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第3部 調査結果の分析

第3章 青少年の友人関係を通してみる非行といじめ

淑徳大学社会学部助教授 野田 陽子


要旨


青少年の逸脱化という観点からみて非行といじめが有する同質性と異質性を,かれらの友人関係を通して考察することが,ここでの課題である。

非行少年は,学校的価値体系の支配からは切り離された空間である「街」で知り合った友人を始めとして,異なる年齢層からなる友人たちと,リーダー−フォロアーの役割分化が比較的明確である関係性をベースに交流を図る傾向がみられる。このような特徴が,スポーツ能力・人気度という尺度に照した学級集団内における地位の高さを背景に,支配志向の達成というかたちで非行に結晶化しているとみることができる。

他方,いじめ少年は,親しい友人の数の多さをその友人関係の1つの特徴としているが,友人たちとの交流の具体的態様をみると,モノを媒介とした間接的コミュニケーションの色彩の強い活動形態の比重が相対的に高く,そのような交流の中で,かれらは自己の地位を従属的なものとして認知し,友人関係における帰属欲求・承認欲求の充足が十分ではない傾向がうかがえる。そのような特徴が,学級集団内における地位達成の不十分さを背景に,社会的帰属・承認欲求の充足というかたちでいじめに結晶化しているとみることができる。

非行少年といじめ少年は,友人関係に関する諸変数に数量化皿類を適用した結果において同一の意味空間に位置づけられるところから,非行といじめとの同質性は,支配志向と社会的帰属・承認欲求の不充足とが織りなす空間に形成される自己顕示的現状改変動機に方向づけられた行為である点に集約できる。


1 はじめに

第2部の図2-1-2-11にみられるように,一般少年と非行少年とでは,いじめに対する関与の仕方に若干ながらも異なる傾向が認められる。一般少年の場合には,「いじめはなかった」と認知する者が多いことに加え,いじめがあったと認知する者の中では「できるだけかかわらないようにした」という者が多い。非行少年の場合にも基本的にこれと同様の傾向が認められるが,一般少年と比較すると,主導的,追随的であるとを問わず加害経験のある者及び「まわりでいじめを応援した」という者が多い一方で,「いじめられた」という被害経験がある者も多く,また「やめるようにいった」者も多いなど,総じて何らかのかたちで具体的にいじめ行為にかかわった者が相対的に多いという特徴がみられる。このことは,少年の逸脱化という観点から非行といじめをみた場合,一方で両者に同質的側面があることを推測させると同時に,他方で異質的側面があることを推測させる。ここでは,この同質性と異質性を,かれらの友人関係を通して考察してみたい。

なお,以下で,いじめの加害緻験がある少年(いじめ少年)とは,青少年調査におけるいじめ発生の認知といじめへの関与の仕方に関する質問(青-B6)に対して,「いじめるよう陰で指図した」「中心になっていじめた」「自分からすすんでいじめに加わった」「一緒にいじめるよう言われて,いじめに加わった」のいずれかにあてはまると回答した少年であり,その比率は,一般少年では3.8%,非行少年では9.4%,全体では4.6%である。


2 非行少年といじめ少年の友人関係の特徴

(1) 親しい友人の数・年齢層と知り合ったきっかけを通してみる友人構成の特徴

第2部の図2-1-2-1をみると,一般少年と非行少年とでは,親しい友人の数(青-B1)は,概して前者において若干多い傾向が認められるが,これにいじめ加害経験の有無という変数を加えてみると,一般少年であるか非行少年であるかを問わず,いじめ加害経験ありの少年において友人の数が多く,10人以上と回答した者が半数以上となっている(表3-3-1)。この親しい友人の数の多さは,いじめ少年の友人関係の1つの特性といってよい。


表3-3-1 親しい友人の数(B1)  <CSVデータ>

  いない 1〜2人 3〜5人 6〜9人 10〜14人 15〜19人 20人以上
一般少年 いじめ加害経験なし   0.8 3.8 22.0 28.8 20.8 6.9 16.9 100.0%
6543人
いじめ加害経験あり いじめ少年 2.4 3.9 18.6 18.6 21.6 11.4 23.4 100.0%
333人
非行少年 いじめ加害経験あり 0.8 5.7 19.7 23.0 23.0 4.9 23.0 100.0%
122人
いじめ加害経験なし   1.0 7.7 26.5 24.8 18.7 5.5 15.8 100.0%
1059人
0.9 4.3 22.5 27.8 20.6 6.9 17.1 100.0%
8057人

