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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第6節 就職(就学)支援  

8 現場の実践例(就学支援におけるさが若者サポートステーションの実践から)

ニートの状態にある若者を対象とした就学支援は,本人の希望や成績等をもとに行われる一般的な進路相談とは異なる。その前段として考慮すべきは,ニート化の背景であり,特に困難を抱える若者に関しては,自立を妨げる根本要因のケアから環境調整に至るまで包括的な対応が求められる。

厚生労働省の実態調査 30) によれば,全対象者の5割強が学校でのいじめ被害,約4割が不登校,4割がひきこもりを経験している。また精神科等で治療を受けた者が5割近くに上る中で,約8割の若者が人間関係に関する不安を訴えている。実際,現場で対応する若者に関しても抱える問題は多様かつ複合的で,長期的な関わりを要する者も少なくない。

こういった観点からも,「見立て」の精度は支援の実効性を左右する重要な要素となる。そこで,当施設では多角的な視点を得るため,臨床心理士,キャリア・コンサルタント,精神保健福祉士,教員免許取得者等,専門領域の異なる相談員を所属させている。必要に応じて適時チームで対応することで,「見立て」の精度を上げている。また,特段の配慮が必要とされる若者には,アウトリーチ(訪問支援)の実施等,生活環境に対しても積極的なアプローチを図っている。

直接的な支援に関しては,個々人の状態に合わせた「段階的な移行」が基本となる。進路情報の提供を例に挙げると,我々は通信制・定時制高等学校の情報から,高等学校卒業程度認定試験やその他資格試験,奨学金制度,更には県外の就学情報に至るまでさまざまな情報を提供している。ただし,初期段階では,混乱を避けるために本人の希望に沿った最小限の情報から提供を行い,状態に応じて段階的に情報量を増やし,選択肢を広げていく。

学習支援に関しては,教科書通りに基礎から積み上げるのではなく,まずは本人にとって成果が実感しやすい項目に絞り込んで教授し,段階的に学習の範囲を広げていく。無論,就学時の到達レベルは一般的な学生と同程度であるが,学習に対する苦手意識の緩和や学習意欲を向上させるための導入方法や学習過程は個々人の状態によって異なる。やはり我々が優先すべきは根本要因のケアで,心理的なバランスへの配慮を欠くことはできない。

対人関係上の問題に関しては,臨床心理士等によるカウンセリングに加え,ソーシャルスキルトレーニング(SST)を通じて具体的に改善を図る。特にコミュニケーション上の問題などは小集団活動の中で表れやすく,より実効性のある助言を行うためにも,フリースペースや就労体験などを活用し実践的な場面の中で対人コミュニケーション能力の育成に当たっている。

他方,保護者対応も就学支援においては重要な位置づけとなる。ケースによっては,保護者の強い不安が若者の自立に悪影響を及ぼすこともあるので,成功事例の紹介や中長期的な見通しの提示など具体的な助言や指導によって不安の軽減に当たる。また,家庭環境に著しい問題が認められる場合については,アウトリーチの実施等,直接的に保護者支援を実施することもある。 

このように困難を抱える若者の就学支援は一担当者,一機関で完結できるものではなく,多元的な連携を要するケースも多い。そこで,支援過程全般で我々に求められるのは,若者との強い信頼関係を基にした「コーディネーター」としての役割であり,認識すべきは若者が自立を達成するまでの一貫した「責任」である。


 さが若者サポートステーション総合相談業務責任者 松尾秀樹

30)(財)社会経済生産性本部,2007年,『ニートの状態にある若年者の実態及び支援策に関する調査研究報告書』,(財)社会経済生産性本部
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