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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第11節 非行等幅広い分野におけるアウトリーチ(訪問支援)の手法  

9 関係性の再調整行い援助者としての役割を終える「終結期」

多面的なアプローチによって若者が抱えるさまざまな困難が解消されると,学校や社会への参加も定着に向かう。援助者はあくまで「支援のために」若者が置かれた環境の中に介入したわけで,当然のことながら,使命が達せられたこの段階には,関係性を再調整し,援助者としての一定の役割を終える必要がある。その際のキーワードは「移行」,「分散」,「離脱」で,支援期間の終了の日を見越しつつ計画的に対応する。

(1)主たる活動の場と自力への「移行」を図る

この段階で寄せられる相談は「必要最小限」の助言にとどめ,若者が自ら考え行動することを促す。「あの時は△△だったのに今では自分だけで○○やれるようになったね。」といった具合に共有された経験から若者の心理的成長や行動の変化を言語化することで,「今回は自分でやれるかも」といったポジティブな思考を引き出す。また,日常的な活動の場も援助者とは関連の薄い「場」へシフトさせ,そこでの定着を支援する。

例えば援助者の面談の日時とサークルなど新たな活動の場での行事が被(かぶ)るのであれば,たとえ若者が援助者との面談を優先しようとしても別の日を設定する。こうすることで意識的に優先順位を変えていく。

(2)若者が適切に関われる人間を増やすことで「分散」する

親子関係が崩れている家庭などの場合,可能な限り家族関係の修復を行う。すぐにケンカになる親子の場合,援助者が仲介役となり適切な意思表示の方法や簡単なルールを決めたり,家庭内のストレス要因を取り除くなどして深刻な対立を生まないように関係を修復する。また,段階的移行の過程でも実践するが,外部に同世代や他の援助者との関わりを設け,そこでの関係がうまくいくように支援することで,若者が適切に関われる人間を増やす。このように徐々に若者に適切に関われる人間が増えれば,たとえ援助者への依存が生じていたとしても,相対的に分散されその度合いも弱くなっていく。

(3)援助者としての「離脱」を図ることで距離を取り直す

もし携帯やE−mailで相談を受けている場合は,そのやりとりの回数や内容を若者の状態に応じて調節し減らしていく。もちろん,すべての関係を断つ必要はないが,少なくとも支援期間中のような深い関係からは徐々に離脱を図っていく必要がある。この際も展開期から終結期にかけて若者が納得できるような合理的な理由を伝えておくか,事前に話し合いを持ち,援助者に見捨てられたと思われないよう配慮する必要がある。

以上のような観点を欠くと,支援終了後に状態の悪化を招いてしまったり,援助者への依存から,本来あるべき家族機能も損なわれてしまう。「援助者」としての最後の仕事は,この関係性の再調整を通じて,若者と保護者,家族,さらには周りで支え合う人々との「つながり」を深めることだ。


 特定非営利活動法人NPOスチューデント・サポート・フェイス代表理事 谷口仁史
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