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ユースアドバイザー養成プログラム
第4章 さまざまな社会資源─関係分野の制度,機関等の概要,関係機関の連携等─
  第1節 関係分野の制度の概要,関係法規等(社会の仕組み)  

7 少年司法の仕組み

(1)少年司法と保護手続

少年(20歳未満の男女)が犯罪その他の非行(触法,ぐ犯)を行ったとき,国の機関がその少年をどのように取り扱うか,その手続の基本的な理念と構造を定めた法律が「少年法」である。犯罪少年の取扱いについては,少年法の規定が優先的に適用されるので,少年法は,犯罪と刑罰について定めた「刑法」や,犯罪事件に関する国の手続を定めた「刑事訴訟法」の特別法ということになる。少年法の理念は,非行のある少年を健全に育成する(少年に対し非行性を克服して,その個性に見合った成長発達を遂げさせる)ことである(少年法第1条,「児童の権利に関する条約」第3条,第6条,第18条など)。

非行少年の取扱いについての手続には,「保護手続」と呼ばれるものと「刑事手続」と呼ばれるものがある。保護手続とは,家庭裁判所(少年部)が少年事件を受理してから,調査・審判を経て終局決定を行うまでの手続のことである。これに対して,少年事件の刑事手続とは,家庭裁判所が調査または審判の結果,事件を検察官に送致した場合(少年の刑事事件)にとられる手続であり,公訴の提起から刑事裁判を経て,有罪・無罪及び刑が確定するまでの手続のことである。この手続は,基本的には成人の刑事事件の手続と同じである。

いずれの手続も司法機関である裁判所による手続であるが,その前後に行政機関による手続がある。すなわち,非行ないし非行少年に関する「発見活動」が前にあり,その活動の大部分は警察によって行われる。また,保護処分または刑事処分(刑罰)に付された少年に対しては,少年刑務所や少年院(矯正施設),児童自立支援施設や児童養護施設(児童福祉施設)などによる「施設内処遇」や,保護観察所による「社会内処遇」が行われるが,それぞれの段階に応じて,手続の内容は各種の法令によって定められている。「少年法」の規定の多くは,保護手続に関するもので,少年の犯罪事件に対する捜査機関の活動や刑事裁判の手続については,ごくわずかの特別規定を置くのみで,原則として刑事訴訟法の規定によるものとしている。しかし,非行少年に対する手続は,どの段階においても,少年の健全育成という理念が働くので,手続の全体を広義で保護手続と読んでさし支えない。

そこでこの広義の保護手続をその進行過程に従って区分すると,おおよそ次のようになる。第1に,非行が発見されて家庭裁判所に事件が送致されるまでの手続,第2に,家庭裁判所が事件を受理してから終局決定を行うまでの手続,そして第3に,家庭裁判所の終局決定後の手続である。この第3段階の中には,処分決定に対する不服申し立ての手続,審判により保護処分に付された少年及び検察官に送致され,刑事裁判の結果,刑事処分に付された(刑を科せられた)少年に対する処分執行の手続など各種の手続が含まれる。これらの手続の内容及び関係法令は多様であり,全体を把握するためには深い学習が必要である。学習の入口として,澤登俊雄『少年法−基本理念から改正問題まで』中公新書,専門的な体系書として,同著『少年法入門第4版』有斐閣,実務上の手引書として,田宮裕・廣瀬健二『注釈少年法』有斐閣,『別冊ジュリスト147号 少年法判例百選』などが適当である。

手続の詳細を知ることについては,上記著書等による各自の学習に委ねることとし,以下では,少年司法を学ぶうえで特に必要な「少年法」と「児童福祉法」との関係について概観し,さらに,ユースアドバイザーの活動に関わりが深いと思われる非行少年に対する「社会内処遇」としての「保護観察」制度について概説する(平成19年6月15日公布された「更生保護法」により,法整備と処遇内容の充実・強化が図られた。)。

(2)少年法と児童福祉法との交錯

14歳未満の少年に限られる触法事件と14歳未満の少年のぐ犯事件は,警察の補導で済まないときは,まず児童相談所に送られ,そこで児童福祉法上の行政的な措置がとられることになる。その措置には種々のものがあり,個々の児童の状況に応じて適当な措置が選択される。児童福祉法が児童またはその保護者に対して予定している措置として,訓戒,誓約書提出,児童福祉司・児童委員等による指導,児童家庭支援センターへの指導委託,里親・保護受託者への委託,児童養護施設・児童自立支援施設等への入所などがあり,多様である(児童福祉法第26条,第27条)。この多様な措置の一つとして家庭裁判所送致がある。つまり,家庭裁判所は,14歳未満の非行少年については,児童相談所長(形式的には都道府県知事)から送致されたときだけ,審判権が認められるわけである。このように,14歳未満の少年の非行事件については,児童福祉法を優先的に適用するというのが法の趣旨である。

