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第3部 調査結果の分析

第8章 地域社会と少年非行の関連

科学警察研究所主任研究官 小林 寿一


要旨


地域社会の特性と少年非行の関連を分析,検討した。主要な結果は以下のとおりである。

1) 一般少年と警察に補導された少年を比較すると,警察に補導された少年の方が地域活動への参加が少ないが,鑑別所に収容された少年については,警察に補導された少年よりも地域活動への参加が多く,場合によっては,一般少年よりも地域活動への参加が多い傾向も散見された。

2) 一般少年を警察に補導された少年や鑑別所に収容された少年と比較すると,非行深度の進んだ者ほど,ポルノ雑誌や酒・タバコを地域内で買うことが容易であると考えている。

3) 一般少年の自己報告非行との関連をみると,顕著な傾向ではないが,概ね,自己報告非行の多い者ほど,地域活動に多く参加している。

4) 一般少年で自己報告非行の多い者ほど,地域内でポルノ雑誌や酒・タバコを入手するのが容易であるととらえている。また,女子の小学生と中学生では,自己報告非行の多い者ほど,地域の大人が子ども同士のけんかを止めに入る可能性を低くみている。

5) 多変量解析(多重レベル分析)の結果として,青少年に対する住民の働きかけが多い地域で女子の非行(不良行為と犯罪行為)が少ないことと,ポルノ雑誌や酒・タバコが入手しやすい地域で男女中学生の不良行為が多いことが示された。


1 はじめに

近年,欧米では,生態学的モデルを少年非行に応用する実証的研究が復活しており,地域内の非行発生のプロセスが再検討されている1)。我が国では,地域社会の特性と少年非行との関連について,実証的な検討が多いとはいえないが,地域内の非行防止活動は比較的盛んに行われており,暗黙のうちに地域社会の状況が少年非行に少なからぬ影響を及ぼすことを前提にしている。

我が国における地域内の非行防止活動は,主に社会参加活動と環境浄化活動に大別される。社会参加活動については,スポーツ活動,自然体験活動やボランティア活動に青少年が参加することで,遵法的な規範意識や人に対する思いやりを持つようになることが期待されており,結果的に,非行などの問題行動に走ることが予防できると考えられている。一方,環境浄化活動については,ポルノ雑誌を売る自動販売機を撤去したり,自動販売機による酒やタバコの販売を規制することで,青少年の非行が誘発されることを予防できると考えられている。これらの前提は極めて常識的なものであるが,必ずしも十分に実証されているわけではなく,その是非を本稿で検討したいと思う。さらに,少年非行の発生に関わる地域特性としては,地域住民の連帯感の低下が指摘され,他人の子どもに対して無関心な人が増加することで,青少年の非行が促進されていると考えられている。この考え方も常識的ではあるが,検証されてはおらず,本稿で実証的な検討を行いたい。

なお,本稿では,紙幅の都合もあり,分析を小学生,中学生,高校生に関して行い,大学生や有職者無職者等の分析は割愛する。


2 一般少年と非行少年の比較

まず最初に,一般少年と非行少年の回答を比較することから,非行発生に関連する地域社会の特性を検討したい。


(1) 地域活動への参加

表3-8-1-1と表3-8-1-2は,6種類の地域活動に対する参加状況を少年の調査対象者に尋ねた結果で,表3-8-1-1は男子の結果,表3-8-1-2は女子の結果を示してある2)。いずれの表も,小中高別に,一般少年と非行少年の結果を示してあり,中学生と高校生については,非行少年を「補導少年」と「鑑別少年」に分けて結果が示してある(小学生の非行少年は補導少年のみである)。6種類の地域活動のいずれも,1回でも参加したことのある者(「1〜2回ある」と「何回もある」の合計)の%を上段に示してあり,さらに参考のために,「何回もある」と回答した者の%を下段の括弧内に示してある。

