本編目次   前頁 前頁   次頁 次頁
本編 > 第5章 > 第6節 就職(就学)支援
ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第6節 就職(就学)支援  

7 現場の実践例(伴走型支援(青少年就労支援ネットワーク静岡の実践から))

伴走型支援とは,支援者がマンツーマンで対象者を担当し,社会適応のプロセスを支援するという支援モデルである。伴走型支援の典型は,非行少年のための保護司の制度である。伴走型支援は,若年者の就労支援に固有のモデルではなく,青少年育成の分野ではメンタリング,障害者の就労支援の分野ではジョブコーチによる支援が担当する。伴走型支援の支援機関には,相談や交流のための場を必ずしも持たないという特徴がある。

青少年就労支援ネットワーク静岡は,市民ボランティア(ジョブサポーター)による伴走型支援を平成14年から展開してきた。ジョブサポーターは,現在40名ほどで,パソコン教室経営者,サポート校経営者,キャリアカウンセラー,元少年院教官,社会的ひきこもり支援者,社会保険労務士,退職した企業人,臨床心理士などなどである。一人のジョブサポーターができることには限りがあるから,多様なジョブサポーターがネットワークを構成して,サポーター同士が支援をし合うことが重要である。青少年就労支援ネットワーク静岡の場合,県内を三分してそれぞれの地域でネットワークを形成し,就労体験先や雇用先情報の共有,ケースマネジメントについての相互指摘などを行っている。青少年就労支援ネットワーク静岡の活動には,次のような利点がある。

(1)プレイスアンドトレインモデルによる支援である

就労支援の対象者は,仕事を続けることが難しい。よって,就労支援の目的は,仕事を続けるための職場適応能力(挨拶をする,明るくふるまう,人の話を聞く,分からなければ質問する,段取りを付ける,失敗したら謝る,物は丁寧に扱う,出したものはしまうなど)を身に付けてもらうことにある。職場適応能力を身に付ける最善の場所は,職場である。そこで,青少年就労支援ネットワーク静岡では,まず,職場に入れてもらい(プレイス),仕事を通じて職場適応能力を伸ばしていこう(トレイン)という,就労体験を中核とする支援モデルを用いる。ジョブサポーターは,対象者と共に,この成長の過程を計画し,寄り添い,励まし,時には,背中を押しながら,目標達成を支援する。

(2)地域に根ざした個別的・継続的支援である

ジョブサポーターは,地域在住の対象者をマンツーマンで担当する。たとえば,筆者の場合,静岡市清水区の対象者を担当し,面談は,地元のファストフード店などで行う。地域担当制は,金銭的に余裕がない対象者にとって,交通費の節約になる。地域を担当しているという感覚なので,ケースの終結はない。(1)で指摘したように,対象者は,仕事を続けることに困難を抱えている者が多いから,継続的な支援は,ニーズに合致している。

(3)地域づくりができる

伴走型支援は,(正に,保護司がそうであるように)地域に根ざした一般市民が行うことができる支援モデルである。青少年就労支援ネットワーク静岡のジョブサポーターは市民ボランティアとして,「素人」の世間智を集めることで,若者を地域の仲間とするためにネットワークを形成している。なお,伴走型支援は,ハコ物が不要なため費用対効果が高いが,市民参加型の伴走型支援はいっそう効率的である。

【参考文献】

津富宏, 2007, 「無業者の就労支援のノウハウ〜内閣府「青少年の就労に関する研究調査」と静岡県での実践〜」『夢耕場』,18:2-7,(財)大阪生涯職業教育振興協会(A'ワーク創造館)

津富宏,2008,「静岡方式で行こう! ―就労に困難を抱えた若者への支援」『月刊ガバナンス』,91:25-27.


 静岡県立大学国際関係学部准教授 津富宏
-
本編目次   前頁 前頁   次頁 次頁