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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第4節 グループワーク  

1 グループワーク(グループを用いた支援)

(1)グループを用いた支援の意義

2人以上の若者がいて,その若者たちの課題に共通性があるとき,1対1の面接に加え,グループでの支援を行うことには大変意義がある。若者は,1対1の面接場面等では見せない,自然な形でのコミュニケーションや行動パターンを,安全なグループの場では示す。グループの中で,若者は,似たような課題や悩みを抱えているのが自分一人ではないことに気づく。若者は他の若者と関わり,仲間意識を持ち,仲間に受け入れられる経験を経て,自己評価を高め,自分自身を受け止められるようになる。グループの中で小さな葛藤体験をし,たとえ葛藤を体験しても自分自身が否定されたり壊れたりしないことを経験することによって,グループの外でのストレスに対処し得る能力を身につけていく。これらを通して,若者は自立への第一歩を踏み出し,成人初期へ移行していく。ユースアドバイザーの方々には,グループワーク(グループを用いた支援)について学び,若者たちが思春期・青年期から成人初期へ移行していく過程を,グループへの支援を通して後押ししていただきたい。

(2)グループワーク(グループを用いた支援)とは

グループワークとは,意図的なグループ経験を通じて個人が社会の中で機能する力を高め,また,個人,集団,地域社会の諸問題により効果的に対処できるよう,人々を支援するものである 。グループワークは主に社会福祉の援助方法の一つとして用いられる呼称で,それ以外に「グループを用いた支援」,「グループを用いた対人援助」と言い換えることができる。つまり,

ア 個々のメンバーがグループへの参加を通して自分の持つ力を高めること

イ 個々のメンバーが,社会の中でより効果的に人々と関わったり,地域の問題に対処したりできるようになるために,グループワーク(グループを用いた支援)は行われる。

(3)グループのメンバー

グループの参加者のことをメンバーと呼ぶ。グループワークには,2人以上の共通の課題を抱えるメンバーが必要である。共通の課題といっても,若者同士で,共有できる点が一つか二つあれば十分である(たとえば,ひきこもりがちである,友人がほとんどいない,社会的な逸脱行為をしてしまうなど)。その共通課題以外の要素は,多少の多様性があって構わない。

グループの規模は,これらの若者がお互いに顔と名前が一致し,関わり合えるものが望ましい。一般的に,おおむね6〜12人くらいまでが相互作用を最も促進させやすい数と言われている。グループの目的や支援者の力量によっては,これより多くの人数でもグループワークは可能である。

(4)支援者,スタッフ

ソーシャルワーカー,相談員,施設・機関のスタッフなど,対人援助に関わる専門職はもちろんのこと,ボランティアスタッフでも,グループワークの基本的な知識と技術を学べばグループを用いた支援を行える。グループワークは支援者一人でも行えるが,複数いたほうがさまざまな運営上の課題に対処しやすい。

(5)グループの基本的な目的

グループワークを行うとき,基本的な目的は何かを考える必要がある。目的とは,目標と比べ,抽象的で長期にわたる目当てのことである。グループの基本的な目的は,

ア サポート(互いに共感し合い,生活上の困難に対処する個人の力を伸ばす。)

イ 教育(学習や技能の発達)

ウ 成長(メンバーの気づき,洞察,成長,発展)

エ 治療(行動の変化,対人的な行動パターンの変化)

オ 社会化(コミュニケーション,対人的な技術の発達)

などが挙げられる。これらの基本的な目的から,プログラム活動の内容や方向性が導かれる。グループの基本的な目的は,排他的なものではなく,二つ以上を組み合わせて構わない。

(6)グループの具体的な目標

グループの基本的な目的のほかに,グループの具体的な目標を定める必要がある。目標とは,目的と比較して目指す地点や数値などに重きがあり,より具体的なものである。目標は,グループメンバーの抱える共通の課題と状況に対応させて定める。たとえば,共通の課題が「ひきこもりがち」である場合,グループの目標は,最終的に「ひきこもりがちではない生活ができるようになること」などが考えられる。しかし,この目標はまだ抽象的なので,さらに細分化(小さなステップに分けること)や具体化(達成可能な具体的な目標にすること)が必要である。「ひきこもりがちではない生活ができるようになること」を細分化,具体化した目標としては,

