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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第8節 フォローアップ  

3 現場の実践例(フォローアップ(青少年就労支援ネットワーク静岡の実践から))

(財)社会経済生産性本部の調査によれば,青少年就労支援機関を利用する,いわゆるニートといわれる若者の8割は,1か月以上働いた経験がある。この事実は,職に就けなかったことではなく,就労の継続に問題があったこと,つまり,青少年の就労支援は,就職がゴールではなく,スタートであることを示している。要は,フォローアップこそが,就労支援のコアの活動である。よって,就労支援のパフォーマンスの指標は,支援対象者のうち働いていない者に対する,働いている者の比率の時系列となる。対象者個人単位でいえば,仕事をしている時間をON,していない時間をOFFとして,OFFに対するONの比率である。

この指標を上げるため,就労支援は,次の二つの目標をもつ。<1>一つの仕事を長く続ける(職場適応の波をうまく乗り越える。),<2>転職を素早くする(転職してもよいが,職探しに時間をかけない。)。いずれにせよ,正に,「プレイスアンドトレイン(仕事に就いてから能力を伸ばす)」モデルである。なお,<1>と<2>のいずれにより力点を置くかは,その仕事による「トレイン」の効果やストレスの程度の見込みによる。

青少年就労支援ネットワーク静岡では,次のようなフォローアップシステムを用いることで,<1>と<2>の達成を狙っている。

・ 地域別の担当者制度:担当者は,基本的に地域別に対象者を担当し,「エンドレス」に,その地域内の対象者との関係を継続し続ける。就職後こそ,セルフコントロールスキルの指導も含め職場への適応支援や,素早い転職支援を行うためのモニタリングが必要であるので,その後,地域(たとえば,ファミリーレストランや公民館)において,担当者は,対象者と定期的に面談をし続け,いったん安定しても,関係を継続し続ける。地域別の仕組みをとることで,担当者は,担当地域内の雇用主の動向に累積的に詳しくなり,職探し(プレイスメント)の能力も上がる。

・ ピアによる相互支援:一定の数の対象者の存在する地域ごとに,定期的に,未就労・既就労にかかわらず,対象者が集うフォローアップミーティングを行っている。具体的には,静岡市内における2か月に1度のミーティング,藤枝市内における1か月に1度のミーティングである。支援者が場を提供し,対象者は自由な意見交換を行う。何年分もの対象者が累積し,こうしたグループが相互支援の場として機能するようになると,支援者による直接支援の重要性は,相対的に減少することになる。いずれにせよ,いつでも戻ってこられる場があることは,孤立化を防ぐために非常に重要である。

*ジョブクラブ(第4章第6節「コラム(就労支援に関するエビデンス)」参照)は,ピアの相互支援による,就職支援手法である。これもまた,対象者が失職したら,いつでも戻ってこられる場である。

すべての人がリスクに曝され続ける現在,フォローアップこそが,就労支援の中核的活動である。青少年の就労支援とは,地域の人々が支え合うシステムを構築することによって,この遍在するリスクから相互に身を守る,地域づくりなのである。


 静岡県立大学国際関係学部准教授 津富宏
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