2(18)=96.22 P<.001

注) 無回答は集計から省いてある。


しかし,親しい友人の年齢層(青-B2)をみると,その傾向は,表3-3-2に示されているように,いじめ加害経験の有無よりも,まずもって一般少年・非行少年の別によって明確に分化し,友人が同年齢に限定される傾向が強い一般少年に対して,非行少年では友人の年齢層に広がりがみられる者の方が多いという特徴が指摘できる。ただし,一般少年,非行少年のそれぞれにおいていじめ加害経験の有無によって比較すると,いずれにおいてもいじめ加害経験ありの少年の方が,なしの少年よりも異年齢の友人を持つ者が多くなっている。


表3-3-2 親しい友人の年齢層(B2)  <CSVデータ>

  同じ年(同じ学年)の者ばかり 年上の者もいる 年下の者もいる 年上も年下の者もいる
一般少年 いじめ加害経験なし   60.2 13.8 5.2 21.5 100.0%
6386人
いじめ加害経験あり いじめ少年 53.1 17.0 4.1 25.8 100.0%
318人
非行少年 いじめ加害経験あり 29.8 21.9 6.1 42.1 100.0%
114人
いじめ加害経験なし   45.6 16.5 5.6 32.3 100.0%
1029人
57.6 13.8 5.2 23.4 100.0%
7847人

2(9)=129.05 P<.001

注) 非該当と無回答は集計から省いてある。


表3-3-3 親しい友人と知り合ったきっかけ(複数回答)(B3)  <CSVデータ>

  今の学校の友達 以前の学校の友達 幼なじみ 職場・アルバイト先で知り合った友達 街で知り合った友達 塾や予備校の友達
一般少年 いじめ加害経験なし   90.9 59.7 25.5 7.4 4.0 11.0
いじめ加害経験あり いじめ少年 92.0 53.2 26.5 6.2 8.6 19.4
非行少年 いじめ加害経験あり 47.6 45.2 24.2 9.7 35.5 1.6
いじめ加害経験なし   42.1 60.3 22.0 13.3 25.0 2.7
    83.9 59.3 25.1 8.2 7.4 10.1

  学校以外のサークルなどで知り合った友達 ベルトモ その他 無回答 累計
一般少年 いじめ加害経験なし   6.3 1.9 4.6 3.7 215.1 100.0%
6530人
いじめ加害経験あり いじめ少年 8.0 6.5 8.9 3.4 232.6 100.0%
325人
非行少年 いじめ加害経験あり 4.0 6.5 12.1 4.8 191.1 100.0%
124人
いじめ加害経験なし   3.5 2.8 9.0 4.0 184.6 100.0%
1054人
6.0 2.3 5.5 3.7 211.4 100.0%
8033人

注) 非該当は集計から省いてある。


親しい友人の年齢層にみられるこれらの傾向は,それぞれの友人と知り合ったきっかけ(青-B3)を反映しているといえよう。表3-3-3にみられるように,一般少年では「今の学校の友達」が9割,「以前の学校の友達」が5割から6割と,親しい友人として学校友達を挙げる者が多いのに対して,非行少年ではこれらの占める割合は一般少年と比較すると少なく,「街で知り合った友達」を挙げる者が相対的に多い。いじめ加害経験ありの少年は,一般少年であるか非行少年であるかに応じて基本的に上記の傾向を分有するが,いずれの場合も,加害経験なしの少年と比較すれば,「以前の学校の友達」の占める割合が少なく,「街で知り合った友達」の占める割合が多くなっている。なお,一般少年,非行少年であるとを問わず,いじめ加害経験ありの少年に特徴的にみられる傾向として,全体に占める割合は少ないものの,「ベルトモ」を挙げる者が相対的に多いことが指摘できる。

以上をまとめると,次のようになる。

1) 一般少年は,学校友達を中心とした同年齢の友人と親しく交わる傾向が強い。

2) これと比較すると,非行少年は,親しい友人と知り合ったきっかけやその年齢層に関して広がりがみられ,学校的価値体系の支配からは切り離された「街」で知り合った友達を含む異年齢の友人たちと交流する傾向がみられる。

