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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第3節 支援計画作成のための評価  

4 支援計画

(1)支援計画の作成

ア 目標を設定する

支援計画の目標は,クライエントと話し合い,そのニーズに合わせて決めてゆくこととなるが,「自立する。」,「対人関係を改善する。」などという抽象的な目標だけでは,クライエントは努力しにくいし,私たちも支援のしようがない。目標をできるだけ細分化,具体化していくことが必要である。

たとえば「自立する。」なら,その下に「就職する。」,「○○円貯金する。」,「家に金を入れる。」などの小目標が設定できるし,「就職する。」は更に「ハローワークに行って自分に合った仕事を探す。」,「採用されるまで何社でも面接を受ける。」などの小目標に分けることができる。

具体的で実現可能な目標を設定できるか否かは予後を大きく左右する。小さな目標でも,実現できればクライエントの意欲は高まるし,周囲の見る目も変わる。特に若者は小さなきっかけで大きく変わっていくことが多いため,ステップ・バイ・ステップで小さな達成を積み重ねていく方法が有効である。

イ 可能な支援を具体的に示す

適切な目標が設定されれば,次にその実現のために私たちに何ができるかを考える必要がある。主体はあくまでクライエントであり,順調に目標が達成されるならば,やるべきことはあまりない。私たちは達成しにくそうなポイント,失敗しそうなポイントに焦点を当て,そこに支援を集中すべきである。

たとえばハローワークに行くこと自体に尻込みするようなクライエントがいれば,一緒に行って利用の仕方を教えるべきかもしれないし,就職面接に失敗するとすぐ意気消沈するようなクライエントは,受容的な面接で支えることが必要かもしれない。また,クライエントの問題は,福祉,職業相談,精神医療等,さまざまな領域に関わっていることも多いため,必要に応じて他機関の協力も求めなければならない。そもそも一人の専門家がクライエントのあらゆるニーズに応じることは不可能であり,私たちはできるだけ協力者を増やすという方策をとるべきである。専門家であるか否かを問わず,クライエントを見守り,支援するネットワークが広がっていくことが望ましい。

ウ 記録する

支援計画を組織的に進めていくためにも,評価・検証を行うためにも,記録の整備は不可欠である。支援計画の記録はあまり煩瑣(はんさ)であってはならないが,少なくとも大目標,小目標,支援するポイントと具体的な支援方策,連携機関・協力者等を盛り込むことは必要であろう。そして,目標達成の度合い,支援の効果を随時記載していけば,評価のために役立つとともに,関係者が支援の状況を概略的につかむことが可能となり,支援のネットワークの緊密化にもつながると思われる。

(2)支援計画の評価

ア クライエントと一緒に評価する

支援計画の評価において,クライエントは一方的に評価される対象でなく,評価の主体である。私たちはクライエントと話し合いながら,目標をどれだけ達成できたか,どこが足りなかったか,支援は十分だったか,ほかにどんな支援が必要かを明らかにしていかねばならない。

大切なのは,良くなった点を重視することである。どんなささいなことであっても改善があれば,それに注目し,高く評価することが望まれる。クライエントの多くは失敗に慣れており,さらにそれを指摘しても,発奮材料にはなりにくい。むしろ,成功体験を大きく取り上げ,それを糸口に問題に立ち向かわせることが望まれる。

イ 悪者探しをしない

評価を進めていくと,問題解決の障害となっている要素が浮かび上がってくる場合がある。家族関係では,親の態度が変わらない,支えてくれないといったケースも見られる。だが,家族に原因を帰して更なる努力を求めても,たいていはうまくいかない。なぜなら家族の方も介護,貧困などの問題で手一杯なことが多いからである。その場合,家族まで含めて支援する体制を作っていかないと,ない物ねだりになってしまう。単なる悪者探しは倫理上間違っているだけではなく,実践上も無益である。

ウ 楽観的な姿勢を失わない

クライエントについて深く知れば知るほど,その問題の解決が簡単なものではないことが分かる。そもそも本人の努力や工夫で簡単に解決するならば,彼は相談機関に現れたりしない。主観的にも客観的にも状況はかなり厳しいのである。

ただ,私たち援助する側の人間は楽観的でなければならないし,前向きの姿勢でクライエントを引っ張っていかねばならない。そして,その楽観は必ずしも根拠のないものではない。なぜなら若者たちの場合,周囲から支えて,何とか現状を維持していれば,成長が問題を押し流してくれることも多いからである。また,彼らには新たな出会いによって局面を打開する力も豊富に備わっている。いわば時間は若者たちの味方なのであり,だからこそ支援する側には粘り強さが求められるのである。

【参考文献】

神田橋條治,1994,『追補精神科診断面接のコツ』,岩崎学術出版社 

中井久夫,2007,『こんなとき私はどうしてきたか』,医学書院

【より詳しく学びたい人のために】

成田善弘,1989,『青年期境界例』,金剛出版


 松山少年鑑別所 青木宏
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