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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第6節 就職(就学)支援  

2 キャリア面からのアプローチ

(1)ニートの実際

物理的に恵まれながらも自立心が欠如していて人間関係がうまく作れず,人の心の痛みも分からない若者が増えている。

またニートについても彼らの親世代が数年後に一斉に定年を迎えることを考えると危機的状況にあると言える。2007年の厚生労働省のニート実態調査によるとニートの8割以上が「社会や人から感謝される仕事がしたい」,「どこでも通用する専門技能を身につけたい」と回答しており,労働意欲の欠如をニートの原因とすることはできない。一方,「人と話すのが不得意」とニートの6割以上が回答しており対人関係がうまくいかないことが就職の障害となっているという見方もできる。また,ニートの約8割が一度は就職しようとしたことがあり,その半数が現在も就職活動中であることを考えると,「働く意欲はあるが,その意欲を受け止める職場がない」あるいは,そのような職場に出会っていないと考えたほうがよいのかもしれない。

(2)キャリアの形成

今の若者の職業観・勤労観の未熟さや社会人・職業人としての基礎的・基本的な資質・能力の不十分さを問題視する声が多い。また外の世界に興味が持てず,自分の内面についても考える習慣がないまま大人になってしまっているケースが多い。これは,過干渉,過保護な子育てをしてしまった親にも大きな責任があると言える。このような中で子どもたちが生きる力を身に付け,社会の激しい変化に流されずに,それぞれが直面するさまざまな課題に柔軟に,たくましく対応し,社会人,職業人として自立していくことができるような支援が強く求められるのである。今日の青少年のさまざまな課題を解決していくために,青少年一人ひとりが自らの責任でキャリアを選択して決定していくことができる能力と態度を身に付けさせることが必要とされているのだ。「キャリア」は「個人」と「働くこと」の関係の上に成立するものであり,個人から切り離して考えることができないものである。また「働くこと」については職業以外にも家事やボランティア活動,学校での係活動など多様な活動があることなどから個人がその学校生活,職業生活,家庭生活,市民生活等のすべての生活の中で経験するさまざまな立場や役割を遂行する活動として幅広くとらえる必要がある。過去・現在・将来の自分を考えて社会との関係の中で自分らしい生き方を展望し実現していくことは青少年の発達課題であり,生涯にわたっての課題でもある。人は生涯のそれぞれの時期において,社会との相互関係の中で自分らしく生きようとすることが望ましいのである。一人ひとりのキャリア発達は知的・社会的発達とともに促進されるのである。

(3)コミュニケーション能力

子どもたちが自立した社会人として将来生きていくためには,コミュニケーション能力,社会人としてのスキル,社会人としてのマナー,必要な情報を活用し自分の生き方を考えていく能力,自分自身を客観的に見る能力を身に付けることが必要である。これらの能力に加え,働くことへの意欲・関心を持ち,自らの意志と責任で,自ら希望する進路の実現に向け,さまざまな選択肢の中から自らにふさわしい選択を行い,困難や挫折を乗り越えてく力が重要なのである。コミュニケーション能力は組織や集団の中で人間関係を築き,自己を成長させていくために必要不可欠なものである。コミュニケーションを図る上で大切なことは自分自身を理解し,他者のことも理解し,お互いに認め合うことである。コミュニケーション能力を身に付ける基本は家庭である。毎日,子どもと向き合い,親が一方的に話すのではなく,しっかりと子どもの言葉にも耳を傾け,目を見て,子どもの言葉を受け止め,うなずきながら話を聴くことが基本である。上手なコミュニケーションは人間関係を円滑にするだけでなく,仕事をミスなく行うためにも欠かせないものである。コミュニケーションは一方通行で成り立つものではない。自分が感じていること,考えていることをお互いに言葉にしてやりとりすることがコミュニケーションの基本であり,働くためにはこのコミュニケーション能力が必要不可欠である。「近頃の子どもたちは何を考えているか分からない」,「社会人としてのマナーがなっていない」という人たちは多い。しかし,彼らは社会人としての基本を教わっていないだけなのである。まわりの大人たちが普段からしっかりと社会人としての常識を教えていくべきなのである。社会で守るべきマナーは数多くあるが代表的なものを挙げれば,

・自ら先に挨拶をする,

・遅刻をしない(事情があり遅れるときは必ず電話をいれる。),

・きちんとした清潔な身なりと服装をする,

・勤務先では私用電話はかけない,

・周りの人に不快感を与えるような行動はとらない,

などである。

(4)自己内省と成長

就職を前に,どのような仕事をしたいか分からないと悩む若者が多いが,彼らは何をしたいか分からないわけではなく,自分自身の内面について考える習慣を忘れているだけなのである。会社を探して悩むよりも,どのような仕事が世の中にあるか?をまず探し,自分がどのようなことに興味があるか?をじっくり考えなければならない。自分自身をしっかりと見つめ,興味を持てることが見つからないのであれば,好奇心を持ち,行動範囲を広げていき,自分から新しい興味の対象を探していけばよい。今分かっている部分だけが自分のすべてだとは思わずに自分の内面を見つめ,興味の範囲を広げることも大切である。好きなことや興味を持てることは現実の裏打ちがなくても成立するが,職業は具体的かつ現実的なもので成り立っているのである。現実的で具体的なものは,実際にやってみなければ,その実態は分からないのである。仕事は自分に与えられた場所で身体と頭を使い,会社の利益を生み出すものである。また,その報酬として給料が支給されるのである。単に感情的に好きなもの,興味を持てるものと,仕事という制約の中で,自分の力が発揮できて充実感が持てる「仕事が好き」は別物である。「好きなことを仕事にする」のではなく「好きになれそうなことを仕事にする」ことは大切なことである。仕事とは,それに真剣に打ち込むうちにだんだん好きになっていくものである。初めから好きなことでお金が稼げるのではなく,自分自身が好きになれそうな職業に就き,そこで,さまざまな経験をして自分自身が成長することで好きになっていくのが仕事である。多くの青少年にとって就職は人生で最大の自己決断でもある。学生でいる間は,偏差値のような客観的条件で,どの学校に進むかを決めることができたが,就職はそうはいかない。自分と向き合い,生活経験や,育った環境,自分が持っている資質などもよく考えて自分自身で選択して決めなければならないのである。これは社会人になるために,どうしても乗り越えなければならない試練である。キャリア教育に携わる者は,キャリア教育の基本となる子どもたちの,キャリア発達や子どもたちを取り巻く社会環境の変化,教育活動全体を通して進められるキャリア教育の在り方について十分な理解を深めることが重要であり,キャリア教育に携わる人の資質向上が求められている。キャリアの形成には,青少年一人ひとりの成長発達過程におけるさまざまな経験や,人とのふれあいが総合的に関わってくるのである。そのためにキャリア教育推進に当たっては,学校・家庭・地域が連携・協力をして,社会全体で青少年のキャリア教育を進めていくことが重要であると言える。

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