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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第6節 就職(就学)支援  

1 就職(就学)支援の意味

(1)自己確立と就職

「なぜ高校に行くのか?」,「なぜ大学に行くのか?」,「なぜ就職するのか?」など明確な考えを持った若者は少ない。皆が行くからと何の疑問も持たずに高校に通い,何の疑問も持たずに就職する。また,「やりたい仕事が見つからない」,「好きな仕事につけない」,「残業をしたくない」,「人間関係が煩わしい」,「組織に合わない」という理由で就職しなかったり,フリーターになってしまう若者も増えている。産業・経済の構造的変化が進む中で,若者の職業観の未熟さや社会人としてのスキル不足も各方面から指摘されている。フリーターは正社員同様にフルタイムで働かされ,給料も安く,賞与も出ない。また会社の都合で簡単に辞めさせることもある。また,フリーターとしてその会社の責任ある仕事や重要な仕事を任されることはまずない。就職(就学)支援は若者が将来に希望を持って自分らしく生きていくための動機づけとしての意味も持つ。自由気ままに生活し,苦労もせずに親のスネをかじり毎日過ごしている若者に成功者はいないと言ってもよい。子どもの頃から努力し困難を乗り越えてきた人は,社会に出ても自分を鍛え,成長し続けることができる人である。仕事をする目的は,単にお金を稼ぐことだけではなく,仕事を通じてさまざまな経験をして,自分を鍛え,成長していくことにあるのだ。

また,自分に合った学校に進み,自分に合った仕事を探せと言われても自分自身のことがしっかり分かっていなければ無理である。自己の個性を理解し,進むべき進路を決定し,望ましい職業観や職業に関する知識を身に付けさせる上で就労支援は子どもの頃から必要である。子どもは将来,親から自立し,社会に出て行かなければならない。自立するには職業に就くなど社会に対しての貢献が求められる。昨今,若者の働くことへの意欲・関心の低下が問題になっている。また,社会人としての社会的マナーの欠如,コミュニケーション能力の不足も指摘されている。進学や就職にとどまらず,社会人として自立していくために就職(就学)支援は大きな意味を持つのである。

(2)自己理解の必要性

自分自身の適性や能力,ありのままの自分を知ることは進学の際にも,就職の際にも大切である。自分自身がどのような人間で,何をしたいのかを客観的に見ることが就職(就学)支援の第1歩である。誰もが好きな仕事に就けるわけでわないが,自分が夢中になれること,充実した時間を過ごせることになるべく自分を近づけることは大切である。譲れることと譲れないことをはっきりさせることも大切である。自分の今まで生きてきた道のりを振り返ることが自己分析では重要である。幼い頃からの自分を振り返ると,普段は気づかなかった自分が見えてきたり,自分の性格や志向の原点を確認できることが多いからである。また,家族や友人など他者から見た自分を語ってもらうことも自分が気づいていない自分自身を発見する上で重要である。過去の自分が整理できれば,数限りない選択の中から,自分の進学先,就職先も自然と見えてくるものである。未来は数多くの可能性に満ち溢れている。その中から,自分に1番ふさわしいもの,望ましいもの,後悔しないものを選ぶことは長い人生においても大きな意味を持つのである。小学生の段階から職場体験をするなども大切であるが,数日間の職場体験では社会参加の充実感は味わうことができず,就職(就学)支援になっていないケースも多い。また,青少年が知っている職業は非常に限られている。すべての人にとって良い会社は存在しない。ある人にとっては良い会社であっても,他の人にとってはそうでもない会社だったりすることもある。自分の能力や性格,志向をしっかり理解していれば自分に合った進学先,就職先は自然と見つかるはずである。また,その目標に向けて努力できるはずである。「自分自身をしっかり理解する」ということが就職(就学)支援では最も大切なことである。

