調査の背景と目的、調査研究の内容、調査の概要

調査の背景と目的

青少年を取り巻く環境は、出版、ビデオ、メディア、インターネット等の普及によって大きく変化しており、様々な情報が流通する中で、青少年にとって有害な情報の氾濫が懸念されている。我が国における主に18 歳未満の青少年の保護・育成を目的とした有害情報に関する法規制は、各都道府県の青少年保護育成条例に基づいているが、諸外国においては有害情報に対する規制をどのように行っているのか、関係事業者等による自主規制はどのように行っているのか等の調査を実施し、今後の青少年に対する非行・被害防止施策や支援施策に役立てることを目的とする。

調査研究の内容

平成14年に実施した前回の調査結果(内閣府提供)を基に、諸外国(アメリカ、イギリス、ドイツの3か国)における有害情報に対する規制の現況(政府の規制、民間による規制)、政府が規制を適用する際の判断基準(施行規則、施行令、通達)、実際の規制の適用例(過去数年間における実際の規則違反例、摘発例)、規制に対する世論(規制賛成派及び規制反対派それぞれの論点)、民間機関による自主規制への政府の関与(関与の有無、関与形態)等について調査を実施する。

調査の概要

内閣府では平成13年度において、諸外国における(アメリカ、イギリス、ドイツ)有害環境への規制に関する調査研究を行った。本年度の調査はこの調査を更新するものである。

【法規制と実行体制】

表Aに法規制・制度に関する分野別の前回調査の更新を示す。また、表Bにはこれまでの青少年保護に関する関連法規と政策の変遷をまとめる。3ヶ国の法規制へのアプローチを端的に比較すると、アメリカ・イギリスは比較的きめ細かく法体系を整備し、児童ポルノを中心に青少年保護を目的とした有害情報対策として法規制の整備を行っていることである。一方、ドイツは青少年保護の観点から、独立した法体系を整備し、有害情報対策を講じていることが特徴である。

アメリカ、イギリスは法整備の実行のために、各法執行機関間の連携が進められている。この一環として、アメリカとイギリスは2013年12月に共同によるタスクフォースの設立を発表している。

アメリカでは、歴史的に、憲法上「言論の自由」の立場がとられていることから、直接的に政府がコンテンツを制作することを規制したり、違法有害情報へのインターネット上の削除等の対応を義務付ける法令はなく自主規制を原則とする。この自主規制は連邦通信委員会からの要請を契機としつつも自主的な取り組みが強調され政府機関の関与は限られている。

イギリスにおいても、違法有害情報への削除等の対応を義務付ける法令は存在しない。青少年保護を目的に制定された法律の原則が遵守されるよう政府が民間を指導する。しかしながら、サービスプロバイダーの責任を制限する法律が施行されている。これは、イギリスではフィルタリングの枠組みとその運用指針を定めた自主規制原則自体が英国情報通信庁との協議により策定されており、監視を行う機関も準政府機関であり比較的強度の政府介入が行われている。2013年7月、キャメロン首相はコンピュータやスマートフォンなどからインターネットに接続する際、初期設定でアダルトサイトへのアクセスを制限する計画を発表し、これを受け、グーグル等は具体的な対策を講じた。

ドイツでは、2003年に青少年保護法制の大幅な改正が行われ、コンピュータゲームとインターネットに関する規制が大幅に強化され、青少年メディア保護の向上に向けた法的整備がなされた(2008年10月31日に最終改正)。青少年メディア保護州際協定も同日施行された。また、連邦法である本法律と州法である「テレメディア州際協定」が設けられ、インターネットを含むメディア上の有害情報を規制する。「青少年に極めて有害なメディア」の定義を拡大し、「全編を支配する自己目的な残酷な暴力描写」が加わった。有害なメディアの例示に、暴力描写を自己目的としているもの及び自力制裁を進めているものも加わっている。

イギリス、ドイツとも、EU加盟国として、EUが2011年12月17日に施行された「児童の性的虐待及び制的搾取並びに児童ポルノの対策に関する指令」により、2013年12月18日までにこれに適合した国内法を定める義務が生じている(本調査時点では両国とも国内法が定められているかは確認できなかった)。