3) いじめ少年は,一般少年であるか非行少年であるかに応じて基本的に上記の傾向を分有するが,いじめの加害経験があることは,それ自体として,若干ながらも,親しい友人を得るきっかけに関する学校の比重の低下と「街」の比重の増加,友人の年齢層に関する異年齢の比重の増加をもたらす方向に作用しているといってよい。ここに,少年の逸脱化としての非行といじめの1つの同質性をみることができる。他方,いじめ少年に固有にみられる傾向として友人数の相対的多さが指摘できるが,その反面,全体に占める比率はわずかとはいえ「ベルトモ」の示す比率からは,友人関係の稀薄さがうかがえる。


(2) 友人と一緒にいるときの過ごし方・様子とつきあっている入の種類を通してみる友人関係の質的特徴と関係性における自己認知
表3-3-4 友人と一緒にいるときの過ごし方(複数回答)(B4)  <CSVデータ>

  スポーツ 勉強をする マンガや雑誌を読む 音楽を聞いたり演奏したりする テレビやビデオを見る おしゃべりをする 家の中でテレビゲ一ムをする 車やオートバイに乗る
一般少年 いじめ加害経験なし   36.2 17.2 55.4 35.1 54.2 88.9 47.1 7.4
いじめ加害経験あり いじめ少年 42.9 21.9 62.8 43.2 61.3 84.4 56.5 12.9
非行少年 いじめ加害経験あり 18.4 0.8 47.2 38.4 60.0 81.6 48.0 39.2
いじめ加害経験なし   26.9 3.8 47.4 42.8 57.0 86.9 44.2 36.0
35.0 15.4 54.5 36.5 55.0 88.3 47.1 11.9

  街や盛り場に出て遊ぷ 写真やプリクラの交換をする その他 一緒に遊ぶ友達はいない 無回答 累計
一般少年 いじめ加害経験なし   44.2 30.9 5.5 0.5 0.5 423.1 100.0%
6584人
いじめ加害経験あり いじめ少年 49.2 33.0 9.3 0.9 0.9 479.3 100.0%
333人
非行少年 いじめ加害経験あり 57.6 32.8 10.4 0.8 0.8 436.0 100.0%
125人
いじめ加害経験なし   54.8 26.9 6.7 0.3 0.6 434.4 100.0%
1065人
46.0 30.5 5.9 0.5 0.6 427.1 100.0%
8107人

友人と一緒にいるときの過ごし方(青-B4)を,一般少年・非行少年の別,及びそれぞれについていじめ加害経験の有無別に示しているのが,表3-3-4である。

いずれの属性においても「おしゃべりをする(以下,おしゃべり)」が過ごし方として最も多く8割以上となっているが,一般少年では,次いで上位5位までを挙げると,いじめ加害経験のある・なしを問わず,「マンガや雑誌を読む(以下,マンガ)」「テレビやビデオを見る(以下,テレビ)」「家の中でテレビゲームをする(以下,ゲーム)」「街や盛り場に出て遊ぶ(以下,街で遊ぶ)」となっている。主として屋内で展開される,「おしゃべり」を除けば直接的コミュニケーションの稀薄な形態が上位を占めているが,一般少年に特徴的な傾向として,加えて「スポーツをする」「勉強をする」という,制度的な価値づけがなされている活動形態を挙げる者が非行少年に比べて多いということが指摘できる。

一方,非行少年についてみると,第1位「おしゃべり」以下,「テレビ」「街で遊ぶ」「ゲーム」「マンガ」(いじめ加害経験のない非行少年では4位と5位が逆転)と続き,一般少年と比較すると,友人との過ごし方の比重が若干ながらも屋外にシフトしている傾向がみられる。この傾向は,「車やオートバイに乗る」の比率が相対的に高いことにも現われており,総じて,非行少年の場合は,学校的価値体系の支配が直接及ぶ空間からは切り離された一般社会の中で友人と過ごす傾向が認められる。

