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第3部 調査結果の分析

第4章 日常生活の状況と非行との関連性について

警視庁生活安全部少年第一課江戸川少年補導所主査 月村 祥子


要旨


本章では,起床の様子や朝のあいさつなどの基本的生活習慣の自律や日常生活の過ごし方と非行との関連性を調べた。基本的生活習慣については,全般に非行少年の方が一般少年より身に付いておらず,生活の乱れが非行につながりやすいことが分かった。その中でも「朝食の頻度」,「夕食を家族とともに食べる」という食事に関する項目と「決まった家事の手伝い」で一般と非行の差が目立っている。基本的な生活習慣は,家族というまとまりの中で一緒に行動することによって獲得されるため,生活のリズムや家族相互の役割を大切にするという発想のない崩壊家庭では身に付かないし,親子関係が良くない家庭では反抗として故意にしない場合も考えられる。そこで,基本的生活習慣が自律しているかどうかで3群に分け,どこに差が出るか調べたところ,自律している群はしていない群に比べて,両親に愛着を感じ,大切な話を親子で行うというように親子の信頼関係が見受けられた。反対に,自律していない群の方が成績が悪いと思い,不良行為等の経験率も高く,自分のことを親から愛されていないと感じ,行動化しやすい半面,いつも疲れた感じを持ち,友達との議論というような深い関わりは避け,流行の服や髪型といった表面的な部分で関わりを持とうとする傾向が見られた。

日常生活の過ごし方について見ると,非行少年は一般少年に比べて,塾や習いごとをしていない割合が非常に高く,小学生では外出先を言ったり,門限が決まっている割合が低かった。さらに,非行少年は小遣いを食べ物乙飲み物,酒・タバコといった嗜好品やカラオケに使うことが多く,暇な時間を何かに専念するのではなく,家の外で友連と一緒に過ごしながら刹那的に小遣いを使うという姿が浮かび上がる。

全体として,前回調査の結果と同じ傾向があったが,一般と非行の差は大きくなっているところが多く,基本的生活習慣や日常生活の過ごし方の重要性を改めて感じさせられる結果であった。


前回の昭和63年調査では,「生活の乱れが非行につながる」という仮説を検討するために,基本的生活習慣の自律と日常生活の過ごし方に関する項目を新たに設定した。その結果,多くの項目で一般少年と非行少年の差が見られたため,本調査でもその仮説を引き続き立証していくこととした。


1 基本的生活習慣の自律

基本的生活習慣については,「起床の様子」,「朝の家族へのあいさつ」,「朝食の頻度」,「夕食を家族とともにする頻度」,「決まった家事の手伝い」という5項目で調べている。詳細については本報告書の第2部第1章 第3節 「生活」に記載されているが,その結果を,一般少年と非行少年の相違という視点からまとめたものが,表3-4-1-1である。この中で,前回調査の非行少年は警察で補導された少年(以下,補導群)だけを扱っているが,本調査の非行少年は警察で補導された少年と鑑別所に収容されている少年(以下,鑑別所群)の両方を含んでいる。そこで,前回調査と比べるために()内に補導群だけの結果を示した(実数については本報告書の後に添付するデータを参照〉。また,表中の一般と非行の差については,各項目の選択肢のいずれかに20%以上の差がある場合に「○」「●」,10%以上の差がある場合に「△」「▲」と表示した。


表3-4-1-1 基本的生活習慣における一般群と非行群の差  <CSVデータ>

(平成10年)
  男子 女子
小学生 中学生 高校生 小学生 中学生 高校生
自分で朝起きる △(△) =(△) =(=) =(=)
朝のあいさつ ○(○) =(△) ○(○) =(=)
朝食を食べる ○(○) ○(○) ○(○) ○(○)
夕食を家族と食べる ○(○) △(△) ○(○) ○(△)
決まった家事手伝い ○(○) △(○) △(○) △(△)

○ …一般少年の方が、非常に行なっている(20ポイント以上)

△ …一般少年の方が、やや行なっている(10ポイント以上)

= …一般少年と非行少年に差がみられない

( )内は、非行少年のうち警察で補導された少年のみで差をみたもの


これを見るとどの項目でも,一般少年の方が非行少年より基本的生活習慣を獲得していることが分かる。その中で,非行と一般の差が一番大きかったのは「朝食」の項目で,毎朝食べる割合は女子小学生では10ポイント以上,その他の学職では20ポイント以上,一般少年の方が非行少年より高かった。朝食の項目で一番差が見られたことは前回調査(表3-4-1-2)と同じであり,夜型の子供が増えている現代にあって,朝食を取ることの重要性を改めて感じさせられる結果となった。


