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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施

第5章のねらい

第5章では,実際にユースアドバイザーとして現場で支援に携わるに当たり,支援活動に関わる基本的な項目を網羅的に学習し,自立支援を必要とする若者に対し,より良い情報提供と支援計画の作成ができる人材の育成を狙いとする。

本章では,インテークから個別相談・グループワーク・フォローアップなど,若者を支援するに当たっての個別的な関わり方を取り上げ,支援手法ごとの重要性やその意味と課題を明確にする。また,複数の支援形態を知ることにより,若者の現状と目標の間を埋めていくための支援経路を理解,確保することを学ぶ。

若者自身が何らかの理由により来所が困難である場合,保護者を中心とした家族からの相談が支援の始まりである。家族が求めるものは何か,若者と家族の関係性,目的などを聴き取りから理解するとともに,家族と信頼関係を構築しつつ,支援計画を作成しなければならない。若者の自立支援は,家族支援であることを認識し,自立が困難な状況にある若者を抱える家族へのアプローチについても広く理解していく。

若者を個別的,包括的,継続的に支援していく場合に重要なのが,支援計画の作成である。インテークにより個々人の目標を設定し,多くの支援手法,支援形態を掛け合わせながら,若者に最も効果的な自立までの支援ルートを模索する。ただし,支援者側が一方的に作成するだけでなく,若者との信頼関係を構築し,本人の意思も尊重しながら慎重に進めていかなければならない。最初に作成した支援計画に固執することなく,本人の状況や感情の変化に合わせ,支援計画は柔軟に変更していくことも求められる。また,個人情報の取扱いなど,若者の情報が支援計画を進めるに当たってどのように管理されているのかなどをしっかり伝えることで,若者自身の不安要素を最初の段階で少しでも解消しておくことも重要である。

各節には,「現場の実践例」を掲載している。各現場が蓄積した経験やノウハウは,どれも貴重である。対象者の状況,年齢,性別,家庭背景などにより,それぞれに独自の工夫がなされている。これら実践から得られた経験,ノウハウを,自らが関わる自立支援の現場で柔軟にいかしてほしい。また,可能であれば,実際に現場へ足を運び,その場所の自立支援の雰囲気,空気に触れることで,教材による学習や講義以外の学びにつながるだろう。

支援現場で関わる若者の抱える問題は,不登校,ひきこもり,非行,刑務所出所者,対人恐怖,発達障害,うつ,統合失調症,強迫神経症,自律神経失調症,生活困窮,早期妊娠・出産,援助交際,自殺願望など深刻化しており,それがさらに複合化している。一人の支援者がすべてに対応できる必要性はないが,各問題に全く無知というわけにはいかない。なぜなら,目の前にいる若者が勇気を持って打ち明けた相談内容はいかなるものであれ,まずは受け止めることが重要だからである。また,各問題の専門家につなぐにしろ,相手にその相談内容が的確に伝わらないことには,リファー(紹介)ではなく,たらい回しになりかねないからだ。

若者の自立支援に関わるとき,支援者が忘れてはならないことは,「目の前の若者の人生を壊してしまうリスク」を抱えているということである。他意なくかけた一声により,若者が深く傷つき,自宅から再び出られなくなる。よかれと思ってとった行動が,予想外の影響を及ぼしてしまうこともある。そのリスクを減らし,若者が自立的な人生を送れるよう支援していくためには何が必要なのかを理解していただきたい。


 NPO法人「育て上げ」ネット理事長 工藤啓
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