いじめ加害経験ありの少年の場合は,一般少年であるか非行少年であるかに応じて基本的に上記の傾向を分有するが,いじめ加害経験のあることは,それ自体として,若干ながらも,交遊空間を一般社会に求める方向に作用しているとみてよい。一般少年であれ非行少年であれ,いじめ少年に固有にみられる傾向を,それぞれの過ごし方の示す比率に着目して指摘すれば,いじめ加害経験のない少年に比較して「おしゃべり」の比率が若干ながらも低く,「テレビ」「ゲーム」「写真やプリクラの交換をする」の比率が高い点があげられ,総じて間接的もしくは媒介的コミュニケーションの色彩の強い過ごし方が相対的に多いことが目立つ。ただし,一般少年に限定していじめ加害経験のある少年とない少年とを比較すると,前者の方が「おしゃべり」を除くすべての過ごし方に関して高い比率が示され,その点に着目すれば,少なくとも一般少年に関する限りは,いじめ加害経験のある少年の方が友人との過ごし方が多彩であるといえる。

次いで,友人と一緒にいるときの様子(青-B5)についてみてみよう。それを表わしているのが表3-3-5である。

まず「ア 友達と一緒にいても,別々のことをしていることが多い(以下,別々のことをしている)」についてみると,これにあてはまると回答した者はいずれの属性においても少ないが,中では,一般少年,非行少年であるとを問わず,いじめ加害経験ありの少年において相対的に高い比率が示されている。「イ 何をするかは,友達が決めることが多い(以下,何をするかは友達が決める)」という者は,一般少年においては3割前後であるのに対して,非行少年においては4割近くと相対的に多くなっている。「ウ 遊ぶ内容よりも,友達と一緒にいることが楽しい(以下,一緒にいることが楽しい)」という者は,いずれの属性においても8割以上と多くなっているが,その割合は中でも非行少年において多い。「エ 友達に嫌われないように気をつかうことが多い(以下,気をつかう)」という者は,一般少年と非行少年との対比でみれば前者に多いといえるが,いずれに関してもいじめ加害経験の有無の別でみると加害経験ありの少年に多くなっており,結果としてこれにあてはまると向答した者は,いじめ加害経験のある一般少年の場合に5割近くと最も高い比率を示す。


表3-3-5 友人と一緒にいるときの様子(B5)  <CSVデータ>

  ア 友達と一緒にいても、別々のことをしていることことが多い イ 何をするかは、友達が決めることが多い ウ 遊ぷ内容よりも、友達と一緒にいることが楽しい 工 友達に嫌われないように気をつかうことが多い オ 自分には友達に自慢できるようなことがあまりないと感じることが多い
一般少年 いじめ加害経験なし   10.2 27.1 81.8 42.3 42.8
いじめ加害経験あり いじめ少年 16.8 30.9 80.2 47.7 39.3
非行少年 いじめ加害経験あり 24.8 39.2 88.8 42.4 51.2
いじめ加害経験なし   14.2 37.1 84.5 37.8 42.3
11.2 28.8 82.2 41.9 42.7

  カ 友達から注目されたいと思うことがよくある キ 友達からは頼りにされている ク テストで友達よりも良い成績をとると誇らしい気がする
一般少年 いじめ加害経験なし   35.2 41.9 37.4 100.0%
6584人
いじめ加害経験あり いじめ少年 39.3 42.0 38.7 100.0%
333人
非行少年 いじめ加害経験あり 41.6 50.4 25.6 100.0%
125人
いじめ加害経験なし   38.9 48.1 31.1 100.0%
1065人
36.0 42.9 36.5 100.0%
8107人

注) 表中の比率は、「はい」「いいえ」の2件法で回答を求めた結果の「はい」の比率である。


「オ 自分には友達に自慢できるようなことがあまりないと感じることが多い(以下,自慢できることはあまりない)」に関しては属性別に明融傾向は認められず,これにあてはまるという者は,いじめ加害経験のある非行少年の場合に5割強と高い比率が示されている以外は,4割前後にとどまっている。「カ 雄から注目されたいと思うことがよくある(以下,注目されたい)」という者は,一般少年と非行少年との対比でみれば後者に多いといえるが,いずれに関してもいじめ加害経験の有無別でみると加害経験ありの少年の場合に多い。「キ 友達からは頼りにされている(以下,頼りにされている)」についてみると,これにあてはまると回答した者は,一般少年では4割強にとどまるのに対して,非行少年では5割前後を占めている。「ク テストで友達よりも良い成績をとると誇らしい気がする(以下,良い成績をとると誇らしい)」という者は,2割台半ばから3割強にとどまる非行少年に対して,一般少年においては4割弱と相対的に多くなっている。

