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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第4節 グループワーク  

3 グループワークの方法,技法

(1)なぜグループワークは時に複雑,大変に思えるか

1対1の面接では,相手一人のことに注意を向け,まずは,傾聴し,共感などをして,関係を築いていけばよいが,グループワークでは,常に複数のメンバーの言動に注意を払わなければならない。1対1では対処できそうなメンバーの行動化(望ましくない行動)も,複数のメンバーが同時に,あるいは,順次,行動化を起こすと制御することが困難になることもある。そのせいで,グループワークは難しく感じられることがあるかもしれない。また,グループでは,グループの力動が生じ,それがグループ全体を把握することを複雑に感じさせるかもしれない。しかし,グループは,メンバー同士の相互作用をうまく引き出すと,1対1の面接では得られない効力を発揮することができる。

(2)三つの側面に注意を向ける

グループワークを行うときには,常に三つの側面に注意を向けることが大切となる。三つの側面とは,<1>メンバー一人ひとりと支援者との関係,<2>メンバー同士の関係,<3>グループ全体とその展開過程の3側面である。

(3)まずはメンバー一人ひとりとの関係づくりから

グループワークは,参加する個々のメンバーの成長を目的とする。個々のメンバーとの関係においては,ケースワークやカウンセリング,精神療法などの基本的な原則や技法を応用していく。グループワークでも,個々のメンバーのアセスメントを基に,メンバー個々のニーズを見出し,個々人の課題解決をするために,目的を持って,個々のメンバーへ働きかけていく。具体的には,個々のメンバーとの関係で,<1>受容・共感,<2>信頼関係の構築,<3>制限(メンバーの限界線を示す。),<4>直面化などを適宜行っていく。

グループの「和」を重んじるあまり,反対意見を封じ込めることや,常に多数意見に従うことを強要したりしない。また,メンバーからの支援者への試し行為や,反発などが出てくることがあるが,支援者がグループワークの基本をおさえている限り,それは自然なことであり,それを良い機会ととらえ,若者の自己洞察を深め,自分の意見をアサーティブ(伝えたいことを明確)に伝える経験をしてもらい,その経験を若者自身の成長や発達に役立てられるようにしていく。

(4)メンバー同士の相互作用を最大限活用する

グループワークの力は,支援者がメンバー同士の相互作用,関わり合いをうまく促進したときに最も引き出される。メンバー同士の相互作用を促進しないのであれば,その場面は,単なる「集団の場における個人面接」になってしまう。メンバー同士の相互作用は支援者側の意図的な働きかけ(待つ,見守るなどの受け身や不作為に思える言動も含めて)によって促進される。

ア  参加の支援(個々のメンバーがグループに最大限に参加できるよう個々の力に応じて援助する。)

イ  相互作用促進(メンバー・支援者間に偏りがちなコミュニケーションの方向性を,メンバー相互間に向かわせるよう働きかける。)

ウ  「今,ここで」(個々のメンバーが,グループの中で,「今,ここで」感じたこと,考えたこと,言動などを,グループの中で自己開示することを促し,自己洞察を促す。このことにより,自分のものの見方,感じ方,コミュニケーションや言動のパターンを理解したり,自分の言動が他人に影響を与えること,他人から得られる反応などについて理解を深め,自分のありようを振り返る材料とする。)

エ  葛藤の体験と対処(グループで多少の葛藤が生じるのは当然である。メンバー同士の葛藤を体験し,葛藤があっても,それに対して意見や感情を表明しても,自分が壊されたり,仲間から排除されたりせず,対処していく経験をすることが大切である。支援者は,問題の状況を把握し,それぞれの意見や感情を確認し,意見を述べたり,感情を「私メッセージ」で伝えたりすることを促す。葛藤が生じても,グループのメンバーがメンバーのままでいられ,対処していけることを経験させる。グループにおいて,メンバー同士の穏やかな関係を重視するあまり,支援者が先回りしてメンバー同士の関係を調整することはない。葛藤をまずいことととらえず,メンバーの相互作用を活用する機会ととらえる。メンバーは,グループの中で葛藤を体験し,それを糧に外の世界でも葛藤やストレスに対処していく力をつけていく。)

(5)グループ全体とグループの展開過程に注意を払う

グループを支援するとき,グループ全体にも働きかけを行う必要がある。<1>グループの共通課題を特定し,<2>グループの目的や目標を明確にしてメンバーに伝え,<3>ルールを示したり共に作ったりし,<4>プログラムの計画と運営を支援していく。

また,支援者は,グループ全体の雰囲気にも注意を向けていく。支援者は,グループのメンバーが共有する感情や気分を感じ取ることが必要である。緊張,不安,反感,拒否への恐れ,しらけ,投げやり,衝動,怒り,甘え,期待,楽観的,喜び,達成感などさまざまなことが考えられる。これらを把握し,メンバー同士の相互作用を促進させながら良い方向へと変化させたり維持させたりしていく。

(6)グループの展開過程

グループはいくつかの段階を得て成長していく。グループの展開過程を以下のように分けると分かりやすい。

ア 準備期(第1回の会合を始めるまでの時期)

