第2章 規制に対する世論

概要

<アメリカ>
規制賛成派:2000年に制定された児童インターネット保護法は憲法違反であるとして、2002年5月に、ペンシルバニア州東部地方裁判所において提訴されたが、2003年6月、合衆国最高裁判所において合憲と判断され、現在に至っている。児童ポルノをインターネット上でダウンロードした犯罪者の85%が子どもへの性的虐待を行っているという数値を根拠として、インターネット上の児童ポルノへのアクセスまでをも処罰の対象にするべきとの提案がなされている。

規制反対派:2008年に、過剰に執拗かつ悪質なオンライン上の言論を刑法で罰することを盛り込んだ、「メーガン・マイヤー・オンラインいじめ防止法案(The Megan Meier Cyber- bullying Prevention Act)」が、下院議会で取り上げられた。しかし、同法案は、オンライン上の言論の自由を脅かすものであり、また、内容が抽象的であり混乱を招く恐れがある、として批判を受け、結局廃案となったように、言論の自由を原則とする連邦法に軸足を重く置く反対の立場もある。

<イギリス>
規制賛成派:インターネット安全に関する児童基金連合(CHIS :Children's Charities' Coalition on Internet Safety)と全英児童虐待防止協会((NSPCC:National Society for the Prevention of Cruelty to Children)が合同で発表した、イギリスの主要な政党に対する提言書にはオンライン・ブロッキングに限定せず、幅広く子どもとインターネットの付き合い方という観点からの提言でから、インターネット監視財団(IWF:Internet Watch Foundation)のリスト若しくはその他の技術ソリューションに基づき、すでに摘発されている児童虐待のコンテンツへのアクセスを阻止することを、イギリス国内のすべての ISPに強要することについて、今のところ自主規制に頼っているが、法案を用意し立法化の準備が必要であるとしている。

規制反対派:オンライン上のコンテンツやテレビに関する親の不信感は減少しているものの、親の 97%は、子どもが不適切なコンテンツに触れないようにする責任は自分にあると考えている。フィルタリングを一種の検閲だとして反対を唱えるキャンペーン組織、公開権利グループ(ORG:Open Rights Group)もある。

<ドイツ>
規制賛成派:連邦家族省の依頼で、アレンスバッハ世論調査研究所が2009年(5月29~6月11日)に行った口頭インタビュー(16歳以上の1,832人が対象)の結果では、91%が児童ポルノの遮断を歓迎する、と回答している。これに対して、わずかの回答者(3%)が、これらの青少年保護の手段は、憲法に規定される表現の自由の侵害に当たると回答している。

ドイツではドイツ連邦共和国基本法5条1項で表現の自由が保障されるとともに、同条2項は、青少年保護のための表現の規制を明文で許容している。青少年保護のための表現の規制は、これらの基本法の規定に抵触していないか否かが問われることとなる。

なお、基本法5条3項に規定されている芸術の自由と、2項で規定される青少年保護のための表現規制の間の関連性については、明文では規定されていない。この点に関して、1990年の連邦憲法裁判所のヨゼフィーネ・ムッツェンバッハー決定(BVerfGE 83,130)では、青少年保護が基本法上の地位において、芸術の自由の上に立つことを認めた。ただし、青少年保護と芸術の自由という互いに基本法のレベルにある法益の調整は、個別の案件ごとに判断されるべきであることも確認されている。

規制反対派:2010年2月に施行された、いわゆる児童ポルノアクセス防止法は(2012年1月1日廃案)、立法過程において様々な議論を呼んだ。インターネット・プロバイダーに、刑法典182b条に規定される児童ポルノサイトのブロッキングを義務付ける内容を盛り込んだ当初法案は各界の反対運動を引き起こした。連邦政府が2009年6月にこの新法案を支持するオンライン署名を実施したところ、署名者は328名だったのに対し、2009年4月22日から5月4日にかけて連邦政府が実施したこの新法案の否決を求めるオンライン署名では、署名者は134,015人であった。さらに、インターネット遮断と検閲に反対する運動団体(AK-Zensur)は、児童の性的搾取には検閲ではなく、より実効的な取組が必要であるとして反対した。同法は2012年1月に廃案となった。