要するに,友人と一緒にいるときの様子や感じ方として,まず,いじめ加害経験の有無を問わず,一般少年に関しては,「良い成績をとると誇らしい」の比率の相対的高さに示されるように,制度化された業績主義的尺度に照した自己の位置づけに特徴的な傾向が認められるといってよい。いじめ加害経験の有無を問わず,非行少年に関しては,「一緒にいることが楽しい」という者がとりわけ多いことに加え,「頼りにされている」という者が多い一方,「何をするかは友達が決める」という者も相対的に多いことが特徴的傾向として指摘でき,リーダー的役割とフォロアー的役割との分化の傾向が明確であるといえよう。この点は,前項(1)でみたように,非行少年においては友人の年齢層に広がりがみられることを反映しているとみてよい。一般少年であるか非行少年であるかを問わず,いじめ加害経験のある少年に関していえば,「気をつかう」「注目されたい」「別々のことをしている」の比率が相対的に高いことが特徴であり,これらの特徴は,トータルに把握すれば,友人関係における自己の地位の従属性の認知を表わしているとみることが可能であり,このことはさらに,友人関係における帰属欲求・承認欲求の充足が十分でないことを推測させる。

いじめ少年に関して示唆される,このような友人関係を通しての欲求充足度の低さはまた,つきあっている人の種類(青-B7)からもうかがえる。それを表わしているのが,表3-3-6である。


表3-3-6 つきあっている人の種類(B6)  <CSVデータ>

  ア 何でも悩みを打ち明けられる友 イ 異性の友達 ウ 親に会せたくない人 エ できればつきあいたくない人 オ ふだん目立たずおとなしいのに突然暴力を 力 いらいらすると急に何ごとでも放り出してしまう人
一般少年 いじめ加害経験なし   76.2 58.0 17.7 41.5 6.0 27.2 100.0%
6584人
いじめ加害経験あり いじめ少年 70.3 58.6 33.9 61.0 16.2 41.4 100.0%
333人
非行少年 いじめ加害経験あり 72.0 72.8 51.2 50.4 31.2 55.2 100.0%
125人
いじめ加害経験なし   82.2 70.5 28.7 41.6 12.1 31.3 100.0%
1065人
76.7 59.9 20.4 42.4 7.6 28.7 100.0%
8107人

注) 表中の比率は、「いる」「いない」の2件法で回答を求めた結果の「いる」の比率である。


この表は,つきあっている人の中に,表頭に掲げられたような人がいるか否かを質問した結果を示している。そのうち「ア 何でも悩みを打ち明けられる友達(以下,悩みを話せる友達)」と「イ 異性の友達」を除いた「ウ 親に会わせたくない人」「エ できればつきあいたくない人(以下,つきあいたくない人)」「オ ふだん目立たずおとなしいのに,突然暴力をふるう人(以下,突然暴力をふるう人)」「カ いらいらすると急に何ごとでも放り出してしまう人(以下,急に何でも放り出してしまう人)」の4項目に該当する人がつきあっている人の中にいるということは,少年自ら何らかの問題性があると認知している人とつきあっているということであり,したがって友人関係から得られる充足感を低下させる方向に作用すると考えられるが,一般少年であれ,非行少年であ,いじめ加害経験がある少年の場合には,ない少年と比較して,総じてそのような人びととのつきあいがあるという者の比率が際立って高いのである。前項(1)では,いじめ少年の友人関係の1つの特徴として親しい友人の数の多さを指摘したが,その関係が必ずしも親和的関係からなるものばかりではないことを推測させる結果である。加えていじめ少年の場合には,「悩みを話せる友達」の比率が相対的に低く,この点からも友人関係から得られる充足感が,総体としてみれば,いじめ加害経験のない少年と比較して低いであろうことが示唆される。

いじめ加害経験のない非行少年と一般少年についてみると,前者の場合,「親に会わせたくない人」「突然暴力をふるう人」「急に何でも放り出してしまう人」に関して,いじめ少年ほどではないにせよ,後者の一般少年と比較すれば高い比率が示されているが,同時に「悩みを話せる友達」の比率が属性別にみて最も高く,何らかの問題性を孕む人が交流範囲の中に含まれるとしても,緊密な関係を友人関係の核に持つ傾向が最も強いといってよい。対して後者のいじめ加害経験のない一般少年の場合は,上記3項目に該当する人とのつきあいがあるという者の比率は属性別にみて最も低いが,「悩みを話せる友達」の比率は前者の非行少年ほどには高くないという結果となっている。