表3-4-1-2 基本的生活習慣における一般群と非行群の差  <CSVデータ>

(昭和63年)
  男子 女子
小学生 中学生 高校生 中学生 高校生
自分で朝起きる
朝のあいさつ
朝食を食べる
決まった家事手伝い

○ …一般少年の方が、非常に行なっている(20ポイント以上)

△ …一般少年の方が、やや行なっている(10ポイント以上)

= …一般少年と非行少年に差がみられない


次に差が大きかったのは「夕食を家族とともにする」という項目で,男子高校生と女子小学生は10ポイント以上,その他の学職では20ポイント以上一般少年の方が高く,朝食と同様に食事をきちんと取ること,また,それを家族一緒に取ることの大切さを示している。この項目については今回から調べたもので,10年前との比較は出来ない。

「決まった家事の手伝い」についても,男子高校生,女子中・高校生では10ポイント以上,男子小・中学生,女子小学生では20ポイント以上一般少年の方が手伝う割合が高かった。前回調査では,高校生では男女共一般と非行の差が見られなかったのに対して,本調査では10ポイント以上の差が見られた。これは前回に比べて,「ほとんど手伝わない」という割合が男女の高校生で増えているが,非行の男女高校生ではその増加率が極めて高いため,差が見られるようになったといえる。

「自分から朝のあいさつをするか」については,小・中学生では男女共20ポイント以上一般少年の方が高かったのに対して,高校生では男女共差は見られなかった。前回調査と比較すると,男子中学生で非行と一般の差が増加し,女子高校生で20ポイント以上あった差が見られなくなったのが特徴である。

「起床の様子」は,一般と非行の差が一番少なかった項目である。男子小・中学生では一般少年が非行少年よりも起床の自律が進んでいるが,その他の学職では差が見られなかった。前回調査でも男子小学生だけで差が見られるという同じ結果であった。

基本的生活習慣と非行との関連性を学職別に見ると,男子の小・中学生ではどの項目でも一般少年と非行少年の問に差が見られ,高校生になると男女共食事に関してと家事の手伝いで差が見られるだけであった。女子中学生はその中間に位置している。また,非行少年の補導群と鑑別所群の相違を見ると,男子高校生.の3項目と女子中学生の1項目で補導群の方が基本的生活習慣が身に付いておらず,逆に,女子高校生の1項目では鑑別所群の方が身に付いていなかった。その他では補導群と鑑別所群にほとんど違いは無かった。

全体を通して,非行少年は一般少年に比べて基本的生活習慣が獲得されていないという結果が得られ,「生活の乱れが非行につながる」という仮説が立証されたといえる。ここで取り上げた基本的生活習慣は,家族というまとまりの中で一緒に行動することによって身に付くものである。そのため,崩壊家庭の場合は生活のリズムや家族相互の役割を大切にしようという発想そのものが生まれないし,親子関係が良くない家庭では反抗として故意にしない場合も考えられる。一方,非行や不良行為はそれ自体既存のルールを破る行為であり,家族や社会への反発という意味合いを含んでいる。発達の観点から見ると,小学生というまだ親子関係が緊密な低年齢のうちから基本的生活習慣が身に付いていない場合は,家族に重大な問題があると考えられるし,愛情を求めての非行(盗みなど)に結び付きやすいといえる。そして,中・高校生では思春期そのものが反抗期であり,高校生ともなると家族のルールよりも自分のルールで行動するようになる。そのため,基本的生活習慣そのものが乱れやすくなるし,乱れたとしても即非行行為につながるものではないと考えられる。


2 日常生活の過ごし方

ここでは,「塾や習いごとの頻度」,「アクションゲームの頻度」,「外出先の告知(小学生のみ)」,「門限の有無(小学生のみ)」,「小遣いの使途」等について調査し,一般少年と非行少年の差がどのように現われるかを分析した。

詳細は,第2部第1章 第3節 「生活」の6〜11に示されているが,一般と非行の差をまとめて見たのが表3-4-2-1である。塾や習いごとについて,中・高校生では「行っていない」,小学生では「習っているものはない」という選択肢で回答を求めている。これを見ると,非行少年は一般少年よりも塾や習いごとをしていない割合が高く,小・中学生では20ポイント以上,高校生でも10ポイント以上の差が見られた。これは,前回調査(表3-4-2-2)と同じ結果であった。

アクションゲーム(ストリートファイター)などのようなテレビゲームについては,男子中学生で非行少年の方が一般少年よりする割合がやや高かったが,その他の学職では差が無かった。男子中学生の補導群では差が見られなかった。

また,小学生に対する設問の「外出先の告知」と「門限の有無」については,どちらも一般少年の方が非行少年より「外出先をいつも言い」「門限が決まっている」割合が男女共高いことが分かる。

