本編目次   前頁 前頁   次頁 次頁
本編 > 第5章 > 第4節 グループワーク
ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第4節 グループワーク  

2 グループの持つ力

(1)若者の発達段階とグループワーク

若者は,思春期,青年期から成人初期に移行しようとしている時期にある。若者はいくつかの発達段階上の課題を乗り越え,成人初期に移行していく。エリクソンは,青年期の発達課題として,アイデンティティ(自我同一性)の確立を挙げた。これは,自分がどのような社会の中で,何者として,どのように生きていくのかを,自分の責任で,自分自身のアイデンティティとして選択し,統合していくこととされる。

また,この時期の若者には,二面的なニーズがある。たとえば,<1>大人のコントロールへ反発がありながらも,まだ枠組みや指示を必要とすること,<2>仲間や異性との親密さへの期待がある一方,親密性への恐怖があり,<3>性的に大人びてくる一方,認知的にはまだ大人になりきっていない,<4>将来のことを考える一方,現在のこと(楽しみやスリル等)しか頭にない,などである。グループは,このような二面性に対して効果的な支援を提供し得る。特に,1対1の個別支援よりも,効果が得やすい点として,

ア 大人対子どもや,スタッフ対相談者という,力関係や居心地の悪さを減少させる,

イ 求められる大人のリーダーシップを提供する一方,自立を見守り,支援する機会が提供でき,大人からの分離と自立を促進する,

ウ 「自分だけ」という意識を軽減させ,自分の人生の選択の責任は最終的に自分にあると気づかせる,

エ ナルシシズム(自己陶酔)に対して,仲間(グループメンバー)から直面化される機会が与えられる,

オ 自己を強化させる場(仲間に受け入れらたり,認められる場)が提供される,

などが挙げられる。

このような支援を得て,複雑な課題を抱えた若者は,発達段階上の課題を乗り越え,アイデンティティを確立していく。

(2)グループで何が得られるか

若者は,人生について,自分自身のこと,友人関係のこと,将来のことなど,悩みを抱えることが多い。グループでは,安全な場で,自分と同じような経験をした者と体験を分かち合い<普遍性>,気持ちや感情を言葉や行動として外部に表出して心の緊張を解消する<カタルシス>ことができる。また,同じような生活上の困難やストレスに向き合うメンバー同士で,ものの見方,受け取り方,対処方法などについて情報交換<情報交換>したり,励まし合ったり,助け合ったり<愛他主義>できる。また,他のメンバーの成長を目の当たりにでき,勇気を得る<希望をもたらす>。一方,自分の人生や言動の責任は最終的には自分でとるしかないことを実感<実存性>することもできる。

グループは小さな社会であり,メンバーはグループ外における対人関係上のコミュニケーションや行動パターンをグループにも持ち込む。そのため,現実生活でメンバーの抱える課題が具体的で明確化される。そこで,人との関わり方について自己洞察を促したり<対人関係の学習>,他のメンバーの効果的なコミュニケーションや人との関わり行動を真似できたり<行動の模倣>,効果的かつ適切な関わり行動,ものの見方や考え方ができるように練習<社会化スキルの発達>できる。グループは,適切な支援があると,グループ自体がメンバーにとって魅力ある存在となり<グループの凝集性>,個々のメンバーの最大のサポートシステムとなることもある。

(3)グループの力動

グループのメンバー同士の相互作用によってもたらされる力のことを「グループの力動」という。グループの力動は,個々のメンバー及びグループ全体にさまざまな形で影響を与える。

グループの力動の理解には,グループの力動を成り立たせる,<1>コミュニケーション及び相互作用のパターン,<2>グループの規範,<3>メンバーの役割,などの理解が必要である。

メンバー同士のコミュニケーション及び相互作用があることによって,グループの作業は進み,目標達成に向けて展開していく。グループが展開するにつれ,グループの中でどのようなコミュニケーションや行動が期待され,適切とされるかについての規範や,個々のメンバーに求められる役割などが定まってくる。グループの規範に沿った行動はグループに受け入れられ,一方,グループの規範から逸脱した行為は受け入れられなくなってくる。

支援の目的に反するようなグループ規範やメンバーの役割の硬直化は,グループのメンバーにとって有害となるので支援者が介入し,修正を支援する。支援者は,グループの力動が,グループのメンバーにとって安全で効果的であるよう適切に介入し続ける。開放的なコミュニケーション,民主的な意志決定,自由な感情表出の支援などを心掛けると良い。そのようなグループは,メンバーにとってメンバー同士やグループそのものが魅力的なものとなり,凝集性の高いグループとなる。

-
本編目次   前頁 前頁   次頁 次頁