家庭裁判所は,児童相談所から送られてきた14歳未満の触法・ぐ犯少年について,その他の非行少年と同様に調査・審判を行い,必要なときは保護処分を課す。他方,家庭裁判所は,警察等から送致され審判に付された少年に対し,保護処分よりは児童福祉法に定められている措置の方が相当だと判断したときは,事件を児童相談所長に送らなければならないとされている(少年法第18条第1項)。さらに,非行少年に限られないが,児童相談所が児童福祉法の措置を適用している少年について,その行動の自由を制限したり自由を奪うような強制的措置が必要になったときは,家庭裁判所から具体的な指示をともなう許可をもらわなければならないとされている(少年法第6条第3項,第18条第2項)。このように,少年法と児童福祉法は相互に交錯しながら,対象少年の保護に最適な方法をとることが予定されている。

(3)「更生保護法」の新設と保護観察制度の充実・強化

「更生保護法」の新設により,保護観察制度に関する法整備が行われるとともに,処遇内容についても充実・強化が図られた。新法の諸規定のうち,特に少年事件に関連する部分につき,重点的に見ていくことにする。

ア  保護観察の目的と実施方法・・・・・・更生保護法は第1条に目的規定を置く。それによると,「犯罪をした者及び非行のある少年に対し,社会内において適切な処遇を行うことにより,再び犯罪をすることを防ぎ,又はその非行をなくし,これらの者が善良な社会の一員として自立し,改善更生することを助ける」ことが更生保護の目的であると規定している。そして同法第49条第1項は,保護観察の目的と実施方法につき,基本的な枠組みを規定する。すなわち,保護観察は,対象者を社会内に置き,遵守事項による一定の義務付けを行いながら,保護観察所が,対象者を「指導監督」するとともに,必要な「補導援護」を与えることにより,自立と改善更生を図る措置であると定めている(指導監督・補導援護の内容については,同法第57条,第58条に具体的に示されている。)。

    以上は,1号観察から4号観察までに共通する枠組みであるが,このうち,保護観察処分少年(1号観察)と少年院仮退院者(2号観察)は,少年審判によって保護処分を課せられた者であるのに対し,仮釈放者(3号観察)と保護観察付執行猶予者(4号観察)は,刑事責任を問われて刑罰を科せられた者である。したがって,保護観察の基本的枠組みについて,両者間に相違はないが,その執行に当たっては,1号観察,2号観察については,少年法の目的も踏まえる必要がある。そこで同法第49条第2項は,「保護観察処分少年又は少年院仮退院者に対する保護観察は,保護処分の趣旨を踏まえ,その者の健全な育成を期して実施しなければならない。」と規定している。

イ  遵守事項の整備・充実・・・・・・保護観察は,対象者を社会内に置いて処遇する制度であるから,その処遇を成り立たせる前提条件として,対象者に対し,遵守事項による一定の義務付けを行うことが不可欠となる。遵守事項には,一般遵守事項と特別遵守事項がある。更生保護法は,これまでの法律には規定されていなかった一般遵守事項として,「保護観察官又は保護司の呼出し又は訪問を受けたときは,これに応じ,面接を受けること」及び「保護観察官又は保護司から,労働又は通学の状況,収入又は支出の状況,家庭環境,交友関係その他の生活の実態を示す事実であって指導監督を行うため把握すべきものを明らかにするよう求められたときは,これに応じ,その事実を申告し,又はこれに関する資料を提示すること」を守り,「保護観察官及び保護司による指導監督を誠実に受けること」が明記された(第50条第2号)。保護観察においては,対象者との接触が処遇全体の基礎に置かれるから,このような遵守事項は,成人,少年を問わず,すべての対象者によって遵守されなければならない。