最後に,小遣いの使途について見ると,非行少年の方が一般少年より使用している割合の高いものは,食べ物・飲み物,酒・タバコ,カラオケであった。反対に,漫画・雑誌・本,音楽・映画,趣味のこと,貯金は一般少年の方が高かった。部分的に差が見られたものは,学用品の女子中学生(一般少年),ゲーム機・ソフトの男子小学生(非行少年),プリクラ・写真の女子高校生(非行少年),携帯等の電話代の男女高校生(非行少年)であった。また,衣料・装飾品・化粧品については,男子では差が無かったが,女子の場合,小・中学生では非行少年の方がやや高く,高校生では一般少年の方がやや高いという結果が得られた。


表3-4-2-1 日常生活の過ごし方における一般群と非行群の差  <CSVデータ>

(平成10年)
  男子 女子
小学生 中学生 高校生 小学生 中学生 高校生
塾や習いごとに行っていない ●(●) ▲(▲) ●(●) ▲(▲)
アクションゲーム   ▲(=) =(=)   =(=) =(=)
外出先の告知        
門限の有無        
小遣いの使途            
・食べ物、飲み物
・学用品
・漫画、雑誌、本
・ゲーム機、ソフト
・酒、タバコ    
・音楽、映画
・趣味のこと    
・衣料、装飾、化粧
・プリクラ、写真
・携帯等電話代    
・カラオケ    
・貯金する

○ …一般少年の方が、非常に行なっている(20ポイント以上)

△ …一般少年の方が、やや行なっている(10ポイント以上)

= …一般少年と非行少年に差がみられない

▲ …非行少年の方が、やや行なっている(10ポイント以上)

● …非行少年の方が、非常に行なっている(20ポイント以上)

()内は、非行少年のうち警察で補導された少年のみで差をみたもの


全体の傾向は,前回調査の結果と同じで,食べ物・飲み物,酒・タバコという嗜好品に非行少年は小遣いを使うことが非常に多く,さらに,最近流行のプリクラ,携帯電話,カラオケなどについても,非行少年の方が多く関わっているといえる。一般少年は,貯金や漫画・雑誌・本,音楽・映画,趣味のことなどに小遣いを多く使っており,非行少年と比較すると,家の中でする静なものに関わる傾向があると言えそうである。

以上のように,非行少年の方が一般少年に比べて,塾や習いごとをしていない割合が非常に高く,小学生では外出先を言ったり,門限が決まっている割合が低いという結果が得られた。さらに,非行少年は一般少年と比較して,小遣いを食べ物・飲み物,酒・タバコといった嗜好品やカラオケに使うことが多く,家の外で友達と一緒に過ごしながら小遣いを使っている姿が浮かび上がってくる。従来,非行抑止要素の1つとして,何かに積極的に専念して自由な時間を持たないようにすることが考えられているが(星野,1983),ここでも実証されたといえよう。


表3-4-2-2 日常生活の過ごし方における一般群と非行群の差  <CSVデータ>

(昭和63年)
  男子 女子
小学生 中学生 高校生 中学生 高校生
塾や習いごとに行っていない
小遣いの使途          
・食べ物、飲み物
・学用品
・漫画,雑誌、本
・ゲーム機、ソフト
・酒、タバコ  
・音楽、映画
・趣味のこと  
・衣料、装飾、
・貯金する        

○ …一般少年の方が、非常に行なっている(20ポイント以上)

△ …一般少年の方が、やや行なっている(10ポイント以上)

= …一般少年と非行少年に差がみられない

▲ …非行少年の方が、やや行なっている(10ポイント以上)

● …非行少年の方が、非常に行なっている(20ポイント以上)

()内は、非行少年のうち警察で補導された少年のみで差をみたもの


3 基本的生活習慣の自律と家族等の項目との関連性

第1,2節で,基本的生活習慣の自律や日常生活の過ごし方が非行と深く関わっていることが分かった。そこで本節では,基本的生活習慣の5項目を総合して自律スケールを作成し,自律の進み具合によって上,中,下の3グループに分類して,家族,性格,不良行為,被害等の項目との関連を調べ,非行原因としての基本的生活習慣の自律には何が一番関わっているかを分析した。

基本的生活習慣の回答は,例えば「朝の家族へのあいさつ」が「1,毎朝する」,「2,時々する」,「3,ほとんどしない」(図3-1-3-3参照)という3選択肢で求めており,1の方が3より自律が進んでいる選択肢になっている。同様に,「朝食の頻度」と「決まった家事の手伝い」も3選択肢で,また,「起床の様子」と「夕食を家族とともにする頻度」は4選択肢で回答を求めている。5項目と各選択肢はそれぞれ違う重みではあるが,ここでは5項目の回答を単純に合計し,その数値を自律スケールとした。そのため,自律スケールは5から17の間に分布し,数値が低いほど基本生活習慣が獲得されている(自律が進んでいる)とみなすことができる。なお,5項目の1つでも無回答がある者は,この分析では除外している。


