であり,各種学校は専修学校以外で学校教育に類する教育を行うものである。特別支援学校は,盲学校,聾学校,養護学校などを総称する学校制度である。

1条学校は,公の性質を有するものであることから,国,地方公共団体及び法律の定める法人以外は設置することができないことになっている。

以上は文部科学省の所管する教育機関・施設であるが,厚生労働省など他の行政機関が所管する教育訓練施設も多い。特に,文部科学省所管の教育施設と関連が深いのは,就学前の幼児を対象とした保育所や看護関係の養成機関などである。

エ 教育の目的・内容など

教育基本法は,教育の目的及び理念を第1〜4条で規定している。教育基本法には,家庭教育,私立学校,社会教育などについての条項も設けており,したがって,同法が規定する教育の目的及び理念は,社会教育はもちろんあらゆる教育において尊重されなければないないといってよいであろう。

学校教育法は,義務教育で達成すべき目標を10項目とし,さらに,幼稚園,小学校,中学校,高等学校,中等教育学校,特別支援教育,大学,高等専門学校,専修学校の目的をそれぞれに規定している。大学,高等専門学校,専修学校以外については,さらに教育の目標などより細かい点についても規定している。特に,小・中・高等学校に共通することとして,体験的な学習活動,特にボランティア活動など社会奉仕体験活動,自然体験活動その他体験活動の充実に努めるものとすること,この場合,社会教育関係団体その他の関係団体及び関係機関との連携に十分配慮しなければならないことを規定している。

具体的な教育内容の基準については,中央教育審議会の答申に基づいて文部科学省が学校種ごとに策定する学習指導要領が定め,それに沿って各学校は教育課程を編成することになっている。小・中・高等学校などの場合には,検定を受けたまたは国が作成する教科用図書を使用することが法的に義務付けられているが,この検定・作成も学習指導要領に準拠して行われている。

なお,学校教育に関する法律で,教育の目的・内容に関わる重要な法律として,文字・活字文化振興法がある。同法は,すべての国民の生涯にわたる基本理念を定めたものであるが,特に,学校教育における理念として,「すべての国民が文字・活字文化の恵沢を享受することができるようにするため,その教育の課程の全体を通じて,読む力及び書く力並びにこれらの力を基礎とする言語に関する能力(以下「言語力」という。)の涵養に十分配慮されなければならない。」と規定している。

オ 教員制度

幼稚園から大学までの1条学校については,学校園種別ごとに資格要件が定められている。幼稚園から高等学校までの初等・中等教育については免許制度があり,該当免許を保有し,公立学校の場合は各都道府県の行う採用試験により,私立学校の場合は各学校の裁量によって採用などが行われている。大学については,免許制度はなく,学位,研究歴,教育歴,社会的活動歴などに基づく各機関による審査をもとに採用・確保・昇任などが行われている。

(2)社会教育制度

ア 社会教育の定義

社会教育は,社会教育法第2条において,「学校の教育課程として行われる教育活動を除き,主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動(体育及びレクリエーションの活動を含む。)をいう。」と定義されている。また,第1条では,同法の目的を,教育基本法の精神に則り,社会教育に関する国及び地方公共団体の任務を明らかにすることとしている。第2条の定義によると,社会教育は学校教育以外で主として青少年と成人を対象として組織的に行われているものということで,目的は問われていない。第3条1では,国及び地方公共団体の任務を,「この法律及び他の法令の定めるところにより,社会教育の奨励に必要な施設の設置及び運営,集会の開催,資料の作製,頒布その他の方法により,すべての国民があらゆる機会,あらゆる場所を利用して,自ら実際生活に即する文化的教養を高めるような環境を醸成するように努めなければならない。」としている。これは第1条における「教育基本法の精神に則り」という理念の具体的措置を規定したものと言ってよいであろう。教育基本法は前述したように,教育の機会均等の精神を規定しているが,社会教育法第3条はこの精神を社会教育においても配慮しなくてはならないとしているのである。

しかし,これはあくまでも国及び地方公共団体の任務であって,国及び地方公共団体が任務として行うものだけが社会教育というわけではない。第2条で規定されている定義に沿っているものは,それを行う主体を問わず,すなわち民間の行うものも社会教育に含めて考えるのが一般的である。

イ 社会教育施設

前項で述べたように,社会教育は概念として公的な主体が実施するものに限定されるわけではないが,国及び地方公共団体は,社会教育の奨励に必要な施設を設置・運営などを行うことがその任務と規定されているのである。これまで国及び地方公共団体が設置・運営してきた主な施設としては,公民館,博物館,図書館が挙げられる。公民館については社会教育法に詳細な規定があり,博物館と図書館については,別途,独立して博物館法,図書館法がある。これらの施設は社会教育施設と総称されている。

博物館と図書館の設置主体は,国,都道府県,市町村,民間など多様であるが,公民館は市町村が設置することが原則になっている。それ以外の場合は,公民館設置の目的をもって民法第34条の規定により設立する法人でなければならないと,設置主体が限定されている(民法34条:「学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他の公益に関する社団又は財団であって,営利を目的としないものは,主務官庁の許可を得て,法人とすることができる。」)。

社会教育には専門的職員として社会教育主事と社会教育主事補があり,社会教育を所管する教育委員会事務局に配置されており,社会教育施設にはそれぞれ必要なスタッフが置かれることになっている。公民館の場合には,「館長を置き,主事その他必要な職員を置くことができる。」(社会教育法27条1)とされているが,主事には特に資格要件はない。また,博物館には学芸員,図書館には司書をそれぞれ資格要件が定められた専門的職員として置くことになっている。

(3)生涯学習

以上,学校教育と社会教育の制度について,法的規定を中心に述べたが,両者を通底する理念として「生涯学習」がある。これについては法的あるいは公的に確定した定義はないが,平成2年に「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」(通称,生涯学習振興法)が制定されている。

これは「国民が生涯わたって学習する機会があまねく求められている現状にかんがみ,生涯学習の振興に資するための都道府県の事業に関しその推進体制の整備その他の必要な事項を定め,及び特定の地区において生涯学習に係る機会の総合的な提供を促進するための措置について定めるとともに,都道府県生涯学習審議会の事務について定める等の講ずることにより,生涯学習の振興のための施策の推進体制及び地域における生涯学習に係る機会の整備を図り,もって生涯学習の振興に寄与すること」を目的とする法律である。

なお,生涯学習と並んで生涯教育という言葉もある。ユネスコによって提唱されたのは生涯教育であったが,教育という言葉に,一方的に教えるというイメージ付着しているなどの理由から生涯教育という言葉は近年忌避され,生涯学習という言葉が一般的になっている。しかし,学校教育あるいはそれに準じた教育を生涯にわたって必要に応じて,あるいは興味などに応じて繰り返すという制度としてOECD が提唱したリカレント教育の重要性は広く認識されている。

【参考文献】

教育制度研究会編,1984,『要説 教育制度』,学術図書出版 

新井郁男・二宮皓,2003,『比較教育制度論』,放送大学教育振興会

新井郁男・牧昌見編著,2007,『教育学基礎資料』,樹村房


  上越教育大学名誉教授 新井郁男
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