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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第4節 グループワーク  

7 現場の実践例(参加型ワークショップ(青少年就労支援ネットワーク静岡の実践から))

参加型ワークショップは,国際協力や国際理解教育などで用いられるグループワークの手法である。その特徴は,すべての人に開かれている場を提供できるということである。たとえば,発展途上国の農村では,長老に権力が集中し,女性や子どもなど弱者は発言権がないことも多い。しかし,村落開発をしようというとき,村の代表者(長老といわれる人たち)とだけ相談したのでは,その他の人々(特に社会的弱者)の意見を反映して,プログラムづくりをすることができない。そこで,性別にも,年齢にも,経済的な立場にも,社会的立場にも関係なく,多様な人々が,対等に,安心して参加できるように工夫された,グループワークの手法が,参加型ワークショップなのである。

若年者自立支援の対象者には,他人と一緒に,ただ,その場にいることに困難を抱える若者が少なくない。しかし,他人と一緒にいることにある程度慣れないと,職場適応は困難である。そこで,青少年就労支援ネットワーク静岡が年2回行っているセミナーでは,参加型ワークショップを受けてもらって人と一緒にいることに違和感を感じなくなってもらってから,就労体験を開始するという流れでプログラムを組んでいる。参加型ワークショップは,計4回。1回目は導入,山場の2回目は一泊セミナー,3回目は親子ワークショップ,4回目は就労体験先からの説明である。

参加型ワークショップは,少年院で行われていたものを移入した。というのは,少年院では,人の意見を聞いたり,自分の意見を伝えたりすることが不得意な少年が多いことから,コミュニケーションの力をつけることを目的とした,参加型ワークショップが発達してきたからである。

ワークショップは,通常,場の雰囲気を和らげることを目的とする(ゲームなどの)アイスブレーキングと,何らかの話合いの二部からなる。コミュニケーションがとれるようになることが目的なので,話合いのテーマは実は何でもよいが,それでは,参加者が戸惑うので,仕事に関連したテーマを設定することが多い。通常,話合いは,6名ほどのグループで行う。話合いでは,自ら発言することが難しい参加者が少なくないので,自分の意見を大きめの付箋紙に書いてもらい,それを各自読み上げてもらって,グループ内で共有するという順番で進める。

山場の2回目は,参加者が10名から20名,社会人のサポーターが10名余り,大学生が10名から20名という構成で,ファシリテーションは,大学生が行う。その狙いは,対象者より権威のある「大人」が場を動かすのではなく,対象者より権威のない大学生が場を動かすことで,フラットな開かれた場を作り上げることである。大学生は,1,2か月間も,ミーティングを繰り返して,1泊2日のワークショップのプランを作りこむ。

対象者以外のメンバー(社会人と大学生)の役割は,対象者から発言を引き出す,すぐれた聞き役になることである。話合い開始当初は,身体が引けていた対象者が,いつの間にか身を乗り出してほかの人の発言に耳を傾け,そして,思わず,ひと言質問をしたりするようになる。ワークショップを通じて,対象者は,変化が可能であるという実感を得て,就労体験へと踏み出す。

【参考文献】

グラハム・パイク,ディヴィッド・セルビー,1997,『地球市民を育む学習―Global Teacher, Global Learner』,明石書店

ロバート・チェンバース,2004,『参加型ワークショップ入門』,明石書店

堀公俊,加藤彰,1998,『ワークショップデザイン―知をつむぐ対話の場づくり(ファシリテーション・スキルズ)』,日本経済新聞出版社


 静岡県立大学国際関係学部准教授 津富宏
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