(1) 自律スケールの分布

小学生の自律スケールがどのように分布しているかを見たのが,図3-4-3-1である。女子小学生の非行少年が28名と少ないため該当者がいないところもあるが,全体を通して見ると,女子一般少年が8点がピークとなり,基本的生活習慣が一番獲得されている。次いで,男子一般少年が8〜9点がピークとなり,女子非行少年が9点がピークで続いている。男子非行少年は13点がピークで基本的生活習慣が一番獲得されていない。


図3-4-3-1 自律スケールの分布  <CSVデータ>

一般小学生及び非行小学生の男女別にみた基本的生活習慣による自律スケールの分布を示した図

  5点 6点 7点 8点 9点 10点 11点 12点 13点 14点 15点 16点以上
小男一般 3.9 10.4 17.9 19.1 19.4 13.1 7.6 4.8 2.6 1.2 0.3 0
小女一般 2.6 11.8 20.8 25.8 20.6 9.4 4.7 2.5 1.2 0.5 0.1 0.1
小男非行 0 2.0 11.8 11.8 11.8 13.7 13.7 9.8 15.7 5.9 3.9 0
小女非行 0 3.6 14.3 21.4 28.6 14.3 0 7.1 3.6 3.6 0 3.6
得点
図3-4-3-2 自律スケールの分布  <CSVデータ>

一般中学生及び非行中学生の男女別にみた基本的生活習慣による自律スケールの分布を示した図

  5点 6点 7点 8点 9点 10点 11点 12点 13点 14点 15点 16点以上
中男一般 1.7 5.9 13.4 17.7 17.8 16.1 11.7 8.2 4.5 1.7 0.6 0.8
中女一般 2.0 8.1 17.4 20.1 19.9 14.1 8.9 4.6 3.0 1.1 0.6 0.2
中男非行 0 1.1 4.8 5.6 8.9 14.1 13.4 16.7 14.1 8.2 7.8 5.2
中女非行 0 2.2 2.2 13.0 9.8 19.6 16.3 12.0 5.4 8.7 3.3 7.6
得点

次に,中学生の自律スケールを見たのが,図3-4-3-2である。小学生と同様に,グラフの山は女子一般少年,男子一般少年,女子非行少年,男子非行少年の順に並んでいる。一般少年と非行少年の差が,中学生では更に大きくなっているのが特徴である。


図3-4-3-3 自律スケールの分布  <CSVデータ>

一般高校生及び非行高校生の男女別にみた基本的生活習慣による自律スケールの分布を示した図

  5点 6点 7点 8点 9点 10点 11点 12点 13点 14点 15点 16点以上
高男一般 0.9 3.7 7.7 13.4 16.8 16.6 14.1 11.8 8.1 4.1 1.5 1.1
高女一般 1.7 7.3 14.4 18.2 18.1 16.5 10.5 6.9 3.5 2.3 0.5 0.1
高男非行 1.0 2.5 2.5 6.5 8.5 16.1 12.6 15.6 14.6 9.0 5.5 5.5
高女非行 3.2 3.2 6.5 10.8 15.1 12.9 7.5 14.0 14.0 7.5 3.2 2.2
得点
図3-4-3-4 自律スケールの分布  <CSVデータ>

大学生以上の一般少年及び非行少年の男女別にみた基本的生活習慣による自律スケールの分布を示した図

  5点 6点 7点 8点 9点 10点 11点 12点 13点 14点 15点 16点以上
大男一般 1.1 4.0 10.1 12.2 15.5 16.5 12.9 13.3 9.0 5.4 0 0
大女一般 4.7 10.3 19.5 17.8 18.8 13.9 7.7 4.3 1.9 1.1 0 0
有無職男 0.5 1.6 4.5 10.4 9.7 14.4 16.4 13.5 12.2 8.8 4.3 3.8
有無職女 0 1.3 2.6 10.5 10.5 18.4 13.2 10.5 9.2 14.5 2.6 6.6
得点

高校生の自律スケール(図3-4-3-3)を見ると,グラフの山は小・中学生と同様に,女子一般少年,男子一般少年,女子非行少年,男子非行少年の順に並んでいるが,山の形は平坦になっている。例えば,どの学職でも女子一般少年のピークは8点であるが,その割合は小学生で25.8%,なっており,年齢が上がるにつれて得点が分散し,山が低くなる傾向が見られた。また,高校生の場合,非行少年では男女共ピークが2つあり,二極化の傾向が見られた。

