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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第4節 グループワーク  

6 現場の実践例(若者を対象としたグループワークの実践から〜社会が求める真のコミュニケーション力とは何かを考える〜)

(1)コミュニケーションにとまどう若者達

グループワークの目的を“若者達への勇気づけ”ととらえている。テーマとしているのは「コミュニケーション」だ。

若者と接していると,「コミュニケーション力がないので」という不安を耳にすることが多い。コミュニケーション力は社会人に必要な能力として認知され,企業もそれを求めている。だが,若者には肝心の「コミュニケーションとは何か」を教わる機会がないのだ。コミュニケーションという言葉だけが一人歩きし,会話テクニックやプレゼンテーション能力という一面ばかりがクローズアップされる。ゆえに若者たちは言葉だけでコミュニケーションを図ろうとし,そこで壁にぶつかると立ち止まってしまう。前提にあるべき,大切な“信頼関係”には気づいていない。そこに私は怖さを感じている。

そうした実態から,グループワークを通じて信頼関係を築くことの大切さを説きたいと考え,さらに「コミュニケーションは難しいものではない。」というところに落とし込みたいと思っているのである。

(2)ワークの気づきが,悩んだときのよりどころに

では,具体的にどのようなグループワークを行っているか,三つのワーク例で紹介する。

ア コミュニケーションエラーとすり合わせのワーク

「海外で活躍中」,「日本人スポーツ選手」,「髪はショートカット」,「無精髭」という四つのキーワードから誰を思い浮かべるかを話し合う。全員が同じ答えを導くとは限らない。相手も同じ解釈をしたと思い込んで会話を進めればエラーも起こる。内容を変えると,日常でも職場でも起こり得るシーンとなる。ではエラーを起こさないためには何が必要か。ワークの例なら「誰について話しているの?」というすり合わせのひと言だ。特別に難しいことではない。だがそれができるかどうかがコミュニケーションの鍵だというところに落とし込む。今までの行動を振り返るきっかけを与えるワークでもある。

イ 話しやすい環境と話し手・聞き手の関係について話し合うワーク

4人一組になり一人ずつ自己PRをする。その際,聞き手の態度を次の4パターンで試す。全く話を聞かない,聞いてはいるが話し手を無表情にじっと見つめる,話の内容を全否定する,話を受け入れる,というものだ。一般的には,四つめの受容パターンのときが一番話しやすく,もっと話そうという気持ちになる。そこに信頼関係が生まれる要素があることを気づいてもらうワークだ。

ウ 正方形の図形を四つ作る作業をタイムトライアルで競うワーク

4人一組で,最初は会話をせずに,2回目は会話を交わしながら作業をする。2回の作業を比較することで,会話の重要さと,共通の目的を持った4人には自然と必要な会話が生まれることを体験してもらう。このワークは,実際に会社で行われる会議や仕事に置き換えて説明できる。社会で求められるコミュニケーションの形を示すことで,難しいことではない,安心していいんだと伝えるのが狙いだ。

これら三つのワークを通じて伝えたいことは,コミュニケーション力とは共有する力だということだ。コミュニケーションは共有しようという気持ちがつくり出す。しかし,根底に信頼関係がなければ共有する気持ちは生まれない。信頼関係のなさが引き起こす怖さも併せて知ってほしいと考えている。

私が行っているのは話し上手になるためのワークではない。“気づけた”という感想がもらえるワークショップにしたいと考えている。体験したことや考えたことは簡単には忘れない。そしてそこが,いつか人間関係につまずいたときにもう一度考えるよりどころとして戻る場所になるはずだ。問題を課題として前向きに考えればきっと成長できる。その手助けのためのグループワークになることを目指している。


 (株)HRP 代表取締役 澤本和重
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