表3-8-1-1の男子の結果からみていく。小学生の一般少年と補導少年との比較では,6種類の地域活動すべてに関して,参加したことのある者の%が一般少年の方で高くなっている。特に,「公園の掃除や,花を植えるなど地域をきれいにする活動」と「お年寄りの家庭や施設でのボランティア活動」を除いた4種類の地域活動では,一般少年と補導少年の参加者率が11ポイント以上異なっている。中学生では,6種類の地域活動すべてについて,補導少年の参加者率が一般少年や鑑別少年の参加者率よりも7ポイント以上低くなっている。なお,一般少年と鑑別少年との比較では,活動の種類によって結果が異なっている。「柔道・剣道・野球・サッカーなどのスポーツ活動」と「竹馬・たこ・わら細工などを自分で作る活動」については,鑑別少年の活動参加者率が5ポイント以上高く,逆に,「公園の掃除や,花を植えるなど地域をきれいにする活動」については,一般少年の方が10ポイント高くなっている(その他の活動については,両者に差はみられない)。また,高校生においても,中学生と同様の傾向がみられ,6種類の地域活動すべてについて,補導少年の参加者率が一般少年や鑑別少年の参加者率よりも8ポイント以上低くなっている(なお,「柔道・剣道・野球・サッカーなどのスポーツ活動」については,一般少年と補導少年に差はみられない)。一般少年と鑑別少年との比較では,「お年寄りの家庭や施設でのボランティア活動」以外の地域活動において,鑑別少年の参加者率が5ポイント以上高くなっている。


表3-8-1-1 地域活動への参加:一般少年と非行少年との比較(男子)  <CSVデータ>

(%)
身分 小学生 中学生 高校生
一般 補導 一般 補導 鑑別所 一般 補導 鑑別所
活動 柔道・剣道・野球・サッカーなどのスポーツ活動 57.9 43.1 52.1 44.8 64.3 38.9 38.9 52.4
(40.1) (27.5) (30.2) (29.4) (41.4) (20.5) (21.1) (30.5)
お祭りや盆踊りなどの行事 82.0 70.6 71.9 60.2 74.3 63.3 48.4 72.4
(59.9) (35.3) (37.7) (33.3) (37,1) (25.6) (15.8) (37.1)
ハイキング,田植え,いも掘りなど,自然に親しむ活動 53.6 35.3 38.1 26.4 37.1 23.9 15.8 28.6
(18.2) (9.8) (12.8) (7.0) (10.0) (8.7) (3.2) (7.6)
公園の掃除や,花を植えるなど地域をきれいにする活動 45.9 39.2 39.6 20.9 30.0 25.1 16.8 31.4
(17.3) (11.8) (11.1) (8.0) (7.1) (7.8) (3.2) (6.7)
竹馬・たこ・わら細工などを自分で作る活動 32.0 19.6 20.5 11.9 25.7 11.6 7.4 16.2
(6.7) (3.9) (5.0) (1.5) (4.3) (4.3) (2.1) (5.7)
お年寄りの家庭や施設でのボランティア活動 19.4 13.7 22.6 11.9 21.4 15.6 3.2 13.3
(5.5) (3.9) (5.7) (3.5) (4.3) (4.7) (-) (3.8)
実人員 1,337 51 1,528 201 70 1,739 95 105

表3-8-1-2 地域活動への参加:一般少年と非行少年との比較(女子)  <CSVデータ>

(%)
身分 小学生 中学生 高校生
一般 補導 一般 補導 鑑別所 一般 補導 鑑別所
活動 柔道・剣道・野球・サッカーなどのスポーツ活動 31.2 35.7 27.9 14.5 36.8 17.2 20.3 21.1
(17.1) (14.3) (12.6) (7.9) (15.8) (8.1) (6.8) (10.5)
お祭りや盆踊りなどの行事 87.8 82.1 78.5 69.7 57.9 69.1 52.7 84.2
(65.4) (39.3) (43.5) (36.8) (36.8) (28.1) (23.0) (52.6)
ハイキング,田植え,いも掘りなど,自然に親しむ活動 47.1 42.9 34.4 10.5 31.6 20.0 20.3 26.3
(16.4) (10.7) (10.0) (5.3) (-) (5.7) (4.1) (5.3)
公園の掃除や,花を植えるなど地域をきれいにする活動 49.9 35.7 42.4 23.7 26.3 24.4 23.0 31.6
(20.2) (14.3) (12.5) (6.6) (5.3) (5.1) (4.1) (15.8)
竹馬・たこ・わら細工などを自分で作る活動 26.3 17.9 16.0 9.2 15.8 8.3 8.1 31.6
(4.7) (3.6) (3.1) (2.6) (5.3) (2.2) (2.7) (10.5)
お年寄りの家庭や施設でのボランティア活動 24.4 7.1 27.2 7.9 26.3 26.5 24.3 26.3
(6.9) (3.6) (5.6) (1.3) (10.5) (6.8) (6.8) (5.3)
実人員 1,225 28 1,495 76 19 1,516 74 19

