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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第10節 アウトリーチ(訪問支援)の方法〜ひきこもり,不登校等を中心に〜  

1 はじめに

現在,ひきこもり状態の子どもや若者,あるいは来所相談に応じない非行少年やその家族に対して,児童相談所,保健所,市町村などの福祉・保健分野の公的支援機関,学校や教育分野の相談機関,あるいは民間の支援団体などが,自宅への訪問活動を通して相談・支援を実践している。

特に,ひきこもりケースにおいては,本人が外出することや相談・治療場面に出向くことが難しい場合,相談・受診の必要性を感じつつも1歩を踏み出せない場合,あるいは,治療・援助に対する本人の動機づけが希薄で,支援関係を形成することが当面の課題となるような場合などにおいて,援助者側から一歩踏み込んだ介入が必要なことがある。また,家族への相談面接や心理教育的アプローチなどを継続しても,本人と家族との関係性や本人の生活状況には何らの変化も生じないケースや,本人から家族への暴力が続いているケースに対しても,より積極的な介入手段として,訪問による本人への働きかけが検討される機会は少なくない。

ただし,訪問は本人に対して極めて侵襲の強いアプローチになる場合があることは充分に認識しておく必要がある。不用意な訪問が,かえってひきこもりを強化させてしまうかもしれないし,とりあえず訪問には応じたものの,訪問者が帰った後で家族に激しい怒りを向けるケースや,稀なこととは思うが,ひきこもる本人が訪問者に危害を加える可能性もあり,訪問という介入手段は方法を誤れば,本人,家族,援助者のいずれにとっても弊害ないしは危険をともなう行為になり得る。

また,自宅を訪問するという活動には,来談型の相談・面接よりも援助者が感じるプレッシャーが大きい,子どもが心理的に退行しやすいなどの特異性があり,そのことが有効な介入を難しくさせたり,問題を複雑化させる要因になる場合があることが指摘されてきた。

援助者の多くがこうした困難性を認識していながらも,これまで訪問についての研究は,教育分野以外では意外に乏しく,援助者は各々に試行錯誤しながら訪問を実践してきたものと思われる。本稿では,教育,福祉保健分野などの訪問活動の現状や論点を紹介したうえで,福祉保健分野におけるアンケート調査の結果などを踏まえて,おおむね標準的と思われる訪問の方法論について提言してみたいと思う。

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