参考として,大学生と有職・無職少年の自律スケールを見たのが,図3-4-3-4である。女子大学生で基本的生活習慣が一番獲得されており,次に男子大学生が続き,有職・無職少年の男女は大体同じ範囲に得点が分布している。

 以上の結果を明確にするために,各学職毎に自律スケールの平均得点を求めたのが,表3-4-3-1である。男女共,一般少年は非行少年より各学職で1〜2点低い値であり,一般少年の方が自律しているといえる。また,一般少年では小学生が男女共一番低い値であり,中学生から高校生と進むにつれて値が高くなっていく。一方,非行少年では男女共小学生が一番低い値であることは同じであるが,高校生の方が中学生より値が低く,非行少年では中学生が一番自律していないといえる。そのため,男女共中学生で一般と非行の差が一番大きく,女子小学生で一般と非行の差が一番小さかった。


表3-4-3-1 自律スケールの平均得点  <CSVデータ>

  一般少年 非行少年
男子 女子   男子 女子
小学生 8.6 8.2 全体 10.5 9.3
中学生 9.3 8.8 全体 11.5 11.0
補導 11.8 10.9
鑑別所 10.7 11.6
高校生 10.1 9.1 全体 11.4 10.5
補導 12.2 10.3
鑑別所 10.7 11.3
大学生 10.0 8.5      
有職無職等     全体 11.1 11.3

また,非行少年の中で補導群と鑑別所群の違いを見ると,男子では中・高校生とも補導群の方が自律しておらず,女子では逆に鑑別所群の方が自律していない。

大学生の値を見ると,男子大学生は高校生と同程度の値であり,女子大学生は小学生と中学生の間の値である。有職・無職少年では,男子は中・高校生よりやや低く,女子は各学職の中で一番高い値となっている。

このように,一般少年の方が非行少年より基本的生活習慣を獲得しており,小学生で一番身に付いている。しかし,中学〜高校と進むに連れて,ある意味では,基本的生活習慣は乱れて来て,家族を含めた習慣から離れて行く。非行少年では,乱れ方が大きく,それだけ家族の習慣からも離れているといえる。


(2) 自律スケールと他の項目との関連性

ここでは,自律スケールと家族や性格,不良行為等との関連を見ていくため,一般少年が3群に分かれるように自律スケールを区分した。3群の区分と割合は,小学生は表3-4-3-2に,中学生と高校生は表3-4-3-3に示している。小学生は全体に自律している割合が高いので,得点が低いところで三分する結果となっている。この区分は,人数が多い一般少年を基準としているので,自律していない非行少年は「下」に分類される割合が多く,例えば,男子小学生,男女中学生,男子高校生では半数以上が「下」に含まれている。


表3-4-3-2 自律スケールの各割合  <CSVデータ>

上=5〜7点、中=8〜9点、下=10〜17点
  小学生
一般少年 非行少年
男子 女子 男子 女子
31.9 35.2 13.7 17.9
422 428 7 5
38.5 46.3 23.5 50.0
510 563 12 14
29.6 18.4 62.7 32.1
392 224 32 9
合計 100.0 100.0 100.0 100.0
1324 1215 51 28

(数字は実数、左上は%)


(1) 自律スケールと家族関係

自律スケールと家族についての質問項目との関連を見たのが,表3-4-3-4である。太い矢印は上下の差が20ポイント以上,細い矢印は上下の差が10ポイント以上あることを示している。

「父のような人でありたい」,「母のような人でありたい」については,差が見られない学職もあるが,自律スケールが「下」の群はそう思う割合が低く,「中」〜「上」になるにつれて割合が高くなり,自律している群ほど両親に愛着を感じていることが分かる。同様に,「将来の進路について親と話をする」,「学校の勉強について親と話をする」,「親は私の意見や考えに耳を傾ける」,「友達のことを親に話す」という親子の会話についても,「下」の群の方がその割合が低く,「上」群の方が高い傾向が見られ,例外はあるが,高校生や大学生であっても自律している群ほど親子の会話が行われているといえる。さらに,「家庭の雰囲気は暖かい」,「親は私のことを信頼している」についても同様な傾向が見られた。以上は,一般少年でも非行少年でも見られる結果であった。

最後に,「親から愛されていないと感じる」では,自律スケールが「下」の群がそう思う割合が高いという傾向が見られたが,.一般少年ではその差は小さかった。非行少年ではどの学職の群でも一般少年より愛されてないと感じる割合が高く,さらに「下」群の方が「上」の群よりそう思う割合が高いという結果が得られた。

このように,基本的生活習慣が身に付いている方が,両親に愛着を感じ,大切な話を親子で行い,家庭の雰囲気が暖かく,親が自分を信頼しいると感じ,愛されていないとは感じてないという結果であった。これは,一般少年でも非行少年でも同じであり,反対に,このような親子関係の場合に基本的生活習慣が身に付いていくものと考えられる。


