序章 各国の青少年保護の基本的な考え方

1.フランス

(1)青少年の定義

日本語の「青少年」に相当するフランス語は、「jeune」と「jeunesse」であるが、どちらも「若さ」を意味する社会通念であり、法律上の年齢定義はない。したがって、「大人(adulte)」である意味を含む、「若年成人(jeunes adultes)」という表現もある。「大人(adulte)」になる前の段階として、「子供(enfant)」及び「思春期の青少年(adolescent)」があるが、どちらも対象とする年齢範囲は一定しない。年齢範囲を明示するためには、「~歳未満、~歳以下」等の追記が必要となる。

法律上保護されるべき対象とみなされる場合、「未成年者(mineur)」と記載されることが多い。「未成年(mineur)」は、「フランス民法典(Code civil des Francais)」第388条において「性別を問わず18歳に達していない個人」と定義される [1]

司法当局において「enfant」は「未成年者」の同義語として扱われている。未成年者が犯した犯罪を扱う判決裁判機関は、それぞれ「少年担当裁判官(Juge des enfants)、「少年裁判所(Tribunal pour enfants)」及び「未成年者重罪院(Cour d'assises des mineurs)」と称する。

また国連の「児童の権利に関する条約(Convention relative aux droits de l'enfant)」では、児童をその国の法律で「成人」と規定されない限り、「18歳未満のすべての者」と定義している [2]。この条約批准を目指してとられた法整備の一環として、1989年7月10日に制定された「未成年者に対する劣悪な待遇の予防および児童保護に関する法律(Loi 89-487 du 10 juillet 1989 relative a la prevention des mauvais traitements a l'egard des mineurs et a la protection de l'enfance)」は、「enfant (enfance)」と「mineur」が混在している。

一般的に、「青少年保護(protection de mineur)」が有害環境からの青少年保護を指すのに対して、「児童保護(protection de l'enfance)」は、母子保護局(Protection maternelle et infantile)との関連が強いこともあり、虐待からの保護や親権者に対する支援を指すことが多いが、必ずしも明確に規定されているわけではない。「社会事業及び家族法典(Code de l'action sociale et des familles)」では、「児童保護(protection de l'enfance)」の目的を「親が教育的責任を果たす上で、直面しうる困難を予防、支援、また必要であれば、部分的あるいは全面的に未成年のケアを請け負うこと」と規定し、その対象には「成人青少年(jeunes majeurs)=21歳未満の成人」も含まれる [3]

2009年3月26日に発表された青少年支援施策についての「元老院報告書第436号」では、「青少年(jeunesse)」の客観的定義は容易ではないとしながらも、「16歳から25歳」を採用している [4]。これは、人口調査や経済社会調査等の統計上よく用いられる定義であること、また16歳は義務教育修了年齢であり、25歳は自活する平均年齢と見なされており、25歳以上で活動的連帯所得手当(Revenu de solidarite active : RSA)等の最低所得保障制度(日本の生活保護に相当)の受給資格が生じることによる。

その他の統計上の定義としては、国際連合(United Nations : UN)ならびに国際連合教育科学文化機関(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization : UNESCO)では、15歳から24歳 [5]、国立統計経済研究所(Institut National de la Statistique et des Etudes Economiques : INSEE)では、15歳から24歳が「青少年(jeunesse)」として採用されている。

(2)青少年保護の基本的な考え方と背景

フランスにおける有害環境への法規制は、より広い射程を持った、未成年保護を対象とする法制度のなかで扱われる。未成年者を危険な状態に陥らせること自体が犯罪として、刑法典の立法部第2巻「人に対する重罪及び軽罪」第2編「人間への侵害」第7章「未成年者及び家族への侵害」第5節「未成年者を危険にさらす行為(Code penal, Partie legislative, Livre 2 : Des crimes et delits contre les personnes, Titre 2 : Des atteintes a la personne humaine, Chapitre 7 :)」に規定されている。

1992年の刑法典の全面改正を機に、それまでは猥褻物一般を規制してきた「良俗侵害罪(outrage aux bonnes moeurs)」の処罰範囲が絞りこまれ,青少年の保護の観点から再編成された。その結果、成人のポルノを成人に対して販売等する行為は合法化される一方で、児童ポルノの規制(刑法典227-23条)や、児童に見られうる形での成人ポルノ等の販売等の規制(227-24条)が置かれた。その後、特に児童ポルノ規制には頻繁に改正が加えられ、処罰される行為が拡大され、また刑罰も重くなる方向になる。

児童ポルノ関係の罪には、かなり多彩な補充刑が課される点にも注目しなければならない。具体的には、主刑(懲役、又は罰金)に加えて、補充刑として公民権停止、5年以内の運転免許の停止、運転免許の取消と5年以内の再取得の禁止、5年以内の出国禁止,犯罪に使われた物や犯罪から生じた物(児童ポルノのDVDなど)の没収、児童と日常的に接触する職業・ボランティアの禁止(恒久的禁止と10年以内の期間を定めての禁止がある〔以上、刑法典227-29条〕)。更に、再犯予防のための特別追跡監視措置(刑法典227-31条)といったものがある。主刑である懲役や罰金が1992年の刑法典改正時よりも重くなっているが、本付加刑のリストも、1992 年の刑法典改正当時よりも長くなっている(没収や児童と接触する活動の禁止、特別追跡監視は後に追加されたもの)。

これらの補充刑については、没収や特別追跡監視措置、児童と接触する活動の禁止といった、その是非はともかく、児童ポルノ犯罪と関連性が認められるものがある一方で、公民権停止や運転免許の停止・取り消し、出国禁止といった措置は、児童ポルノ犯罪に対する制裁として適切なものかどうか疑問がないではない。

2.韓国

韓国の青少年保護に関する主な法律は、1997年制定され有害環境環境から青少年を保護し、青少年が正しく、健全な成長を目的とする「青少年保護法」と、児童ポルノ法の「児童・青少年の性保護に関する法律」であり、両法律とも女性家族部が主管している。青少年保護法では、有害な有害薬物と有害媒体物が青少年に流通することを遮断し、有害な店舗への青少年の出入を規制している。一方で、児童・青少年の性保護に関する法律は、児童・青少年を対象とする性犯罪の処罰と手続きに関する特例を規定し、被害児童・青少年への救済及び支援体制を整備し、児童・青少年を性犯罪から保護することを目的としている。また青少年有害媒体物の審議に於いては、女性家族部の下部に青少年保護委員会が、全媒体物の青少年有害物指定権限を所有しているが、実際には、有害物となる刊行物、放送、通信、映像、ゲームなどについて、各業界の審議機関が青少年有害媒体物の審議・指定、又は青少年観覧可能等級付けなどを行う。

2000年代に入り、インターネット普及による青少年のインターネット中毒、ゲーム中毒(2014年青少年インターネットメディア利用習慣診断結果、インターネット中毒危険層に入る青少年は10万5千人以上)などの問題が浮き彫りになり、青少年保護法によるインターネット内容等級制、インターネット接続禁止制度(シャットダウン制度)などが運用されて、更には2002年から韓国情報振興院傘下にインターネット中毒対応センターが設置され、インターネット依存症への予防・対策などに取り組んでいる。


  • [1] Code civil des Francais, Article 388.
  • [2] Convention relative aux droits de l'enfant, Premiere partie, Article 1.
  • [3] Code de l'action sociale et des familles, Article L112-3.
  • [4] Senat, Rapport d'information n° 436 (2008-2009), Avant propos.
  • [5] http://www.un.org/fr/globalissues/youth/