【規制に対する世論】

青少年に対する有害情報規制への世論については、アメリカは青少年を有害環境から守るために厳しい取り締まりが必要だとすることを基本姿勢としながらも、言論の自由を原則とする連邦法に軸足を置く立場もある。具体的にはオンライン上の言論を刑法で罰する法案が起草されたものの廃案になった事例もある。

イギリスは、インターネットの安全に関する団体が単に、オンラインブロッキングに限定せず、幅広く子どもとインターネットの付き合い方を政府に提言している。一方、子どもの責任は保護者にあるという考えの下、フィルタリングを一種の「検閲」として反対するものも存在する。

ドイツは、政府が行ったアンケート調査で91%が児童ポルノの遮断を歓迎する。一方、インターネットサービスプロバイダーに児童ポルノサイトのブロッキングを義務付ける内容を盛り込んだ法案に各界は反対運動を起こし、結局、この法案は施行されたものの後に廃案になっている。反対団体は児童の性的搾取は「検閲」ではなく、より実効的な取組が必要であるとしている。

【自主規制】

アメリカでは実務上は、政府が民間企業や業界団体と協力することで民間主導の自主規制を促す。イギリスは、近年、EU及びイギリスの情報通信政策全般において重要視される「共同規制」の概念が存在する。法制度と民間による自主的取組を組み合わせた対応となっている。ドイツは、マルチメディアサービスプロバイダーが自主規制協会を立ち上げメディア教育を進めているが、政府が「連邦青少年メディア審査会」を設立するなど、政府主導の取組が推進されている。

