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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第12節 アウトリーチ(訪問支援)に係る現場の実践例  

2 現場の実践例(思春期ひきこもり等相談モデル事業)

福岡市こども総合相談センター(以下「センター」という。)は,0歳から20歳までの子どもや保護者を対象に子どもに関するさまざまな問題に対して,保健・福祉・教育の分野から統合的専門的な相談支援を行っている。平成15年のセンター開館にともない思春期相談担当が新設され,関係機関と連携をしながら相談に対応している。中でも,中学校卒業後の思春期後半のひきこもりは子どもの自立につながる重要な課題である。当センターにおいては,平成16年度より思春期集団支援事業に取り組み,一定の成果を得ることができた。この事業は,センターの一室を活動の場とし,子ども相互の交流やスタッフとの関わりを持ちながら集団での支援を行うもので参加者は年々増加している。平成19年度からは,センターに来談できない子どもへの訪問支援を開始したので報告する。

(1)思春期ひきこもり等相談モデル事業の概要

本事業は,<1>ひきこもり等子どもへの相談員派遣事業,<2>ひきこもり等ピアサポーター交流・研修会,<3>ひきこもり等保護者交流会の3事業から構成される。本人への相談員派遣と保護者支援とを並行しながら行うことは,本人のひきこもりからの回復を支える家族の調整を行ううえで大きな意義がある。また,4回シリーズの思春期訪問相談員養成講座を実施するとともに,ひきこもり経験のある当事者をピアサポーターとして登録するための研修会など,支援内容の充実を図っている。

(2)ひきこもり等子どもへの相談員派遣事業について

ひきこもり気味の子どもの家庭に思春期訪問相談員を派遣し相談に応じるもので,相談受理からの支援の流れは図5−10のとおりである。

電話による保護者からの相談後,保護者の来館による面接を継続する中で,家庭における本人の状況を把握し,保護者の悩みに対して助言を行いながら,相談員の派遣について提示し,派遣時期等を検討する。

ア 派遣対象者:中学校卒業後のひきこもり気味の子どもで保護者の了解があり本人の強い拒否がみられない。

イ 活動内容・派遣要件:原則として,活動は家庭内とし,保護者が在宅の時間とする。

ウ 思春期訪問相談員:思春期のひきこもり支援活動についての知識と理解があり,こども総合相談センター主催の思春期訪問相談員養成講座を受講した者。同じ経験を持ったピアサポーターとして活動をしている相談員もいる。

図5−10 相談の流れ

相談員に対しては、年2回の研修会や、情報交換会を開催したり、臨床心理士や保健師などの専門家から適切なアドバイスを行うなどの支援を行っている。

派遣開始後の本人の変化としては,生活リズムの改善,外出頻度の増加,家族への反抗的な態度の軽減,家族との会話の増加,家庭内での役割を積極的にするようになった等の改善がみられ、復学・就労に結びついた人もいる。また家族においても本人に対しての理解が深まるなどの良い変化がみられた。保護者面接と並行しての支援であることが,タイムリーで本人・家族のニーズに応じた支援につながっている。

(3)思春期訪問相談員養成について

思春期訪問相談員の養成に当たっては,4回シリーズの養成講座や、事例検討会、ピアサポーター交流・研修会などを開催しながら適切な支援に向けて取り組んでいる。思春期訪問相談員の登録に際しては、思春期訪問相談員養成講座の受講を義務づけている。受講対象者は,ひきこもり支援に関しての活動の経験がある者や同じひきこもりの経験を持つ者である。

以下が思春期訪問相談員の養成講座の概要である。1回から3回までは平日に実施し、4回目は,ひきこもりの子どもの保護者を対象にした講演会であり、土曜日の昼間に実施した。保護者と同時に受講することで,家庭における様子や状態像を学ぶには良い内容であった。会場はすべて,こども総合相談センターにおいて開催している。

表5−12 思春期訪問相談員養成講座
【1回目】 内容:「訪問支援の技術 その<1>」
   ・ひきこもりの理解と思春期訪問相談員の役割
・ ワーク「親の気持ち・子どもの気持ちの理解」
講師:臨床心理士 
時間:18:30〜20:30
【2回目】 内容:「訪問支援の技術 その<2>」
   ・訪問場面の経験
講師:臨床心理士 
時間:18:30〜20:30
【3回目】 内容:・事業紹介
・ ひきこもりに関する社会資源の紹介
講師:思春期ひきこもり事業担当者
時間:18:30〜20:30
【4回目】 内容:“思春期ひきこもり講演会”
     「思春期のひきこもり支援〜1歩を進めるために〜
「ひきこもりの当事者として、ピアとして・・・」
講師:NPO スチューデント・サポート・フェイス 谷口仁志
            ピア・サポーター    三村吉郎          
時間:13:30〜15:30

1回目,2回目では,講師の実際の活動や今後の自分たちの活動に関しての質問が多く聞かれた。

また,養成講座を受講した結果,訪問支援のイメージを受講者各自が持つことができたことは成果である。また,すでに訪問支援の経験がある受講者からの意見なども,受講者相互の連帯感や仲間意識を図るに当たり貴重なものとなった。

(4)今後の課題

思春期のひきこもり支援は,当センターにおいてもまだまだ課題が多く検討の余地がみられる。今後,多くの事例に関わり、支援のあり方を、ピアサポーターを含め、多職種間で1人1人丁寧に検討していくことが、より良い結果につながると思われる。

また,相談員派遣事業とピアサポーター交流・研修会に関しては,NPO等の関係団体と連携を持ちながら実施しているところであり,今後も共働の取組を視野に入れながらの事業展開が必要と考えている。


 福岡市こども総合相談センターこども相談課思春期担当主査 井上尚子
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