次に,表3-8-1-2の女子の結果をみると,男子と類似した傾向が見出せる。小学生の一般少年と補導少年との比較では,「柔道・剣道・野球・サッカーなどのスポーツ活動」を除いた5種類の地域活動において,一般少年の参加者率の方が高くなっている。特に,「公園の掃除や,花を植えるなど地域をきれいにする活動」と「お年寄りの家庭や施設でのボランティア活動」については,一般少年と補導少年の参加者率の差が14ポイント以上となっている。中学生では,「お祭りや盆踊りなどの行事」以外の地域活動において,補導少年の参加者率が一般少年や鑑別少年の参加者率よりも低く,特に「柔道・剣道・野球・サッカーなどのスポーツ活動」「ハイキング,田植え,いも掘りなど,自然に親しむ活動」「お年寄りの家庭や施設でのボランティア活動」では,補導少年の参加者率が一般少年や鑑別少年の参加者率よりも13ポイント以上低くなっている。なお,一般少年と鑑別少年との比較では,活動の種類によって結果が異なっている。「柔道・剣道・野球・サッカーなどのスポーツ活動」については,鑑別少年の参加者率が9ポイント高く,逆に,「お祭りや盆踊りなどの行事」と「公園の掃除や,花を植えるなど地域をきれいにする活動」については,一般少年の活動参加者率の方が16ポイント以上高くなっている(その他の活動については,両者に差はみられない)。一方,高校生においては,「お祭りや盆踊りなどの行事」の参加者率が,補導少年で最も低く,一般少年や鑑別少年との差が16ポイント以上となっている。その他の地域活動については,一般少年と補導少年の参加者率に違いはみられず,鑑別少年の参加者率が最も高くなっている。特に,「竹馬・たこ・わら細工などを自分で作る活動」では,鑑別少年の参加率は一般少年や補導少年のそれよりも23ポイント高くなっている。

以上,地域活動への参加に関して,一般少年と非行少年を比較した結果をまとめると,概ね,補導少年は一般少年よりも地域活動に対する参加が少ないことが明らかとなった。ところが,補導少年よりも概ね非行深度の進んだ鑑別少年については,補導少年よりも地域活動への参加が多く,活動の種類によっては一般少年よりも地域活動への参加が多いことが示された。したがって,地域活動に対する参加と非行深度との関連が単純でないことがうかがえる。


(2) 地域社会の状況

表3-8-2-1と表3-8-2-2は,住んでいる地域の状況を少年の調査対象者に尋ねた結果で,表3-8-2-1は男子の結果,表3-8-2-2は女子の結果を示してある。いずれの表も,小中高別に,一般少年と非行少年の結果を示してあり,さらに中学生と高校生については,非行少年を補導少年と鑑別少年に分けて結果が示してある。表3-8-2-1と表3-8-2-2の上から3項目は,地域の大人がどの程度,地域内の青少年の行動に関心を持っているかを尋ねたもので,下の2項目は,ポルノ雑誌や酒・タバコなど青少年の健全な発達を阻害するとされるものがどの程度地域で入手が容易かを尋ねた結果である。いずれの項目も,「あてはまる」あるいは「だいたいあてはまる」と回答した者の%を上段に示し,「あてはまる」と回答した者の%を参考のために下段の括弧内に示してある。


