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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第1節 相談における基本的態度と心得等  

4 相談や支援の開始から終了までの流れ

若者の自立支援にも,朝起きるとか挨拶できるといった日常生活の正常化を目指すものもあれば,人と関われること,働いてみること,就業してみることなどのさまざまな目的と場と状況があるため,その開始方法やプロセスもさまざまあってよいし,何より柔軟な状況対応が求められる。したがって本書では基本的な流れについて解説し,それぞれの場への適用については臨機応変な解釈をしていただきたい。

(1)相談者との信頼関係づくり

相談者にとって,初めて会う相談員に対しては相当の緊張感(場合によっては懐疑心)を抱いているものであるし,プライベートを開示することからも,まずは人と人との信頼関係を築いておかねばならない。そのためには受け入れる姿勢として「温かく,ゆっくり」迎え入れ,質問攻め・指示・指導・助言は避ける。相談員の表情や身のこなしにも,いかめしさを出さない工夫が必要である。どんなことからでもいいから,相談者が安心して自分のことを話しやすい心理的・物理的な環境をつくる。

(2)情報収集

これからの方策を検討できるようにするため,相談者に関わる情報を収集する。ここでは開かれた質問と閉ざされた質問を使い分けて,これまでのことと,これからの想いについて共に確認し合う形をとる。(開かれた質問:どう感じたの?といった漠然とした質問⇒内面が出てきやすい,閉ざされた質問:いつから?できたの?といったYes/Noや数字等で答える質問⇒的確な情報をとらえる。)

おおむね次のような情報を収集する⇒学歴・部活,職歴・成果・入退職動機,嫌いなこと・好きな分野,興味・関心ごと,家族との関係,悩んでいること,何かの障害になっていること等。

くれぐれも矢継ぎ早の質問攻めにしないよう,日常会話の延長でカウンセリングマインドを意識して相談者が話しやすくなるように配慮しなければならない。この情報収集のステップをうまくすることで,相当のカウンセリング効果があるし,相談者の自己理解にも貢献する。

初回の相談ではこのステップで終えてもよい。

(3)自己理解の促進

通称「アセスメント」(検査,診断,テストなど)と呼ばれるものを適用することで自己理解を促進できるが,相談者の状況によってどのような種類を適用させるかは前のステップまでの情報を吟味する必要がある。ひきこもりがちな相談者に対して,いきなり「性格診断をしてみましょう。」と切り出すようなことは避けなければならない。したがって数百種類あるといわれるでき合いのアセスメントを適用する前に,手製のチェックリスト(性格,行動特性,強み,スキル,価値観などが書かれたもの)で該当部分を選択させて,なぜそれを選択したのかをカウンセリングマインドで尋ねる方法や,さまざまな価値観(地位,収入,時間,生活,挑戦など)を1枚に一つずつ記入してあるカードを選択していくカードソート法などのインフォーマル・アセスメントと言われるものを活用するほうが,ユースアドバイザーには適していると思われる。

(4)目標設定と達成課題の洗い出し

相談者が能動的に行動を起こすためのエンジンが目標である。この目標設定に当たっては,相談員が強引に誘導してはならない。目標を設定するということは「何を」,「いつまでに」,「どれほど(数値が望ましい)」という3要素を決心することである。目標の上位概念といえばビジョンや夢であるが,これも大切である。夢の実現のための手段が目標であり,目標の実現のための手段が計画であり,計画実行の手段が実行・行動という因果律になっている。これまでの相談結果から,どんな問題を解決したいのかを見つけさせ,長くて1年以内に達成でき得るものを目標としてセットする。

また,問題の解決という観点からでなく,希望(なりたい,ありたい)という観点から目標を設定してもかまわない。

目標が設定できれば,達成のための課題を因果関係で図示化して,それぞれの課題の難易度などを考えさせる。

(5)行動計画

それぞれの課題について,「いつから,いつまでに」,「何を」,「どのようにするか」を時系列で整理させる。計画は計画どおりに進まないのが通常であるから,各ステップごとに「振り返りや自己評価」をするゆとりを入れておく。計画は,相談者が自分の手で書くことが望ましい。目標と計画と実行と評価が一目瞭然となっている管理表の見本を図5−3に示す。

図5−3 目標・計画・実行管理表(ステップ表)

図5−3 目標・計画・実行管理表(ステップ表)

(6)フォローアップ・追指導

実行の進捗状況を要所要所で相談に乗る形で見てあげ,修正やヒントを出すとともにやり遂げるための前向きな言葉をかけてあげる。場合によっては相談員が並行して実施してもよいが,最終的には相談者が自力で成し遂げたものにすることが大切である。

遂行し終わったなら,それまでのねぎらいとともに,一連のプロセスを相談者と共に振り返り,全体を評価し,相談者と相談員の双方にとって有益な教訓や気づきを出しておく。また,相談員の手元を離れてからも,何らかの方法で連絡を取り合い,相談者の適応状態や変化を確認し,必要があれば追加的な指導やカウンセリングをしてあげる。

【参考文献】

P.ハーシー,K.H.ブランチャード,1989,『行動科学の展開』,(財)社会経済生産性本部

宮城まり子,2002,『キャリアカウンセリング』,駿河台出版社


 NPO法人キャリア・コンサルティング協議会 大関義勝
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