表A:前回調査の更新(その1)
分野 アメリカ イギリス ドイツ
出版 ・児童オンラインプライバシー保護法の改正(2012年)
・児童ポルノ規制(合衆国法典18編2252条、2256条)
・職業ジャーナリスト協会による自主規制
・児童ポルノ禁止法(Protect Act of 2003)
・児童ポルノの禁止(1978年児童保護法1条、2条、6条、7条)
・児童のいかがわしい写真保持についての罰則
・わいせつ出版物法(1959年/1964年)
・刑事司法法(1988年)
・2003年性犯罪法
・2009年検死官及び刑事司法改革法
・刑法130条、131条、184条(2005年改正)
・青少年に有害な文書の頒布に関する法律(2008年)
映画 ・児童ポルノ規制(合衆国法典18編2252条、2256条)
・米国50州のうち36州は独自の州法(児童エンタテインメント法)を設定
・コンテンツの事前格付(1984年ビデオ・レコーディング法) ・青少年保護法3条、11条、12条、14条、15条、18条(2003年施行、2008年改正)
・映画自主規制組織(FSK)
・公共の場所における青少年を保護するための法律(2001年改正)
ビデオ ・児童ポルノ規制(合衆国法典18編2252条、2256条)
・エンターテインメントソフトウェアレイティング委員会によるレイティング審査
・コンテンツの事前格付(1984年ビデオ・レコーディング法) ・青少年保護法12条、13条(2003年施行、2008年改正)
・エンターテインメントソフトウェア自主規制機関(USK)
・青少年に有害な文書の頒布に関する法律
表A:前回調査の更新(その2)
分野 アメリカ イギリス ドイツ
放送 ・電気通信法改正法(504編、505編、551編)
・児童テレビプログラム(47 CFR 73.4050)
・合衆国法典18編1464条の施行(47 CFR 73.3999)
・Child Safe Viewing Act(2008年)
・2003年通信法による番組基準:放送事業者が遵守すべき番組制作の基準(OFCOM策定)。「青少年保護」「犯罪行為を誘発する番組の禁止」「公平性の確保」「正確性の確保」等の規定 ・放送に関する州際協定3条、7条、49条(2003年)
・刑法184条
・青少年保護法(2003年施行、2008年改正)
・テレビ自主規制機関(FSF)
・テレメディア法改正(2007年)
通信(インターネットを含む) ・1996年児童ポルノ防止法
・1996年通信品位法
・児童インターネット保護法
・2006年アダム・ウオルシュ児童安全法
・児童オンラインプライバシー保護法の改正(2012年)
・通信児童ポルノ通法規制(合衆国憲法42編13032条)
・ペアレントポートの開設(2011年)
・サービスプロバイダーの責任制限(電子商取引施行規則2002:17節~22節)
・ビデオ記録(ラベリング)規制(2012年)
・青少年メディア保護州際協定(2003年)
・刑法184条
・青少年保護法(2003年施行、2008年改正)
・マルチメディアサービスプロバイダー自主規制(FSM)
・マルチメディア法改正(2007年)
・通信サービスの利用に関する法律(通信サービス法)第8条第2項
青少年保護に関する法改正・組織 ・児童オンラインプライバシー保護法の改正(2012年)
・21世紀の児童保護法(2011年改訂)
・2003年性犯罪法
・児童保護法の改正(2008年)
・EU指令による児童の性的搾取・児童ポルノ等の対策法(2013年予定)
・青少年保護法改正(2008年)
・連邦青少年有害メディア審査会(BPjM)
・EU指令による児童の性的搾取・児童ポルノ等の対策法(2013年予定)
表A:前回調査の更新(その2)
アメリカ イギリス ドイツ
・1950年代旧青少年保護法、有害文書法及び放送州際協定
・1978年児童保護法(児童ポルノの規制、94年刑事司法及び公共秩序法により電子的データ形式での写真を含む。擬似ポルノも規制)
・1984年児童保護法(適用年齢18歳に引き上げ、わいせつ性・営利性排除) ・1984年ビデオ・レコーディング法(コンテンツの事前格付け)
・1986年児童性的虐待ポルノ法(広告制作禁止)
・1988年児童保護及びわいせつ強制執行法(コンピュータ利用による政策・頒布等禁止) ・1988年刑事司法(児童ポルノ、擬似ポルノの単純所持違法)
・1990年児童保護復旧及び刑事強化法(3つ以上の単純所持禁止)
・1993年刑法改正(児童ポルノの禁止)
・1994年刑事司法及び公共秩序法(わいせつ描写物の電気的伝送を違法化)
・1995年、1964年わいせつ物出版法
・1996年児童ポルノ防止法(児童ポルノ類似物禁止。2002年違憲確定)
・1996年通信品位法(品位に欠ける、不快表現物の送信禁止。1997年違憲確定)
・1997年性的搾取に対する児童保護に関する法律(児童ポルノ制作等での16歳未満児童使用の禁止) ・1997年刑法改正(文書概念にデータ記憶装置を含む。児童ポルノの適用拡大) ・1997年マルチメディア法、メディアサービス州際協定
・1998年性犯罪者から児童を保護する法律(刑事罰強化、プロバイダの通報義務化) ・1998年児童オンライン保護法(有害情報への17歳未満児童のアクセス制限義務化。2007年地裁違憲判断。現在も係争中)
・2000年児童インターネット保護法(学校等でのフィルタリング措置義務化。2003年合憲確定)
・2002年ドット・キッズ法(13歳未満児童に無害なサイトへの独自ドメイン付与) ・2002年電子商取引指令の施行規則(プロバイダーの責任制限) ・2002年有害表現規制の制度改革 ・2002年青少年保護法、青少年メディア保護州際協定
・2003年性犯罪法(誘引行為、児童へのポルノ閲覧、グルーミングの禁止、性的被害危険防止命令の規定)
・2005年刑法改正(児童ポルノの条項整理と刑罰強化)
・2006年アダム・ウオルシュ児童保護安全法(児童誘引になる紛らわしい画像等の掲示禁止。性犯罪者のDNAサンプル登録義務化)
・2007年制度改革(テレメディアサービスへの統一化)
・2008年Child Safe Viewing Act ・2008年児童保護法改正 ・2008年青少年保護法改正
・2011年21世紀の児童保護法 ・2011年18 U.S.C.2251性的搾取から児童を保護する法律
・2012年児童オンラインプライバシー保護法改正(2013年7月1日発効) ・2012年ビデオ記録(ラベリング)規制 ・2012年1月児童ポルノアクセス法廃案