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第5章 | 支援の実施 |
第1節 相談における基本的態度と心得等 |
個別相談は一般論では片づけられないケースを扱うものであるから,相談者(相談に訪れた者。カウンセリングの分野ではクライエントとか来談者と呼ぶ。)にとっては大きな期待と知られたくない心理が葛藤する覚悟の場となる。また,相談者が思っていることの100%は表現できない状況の中でやりとりをしていくプロセスの中から方策を見つけていくという暗中模索の前提で進めるために,相談者にとっては個別相談をしてもらえる安堵感の反面,相談員にとっては緊張感が発生する場でもあり,両者にとって真剣にならざるを得ない重要な時間となる。とりわけ初めて対面するインテーク(次の第2節で詳細解説)では,その後の方向に影響を及ぼすことから相談員は心のバイアス(偏見や先入観)を排除した状態で臨むべきである。
相談員は自分のこれまでの人生経験や成功・失敗体験そして学習歴などから,たとえば次に挙げるような自分なりの相談スタイル(得意なシナリオや,とりがちなパターン)を無意識に実行してしまうことがしばしばある。
いずれのスタイルも相談員の機能としては必要なものではあるが,相談者が相談員に期待することは十人十色であるし,訴えることが核心であるかどうかがすぐには分からないものでもある。相談者の人柄,事情,感情,状況などが絡み合って悩んでいるものであるし,逆に悩みではなく,教えてほしい,説明してほしい,情報を知りたいという場合もある。また,相談員に期待するどころか,来たくて来たのではないという被害者意識を持っているかもしれないし,世の中に漠然とした疑心暗鬼を抱いているかもしれない。こと個別相談となると相談者本人とその人を取り巻く,実に個別的で他人には言えない内容も取り扱うことにもなる。
相談員の態度についてしばしば議論になりがちなこととして次のようなことが挙げられる。
相談員にとってこれらのどちらの態度もすべて必要である。相談者がその人でその状況だからこうするべきだという状況を提示せずに不毛な議論をしてはならない。相談員がよくとりがちなスタイルとしては次の代表的な四つのパターンが考えられる。
相談者の現在の状況や意識,知識,スキルによって,適合するスタイルが異なるはずであることを理解し,自分がよくとりがちなスタイルはどれかをまずは認識するべきである。つまり,人を見て法を説け,状況を見て対応せよ,しかし自分の寄って立つものは大切にせよ(第一義にせよということではない)ということである。気を付けたいことは,相談員がリスクを恐れるあまり,高い協労的態度(一緒にやって行こうとか,いちいち説明することばかりの教育ママ的おせっかい)を維持し続けてしまう結果,相談者を未熟のままにしてしまうことである。
一方,相談者が相談員に期待することも,分かってほしい,聴いてほしい,助けてほしい,教えてほしい,意見を聞かせてほしい,親に文句を言わせないようにしてほしい,うまい方法を見つけてほしい等々あり,しかもときおり変わってしまい,実態は流動的である。
したがって相談員はまず,自分がとりがちなスタイルや相談員としての自分の強みをきちんと理解したうえで,一人ひとりの相談者が自分にとって初めての体験であると受け止め,相談員としての自己満足やリスク回避に陥らないように虚心坦懐の姿勢で接することが大切である。
基本的態度を平易にまとめると次のようになる。
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