(3)技術の修得

就職する上で,どうしても必要になってくる資格がある。その資格がなければ,その仕事に就けないというものである。看護師,薬剤師,弁護士,税理士,美容師,教員免許などである。また,資格がなくてもできる仕事であっても,その資格を取ることにより,仕事の幅が広がったりするものもある。興味の持てる分野を探して,資格を取り結果的にその仕事に就けることが1番望ましいと言えるだろう。また,就職先が会社でない場合ももちろんある。たとえば,職人の世界は会社組織というより,先輩を手伝いながらその技術を見て,真似て,技を盗みながら一人前になっていくという仕事である。仕事は向こうからはやって来てはくれない。その道に進みたいと思えばそれに向けて努力しなければならない。もし,やりたい仕事があるならば,そこで実際に仕事をしている人たちから,どのような経緯で今の仕事に就くことができたのかを聴いて学ぶことが大切である。また,「本当に自分がその仕事に向いているのかどうか?」を第三者に聴いて客観的に考えることも必要である。そうでなければ,「ミュージャンになりたい」,「Jリーガーになりたい」,「プロ野球選手になりたい」など夢というより妄想になってしまう場合がある。自分の適性や能力,志向を認識し,ありのままの自分自身を客観的に見ることができればもっと現実的な未来が見えてくるはずである。夢ばかりを追いかけ,職業に就かず,いつまでも親や社会に頼って生きていくことは望ましい姿とは言えない。確かに一握りではあるがそれで成功している人もいる。しかし,その裏には人の何倍も努力している姿があるのだ。成功しようと思えば他の人の何倍も努力が必要である。努力もしないで道が切り開けてくることはあり得ない。「自分は何がやりたいか?」を考えるだけではなく,「自分は何ができるか?」を考えることも重要である。

(4)子どもの成長と教育

人間はいつまでも成長し続ける。教育は人間を変え,成長させることができる重要なものである。学校という教育の場は集団生活,コミュニケーション能力,論理的思考力,発想力,企画力を高めることができる場所でもある。また,家庭での親の子どもへの干渉のし過ぎ,過保護が子どもの自立を妨げる原因の一つになっている。家庭内でも失敗を恐れずに,自分でできることは自分でさせる習慣をつけさせることも大切である。また,母子関係が強過ぎたり,父性が乏しかったり,夫婦関係が悪いと,子どもの中に社会で生きていくためのたくましさが育ちづらい傾向がある。結果として,小さなことでも一度躓くと立ち直れない子どもになってしまう。ビニールハウスで育った草花は,外界の冷たい空気や風雨に弱く,たちまち枯れてしまう。同様に人の心も保護され過ぎるとたくましさを失い,ちょっとしたストレスにも耐えられなくなってしまうのである。また,近年,一人っ子が増えたのと同時に,ゲームやインターネット,携帯メールにはまる若者が増え,人間関係や面と向かってのコミュニケーションを苦手とする青少年が増えている。また,子どもが自分で解決しなければならない問題にも,親が過剰に反応し介入するため自分では何も解決できない子どもたちも増えていると言える。人は問題や挫折を経験することによって成長していくのである。子ども自身で解決できる程度の問題ならば,親は口出しをせず,子どもが自分の力で解決していくのを見届けることが大切である。自分で考え自分の力で解決することに成功すれば,それが子どもにとって大きな自信になり,将来への大きな糧となるのである。また,親が家でいつも疲れた顔をし,「大変だ」,「疲れた」と仕事のつらさばかり嘆いていると,子どもたちは,仕事はつらいこと,嫌なことと思うようになる。反対に,子どもの前で仕事上の楽しかったことや,やり甲斐を感じることなど,身近な親だからこそ伝えることができるものもある。子どもは親の背中を見て育つ。家庭教育も就職(就学)支援には大きな意味を持つのである。就職(就学)支援は若者の生き方を左右する教育であり,学校・家庭・地域が連携して情報交換しながら,それぞれの役割を認識して対応していくことが望ましい。地域で子どもたちを育てていくことが大切であり,学校・家庭・地域が一体となった取組が今後ますます重要になると言える。

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