表3-8-2-1 地域社会の状況:一般少年と非行少年との比較(男子)  <CSVデータ>

(%)
身分 小学生 中学生 高校生
一般 補導 一般 補導 鑑別所 一般 補導 鑑別所
活動 近所の大人は,道で会ったら,私に声をかけてくれる 76.9 52.9 69.6 46.3 75.7 65.7 41.1 66.7
(32.5) (7.8) (29.3) (21.4) (47.1) (25.8) (17.9) (37.1)
子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は注意をしてやめさせるだろう 75.9 74.5 71.8 65.7 88.6 71.5 58.9 84.8
(32.7) (29.4) (30.6) (28.4) (62.9) (30.1) (20.0) (57.1)
子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は学校や警察に連絡するだろう 44.1 58.8 49.0 66.2 84.3 52.7 68.4 70.5
(13.3) (33.3) (17.0) (30.3) (47.1) (18.3) (25.3) (37.1)
地域の中で,ポルノ雑誌やアダルトビデオを買うのは簡単だ 5.5 27.5 24.1 41.8 47.1 52.3 57.9 61.9
(2.9) (9.8) (10.7) (18.4) (25.7) (29.9) (30.5) (43.8)
地域の中で,酒やタバコを買うのは簡単だ 36.1 37.3 42.9 73.1 91.4 67.5 85.3 88.6
(21.7) (11.8) (27.3) (50.2) (72.9) (46.5) (57.9) (75.2)
実人員 1,337 51 1,528 201 70 1,739 95 105

表3-8-2-2 地域社会の状況:一般少年と非行少年との比較(女子)  <CSVデータ>

(%)
身分 小学生 中学生 高校生
一般 補導 一般 補導 鑑別所 一般 補導 鑑別所
活動 近所の大人は,道で会ったら,私に声をかけてくれる 89.0 57.1 80.7 69.7 78.9 76.3 73.0 68.4
(46.5) (17.9) (37.8) (25.0) (42.1) (32.6) (32.4) (31.6)
子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は注意をしてやめさせるだろう 85.4 85.7 82.6 76.3 63.2 79.6 70.3 89.5
(37.1) (32.1) (38.7) (36.8) (47.4) (34.6) (21.6) (47.4)
子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は学校や警察に連絡するだろう 59.2 78.6 64.3 67.1 78.9 62.5 74.3 84.2
(18.5) (32.1) (21.9) (26.3) (52.6) (20.3) (27.0) (47.4)
地域の中で,ポルノ雑誌やアダルトビデオを買うのは簡単だ 4.9 14.3 18.5 31.6 57.9 29.7 33.8 42.1
(2.4) (-) (6.8) (11.8) (26.3) (12.1) (13.5) (31.6)
地域の中で,酒やタバコを買うのは簡単だ 31.3 42.9 47.3 71.1 100.0 68.7 73.0 84.2
(15.3) (3.6) (27.0) (46.1) (84.2) (42.3) (39.2) (73.7)
実人員 1,225 28 1,495 76 19 1,516 74 19

まず,表3-8-2-1の男子の結果をみてみる。小学生では,一般少年は補導少年よりも,「近所の大人は,道で会ったら,私に声をかけてくれる」を肯定する者が24ポイント多く,逆に「子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は学校や警察に連絡するだろう」あるいは「地域の中で,ポルノ雑誌やアダルトビデオを買うのは簡単だ」を肯定する者が15〜22ポイント少なくなっている(その他の項目では両者に差がみられない)。中学生では,「近所の大人は,道で会ったら,私に声をかけてくれる」あるいは「子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は注意をしてやめさせるだろう」を肯定する者が,補導少年で最も少なく,鑑別少年で最も多くなっている(補導少年と鑑別少年の肯定率の差が23〜29ポイント)。残りの3項目に関しては,一般少年で肯定する者が最も少なく,鑑別少年で最も多くなっている(一般少年と鑑別少年の肯定率の差が23〜49ポイント)。また高校生でも,中学生と同様の結果が示されている。「近所の大人は,道で会ったら,私に声をかけてくれる」あるいは「子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は注意をしてやめさせるだろう」を肯定する者が,補導少年で最も少なく,鑑別少年で最も多くなっており(補導少年と鑑別少年の肯定率の差が26ポイント),残りの3項目に関しては,一般少年で肯定する者が最も少なく,鑑別少年で最も多くなっている(一般少年と鑑別少年の肯定率の差が10〜21ポイント)。

