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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第7節 家族支援  

4 具体的な家族支援の方法

具体的に家族を支援する方法を考えるときには,二つの重要なポイントがある。それは,「家族内の問題にせず外部の資源につなぐこと」と「必ず複数で関わる」の2点である。若者の問題行動の具体的な事例については,奥村・野村(2006)に詳しく書いてあるので参照されたい。ここでは,ソーシャルワーク的なアプローチをベースとして,問題を抱える若者を含む家族に対する支援の流れと「支援マップ」について説明する。

《具体的な支援の流れ》

(1)家族の誰か(一般には親など,本人もあり得る)からの相談を受ける(来談・訪問)

ポイント  相談者の「困り感」を受容し,何を問題にしているのかをつかむ。家族の関係をつかむ。

(2)可能ならば問題を抱える本人(本人からの相談の場合は家族の誰か)の話を聞く(来談・訪問)

ポイント  (1)の相談者の「語り」,「困り感」と<2>の相談者の「語り」,「困り感」の異同を明らかにする。問題はそれぞれの人物の「認知」(受け止め)であり,事実の追求は意味を持つとは限らない。

(3)初回面接に関するケース会議を開き,問題の明確化(何が問題なのか),支援の目標設定(どうなればよいのか),有効な資源の検討(どのような資源が活用できるか),アセスメントの必要性の検討(問題行動の背景に発達上の問題・病理・パーソナリティ特性の問題が疑われる場合),環境調整の必要性の検討(貧困など経済的環境,人的ネットワークなど社会的環境,文化的環境)を行う

ポイント  初回面接の担当者の記録をもとに印象を交えて報告してもらい,必ず複数の「眼」で検討する。また,目標は「最低限クリアする」実現可能な設定を心掛ける。

(4)家族に対して(3)のケース会議で検討した支援の方向性について説明して,「本人のこれからの生活のために力を合わせ一緒に取り組みましょう」という姿勢を示し同意してもらう

同意が得られる場合  具体的にアセスメント・受診,相談のスケジュールを立て,本人の行動を促すように協力する体制作りを進める。その際,支援のネットワーク上で家族も含めた「役割」を,資源(機関・人など)のアドバイスに基づいて確認しながら行う。

同意が得られない場合  本人・家族と支援者の信頼関係ができていないので,まずは定期的に連絡を取り,信頼関係の構築に努める。人権に関わる問題,虐待や犯罪につながる恐れがある問題などが疑われる場合は,諸機関と連絡して介入の可能性を検討する。

(5)家族との相談のプロセスでケース会議を開き,方向性とそれぞれの役割,関わりによる変容の確認を行う

ポイント  本人と家族の関係を調整しながら支援を行う。支援されるのは表面的には「問題を抱える若者本人」であるが,本質は「家族全体の関係性」であるから,本人の人的環境である家族は「支援者であると同時に被支援者でもある」という視点を失わないようにしたい。

(6)目標となる行動や関係性の再構築に向かう変容や方向性が見えるまでケース検討と支援を繰り返す

ポイント  関係性は動的なもので完璧な解決などないから,見守りフォローする体制を維持する。

具体的な家族支援の流れに従って,ケース検討を重ねた結果を図に表したのが「HATENA MAP」である。「HATENA MAP」は,特別支援や福祉の現場では「支援マップ」として当たり前に使われているものであるが,問題をかかえる本人(MAPの中央の点線で囲まれている部分)を中心にして「どんな問題・困りごとに対して」,「どんな資源があるのか」,「資源にどのように連絡して繋がるのか」を図示したものである。支援者は当たり前にこうした「支援資源図」が頭に入っていて,実際にケースに応じて,また状況の変化に応じてリファーしたり連携したりするが,支援される側は意外なほど全体の見取り図は持ちにくい。支援者,支援される人たちの両方が同じ情報を持つことによって,その都度指示を受けなくても動けるように,いわば自立した形で「問題(状況の変化)」-「資源」-「アクセス方法」を示したのが「HATENA MAP」である。支援者,支援される人が状況に応じて使えるようにアレンジして役立ててみて欲しい。

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【参考文献】

Benjamin,Jessica.,寺沢みづほ訳,1988,「The Bonds of Love, Pantenon Books.」,1996,『愛の拘束』,青土社.

目黒依子,1980,『女役割−性支配の分析−』,垣内出版

落合恵美子,1989,『近代家族とフェミニズム』,勁草書房

緒方明,1996,『アダルトチルドレンと共依存』,誠信書房

奥村雄介・野村俊明,2006,『非行精神医学−青少年の問題行動への実践的アプローチ−』,医学書院 

斎藤学,1989,『家族依存症』,誠信書房

斎藤学,1995,「共依存と見えない虐待」,『こころの科学』59,日本評論社


 東京聖栄大学健康栄養学部・学生支援センター准教授 長須正明
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