第2章 規制に対する世論

1.出版

1.1 アメリカ

1.1.1 規制賛成派の論点

1957年のRoth判決において、不十分ながらも初めて、わいせつ概念を定義づけたと同時に同表現が表現の自由の保障外にあると判示され67、1973年のMiller判決では、わいせつ概念の定義がより明確化された68

ニューヨーク州裁判所は、1982年のFeber判決において、青少年による性的行為を描写する児童ポルノも、表現の自由として保護されないとし、その配布を違法とするニューヨーク州刑法が修正第1条に反するものではないと判示した。つまり、児童ポルノがわいせつ表現と別カテゴリであるとしたうえで、その規制の合憲性を容認した69。アメリカ社会の中で確固たる言論の自由と児童ポルノからの社会を擁護するという利益のバランスを考慮しながら、児童ポルノを違法とする結論を導いた。

1969年のStanley判決では、わいせつ物の自己観賞目的での所持はプライバシー侵害であり、その処罰を違憲と判示していたが、連邦最高裁判所は、1990年のOsborne判決において、児童ポルノの単独所持を処罰するオハイオ州法を合憲と判示した。

1.1.2 規制反対派の論点

児童ポルノ保護法では、児童または児童に見える者による性的行為の写実的描写の配布行為を禁止している。アダルト娯楽産業団体は、実際には成年者により製作されたポルノでも児童に見える場合には、児童ポルノとして禁止されてしまうことを根拠に、同法は言論の自由を制限することになり憲法違反であると主張し訴えを提起した。これが2002年のFree Speech Coalition判決であり、連邦最高裁判所は、表現規制のための児童保護という根拠が、実在する児童不在で作成された物には妥当しない事を理由に、同規定が過度に広汎であり、違憲であると判示した。

その後、多くの裁判所がこの最高裁判決にならい、実在の児童が使われていない児童ポルノに関して、制作者、所有者が無罪とされ、アメリカ社会にヴァーチャル・ポルノが広がった70

1.2 イギリス

本調査時には、該当項目は見つけられなかった。

1.3 ドイツ

1.3.1 規制賛成派の論点

児童ポルノのブロッキングに関する法律は廃止されており、海外に蔵置された児童ポルノ画像について、削除が行われるまでの間、対策が講じれないという状況にある。これについて不満を抱いている人もいるとされるものの、本法律については議論が行われてある程度納得して進んだため、数年はブロッキングを採用するという議論は起きないだろうと有識者は指摘する71

連邦家族省の依頼で、アレンスバッハ世論調査研究所が2009年(5月29~6月11日)に行った口頭インタビュー(16歳以上の1,832人が対象)の結果では、91%が児童ポルノの遮断を歓迎する、と回答している72

1.3.2 規制反対派の論点

上記、アレンスバッハ世論調査研究所のインタビューでは、わずかの回答者(3%)が、これらの青少年保護の手段は、憲法に規定される表現の自由の侵害に当たる、と回答している。