本編目次   前頁 前頁   次頁 次頁
本編 > 第5章 > 第8節 フォローアップ
ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第8節 フォローアップ  

1 フォローアップの意味と課題

自立支援には二つの側面がある。一つは「自立する」ことであり,もう一つは「自立し続ける」ことである。後者の「自立し続ける」ことを支援するためには,フォローアップの在り方が非常に重要になってくる。

たとえば,ある若者は“働く”ことで収入を得て生計を立てることを“自立”ととらえ,「僕は自立するために働けるようになる」ことを目標として挙げてきた場合,支援計画の上では就労(就職)がゴールとして設定されるだろう。そして,そのために何が必要なのかを共に考え,支援計画に沿って実行していく。キャリアカウンセリングで不安を解消しながら,自己分析をする。職場体験(インターンシップ)で自信を獲得し,履歴書を作成する。ハローワークやネットを活用して希望の企業を絞り込み,業界研究をする。面接練習を繰り返し,面接に臨むに当たっての心構えや服装のチェックをしていく。めでたく就職が決まり,きっと彼は満面の笑みで挨拶にくるだろう。

一見,とても順調に支援計画が遂行され,一人の若者が自立に至ったように考えられる。しかし,支援する側の人間として,そこですべてが終わり,ホッとしていられるだろうか。本当のところは不安になるはずである。職場の人間関係はうまくやれているだろうか。挨拶や返事はしっかりできているだろうか。壁に当たったとき,一人で抱え込まずに上司や同僚に相談できているだろうか。明日,離職するなんてことはないだろうか。来年も元気に働けているだろうか。もし,会社を辞めたくなったときに,事前に相談に来てくれるだろうか。辞めてしまったとしても,報告に来てくれればできることがあるかもしれないが,もう一度足を運んでくれるだろうか。

確かに,目標である就職までの支援は達成できたかもしれない。けれども,それで自立支援が終わるわけではない。これからも自立した状況を続けていけることが大切であり,そのためにフォローアップが存在していなければならない。

自立とは,自分の力(他者の力を借りることもある。)で自分自身を支えられる状況を維持できるかどうかにある。社会との接点なく孤立している若者は,自分を支える足が「自分」または「家族」しかない非常に不安定な状況である。職場や学校も一つの社会であり,足になり得る。その他,友人,サークル,習い事,趣味など,関わりある社会との接点をどれだけ持てるかで,自分を支える足の本数が変化する。もちろん,足をたくさん持っていなければならないわけではなく,1本1本の足が太ければそれで安定するだろう。つまり,自立し続けるためには,自らを支える足(社会的所属)の数と強度のバランスが必要なのである。

若者にとって,自らを支え,支援してくれた人間,または居場所は所属できる社会の一つとなる。困ったとき,迷ったとき,壁にぶつかったとき,そこへ行けば,その人に相談すれば何とかなるという安心感,いつでも助けてくれるだろうという信頼感が,自立を獲得した後も持っていられるような関係,仕組み(プログラム)の構築まで含めての自立支援でなければならないし,支援者はフォローアップまでを常に念頭に置いて支援をするべきだろう。

しかし,フォローアップにも課題はある。一つには,個人で支援していく場合のキャパシティーが挙げられる。これは物理的な時間とも言える。長年,支援をしていればそれだけフォローアップをしていく人数が増えていく。10名が100名,1,000名と増えた場合に,個人では抱えきれなくなるだろう。もう一つは,定期的な報告や連絡を強要できないことである。こちらがいくら心配をしていても,もしかしたら,もう連絡してほしくない若者もいるかもしれない。または,自立はしたものの,何らかの理由で再び社会から孤立してしまった場合,支援者に対する“申し訳のない気持ち”から連絡することに1歩踏み出せないこともある。

フォローアップは非常に重要であるが,支援者側が目一杯になってしまうことは避けなければならない。そのためには,保護者とも連携をとっておく。グループでフォローできる機会を提供する。メーリングリストやSNSを活用するなど,個人または団体で工夫する必要がある。繰り返しになるが,自立には「自立する。」と「自立し続ける。」という二つの側面がある。その意味からフォローアップは不可欠なものであると認識をしておきたい。


 NPO法人「育て上げ」ネット理事長 工藤啓
-
本編目次   前頁 前頁   次頁 次頁