次に,表3-8-2-2の女子の結果をみると,男子と概ね類似した傾向が見出せる。小学生では,一般少年は補導少年よりも,「近所の大人は,道で会ったら,私に声をかけてくれる」を肯定する者が32ポイント多く,逆に「子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は学校や警察に連絡するだろう」「地域の中で,ポルノ雑誌やアダルトビデオを買うのは簡単だ」「地域の中で,酒やタバコを買うのは簡単だ」を肯定する者が9〜19ポイント少なくなっている(その他の項目では両者に差がみられない)。中学生では,「近所の大人は,道で会ったら,私に声をかけてくれる」を肯定する者が,補導少年で最も少なく(一般少年あるいは鑑別少年との肯定率の差が9〜11ポイント),「子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は注意をしてやめさせるだろう」を肯定する者が,一般少年で最も多く,鑑別少年で最も少なくなっている(一般少年と鑑別少年の差が19ポイント)。残りの3項目に関しては,一般少年で肯定する者が最も少なく,鑑別少年で最も多くなっている(一般少年と鑑別少年の肯定率の差が15〜53ポイント)。また高校生では,「近所の大人は,道で会ったら,私に声をかけてくれる」を肯定する者が一般少年で最も多く,鑑別少年で最も少なく(一般少年と鑑別少年の肯定率の差が8ポイント),「子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は注意をしてやめさせるだろう」を肯定する者が,補導少年で最も少なく,鑑別少年で最も多くなっている(補導少年と鑑別少年の肯定率の差が19ポイント)。残りの3項目に関しては,一般少年で肯定する者が最も少なく,鑑別少年で最:も多くなっている(一般少年と鑑別少年の肯定率の差が12〜22ポイント)。

以上,少年の目からみた地域社会の状況について,一般少年と非行少年を比較した結果をまとめると,性別,小中高別に関わりなく,非行深度の進んだ者ほど,ポルノ雑誌や酒・タバコを地域内で買うのが簡単だと答えており,一貫した傾向が示されている。このことは,青少年の健全な発達を阻害するとされるものを十分に規制できない地域で,青少年の非行化が促進されることを意味していると考えられる。一方,「子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は学校や警察に連絡するだろう」という見方については,性別,小中高別に関わりなく,非行進度の進んだ者ほど,肯定する傾向がみられ,実際に学校や警察に連絡された経験が回答に反映していると考えられる。また,「近所の大人は,道で会ったら,私に声をかけてくれる」と「子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの入は注意をしてやめさせるだろう」については,概ね,補導少年よりも一般少年で肯定する者が多く,青少年に対する大人の主体的な働きかけが非行を抑止しているとも考えうる。しかしながら,鑑別少年の結果をみるとこれらの項目を肯定する者が一般少年よりも多い結果が散見され,青少年に対する住民の働きかけと非行深度との関連が単純でないことを示唆している。


3 一般少年の自己報告非行との関連

一般少年と非行少年との比較を先に行ったが,一般少年の中にも,非行などの問題行動を行ったことのある者が含まれている(非行を行った少年のうち,警察に補導されたり,鑑別所に収容される者は一部にすぎない)。また,一般少年は青少年の代表サンプルに近いと考えられ,一般少年に関して,地域特性と非行との関連をみることで,社会一般の状況をより正確に把握できると考えられる。そこで今度は,一般少年の自己報告非行と,地域活動への参加あるいは地域社会の状況との関連をみることにしたい。


(1) 地域活動への参加

表3-8-3は,「地域活動への参加」と自己報告非行との関連(ピアソンの相関係数)を求めた結果である。「地域活動への参加」の各項目とも,分析対象者を性別と小中高別で分けて結果が示してあり,上段に不良行為との相関係数の値を,下段の括弧内に犯罪行為との相関係数の値を示してある(小学生は不良行為のみである)。

相関係数を求める手続きについて述べると,まず,「地域活動への参加」の各調査項目の回答選択肢については,「ない」=1,「1〜2回」=2,「何回もある」=3,の要領で得点化した。次に,自己報告非行については,小学生の場合は,調査票のElの6行為(ア,イ,オ,カ,キ,ク)の回答選択肢を,「ときどきある」=3,「1〜2回ある」=2,.「ない」=1,の要領で得点化して,6項目の合計得点を不良行為のスコアとした。また,中学生と高校生の場合は,調査票のE1の11行為(ア,イ,カ,キ,ク,ケ,コ,サ,シ,ス,セ)の回答選択肢を「時々ある」=3,「1〜2度ある」=2,「ない」=1,の要領で得点化し,11行為の合計得点を不良行為のスコアとし,調査票のE2の6行為(ウ,エ,オ,カ,キ,ケ)の回答選択肢を,「ある」=1,「ない」=0,の要領で得点化し,6行為の合計得点を犯罪行為のスコアとした。そして,各地域活動に対する参加のスコアと,不良行為あるいは犯罪行為のスコアとの相関係数を算出した。