なお,属性の違いによらず,全体としてみれば,「悩みを話せる友達」がいる者が7割から8割強と多い反面,「つきあいたくない入」がいるという者が4割から6割と相当数を占めることは,少年一般にとって,必ずしも交友関係が求心的な和合過程の絶えざる展開として存在するわけではないことを意味しているといえよう。

以上をまとめると,次のようになる。

1) 一般少年は,必ずしも和合的ではない交友関係の下で,「おしゃべり」という,属性の違いによらず広く行き渡った形態を除いてみれば,直接的コミュニケーションの稀薄な形態による屋内活動を中心として友人とのつきあいを展開する傾向が認められる。そのような関係性の中で,かれらは,成績という制度化された業績主義的尺度に照して自己の位置づけを図る傾向が相対的に強いという特徴がみられる。

2) 非行少年は,学校的価値体系の支配が直接及ぶ空間からは切り離された一般社会の中で,リーダー-フォロアーの役割分化が比較的明確である関係性をベースにして,友人と交流を図る傾向がみられる。その交流範囲には,非行少年自身が何らかの点で問題性を認知している者も少なからず含まれるが,「悩みを話せる友達」がいる者の比率からは,友人関係から得る充足感は高いことがうかがえる。

3) いじめ少年は,モノを媒介とした間接的コミュニケーションの色彩の強い活動形態を通して友人とのつきあいを展開する傾向がみられる。そのような関係性の中で,いじめ少年は自己の地位を従属的なものとして認知する傾向がみられること,並びにそのつきあう範囲内に少年自身が何らかの点で問題性を認知している者が含まれている場合が多いことは,友人関係における帰属欲求・承認欲求の充足が十分でないことをうかがわせる。

4) 友人関係を通してみられる非行少年といじめ少年との同質性は,程度の差こそあれ,ともに交遊空間を学校的価値体系の支配が直接及ばない一般社会の中に求める傾向がみられること,及び交流を取り結ぶ範囲内に,何らかの点で問題性ありと少年自身が認知している者が多く含まれることが指摘できる。


3 非行少年といじめ少年の学級集団内的地位の自己評価

学業成績・スポーツ能力・人気度の観点から

学級集団内における生徒間関係は,いうまでもなく,それ自体直接的に少年の友人関係を表象するものではない。しかし,学級集団内の生徒間関係の中で少年たちが占める地位は,かれらが取り結ぶ友人関係の質的態様や,友人関係に対するかれらの志向性を規定すると思われる。したがって,ここで,学業成績,スポーツ能力,人気度を少年たちがどのように自己評価しているかを3段階で求めた結果を通して,所属する(した)学級集団内でかれらが占める(た)地位を明らかにしておく。

まず学級集団内における学業成績ランクの自己評価(青-D1)からみていくと,表3-3-7が,その結果を一般少年・非行少年それぞれについていじめ加害経験の有無別に表わしている。この表をみると,一般少年であるか非行少年であるかによって成績の自己評価は明確に異なり,一般少年では,「良い方」が1割台,「ふつう」が5割前後,「悪い方」が3割強から4割であるのに対して,非行少年の場合は,順に1割未満,2割から3割,6割台半ばから8割弱となっており,明らかに一般少年の方が成績の自己評価は高い。いじめ加害経験の有無は,同表でみられるように,一般少年においても非行少年においても,この基本的傾向を変えるものではないが,いずれの少年においても,加害経験のある場合は,ない場合と比較して成績の自己評価は低い。


表3-3-7 学級集団内における学業成績ランクの自己評価(D1)  <CSVデータ>

  良い方 ふつう 悪い方
一般少年 いじめ加害経験なし   16.5 52.1 31.4 100.0%
6487人
いじめ加害経験あり いじめ少年 13.8 46.9 39.3 100.0%
326人
非行少年 いじめ加害経験あり 3.2 19.2 77.6 100.0%
125人
いじめ加害経験なし   5.2 29.2 65.6 100.0%
1052人
    14.7 48.4 36.9 100.0%
7990人

