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ユースアドバイザー養成プログラム
第5章 支援の実施
  第9節 個人情報の取扱い  

8 現場の実践例(NPO法人「育て上げ」ネットの実践から)

支援活動においては,個人情報の取扱いに細心の注意を払わなければならない。情報漏洩・流出は言わずもがなだが,何よりも相手(若者・保護者など)との信頼関係を根底から崩してしまうからである。

NPO法人「育て上げ」ネットでは,まず情報管理部門担当者で以下の手順を踏みながら個人情報への取組を行った。

(1)個人情報保護法の理解  何が,どこまでが個人情報なのかを認識

(2)情報の棚卸し  自分たちが持つ「情報」の再確認

(3)情報の区分  確認した情報を管理レベルごとに区分

(4)アクセス権の設定  各レベルの情報にアクセスできる権利の割り振り

若者を支援する現場は,入居しているビルの3階フロアにある。そこには支援者や支援を必要とする若者だけでなく,見学者や来客者など,不特定多数が出入りする場所のため個人情報に関わる書類などは極力置かないようにしている。しかし,日々の支援の中で必要な書類もあるため,それらの情報については鍵付きの棚に保管することとし,現場支援責任者の許可なく情報閲覧をできないものとした。

それ以外の情報については,管理部門のある5階に集約し,管理部門責任者の許可なしではアクセスできないようにしている。また,アクセスの許可があっても,原則としてアクセス権限者立ち会いの下で情報閲覧することを義務付けている。

法人内でも,情報管理は管理部門の体制強化で解決できる。しかしながら,非常に難しいのが包括的に若者を支援できるよう整備したネットワークの中での情報管理である。個人情報保護法の遵守は当然であるが,適切と思われる公的機関を紹介したい場合に,先方に全く情報が渡らないということは,複数の場所で同じ質問を何度も繰り返し聴かれる可能性がある。心に傷を負っている若者であれば,自らのつらい経験や体験を,複数名に何度も話さなければならなくなり,より深刻な心理状況に陥ってしまうことがある。新しい場所に行けば,必ず過去の話を掘り返されるという認識が若者に植え付けられてしまうと,どこにも相談に行けないことになりかねない。最近では,リファー(紹介)という言葉が一般化してきたが,個人情報保護法との関係においては,どの程度の情報を相手方と共有できるのかがあいまいであり,ネットワークを形成する段階からしっかりと話をしておかなければならない。

新しい取組として考えているのが,パーソナルカード(仮称。以下同じ)の導入である。それぞれの若者が自身のカードを持つことで,開示したい場合には自らその情報を相手に開示することで,何度も同じ質問を受けたり,同様の話をしたりすることを減らそうという試みである。彼ら,彼女ら自身のパーソナルカードに,当法人の支援者が本人の同意の下の状況などを書き込み,紹介先などでの情報開示は本人の判断に任せるというものである。

今後,個人情報の取扱いについてはよりいっそうの注意が必要とされるだろう。包括支援のためのネットワーク化も進んでいく。各法人,団体,組織間でのやりとりが頻繁になっていく中,若者の将来のためにできること,やらなければならないことと,定められた法律に遵守していくこと。この二つのバランスをしっかりととっていくことが求められていく。

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 NPO法人「育て上げ」ネット理事長 工藤啓
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