ア 家から出かけて通える場を提供する,

イ 昼間の居場所を提供する,

ウ 人とコミュニケーションをとる機会を増やす,

エ メンバー同士で仲間づくりをする,

オ 自分の理解を深め,生活設計をたててみる,

カ 社会の中で役割を持つ(仕事をすることや学校に通う)ことの準備をする,

などが考えられる。これらの具体的な目標も,一つに絞る必要はなく,複数設定していくことがむしろ望ましい。そして,これらの目標は,グループメンバーの変化,成長に応じて変更していく。

(7)グループのプログラム活動

グループへの支援では,グループメンバーの共通課題からグループの目的や目標を定め,それに対応したプログラム活動を考えていくことになる。プログラム活動は若者のニーズに合ったもので,目的や目標に沿ったものであれば,自由な発想で開発していって構わない。

実際に行われているプログラム活動を大まかに分類して列挙すると,

ア 言葉のやりとり,話し合いを中心としたプログラム(課題やテーマについて話し合う,日常生活について報告し合い,課題について共感し,情報を共有し合う等)

イ 学習を中心としたプログラム(フリースクール,講義,書き入れ式テキスト,視覚教材を用いる等)

ウ 創作活動(描画,コラージュ,タイル画,編み物,ビーズ制作,木工作品,詩や短歌づくり等)

エ 音楽活動(バンド活動,合唱,好きな音楽鑑賞等)

オ 運動,スポーツ(ジャズダンス,ソーラン踊り,卓球,風船バレー,バスケットボール等)

カ ドラマ,演技活動(演劇,サイコドラマ(心理劇),ロールプレイ,造形法等)

キ 園芸(花壇の手入れ,農作業等)

ク ゲーム(フルーツバスケット,他己紹介ゲーム等)

ケ キャンプや野外活動,職場見学(目的をもって外へ出かけるプログラム)

コ オープンスペースで「何もプログラム活動を用意しない」ことがプログラム(取り組める学習教材,ゲーム,作業,創作活動などを複数用意しておき,メンバーの興味関心に沿った自発的な取組を待ち,見守る等)

などが挙げられる。

メンバーの興味関心,能力と,グループの目的及び目標に沿いながら,支援者の支援しやすいプログラム活動を用いていけばよい。また,同じグループに対する支援で,上記の中から複数のプログラムを組み合わせてもよい。グループの会合を重ねるにつれ,メンバー同士の話し合いによりプログラム活動を決めていくこともある。いずれにしても,支援者はプログラム活動の目的,目標,内容,手順等を理解し,事前にメンバーへ説明し,グループワークの中で活用していく。なお,プログラム活動の遂行そのものが目的となってしまい(たとえば,芸術作品を仕上げること,スポーツの勝敗),グループワークの本来の目的や目標(仲間づくりをする,昼間の居場所を提供するなど)からはずれることは避けなければならない。

(8)開催頻度,回数,期間,オープンかクローズドか

グループの開催頻度,回数,期間などはそのグループの目的,目標や,参加する若者の属性,支援者の所属する機関のサービス内容にもよる。近年では,週に1回などの頻度で,期間を定めて(半年等)行うものも多くなってきている。期間を定めたほうが,目標達成の度合いは評価しやすい。

固定メンバーで開始し,回数や期間が終了するまで新たなメンバーの参加を認めないものをクローズドグループと呼ぶ。クローズドグループで行ったグループが終了した後,新たなクールで,すでに参加経験のあるメンバーの再参加を妨げない形で再募集することもある。クローズドグループは,グループ自体が成熟しやすく,メンバー間の関係性も安定して発達させやすい。一方,いつでも新たなメンバーの参加を認めるグループをオープングループと呼ぶ。オープンなグループでは,常に新たなメンバーの参加があり,新たな人間関係が形成されていくことになる。ただし,毎回新たなメンバーが参加するたびにグループの目標やこれまでの経緯などを説明していく必要がある。なお,頻度,回数,期間などの定めもなく,毎日のように出入り自由なフリースペースを提供し,メンバーの自発的な参加や関わり合いを「待つ」ことにより,個々のメンバーの自立や成長を,個々のペースに合わせて引き出そうとする試みも多くなされている。

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