    一般遵守事項に加えて,必要に応じ,特別遵守事項が保護観察対象者に義務付けられる。更生保護法では,対象者が特別遵守事項に違反したときは,仮釈放の取り消しなどの「不良措置」に結びつくことがあり,1号観察については,保護観察所長の申請による収容処分への変更(少年法第26条の4第1項),2号観察については,少年院への戻し収容処分(更生保護法第72条第1項)と結びつくことがある。特別遵守事項にはそのような法的性質があることを踏まえたうえで,「保護観察対象者の改善更生のため特に必要と認められる範囲内において,具体的に定めるもの」とし,具体的に定める対象となる事項の範囲として6項目を挙げている(第51条第2項)。

ウ  特別遵守事項の設定・変更・取消し・・・・・・従来の法律では,特別遵守事項は,保護観察の開始時に必ず定めるものとされ,一度定められると,その後の保護観察の期間を通して,付加,変更または取消しができなかった。しかし,これでは処遇の弾力性を欠き,結果としてその有効性を発揮できないおそれがあるので,更生保護法では,保護観察開始時には特別遵守事項を設定しなくてもよく,保護観察の途中でそれを設定したり,変更することができ,さらに必要がなくなった特別遵守事項は取り消すものとした(第52条,第53条)。

    特別遵守事項の設定・変更ついては,保護観察処分少年(1号観察)に限っては特別の定めがある。すなわち,保護観察所長は,保護観察処分を言い渡した家庭裁判所の意見を聴き,それに基づいて,特別遵守事項を定めたり,変更したりすることができるとされている(第52条第1項)。

    この趣旨の規定は,廃止された「犯罪者予防更生法」にもあったが(第38条第1項),「少年審判規則」には,これを必要とする詳細な規定がある。「保護処分の決定をした家庭裁判所は,当該少年の動向に関心を持ち,随時,その成績を視察し,又は家庭裁判所調査官をして視察させるように努めなければならない」(第38条第1項)。

    「保護処分の決定をした家庭裁判所は,必要があると認めるときは,少年の処遇に関し,保護観察所,児童自立支援施設,児童養護施設又は少年院に勧告することができる。」(同条第2項)。「家庭裁判所は,執務上必要があると認めるときは,いつでも,参考書類の返還を求めることができる。」(第37条の2第3項)。さらに,少年院から仮退院中の者に対する戻し収容処分(更生保護法第72条)及び保護観察所長の申請による収容処分への変更(少年法第26条の4第1項)など,家庭裁判所は,保護処分決定後も少年の処遇につき一定の関与ができることとされている。このような背景の下で,「保護処分をした家庭裁判所は,当該保護観察対象者に対し,特別遵守事項が過度に人権を制約するものとなったり,恣意的に設定・変更されたりすることのないよう改めることはもとより,当該保護観察対象者の処遇において,どのような特別遵守事項が必要かつ相当であるかについて意見を述べることとなるものと考えられる。」 。 17)

    特別遵守事項のほかに,保護観察所長は「生活行動指針」を定めて対象者に示すことができる(更生保護法第56条)。対象者はこれに即して行動するように努める義務を負うことになるが,違反しても,直接不良措置に結びつかない。

エ  遵守事項不遵守と処分内容の変更・・・・・・遵守事項を遵守しないことが原因で,保護観察所長からの申請に基づき,保護処分の決定をした家庭裁判所が,保護観察を取り消す内容の決定をする場合がある。

    その一つが,少年院への戻し収容である(更生保護法第71条,第72条)。保護観察所長の申出により,地方委員会が,少年院を仮退院して保護観察中の者(2号観察)が遵守事項を遵守しなかったと認めるときは,仮退院者を少年院に送致した家庭裁判所に対し,これを少年院に戻して収容する旨の決定の申請をすることができる。従来「遵守しない虞」があるときも戻し収容ができたが,更生保護法で「遵守しなかったと認めるとき」に要件が絞られた。

    保護観察処分少年(1号観察)については,遵守事項違反を直接の理由として施設内収容処分に移す措置は,これまで設けられていなかったが,平成19(2007)年11月1日に施行された「少年法等の一部を改正する法律」により,1号観察についても,遵守事項不遵守による収容処分決定の手続が新設された(少年法第26条の4第1項;更生保護法第67条)。保護観察処分少年が遵守事項を遵守しなかった場合,保護観察所長が警告を発することができることとされ,さらに,それにもかかわらず,その者がなお遵守事項を遵守せず,その程度が重く,かつ,保護観察によってはその改善更生を図ることができないと認めるときは,保護観察所長の申請により,家庭裁判所が決定をもって,少年院送致または児童自立支援施設等送致の保護処分をすることができるとされた。しかし,「警告」の内容,遵守事項不遵守の「程度が重く」の判断など,明確でない要件があり,今後の適正な運用が期待される。

