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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第12節 アウトリーチ(訪問支援)に係る現場の実践例  

4 現場の実践例(あすくるの実践から)

(1)高校生への支援事例: 入学から中退,中退後の支援

≪支援開始当初の様子≫:中学校卒業直前から支援開始。中学校では怠学傾向だったが,進学意欲が強く,高校受験を目指して学習支援をした。少年は将来を考えて高校に進学したいとの思いを語っていた。

≪連携≫ : 中学校,高等学校,保護者

≪支援内容≫ : 高校に進学することができたので,少年が順調に登校して卒業できるように入学直後から電話と家庭訪問による相談活動を継続した。夜間定時制高校であったため,登校前にあすくるへの通所を促して話を聴くなどの支援をした。

また,規則正しい生活を維持するためと生活の安定のために就労支援をした。本人は働く意思を示し,紹介した企業の面接を受けることもあったが,給与やさまざまな条件を出してなかなか就労しなかった。

その後,入学して数か月後に事件を起こして逮捕され,少年院に入ることになったため,通信と面会によって支援を継続した。面会の場で本人が高校への復帰を強く希望したので,少年院退院後の復帰について高校と相談した。保護者には面会時の様子・本人の言葉を伝えて退院後の相談をした。

少年院に入っている間に担任が本人,保護者とそれぞれ話をして学年末に退学するということになったため,退院後はすぐに就労支援を開始した。

≪高校との連携≫:入学後,半分程の日数しか登校していなかったので,高校を訪問して担任,副担任と面談して支援方法を相談。担任は本人と話したり,登校を促す電話をしていたが,それを更に継続して授業に向かう気持ちを持たせるようにし,あすくるは本人の気持ちを聴き,規則正しい生活ができるようにアルバイト就労の支援を含めた生活面での支援を継続することにした。

ケース会議を開き,担任が出席。学業を順調に進め,単位を取得して卒業できるための支援について検討した。

本人の高校生活の実態を把握したうえで支援するため,中学校教諭と一緒に卒業生の高校生活参観という形で授業中や休憩時間中の様子を参観した。毎週,高校に電話して出席状況を確認し,担任と学業継続のための支援について相談した。

事件後,少年院で担任が面会し,登校時の本人の状況や単位取得の困難さを考えて退学を促したが,本人・保護者の学校復帰の希望が強く,あすくるからも本人の意向を話して休学という形になった。その後も担任が面会し,保護者とも話をして,学年末を機に退学することになった。

担任があすくるに来所して退院後の支援を相談・検討。就労支援に絞って支援することになった。

≪結果・考察≫ : 高校と連携して卒業を目指し,学業継続のための支援をしたが,少年院に入ることによる学業の中断を経て退学ということになった。再び受験して高校に入学することも可能ではあるが,本人の強い意思と家庭からの支援体制が必要である。

高卒資格取得の希望はあるが,学業への興味がないためそのための努力はできないというのが実状であった。退学後は本人の自立を促し,生活を安定させるために就労に絞って支援した。

(2)高校生への支援事例: 不登校の生徒に対する支援 

≪支援開始当初の様子≫: 中学時代に学校で暴力事件,学外では窃盗事件を起こし,不登校になった。

≪連携≫ : 出身中学,在籍高校,家庭(電話,来所,訪問)

少年も保護者も出身中学の教師を信頼しており,少年の状況を教師に伝えている。少年が退学を考えて悩んでいる時には出身中学の教師が電話や家庭訪問をして対応した。

≪少年への支援≫ : 中学時代は不登校になってからの通所であり,高校進学を目指しての学習支援が中心だった。学習の合間には卓球や対話をして少年の気持ちを聴いていた。受験までの2か月程はほぼ毎日通所していた。

高校進学後は退学したいという本人の気持ちを聴き,高校生活を続けられるように相談にのり,高校を訪問して担任と本人への対応を相談した。トラブルを起こした際の謹慎中は高校からあすくるに通所してレポートをするように指示されたため,レポートを仕上げられるように支援した。

≪保護者への支援≫:少年の生活や事件に関する相談。少年が高校を中退したいと言ったときには進路の相談。少年はADHD(注意欠陥/多動性障害)と診断されていたので発達障害についての相談。

≪相談方法≫ : 少年,保護者ともに電話,来所,家庭訪問での相談対応。少年と保護者別々に対応することもあるが,少年と保護者同席で対応することもある。

≪アウトリーチ≫ : 少年,保護者のいずれからも相談の電話やメールがあるが,内容によって緊急性を感じるときには家庭訪問をして直接会って話を聴く。また,少年が精神的に外出しづらく,あすくるへの通所ができないときにも家庭訪問をして会って話を聴くことがある。

直接会って話を聴くと少年は安心するのか電話ほどの緊急性が感じられないことが多い。また,充分に話を聴いたと思えるときにもこちらが帰ろうとすると,もっといてほしい,と懇願することがある。一緒にいること,話を聴いてくれている,ということで安心するようである。

少年が家庭訪問を求めて来てもその度に訪問しているわけではなく,緊急性を感じないときには電話で済ませたり,来所するように促している。少年が自転車で来所することもあるし,場合によってはこちらが送迎してあすくるで対応することもある。電話内容やそこから感じ取れる少年の様子によって判断し,対応を変えている。

保護者から少年の様子を先に聴いて,それを踏まえて少年に電話することがある。そうすることでより的確な話を少年にすることができる。

≪結果・考察≫ : 電話・メール,家庭訪問など,いずれの場合もこちらからのアプローチは少年や保護者にとって,相談相手・機関が自分のことを気にかけてくれている,という思いをもてるようだ。そのため,相手が負担を感じない適度なアプローチは信頼関係を増すことになる。そして,困ったときには相談すればいい,という思いにつながり,相談者が一人で悩みを抱え込むことなく,相談相手や機関に気軽に相談できる雰囲気を作ることができる。

過度なアプローチは相談者の負担になるので気をつけなければならないが,急に疎遠になれば相談者にとって相談相手や機関から見放されたような気持ちになるので,このことも注意しなければならない。相手の状況や心理を充分に考えたアウトリーチが求められる。


 草津市立少年センター・あすくる草津支援コーディネーター 佐野正明
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