表3-8-3 地域活動への参加:一般少年の自己報告非行との関連(ピアソンの相関係数)  <CSVデータ>

項目 男子 女子
小学生 中学生 高校生 小学生 中学生 高校生
柔道・剣道・野球・サッカーなどのスポーツ活動 .115** .118** .111** .043 .100** .036
  (.074*) (.092**)   (.090**) .061
お祭りや盆踊りなどの行事 .092* .083* .118** .076* .072* .138**
(.066) (.126**)   (.004) (.098**)  
ハイキング,田植え,いも掘りなど,自然に親しむ活動 .059 .016 .008 -.010 .003 .043
  (.030) (.034)   (.021) (.029)
公園の掃除や,花を植えるなど地域をきれいにする活動 -.003 -.032 .011 -.012 .041 .049
  (.008) (.055)   (-.015) (.079*)
竹馬・たこ・わら細工などを自分で作る活動 .079* .016 .029 .048 .063 .004
  (.089**) (.082**)   (.031) (.019)
お年寄りの家庭や施設でのボランティア活動 .083* .089** .032 .043 .105** .047
  (.081*) (.066*)   (.055) (.048)
実人員 1,337 1,528 1,739 1,225 1,495 1,516

注) **P<.001,*P<.01


表3-8-3の結果のうち,統計的に有意な関連のみられるところを指摘していく。まず,男子の結果からみると,小中高いずれも,6種類のうち,同じ4種類の地域活動で統計的に有意な正の相関係数が得られた。すなわち,不良行為あるいは犯罪行為の多い者ほど,「柔道・剣道・野球・サッカーなどのスポーツ活動」「お祭りや盆踊りなどの行事」「竹馬・たこ・わら細工などを自分で作る活動」「お年寄りの家庭や施設でのボランティア活動」に対する参加が多くなっている(中高のの犯罪行為に関しては,有意な関連がみられない部分もある)。一方,女子では,小中高一貫した結果として,不良行為の多い者ほど,「お祭りや盆踊りなどの行事」に対する参加が多い傾向が見いだされる。さらに,女子中学生では,不良行為の多い者ほど,「柔道・剣道・野球・サッカーなどのスポーツ活動」や「お年寄りの家庭や施設でのボランティア活動」に対する参加が多く,犯罪行為の多い者ほど,「柔道・剣道・野球・サッカーなどのスポーツ活動」に対する参加が多くな.っている。また,女子高校生では,犯罪行為の多い者ほど,「お祭りや盆踊りなどの行事」や「公園の掃除や,花を植えるなど地域をきれいにする活動」に対する参加が多いことが示されている。

以上,統計的に有意な相関係数の結果をまとめると,顕著な傾向ではないが,概ね,自己報告非行の多い者ほど,地域活動に対する参加が多い傾向が散見された。したがって,地域活動に対する参加が非行を抑止することを示唆する結果は得られなかったと考えられる。


(2) 地域社会の状況

次に,表3-8-4は,少年の目から見た「地域社会の状況」と自己報告非行との関連(ピアソンの相関係数)を求めた結果である。表3-8-3と同様に,「地域社会の状況」の各項目とも,分析対象者を性別と小中高別で分けて結果が示してあり,上段に不良行為との相関係数の値を,下段の括弧内に犯罪行為との相関係数の値を示してある。


表3-8-4 地域社会の状況:一般少年の自己報告非行との関連(ピアソンの相関係数)  <CSVデータ>

項目 男子 女子
小学生 中学生 高校生 小学生 中学生 高校生
近所の大人は,道で会ったら,私に声をかけてくれる .030 .031 .074* -.034 -.029 .033
  (.043) (.024)   (-.013) (-.035)
子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は注意をしてやめさせるだろう -.053 -.057 -.002 -.083* -.103** .003
  (-.012) (-.010)   (-.128**) (-.024)
子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は学校や警察に連絡するだろう -.040 .009 .019 -.038 -.018 -.001
  (-.013) (.009)   (-.047) (-.049)
地域の中で,ポルノ雑誌やアダルトビデオを買うのは簡単だ .205** .412** .380** .126** .253** .214**
  (.249**) (.210**)   (.178**) (.166**)
地域の中で,酒やタバコを買うのは簡単だ .193** .348** .393** .223** .273** .276**
  (.231**) (.224**)   (.140**) (.179**)
実人員 1,337 1,528 1,739 1,225 1,495 1,516