2(6)=556.46 P<.001

注) 表3-3-1に同じ。


しかし,スポーツ能力の自己評価(青-D2)に関しては,これとは全く異なる結果が示されている(表3-3-8)。学級集団内でスポーツが「できる方」という者は,いじめ加害経験のない一般少年の場合に2割と最も少なく,対していじめ加害経験のない非行少年の場合に4割強と最も多く,いじめ加害経験のある者はこれらの中間的傾向を示している。「できない方」という者は,「できる方」の比率が低い属性ほど高くなっている。要するに,スポーツ能力に関する自己評価は,いじめ加害経験のない非行少年の場合に最も高く,次いでいじめ加害経験のある少年のうち非行少年,一般少年の順で続き,いじめ加害経験のない一般少年の場合に最も低くなっている。


表3-3-8 学級集団内におけるスポーツ能力ランクの自己評価(D2)  <CSVデータ>

  できる方 ふつう できない方
一般少年 いじめ加害経験なし   19.7 52.9 27.5 100.0%
6527人
いじめ加害経験あり いじめ少年 30.8 46.7 22.6 100.0%
328人
非行少年 いじめ加害経験あり 38.4 47.2 14.4 100.0%
125人
いじめ加害経験なし   41.1 48.2 10.7 100.0%
1053人
2.32 51.9 24.9 100.0%
8033人

2(6)=316.45 P<.001

注) 表3-3-1に同じ。


人気度の自己評価(青-D4)に関しては,表3-3-9に示されているとおり,スポーツ能力の自己評価とほぼ同様の傾向が認められる。人気度は「ふつう」という者が多く,また属性別の差異がスポーツ能力についてみたほどには大きくないが,学級集団内における人気度ランクの自己評価は,いじめ加害経験のない非行少年の場合に最も高く,次いでいじめ加害経験のある少年のうち非行少年,一般少年の順で続き,いじめ加害経験のない一般少年の場合に最も低くなっていることが,表からみてとれる。


表3-3-9 学級集団内における人気度ランクの自己評価(D4)  <CSVデータ>

  ある方 ふつう ない方
一般少年 いじめ加害経験なし   5.6 74.3 20.1 100.0%
6527人
いじめ加害経験あり いじめ少年 15.3 64.8 19.9 100.0%
327人
非行少年 いじめ加害経験あり 24.8 57.6 17.6 100.0%
125人
いじめ加害経験なし   24.7 64.8 10.5 100.0%
1051人
8.8 72.4 18.8 100.0%
8030人

2(6)=496.57 P<.001

注) 表3-3-1に同じ。


以上をまとめると,次のようになる。


1) 一般少年は,学業成績という尺度によれば,学級集団内における地位に関して相対的に高い自己評価を下すが,スポーツ能力及び人気度という尺度によればその地位に関して相対的に低い評価を下している。属性別に比較したときにみられるこの両極化の傾向は,とりわけいじめ加害経験のない一般少年の場合に明確である。

2) 非行少年は,これとは逆に,学業成績という尺度によれば,学級集団内における地位に関して極めて低い評価を下しているが,スポーツ能力・人気度という尺度によれば,その地位に関して相対的に高い評価を下している。後者の傾向は,いじめ加害経験のない非行少年の場合に一層明確である。

3) いじめ加害経験ありの少年についてみた場合は,学業成績という尺度からみた学級集団内における地位の自己評価は,一般少年であるか非行少年であるかに応じて,基本的に上記の傾向を分有するが,一般少年であれ非行少年であれ,いじめ加害経験のある場合は,ない場合と比較して自己評価は低い。この点にいじめ少年と非行少年との1つの同質性をみることができるが,他方,いじめ少年は,スポーツ能力・人気度という尺度からみた地位の自己評価が,いじめ加害経験のない一般少年よりは高いが,加害経験のない非行少年よりは低いという中間的傾向を示している。要するに,いじめ少年に関しては,総体としてみれば,ここで取り上げたいずれの尺度に照してみても学級集団内的における地位の達成度が低い傾向が認められる。


4 少年の逸脱化としての非行といじめとの同質性と異質性

上述したような学級集団内における地位の自己評価が,先にみた友人関係の質的特徴,並びに関係性における自己認知とどのように関連するかをトータルに把握し,その関連性の中で非行少年といじめ少年とがどのような位置を占めるかを明らかにするために,最後に数量化III類による分析を試みた。その結果を考察することで,少年の逸脱化としての非行といじめとの同質性と異質性に関するまとめとしたい。

