本編目次   前頁 前頁   次頁 次頁
本編 > 第5章 > 第7節 家族支援
ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第7節 家族支援  

7 現場の実践例(自立困難な若者を抱える家族への支援〜不登校・ひきこもり支援を通して見えてきたもの〜)

自立することの定義が明確に表現できないが,今の若者全般に共通して言えることは,自立とは就労に至ることだと思っている。大多数の家族もそのようにとらえている。一昔前なら,誰でもが自然に受け止め,当然のように時期が来れば働き出したものだが,ここ十数年前あたりから,働くことにかなり不安を抱えている若者が多く見られるようになってきた。ということは,自立していない若者が多いということになるのであろう。私たち大人が自然に身に付けてきたことが現在の若者にはできないため,現代社会では支援者が多少意識しながら関わっていくことが必要となってきている。現在,社会は希薄な人間関係の中で,失敗しないよう,傷つかないよう,安全なレールを提供している。しかしわが子だけは勝ち進んでほしいと思う親からの期待を一心に背負った子どもたちは,無意識に自分自身のためだけではなく,親に認められるために頑張り続けてきたようにも考えられる。わが子が独り立ちすることを意識して育てれば,当然,多種多様な経験,体験をさせながら,困難を乗り越えていく力や社会の流れに同化するたくましさを育み,自分自身の人生を築くことを願うはずだ。しかし,社会全体が豊かさゆえの期待や押し付けで,子ども自身が考えて切り開いていかなければならないことまでも,周りで手を差し伸べてしまい過ぎたのではないだろうか。今の若者にとって,自立とはかなりハードルが高く,どういうことが自立なのかも漠然として分からないのではないだろうか。なかなか社会参加できない若者を抱えた家族支援に取り組んで11年になるが,自立困難な若者には家族が援助者になる必要があり,その家族を援助しているのが「わたげ」である。

家族が安心して集まれる場(家族教室)を提供し,その中で,冷静に考え実行していけるようなスキルを身に付けることを目標としながら,下記のようなプログラムを通して家族への具体的な支援は行っている。<1>自立できない(ひきこもる)わが子の心理の理解。<2>わが子の様子をきちんと把握しながら見極める力の習得。<3>わが子の今一番困難なこと探し。<4>家族援助の必要性と家族しかできないメニュー作り。<5>父親の役割(父親の会)。<6>わが子に今必要なもの,今やらなければならないこと。<7>わが子の良いところとできそうなこと探し。<8>家族の良いところ探し。<9>わが子の自立を考えること。<10>わが子に足りないもの・親に足りないもの探し。<11>わが子と支援者(伴走者)の関係づくり。<12>社会参加へのトレーニング…。ここまでが家族支援だが,本人支援へ移行後も継続して家族支援は行う。

家族支援継続中に,本人支援がスタートすることになるので,途中から家族・本人支援体制をとる。

本人の具体的な支援内容は,自宅以外の安心できる居場所を提供し,自分の社会復帰は自分の力で取り戻せたと思えるような支援をしていくことを目標とする。<1>今自分に起こっていることを理解する。<2>今必要なことを具体的に考える。<3>必要なことを実際に行動化してみる。<4>遊ぶ・群れる・触れる・学ぶ・挑戦・努力・継続・考える・働く・つながる…を実際に体験してみる。<5>現実をしっかり見る。<6>可能性・目標を考える。<7>自分の人生設計を立てる。<8>自己表現をする…。

さまざまなメニューを集団の中で体験しながら,個々の空白を埋める作業を通して,自身を取り戻しこれからの自分を考えていくようになるまでを支援している。あくまでも本人が自分の問題として気づき,受け止め,行動しなければならないので,回復には個人差が出てくる。早期に介入することで,本人の自立が早まるのではないかと考える。長い道程を共に支える家族がいることこそが,本人の自立につながるのではないだろうか。


 NPO法人わたげの会理事長/社会福祉法人わたげ福祉会理事長 秋田敦子
-
本編目次   前頁 前頁   次頁 次頁