相関係数を求める手続きについて述べると,まず,「地域社会の状況」の各調査項目の回答選択肢については,「あてはまる」=3,「だいたいあてはまる」=2,「あてはまらない」=1,の要領で得点化した。自己報告非行の得点化の要領は先述の表3-8-3と同様であり,「地域社会の状況」の各項目のスコアと不良行為あるいは犯罪行為のスコアとの相関係数を算出した。

表3-8-4の結果のうち,統計的に有意な関連のみられるところを指摘していく。まず,男子の結果からみていくと,小中高でかなり一貫した傾向がみられる。すなわち,小中高いずれも,不良行為や犯罪行為の多い者ほど,「地域の中で,ポルノ雑誌やアダルトビデオを買うのは簡単だ」あるいは「地域の中で,酒やタバコを買うのは簡単だ」を肯定する傾向がみられる。そのうち,中高生の不良行為では相関係数が.35以上となっており,小さいとはいえない正の関連が示されている。さらに,男子の高校生では,顕著な傾向ではないが,不良行為の多い者ほど,「近所の大人は,道で会ったら,私に声をかけてくれる」という者が多い傾向がみられる。一方,女子でも男子と同様の結果がみられ,小中高いずれも,不良行為や犯罪行為の多い者ほど,「地域の中で,ポルノ雑誌やアダルトビデオを買うのは簡単だ」あるいは「地域の中で,酒やタバコを買うのは簡単だ」を肯定する傾向がみられる。男子の時よりも小さい相関係数が示されているが,不良行為との相関係数は概ね,20を超えており,実質的な正の関連が示されている。さらに,女子の小学生と中学生では,不良行為や犯罪行為の多い者ほど,「子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は注意をしてやめさせるだろう」とみていることが示されている。

以上,統計的に有意な相関係数の結果をまとめると,男女の小中高に共通して,自己報告非行の多い者ほど,地域内でポルノ雑誌や酒・タバコを入手することが容易であると答えており,地域内での有害環境との接触が青少年の非行化を促進させることを意味している。さらに,女子の小学生と中学生では,自己報告非行の多い者ほど,地域の大人が子ども同士のけんかに止めに入る可能性を低くみており,地域住民の連帯感の低下と少年非行との関連性が示唆されている。


4 多変量解析による検討

本稿の最後の分析として,相関係数でみられた,地域社会に関する少年の認知と少年の自己報告非行との関連が単に少年の個人的な主観のみを反映したものでなく,地域社会の客観的状況をある程度反映したものであることを検証するために,多変量解析による検討を行う。近年,欧米では,個人レベルと地域レベルなど,異なった水準の説明変数が分析可能な統計手法,すなわち,多重レベル分析の手法が開発され,地域社会における非行発生の調査研究に利用されている3)。我が国では,多重レベル分析を非行研究に用いた例がなく,本稿での分析が初めてのものとなる。なお,本稿の分析では,学校ごとに少年の調査対象者の回答を平均して地域レベルの変数を作成するが,高校の場合は小学校や中学校と比べて,公立校でも通学範囲が広く,その範囲を一つの地域とみなすことがふさわしくないため,小学生と中学生に限定して,多重レベル分析を行うことにする。今回の調査対象の小学校と中学校はすべて公立校で校区の範囲も限られており,その校区を一つの地域としてとらえることは適切であると考えられる。


(1) 分析方法

先述したように,多重レベル分析では,個人レベルと地域レベルなど,複数の説明水準の変数を予測変数として,個人レベルの目的変数を説明することを行うが,本稿の多重レベル分析で用いられた変数は以下の11変数である。


[個人レベルの変数]

個人レベルの変数は,被説明変数である2変数(以下の1.から2.)と,独立変数(説明変数あるいは統制変数)としての6変数(以下の3.から8.)であり,合計8変数である。このうち,3.〜5.は,地域社会の特性とは関係のない変数であるが,青少年の非行化と関連すると考えられる要因であり,これらの影響を排除した上で,地域社会の要因が非行化と関連を持つかどうかを検討したい。