取り上げた変数は,友人と一緒にいるときの様子に関する7項目,つきあっている人の種類に関する4項目,学級集団内における地位の自己評価に関する3項目,及び属性(一般少年・非行少年別*いじめ加害経験の有無別)である。友人と一緒にいるときの様子とつきあっている人の種類に関しては,回答結果の片側への集中が著しい項目,及び他と異質な性格を持つ項目は,分析対象から除外した。15変数に対して数量化皿類を適用した結果を散布図で示したのが,図2-3-1である。なお,単相関係数は1軸が0.37,H軸が0.34であり,両軸を合わせた寄与率は19.0%である。

まず,それぞれの軸の意味を解釈してみよう。1軸プラス方向の値の大きいところには「人気ある方」「スポーツできる方」「(友達からは)頼りにされている-YES」「注目されたい-YES」「親に会わせたくない人いる」等が位置し,マイナス方向の値の大きいところには「人気ない方」「悩み話せる友達いない」「スポーツできない方」「頼りにされている-NO」「(友達と)一緒にいることが楽しい-NO」等が位置している。回答結果のこのような分化のパターンは,友人関係におけるリーダー的地位とフォロアー的地位の分化,あるいはそれぞれの地位を求める志向性の違いを表わしているといえる。したがって,ここでは,それぞれの地位を占めることによって充足される欲求に着目して,1軸を友人関係における「支配志向-従属志向」弁別軸と名づけることにする。


図3-3-1 友人関係をとおしてみる非行といじめ(数量化III類分析結果)

少年の逸脱化としての非行といじめの同質性及び異質性を示す散布図

注) 図中のYES、NOの表記は、それぞれ問B5(青少年調査)の回答肢「はい」「いいえ」を示している。


II軸についてみると,プラス方向の値の大きいところには「親に会わせたくない人いる」「急に(何ごとでも)放り出してしまう人いる」「何をするかは友達が決める-YES」「人気ない方」「つきあいたくない人いる」「(友達に嫌われないように)気をつかう-YES」等が位置し,マイナス方向の値の大きいところには「つきあいたくない人いない」「気をつかう-NO」「(自分には)自慢できるところは(あまり)ない-NO」「急に放り出してしまう人いない」「何をするかは友達が決める-NO」等が位置している。回答結果のこのような分化のパターンは,「この場所こそ自分の居るべきところだ」という安心感を与えてくれる社会的帰属や社会的承認を求める欲求が充足されているか否かの違いを表わしているといえる。したがってH軸は,友人関係を通しての「社会的帰属・承認欲求の不充足-充足」弁別軸と名づけることができる。

上記のI軸とII軸が生み出す座標空間の中で,非逸脱的存在としての「いじめ加害経験のない一般少年」を除く少年たちがどこに現われるかをみてみると,いずれもI軸プラス方向とII軸プラス方向によって形成される第1象元に位置している。この第1象元は,支配志向と社会的帰属・承認欲求の不充足が織りなす空間であるから,ここには自己顕示的現状改変動機が形成されるとみてよい。非行といじめは,ともにこのような動機によって方向づけられた行為であるといってよく,ここに両者の同質性は集約できよう。

しかし,いずれも第1象元に位置するとはいえ,「いじめ加害経験のない非行少年」は1軸寄りに,「いじめ加害経験のある一般少年」はH軸寄りに位置するという違いがみられる。この点に着目すれば,少年の非行化過程においては支配志向の達成という契機の占める比重が相対的に高く,他方いじめ行為へとつながる逸脱化過程においては社会的帰属・承認欲求の充足という契機の占める比重が相対的に高いということが指摘できよう。ここに少年の逸脱化としての非行といじめとの異質性もしくは差異性は集約できよう。

なお,付言すれば,先に非行少年の友人関係の1つの特徴として,リーダー-フォロアーの役割分化の傾向が明確であるということを指摘したが,ここでの考察を踏まえれば,その役割分化は固定的であるというよりも,異なる年齢層から構成される錯綜した関係性の中で,その時々の年齢関係に応じて決定される可変的性格を持つものであるとみることができる。



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