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ユースアドバイザー養成プログラム
第4章 さまざまな社会資源─関係分野の制度,機関等の概要,関係機関の連携等─
  第2節 ネットワーキング  

11 現場の実践例(宿泊型若者自立支援 若者自立塾・栃木の実践から)

「若者自立塾・栃木」(主催:財団法人ユースワーカー能力開発協会,共催:NPO法人 NICE,空とぶモニョンゴロ村)は,宇都宮市から車で45分の芳賀郡市貝町を拠点に活動を行っている。市貝町は人口約12,000人の小さな町で,「若者自立塾・栃木」は田舎型の若者自立塾であると言える。

栃木県では栃木県労働政策課が中心になり,早い時期から若者の自立支援のためのネットワークを構築し始め,平成19年度には県内115の機関・団体で「若者自立支援ネットワーク会議」を設立した。「若者自立支援ネットワーク会議」の構成メンバーは,県内各市町村の担当課,各地勤労青少年ホーム,ハローワーク,保健所,労政事務所,教育事務所,高等産業技術学校,健康福祉センター,居場所や自立支援プログラム等を運営するNPO,キャリア支援を行うNPOや企業,授産施設,発達障害者支援センター,ジョブカフェ,とちぎ若者サポートステーション,栃木障害者職業センター,栃木県農業会議など,教育,福祉,労働等の分野,地域の枠を越え,若者に携わる幅広い団体・機関がつながっている。

「若者自立塾・栃木」もこのネットワークの一員であり,ネットワーク(地域社会資源)を最大限に活用し,私達だけではできない支援を他の機関との協力のもと行っている。また,同会議では事例検討会を定期的に開催し,それぞれの立場からの意見や提案を共有し,より良い支援についての方策を深めている。

次に,「若者自立塾・栃木」のネットワークにおける具体的な連携を,入口(入塾),訓練期間中,出口(就労)の三つのステージで整理すると以下のようになる。

(1)入口(入塾)におけるネットワークの活用

支援対象者の発見,関係性の構築,参加への誘導は「若者自立塾・栃木」単独ではどうしても限定的になる。しかし,広域・多層に支援対象者及びその保護者にアクセスできるネットワークメンバーからの情報発信やリファー(紹介)により,より多くの人が入塾につながることができている。あるいは逆に若者自立塾・栃木へ相談があっても,入塾の要件を満たさない,または,精神疾患や発達障害を抱え支援が困難な場合には,居場所や発達障害者支援センター等を紹介するなど,ネットワークをいかし,より適切なマッチングを行っている。また,他の支援団体との合同イベント「若者自立支援大相談会」も平成19年度は県内で5回開催し,若者支援に対する理解を広げるとともに,多様な支援の周知を図っている。

(2)訓練期間中のネットワークの活用

就労に向けての訓練では,地元企業とのネットワークが重要である。企業における職業体験を通じ,仕事に対する視野を広げ,働くことの意欲を高めることは「若者自立塾・栃木」の実施プログラムの中でも非常に重要なところである。若者を受け入れていただく職場を増やすため,倫理研究会など地元企業の方々が集まる場での協力の要請や,訪問による協力依頼を随時行い,企業とのネットワークを拡充している。

また,塾生の状況によっては,医療機関との連携も重要である。さらには,幸い実際に必要となったことはないが,警察や消防との“いざという時のための関係”を築いておくことも不可欠である。

(3)出口(就労)におけるネットワークの活用

塾生の就労に向けてはジョブカフェ,ハローワークと連携している。就職情報の提供はもとより,より高度な職業訓練への参加や,キャリアカウンセリングの機会をいただいている。正社員になることがまだハードルの高い人については,心ある人材派遣会社と協力し,働きながら経験をつむ機会を提供している。

最後に,ネットワークと表すことには語弊があるかもしれないが,非常に大切なのは地域との良好なつながりである。特に小さな町では,若者の存在は目立ち,注目が集まる。彼らが地域の中で安心して滞在できるかは事業実施の根本に関わる重要なことである。地域の理解や支援を広げられるよう,町長,行政,区長への働きかけはもちろん,地域で開催される祭りや行事に積極的に参加し地域の人々との関わりの機会を設けている。地域との良好な関係の構築は,塾生を育むという点からも大きな意味を持つ。地元のおじさんやおばさんの何気ない一言が彼らの気持ちを大きく変えることもある。小さな町であっても若者支援の資源はたくさんあり,それを丁寧につないでいく姿勢と行動が必要であると実感している。


  若者自立塾・栃木副塾長 塚本竜也
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