表3-4-3-3 自律スケールの各割合  <CSVデータ>

上=5〜8点、中=9〜10点、下=11〜17点
  一般少年 非行少年
中学生 高校生 中学生 高校生
男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子
38.7 47.6 25.7 41.6 11.5 17.4 12.6 23.7
585 709 445 628 31 16 25 22
33.9 34.0 33.4 34.5 23.0 29.3 24.6 28.0
513 506 579 522 62 27 49 26
27.4 18.3 40.8 23.9 65.4 53.3 62.8 48.4
415 273 707 361 176 49 125 45
合計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
1513 1488 1731 1511 269 92 199 93

(数字は実数、左上は%)


(2) 自律スケールと成紙不良行為等との関連

自律スケールと成績,不良行為等との関連を見たのが,表3-4-3-5である。ここでは3群の相違が大きいもののみを表示した。

これを見ると,「成績が悪い方」では自律スケールの3群の差が大きく,「下」の群の方が「上」群より悪い方と答えた割合が高かった。この傾向は一般少年でも非行少年でも見られるが,非行少年でその差が特に大きく,例えば,女子高校生の「上」の群は18.2%であるのに対して,「下」の群では62.2%が成績が悪い方と答えている。


表3-4-3-4 自律スケールと家族関係  <CSVデータ>

  自律スケール 一般少年 非行少年
小学生 中学生 高校生 大学生 小学生 中学生 高校生 有職・無職
男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子
父のような人でありたい(なりたい) 57.3 42.5 54.4 44.0 52.1 46.8 61.8 57.8 71.4 40.0 71.0 37.5 76.0 54.5 73.3 18.2
50.0 32.9 41.3 31.2 49.1 31.6 61.8 49.7 66.7 35.7 38.7 25.9 79.6 30.8 47.7 36.4
35.2 23.7 26.3 19.0 34.2 25.5 47.8 45.7 43.8 11.1 29.5 10.2 40.0 13.3 49.6 23.3
母のような人でありたい(なりたい) 38.4 75.0 49.4 70.8 48.1 68.0 60.5 77.5 42.9 80.0 61.3 56.3 60.0 63.6 80.0 72.7
29.6 65.2 35.7 55.5 40.2 58.0 59.6 71.9 25.0 71.4 38.7 66.7 73.5 61.5 65.4 72.7
20.9 48.2 21.9 44.7 32.7 43.5 42.5 61.4 12.5 22.2 31.3 32.7 47.2 48.9 50.4 44.2
親から愛されていないと感じる     15.7 17.8 16.6 12.6 1.3 11.9     25.8 37.5 16.0 22.7 14.7 18.2
    24.6 21.9 15.5 19.7 9.0 11.8     35.5 25.9 26.5 26.9 20.6 22.7
    28.0 26.0 25.7 27.1 13.3 22.9     42.6 51.0 34.4 37.8 30.2 58.1
将来の進路について親と話をする     70.3 73.8 82.5 86.9 75.0 90.2     83.9 75.0 84.0 86.4 85.3 72.7
    60.8 71.3 76.0 82.0 73.0 79.1     62.9 66.7 73.5 61.5 75.7 68.2
    46.7 53.5 61.4 65.9 62.8 67.1     42.6 59.2 62.4 55.6 58.0 32.6
学校の勉強について親と話をする     58.6 67.1 43.8 53.0 52.6 71.7     67.7 56.3 44.0 59.1 22.7 18.2
    43.1 55.9 35.6 42.1 46.1 58.8     35.5 63.0 38.8 34.6 20.6 27.3
    28.0 35.2 18.8 23.3 30.1 51.4     15.3 22.4 28.8 20.0 13.7 9.3
親は私の意見や考えに耳を傾ける     79.1 87.2 84.7 88.5 88.2 91.8     93.5 75.0 96.0 81.8 97.3 72.7
    71.9 80.8 81.0 84.1 92.1 90.2     75.8 74.1 93.9 57.7 85.0 90.9
    57.6 71.1 66.9 69.5 83.2 84.3     51.1 61.2 73.6 55.6 76.3 39.5
友遠のことを親に話す     65.0 83.8 61.8 84.9 71.1 88.9     54.8 68.8 68.0 77.3 77.3 81.8
    54.4 78.5 52.2 73.4 71.9 76.5     56.5 63.0 79.6 61.5 68.2 72.7
    34.2 64.5 37.1 64.3 48.7 80.0     33.5 55.1 40.0 44.4 52.3 46.5
家庭の雰囲気は暖かい     89.6 90.4 87.2 90.0 88.2 89.8     87.1 75.0 92.0 86.4 90.7 72.7
    80.1 81.4 79.8 77.6 93.3 81.0     72.6 66.7 87.8 65.4 82.2 68.2
    61.2 65.9 64.4 63.7 76.1 74.3     48.9 38.8 62.4 37.8 62.6 39.5
親は私のことを信頼している     75.4 80.0 80.7 83.9 88.2 91.8     64.5 62.5 76.0 59.1 80.0 63.6
    64.1 68.4 71.3 76.6 87.6 85.0     46.8 59.3 75.5 42.3 74.8 54.5
    48.2 57.9 55.9 56.5 78.8 81.4     38.1 34.7 51.2 28.9 51.5 20.9