オ  保護観察の担い手・・・・・・保護観察制度の担い手は,全国50か所にある保護観察所の保護観察官と保護司である。保護観察官は,地方更生保護委員会の事務局と保護観察所に配置されている一般職の国家公務員であり,「医学,心理学,教育学,社会学その他の更生保護に関する専門的知識に基づき,保護観察,調査,生活環境の調整その他犯罪をした者及び非行のある少年の更生保護並びに犯罪の予防に関する事務に従事する。」(更生保護法第31条)。これに対し,保護司は,法務大臣から委嘱を受けた民間篤志家(ボランティア)であり,その身分は,非常勤の国家公務員である。保護司の使命については,「社会奉仕の精神をもって,犯罪をした者の改善及び更生を助けるとともに,犯罪の予防のため世論の啓発に努め,もって地域社会の浄化をはかり,個人及び公共の福祉に寄与すること」(保護司法第1条)と定められている。さらに,「保護司は,保護観察官で十分でないところを補い,地方委員会または保護観察所の長の指揮監督を受けて,保護司法(昭和25年法律第204号)の定めるところに従い,それぞれ地方委員会又は保護観察所の所掌事務に従事するものとする。」との規定も置かれている(更生保護法第32条)。

    多くの国が保護観察制度を置いているが,中でも「日本の保護観察は,常勤の国家公務員である保護観察官と民間ボランティアである保護司を中心に,更生保護施設等関係機関との協力の下に実施されていることに特色があるとされてきた。」という指摘もあり,さらに,両者の協働態勢の在り方として「専門性,地域性等保護観察に必要な知見を相互に補完し合える対等なパートナーシップの関係でなくてはならないだろう。」という主張も有力に行われている。 18)

    保護観察官の専門性と保護司の地域性とが相互に補完し合えば,社会内処遇の効果を十分高めることができるであろう。しかし現実の問題として従来から指摘されていたのは,保護観察所職員定員があまりにも少なく,保護観察事件を担当できる職員数の確保が困難であり,多くを保護司に委ねざるを得ないこと,関連して,保護観察官の専門性向上に困難がともなうこと,保護司については,高齢化と並んで,都市化の進行による「地域への通暁性」を持つ人材の確保が困難なこと,地域社会の変容により保護司の役割が相対的に低下しつつあることなど,わが国の保護観察制度の特色を維持し,かつ発展させるという目標の前には,さまざまな克服すべき困難な課題が数多く横たわっている。

    2007年12月1日から施行された「更生保護法」は,以上の状況を踏まえたうえ,わが国の保護観察制度の特色を維持し発展させるためさまざまな施策を生み出すことができるような法制度とするため,立法の上で工夫をこらした成果として受け止めるべきである。このこととの関連で新法の規定を見ると,同法第61条に「保護観察の実施者」と表記された条項があり,その第1項には,「保護観察における指導監督及び補導援護は,保護観察対象者の特性,とるべき措置の内容その他の事情を勘案し,保護観察官又は保護司をして行わせるものとする。」と規定されている。これにつき,次のような解説が行われている。「たとえば,特異重大事犯や暴力的性向の強い者などで処遇上特別の配慮を要する事案など,官が自ら全面的に担うべき事案については,保護観察官に直接担当させることや,保護司が担当している事案であっても,権力的な措置を考慮しなければならないような場合には,適切に保護観察官を関与させることなどが求められることとなる。」。 19)

【参考文献】

少年法全体については,

澤登俊雄,1999,『少年法』,中公新書

澤登俊雄,2008,『少年法入門第4版』,有斐閣

保護観察については,本文で引用した

鎌田隆志,2007,「更生保護法の解説−少年事件に関連する規定を中心として」,『家庭裁判月報59(12)』,

刑事立法研究会編,2007,『更生保護制度改革のゆくえ』,現代人文社

などを参照されたい。


  國學院大學名誉教授 澤登俊雄

17) 鎌田隆志,2007,「更生保護法の解説−少年事件に関連する規定を中心として」『家庭裁判月報59(12)』80〜81頁,最高裁判所事務總局家庭局
18) 刑事立法研究会編,2007,『更生保護制度改革のゆくえ』164・168頁,現代人文社
19) 鎌田隆志,2007,「更生保護法の解説−少年事件に関連する規定を中心として」『家庭裁判月報59(12)』55〜56頁
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