第1章 各国政府の有害情報に対する規制の現状(政府の規制、民間による規制)

1.マスコミ全般

1.1 フランス

報道全般に関する法規制のうち、未成年者に関与するものは、以下のものがある。

  1. 刑法典第227-24条では、「未成年の目に触れる可能性があるにも拘わらず、方法及び媒体の如何を問わず、暴力的、ポルノ的、人間の尊厳を著しく侵害する性質のもの、あるいは未成年が身体的に危険なゲームに身を委ねるように煽動するメッセージを作成、転送、頒布すること、又はそれで経済活動をすること」を禁じている。「方法及び媒体の如何を問わず」ということは、活字メディア、視聴覚メディア、あらゆる情報通信生産物を含み、マスコミ全般も対象となることは明らかである。
  2. また刑法典第227-28条では、報道という手段によって、未成年者に対する犯罪教唆や未成年者ポルノの作成・頒布がなされた場合、報道に関する法律が優先的に適用されることを記している。
  3. 児童の権利に関する条約(Convention Internationale des Droits de l'Enfant)に基づく児童保護と報道の自由の連接と均衡を図って、厚生省大臣の要請のもと、メディアにおける児童保護に関する憲章が2012年2月に制定され有害環境からの未成年者保護を目的にしたものではないが、広い意味での青少年保護に関する法令は以下のものがある(ともに犯罪に巻き込まれた未成年者に対する報道について)。
    • (1)「報道の自由法に関する1881年7月29日の法律(Loi du 29 juillet 1881 sur la liberté de la presse)」正当な申し出によって公表された場合を除き未成年者、釈放された未成年者、自殺した未成年者、違法行為の被害者の未成年者の身元に関する情報あるいは、身元が明らかになる情報の頒布を禁止している。
    • (2)非行少年に関する1945年2月2日のオルドナンス(Ordonnance no. 45-174 du 2 février 1945 relative á l'énfance délinquante)の第14条4項では、少年裁判所の審理の記録を公表することは、書籍、出版物、ラジオ放送、映像、その他方法の如何を問わず、禁じられている。同様に、未成年犯罪者の身元や素性を文書や図・写真によって公表することは禁じられている。

<民間による規制>

全国ジャーナリスト労働組合は、「ジャーナリストの職業倫理に関する憲章(1918年制定、2011年改正)」を掲げているが、職業倫理を謳ったもので、違反に対する罰則、内部審査機関はない。また未成年者保護に関する項目もない。

1.2 韓国

韓国の青少年有害媒体物の制度は、法令による行政機関の強制的規制として、公的規制が自律規制より強い一方で、青少年委員会が青少年有害媒体物関連制度に関する全ての管理及び運営に対して責任を持つ中央集中型の規制ではなく、個別の審議機関が媒体別に内容規制をする分散型規制システムとして運営されているのが特徴である。

内容の規制としては、青少年有害媒体物制度は、大きく事前・事後と分類することができ、等級制度は事前に行われ、等級分類を担当する審議機関として、映画及びビデオ物については映像物等級委員会、ゲーム物についてはゲーム物等級委員会が担当している。一方で、事後規制としては、音盤については青少年保護委員会、放送プログラム及びインターネットコンテンツについては放送通信審議委員会、小説、マンガなど図書類及び刊行物については韓国刊行物倫理委員会が、内容の規制を行っている。

表1-1 審議機関別審議対象及び等級
審議機関 審議対象 審議の時期 等級及び表示方法
刊行物倫理委員会 図書、定期刊行物、電子出版物 事後審議 有害刊行物(不法表現物)
青少年有害刊行物(19歳)
放送通信審議委員会 放送プログラム 事後審議 全年齢視聴可
7歳以上視聴可
12歳以上視聴可
19歳以上視聴可&青少年有害媒体物(19歳)
インターネットコンテンツ 事後審議 青少年有害媒体物(19歳)
青少年保護委員会 すべての媒体物
音源、インターネットコンテンツなど
事後審議 青少年有害媒体物(19歳)
映像物等級委員会 音楽映像物 事前等級分類 年少者利用不可音盤(18歳)
  映画/ビデオ   全体観覧可
12歳観覧可
15歳観覧可
青少年利用不可(18歳)
制限上映可(映画だけ)
  公演物   年少者有害公演物(18歳)
ゲーム物等級委員会 ゲーム物 事前等級分類 全体利用可
12歳利用可
15歳利用可
青少年利用不可(18歳)

出典:http://journal.kiso.or.kr/?p=782

青少年有害媒体物指定プロセス

上記表より、青少年有害媒体物の審議プロセスは主に3つに分けることができる。

  1. 各審議機関の審議を経て、青少年有害性が確認された媒体物を女性家族部長官が告示した媒体物(指定告示青少年有害媒体物)
  2. 範囲と対象を包括し女性家族部長官が告示した媒体物(特定告示青少年有害媒体物)
  3. 審議、又は告示なく、自ら青少年有害物表示をした媒体物(自立表示青少年有害媒体物)

特定告示青少年有害媒体物の場合、個別の媒体物に対する評価ではなく、媒体物一般に対する告示として、告示該当可否については解釈が必要にある。インターネット企業協会などは、「OSPの立場からは告示該当可否を認識するのが難しい」などの理由で、数回特定告示に反対意見を出したこともある。

青少年有害媒体物における国家主導型の審議は、規制理論に偏る、又は一貫性と専門性に限界を見せる部分もある。なお、このような権威主義的の制度は、審議過程と結果において、批判と討論の対象になりにくく、公開する情報に限界があって、事後のけん制と監視の対象にならない。従って、青少年と保護者、市民社会を含む青少年保護関連主体の公論を制約し、産業界に自律的浄化機会を奪う一面もある。