表3-4-3-5 自律スケールと成績,不良行為等  <CSVデータ>

  自律スケール 一般少年 非行少年
小学生 中学生 高校生 大学生 小学生 中学生 高校生 有職・無職
男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子
成績は悪い方 8.3 11.4 26.0 25.4 29.9 21.8 23.7 11.1 0 0 54.8 43.8 28.0 18.2 66.7 54.5
18.0 12.6 33.3 31.6 31.6 28.5 23.6 14.4 25.0 21.4 66.1 59.3 57.1 34.6 69.2 68.2
29.1 26.8 45.3 45.4 45.7 39.1 31.9 25.7 56.3 44.4 82.4 79.6 59.2 62.2 73.3 79.1
親の金をだまって持ち出したことがある 9.0 4.4 16.9 10.4 22.2 15.4 15.8 4.9 14.3 40.0 16.1 6.3 32.0 9.1 17.3 9.1
12.5 6.6 20.7 17.2 18.0 17.6 16.9 13.7 33.3 42.9 30.6 33.3 30.6 15.4 29.9 27.3
16.6 20.1 28.2 25.3 24.6 28.3 15.0 14.3 53.1 55.6 42.6 44.9 46.4 51.1 34.7 46.5
親にひどく反抗したことがある 38.4 36.0 54.9 57.4 63.8 60.8 38.2 43.9 28.6 40.0 58.1 68.8 64.0 72.7 61.3 54.5
47.6 42.8 65.9 67.0 68.4 69.5 46.1 55.6 41.7 64.3 71.0 77.8 65.3 69.2 61.7 81.8
59.7 59.4 72.3 74.0 71.4 81.7 46.9 58.6 62.5 44.4 81.8 98.0 84.8 95.6 77.9 86.0
学校の授業をさぼったことがある     7.9 9.0 28.3 31.7 81.6 76.6     35.5 31.3 60.0 45.5 56.0 63.6
    12.5 10.7 35.2 37.9 82.0 86.9     46.8 63.0 75.5 46.2 59.8 81.8
    19.8 14.7 47.4 52.4 85.0 85.7     74.4 85.7 80.8 86.7 71.0 69.8
タバコを吸ったことがある     15.0 5.6 29.2 18.2 36.8 11.9     58.1 56.3 68.0 54.5 94.7 81.8
    24.4 11.3 37.0 23.2 43.8 19.6     61.3 63.0 77.6 50.0 96.3 95.5
    30.6 19.8 54.2 39.6 35.4 34.3     84.7 83.7 92.0 73.3 95.4 95.3
友達と酒を飲んだことがある     13.8 11.4 54.8 51.8 88.2 95.1     41.9 50.0 64.0 59.1 88.0 81.8
    19.3 17.2 56.6 54.4 93.3 93.5     50.0 40.7 79.6 65.4 86.9 90.9
    32.3 25.6 73.3 65.7 92.0 94.3     65.3 83.7 84.8 88.9 95.8 93.0
友達と深夜まで遊び回ったことがある 23.7 14.5 17.3 8.9 53.0 36.6 81.6 70.9 0 0 54.8 37.5 84.0 50.0 93.3 100.0
32.0 18.1 23.2 15.0 57.5 43.1 85.4 78.4 66.7 42.9 72.6 70.4 87.8 73.1 96.3 100.0
44.6 29.5 35.7 27.5 72.8 61.5 87.6 88.6 62.5 55.6 85.2 91.8 96.8 91.1 97.3 95.3
親にだまって外泊をしたことがある     3.2 1.7 13.0 9.2 27.6 25.4     32.3 18.8 72.0 13.6 68.0 63.6
    5.5 2.8 19.9 10.5 40.4 28.8     45.2 51.9 63.3 30.8 81.3 90.9
    14.9 6.6 36.1 18.6 54.0 48.6     68.8 79.6 73.6 64.4 92.0 86.0

