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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第10節 アウトリーチ(訪問支援)の方法〜ひきこもり,不登校等を中心に〜  

5 民間の訪問カウンセリング活動

教師らの関わりをかたくなに拒否している事例や,不登校のまま中学を卒業する,進路の決まらないまま高校を中退するなどして学籍のない事例,あるいは,これらの子どもを抱えた家族の苦悩,そして,それらの問題に対して公的支援が行き届かない現状などを早くから認識し,家族相談や自宅への訪問に取り組んできたのは民間団体による相談支援活動であった。

こうした活動の重要なメリットの一つは,保健・福祉分野の専門職や精神科医師のような肩書きを持たないことが,支援の導入期において,クライエントの緊張感を和らげたり,「病人扱いされる」といった被害感を抱かせることなく本人にアプローチできることなどであろう。一方,デ・メリットとしては,入院治療などのハードな介入を要する事例に出会ったときに医療機関などのバックアップ・システムが乏しいこと,支援対象や活動内容,活動実績などについて知る手がかりが各々の広報活動に限定されており,活動の実態が周囲からは見えにくいことなどが挙げられようか。良心的で優れた支援活動が展開されている一方で,一部には人権上の問題が問われるような強引な侵入的行為,あるいは入所施設における暴行事件や死亡事件なども報じられており,個々の支援活動の質や透明性などがこれまで以上に厳しく問われていくことになろう。

ひきこもり問題などに対する包括的な対策を検討する際に,民間団体による支援活動の充実が重要であることは明らかであり,今後は福祉保健分野の公的相談機関や医療機関がもっと積極的に民間の活動との連携を図れるような状況を整えることが必要であろう。そのためには,どのような団体が,どのような対象者に,どのような支援活動を実践しているのか,その結果どのような成果が見られ,どのような課題を抱えているのか,あるいは,多くの支援課題を持つケースに対して,公的支援や医療機関との間でどのような連携を図り,民間支援団体はどのような役割を担ったのかなど,それぞれの実践を報告・議論できる場が必要であるように思われる。

また,民間の支援活動については,倫理や人権という点において医療機関や公的支援機関と同等の,あるいはそれ以上に慎重な配慮が求められると思われるので,次に訪問活動の倫理的な側面について考えてみたいと思う。

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