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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第6節 就職(就学)支援  

5 現場の実践例(キャリアカウンセリング)

「若者のキャリアカウンセリング」といってもその若者によって,年齢,性別,学歴,経験,職歴,価値観など実にさまざまである。以下実際にキャリアカウンセリングしたある事例について紹介する。

Sさん29歳男性,成績優秀で有名私立大学を卒業後,中規模病院に就職,医事課に配属となる。自分としては一生懸命やっていたが,多くの仕事を次々とこなすことが困難で要領が悪く,さらにストレスで体調を崩し,自己都合退職。退職後,4年間税理士試験の勉強に専念し,複数の会計関連の資格を取得するが,年齢的,能力的な限界を感じ断念。働くうえで何か役立つこともあると思ってコンビニでアルバイトをしている。時々,就職のことなどを考えると強い不安を感じ,動けなくなる。メンタルクリニックの医師からは定期的に通院し服薬を継続すれば,正規社員として働いてよいと言われた。現在自宅に両親と3人で同居し,父親が大手企業に勤務しているため,日常の交通費など経済的な援助は受けている。両親も自分の就職のことを心配しており,自分としてもアルバイトのままでいるのは良くないと思う。この男性の面談を進めるうえで,留意したことを下に挙げる。

(1)安心して話しやすいような雰囲気づくりに心掛ける

まずは,安心してもらえるように,キャリアカウンセラーである私自身がこれまで多くの若者のキャリアに関する悩みを聴いてきたことを簡単に自己紹介した。その後「最近はどうですか?」というような言葉で話を聴き始め,話したいことから話せるように留意した。また,不安についてできるだけ話してもらうようにした。たとえば,メンタルクリニック通院と仕事と両立できるか不安であることを話してもらううちに,かかりつけの医師に仕事と両立できる曜日に通院日を相談してみるということになった。

(2)アドバイスよりも「聴く」ことを重点にする

こちらがSさんにアドバイスするというよりも自分がどのようにしたいのかを考えを話してもらうことに重点を置いた。面談の中では,「自分はどうしたいのか。」,「何を知りたいのか。」,「何を調べたいか。」という点について話してもらい,それらのことについて,次回までに自分なりに考えてくることや,調べてくることを確認するようにした。

(3)自分について振り返り,話してもらう

興味あること,好きなことなどについて自宅で書き出し,自分を振り返ったうえで,面談で次のようなことを話してもらった。「福祉。」,「本当は社会科の先生になりたかった。」,「声を出すこと。」。同様に,これまでの経験については,「アルバイトで,周囲の人に評価されているのが自信になった。」,「税理士試験勉強で学んだことをいかせる経理の仕事を希望したい。」 。同様に,就職についての考え方は,「規模の大小は問わない。」,「自宅から通える,会計の知識がいかせる。」ところを希望。

(4)段階的に就職活動を進める

Sさんの場合,すぐに就職活動全面展開が難しいので,段階的に進めるようアドバイスした。具体的には<1>コンビニでのアルバイトの継続→ <2>自己分析作業→ <3>就職活動セミナー受講と企業研究(福祉,病院,経理職募集企業)→ <4>応募書類作成→ <5>新たに身に付けたいスキルの習得(PC用会計ソフトの練習)→ <6>求人情報検索および求人への応募の段階で,5か月間ほど足踏み状態となった。その時点では「まずはできるだけ多くの企業,病院の面接を受けることに頑張ろう。」というアドバイスを3回ほどした。その後自分から決意して次々と求人に応募し就職活動が本格化していった。

以上のような面談をほぼ2か月に1回継続しつつ,1年ほどの就職活動の後,現在の職場に就職した(職場は,自宅から1時間半ほどの通勤時間,中規模病院の経理。)。


  NPO法人学生キャリア支援ネットワーク理事長 橋本光生
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