イ 開始期(第1回の会合から,グループの目標に沿ってメンバーが相互作用を始めるまでの時期)

ウ 作業期(メンバーが相互に作用しながら,個人とグループの目標に向かって取り組む時期)

エ 終結期(グループが終結するまでの時期)

アの準備期は,グループの開始に向けて支援者がさまざまなことを計画し,調整していく時期である。イの開始期は,グループのメンバーがお互いに関わり合えるよう,メンバーとの信頼関係をつくり,メンバーの参加を支援していく時期である。ウの作業期に入ると,メンバー同士の相互作用が活発になってくる。親密さや団結力が増すなどが現れることもあるが,一方で,メンバー間の葛藤が表面化することもある。葛藤を経験し,対処し,乗り越えてこそ,グループの力が発揮される。一方,支援者や特定のメンバーへの反発などが表面化することもある。これも葛藤への対処と同様,経験して乗り越えていく。エの終結期は,グループの終結に向けて,メンバーがグループ体験について振り返り,両価的な感情(悲しい気持ちと今後への期待の気持ちなど)を表に出し合い,グループ終結後への移行に向けての準備をする時期である。

(7)若者を対象としたグループの運営上の留意点

ア 遊びの要素を大切に

思春期,青年期の若者は,まだ成人ではない。学童期の子どもとは異なるが,グループワークを行うに当たって,特にはじめの頃は,「遊び」,「楽しさ」などの要素を取り入れることが大切である。「他のメンバーがどういう人か分からない。」,「他のメンバーに受け入れられるか多大な不安がある。」,というような緊張,不安の強い状態でグループは開始される。そのようなとき,ゲームなどを用いながら,メンバー同士知り合いになり,親しみを感じられるようにしていく工夫が求められる。

イ 体を動かしたり,五感を働かせる要素を大切に

若者は,元来,エネルギーをもて余し気味にしている。体を動かし,五感を使うような活動を織り交ぜることにより,心身ともに活性化されるようなプログラム活動を工夫することが大切である。もちろん,グループの目的によっては,最終的には「言葉のやりとりによるグループワーク」を行い,自己開示したり,自己洞察を深めたりしていくことが求められるのであるが,その場合でも,適宜,体を動かしたり,五感を働かせて表現するプログラムと組み合わせていく工夫をするとよい。

ウ 一つのプログラムの長さは短めに計画

若者向けのプログラム活動を計画するとき,時間配分を工夫し,メリハリのある組み合わせをすることがよい。たとえば,学校の授業は45分くらいである。テレビは15分ごとにコマーシャルを流している。若者が集中できる時間のスパンに配慮し,適宜休憩を入れながら,いくつかのプログラムを組み合わせていくことが大切である。

エ グループで何が求められているのかをできるだけ明確に示す

若者の中には,「何が正しいか,求められているか」に敏感で,常に気にしてしまう者もいる。「このグループで何が求められているか」が示されない場合,メンバーによっては不安のあまり,何も行動できないことがある。あるいは,先読みし過ぎて,言動が萎縮してしまうこともある。グループで,メンバーにどのような言動が望ましいとされているかは,ある程度明確にしたほうがよい。そして,グループの中で表出された,メンバーの望ましい言動に対しては,その言動の直後,具体的に評価する言葉を投げかけることが望ましい。たとえば,<1>他のメンバーを助けたり励ました,<2>他のメンバーのルール違反を適切な表現で指摘した,<3>自分の不快な感情を,人を攻撃しない形で表現した,などの言動に対し,支援者が直後に評価するコメントを述べるなどを繰り返すと,より安心なグループづくりができる。

オ ピア(仲間)から受け入れられるグループづくり

若者は,同世代の仲間,すなわちピアから受け入れられるか否かに最も敏感な時期にある。支援者は,そのことを十分に認識して,メンバーとの関係でむやみに恥をかかせたり,懲罰的になったり,あるいは,特定のメンバーをひいきしているようにとられないようにすることが必要である。

支援者に反感を感じているメンバーが多いと,ピアに「受け入れられたい」,「格好よく思われたい」がゆえに支援者の意向に反する行為をわざと繰り返すこともある。一方,「特別扱いされている。」と周りに思われたメンバーは,グループのメンバーから排除の対象になったりする危険性がある。このようなことを念頭に置きながら,関わっていくことが必要である。

【参考文献】

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増野肇監修,2006,『見て学ぶ サイコドラマ(視覚教材)』,中央法規出版

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精神保健福祉士養成講座編集委員会編著,2004,『精神保健福祉援助技術演習』,中央法規出版,(事例4「思春期におけるグループワーク」)

精神保健福祉士養成講座編集委員会編著,2006,『精神保健福祉援助技術総論』中央法規出版

シンシア・ホワイト他,2001,「日本における子どものグリーフワーク研究−サポートグループ「てとてとて」の実践を通して−」『テオロギア・ディアコニア34(2)』,205-229頁

トーズランド,R.W.&ライバス,R.F.著,野村豊子監訳,2003,『グループワーク入門』,中央法規出版


 ルーテル学院大学総合人間学部教授 福島喜代子
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