表3-4-3-6 自律スケールと性格等  <CSVデータ>

  自律スケール 一般少年 非行少年
小学生 中学生 高校生 大学生 小学生 中学生 高校生 有職・無職
男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子
したいことは親が反対してもやる     40.3 40.8 57.5 54.3 61.8 45.1     16.1 50.0 36.0 50.0 48.0 54.5
    47.6 43.5 61.7 58.6 56.2 49.7     45.2 44.4 38.8 42.3 57.9 63.6
    55.7 59.0 72.8 64.5 67.3 57.1     70.5 75.5 60.0 80.0 76.0 90.7
いつも疲れた感じがしている     49.9 51.5 57.3 60.2 46.1 34.0     35.5 31.3 44.0 31.8 42.7 54.5
    59.6 58.3 62.0 66.9 50.6 50.3     43.5 44.4 46.9 50.0 41.1 45.5
    66.7 71.4 72.4 76.2 53.1 47.1     57.4 61.2 60.0 66.7 46.6 53.5
流行の服や髪型が気になる     33.7 56.8 44.5 71.0 30.3 63.5     48.4 68.8 76.0 77.3 57.3 54.5
    41.1 69.0 53.0 73.0 41.6 65.4     59.7 81.5 69.4 84.6 72.9 68.2
    43.1 68.1 58.4 75.6 45.1 72.9     67.6 81.6 76.8 93.3 66.8 83.7
頭にきた時は、自分をおさえられないことが多い     28.7 21.7 23.6 18.6 25.0 11.9     32.3 25.0 36.0 31.8 18.7 45.5
    30.0 28.7 22.8 22.6 24.7 16.3     35.5 44.4 18.4 30.8 29.9 40.9
    40.7 38.5 31.1 30.2 22.1 18.6     52.3 46.9 46.4 51.1 42.4 41.9
友達と議論するのはうっとうしい     28.7 30.2 31.5 32.2 26.3 22.1     29.0 25.0 28.0 27.3 28.0 45.5
    32.9 40.5 40.6 37.7 21.3 21.6     40.3 59.3 32.7 34.6 18.7 22.7
    47.5 41.0 44.0 43.2 26.5 25.7     54.5 53.1 40.8 42.2 38.2 51.2

次に,「親の金をだまって持ち出したことがある」から「親にだまって外泊したことがある」までの不良行為についても関連を調べたが,各項目毎に「時々ある」と「1〜2度ある」を合計して経験率を求めている。例外はあるが,大体において自律スケール「下」の群が「上」の群に比べて,それぞれの不良行為の経験率が高かった。一般少年でもこの傾向が見られるが,非行少年ではさらに経験率の差が大きくなっている。

この他の不良行為では,例えば「友達とゲームセンターで遊んだことがある」については,一般少年の男女小・中学生と非行少年の男女小学生と男子中学生で「下」の方が経験率が高いという結果が出たが,学職が部分的なのでここでは省略した。また,非行行為は一般少年の経験率が全体に低いため差が出なかったが,「道に置いてある他人の自転車やオートバイを乗り回した」については,一般少年の男子中・高校生と非行少年の男女中学生,女子高校生,男子有職・無職少年で「下」の方が経験率が高いという結果であった。今注目されている「覚せい剤やシンナーなどの薬物を使った」では一般少年は差が見られなかったが,非行少年では男女中学生,女子高校生,男子有職・無職少年で「下」の群が経験率が高いという傾向が見られた。しかし,女子有職・無職少年では3群とも5割以上と薬物の経験率が高く逆に差が無かった。

このように,基本的生活習慣が獲得されてない群の方が成績が悪く,不良行為等の経験率が高いという傾向が得られた。これは,一般少年でもいえるが,非行少年の方が差が明確であった。


(3) 自律スケールと性格等

自律スケールと性格等の項目との関連は,表3-4-3-6に示している。性格等の項目では差が見られないものが多かったが,差が出た学職が比較的多いものを5項目表示した。

「したいことは親が反対してもやる」と「いつも疲れた感じがしている」では,例外もあるが,自律スケールが「下」の群の方が「上」の群よりそうである割合が高く,一般少年でもこの傾向はあるが,非行少年で3群の差が大きく見られた。「流行の服や髪型が気になる」,「頭にきた時は自分でおさえられないことが多い」,「友達と議論するのはうっとうしい」は逆の傾向が出た学職もあるが,同様に「上」の群より「下」の群の方がそうである割合が高いという傾向であった。

以上のように,基本的生活習慣が獲得されてない群では,親の反対があってもしたいことをやり,頭にきた時は抑制がきかないことが多いというように行動化しやすい半面,いつも疲れた感じを持っており,友達との議論というような深い関わりは避け,流行の服や髪型といった表面的な部分で関わりを持とうとする傾向が見られた。


〈引用・参考文献〉

星野周弘 1983 社会に背を向けた子どもたち 東京法令出版




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