1. 不良行為

前節で示したように,小学生では6行為(調査票のE1のア,イ,オ,カ,キ,ク)の頻度の合計得点を,中学生では11行為(調査票のE1のア,イ,カ,キ,ク,ケ,コ,サ,シ,ス,セ)の頻度の合計得点を求めて,この変数の値とした。


2. 犯罪行為

前節で示したように,中学生では6行為(調査票のE2のウ,エ,オ,カ,キ,ケ)の頻度の合計得点を求めて,この変数の値とした。


3. 学年

小学生については,小学5年生=1,小学6年生=2のように得点化し,中学生については,中学1年生=1,中学2年生=2,中学3年生=3のように得点化して,この変数の得点とした。


4. 親との結びつき

親子関係がどの程度良好であるかの指標として,次の2項目(小学生は,調査票のA7のア,イで,中学生は調査票のA6のア,イ)からなる合成尺度を作成した。1)父のような人でありたい(お父さんのような人になりたい)と思う,2)母のような人でありたい(お母さんのような人になりたい)と思う(括弧内は小学生に対する調査項目の表現)。回答選択肢については,「時々ある」=1,「ほとんどない」=0の要領で得点化し,2項目の合計得点をこの変数の値とした。


5. 学業成績

学校適応の指標として,学業成績に関する自己報告を得点化した。質問の表現は「成績はクラスの中で良い(良かった)方ですか」であり,回答選択肢については,「できる方」=3,「ふつう」=2,「できない方」=1,のように得点化して,この変数の値とした。


6. 地域活動への参加

先述の6種類の地域活動(表3-8-3を参照)に対する参加頻度を合計した。回答選択肢の得点化の要領は相関係数を算出した時と同じであり,6種類の地域活動の合計得点をこの変数の値とした。


7. 青少年に対する住民の働きかけ

先述の「地域社会の状況」(表3-8-4を参照)の調査項目の中から,「子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は注意をしてやめさせるだろう」を「青少年に対する住民の働きかけ」の指標に選定した。回答選択肢の得点化の要領は相関係数を算出した時と同じであり,その得点をこの変数の値とした。


8. 有害雑誌や酒等の入手容易度

先述の「地域社会の状況」(表3-8-4を参照)の項目の中から,「地域の中で,ポルノ雑誌やアダルトビデオを買うのは簡単だ」と「地域の中で,酒やタバコを買うのは簡単だ」から「有害雑誌や酒等の入手容易度」の尺度を作成した。回答選択肢の得点化の要領は相関係数を算出した時と同じであり,2項目の合計得点をこの変数の値とした。


[学校/地域レベルの変数]

先述したように,学校/地域レベルの変数は,小学校,中学校それぞれ30校ごとに,調査対象者の回答の平均値を算出したものである。


9. 地域活動への参加

これは,先述した個人レベルの独立変数である「地域活動への参加」を学校単位で平均したものである。


10. 青少年に対する住民の働きかけ

これは,先述した個人レベルの独立変数である「青少年に対する住民の働きかけ」を学校単位で平均したものである。


11. 有害雑誌や酒等の入手容易度

これは,先述した個人レベルの独立変数である「有害雑誌や酒等の入手容易度」を学校単位で平均したものである。

先述したように,本稿では,地域社会のある程度客観的な状況が少年非行の発生に寄与しているかどうかを検証するために,多重レベル分析を行ったが,ソフトウェアとしては,HLMバージョン4.04を使用した4)。なお,多重レベル分析に際して,分析に用いる11変数は全て,平均0,標準偏差1に標準化して用いることを行い,説明変数相互の相対的な比較を可能にした5)。さらに,個人レベルの「地域活動への参加」「青少年に対する住民の働きかけ」「有害雑誌や酒等の入手容易度」の3変数は,所属する学校の平均値からの偏差に変換して分析に用いることにした。


(2) 分析結果

性別と小中別に多重レベル分析を行った結果は,表3-8-5のとおりである。まず,不良行為を目的変数とする分析結果をみてみると,個人レベルの変数に関しては,性別,小中別に関わらず,ほぼ同じ結果が見いだされる。すなわち,「青少年に対する住民の働きかけ」を除く5変数で,正負の等しい統計的に有意なHLM係数が得られた。これらは,不良行為の多い者ほど,学年が高く,親との結びつきが弱く,学業成績が悪く,さらに,同じ学校の他の生徒よりも,地域活動に対する参加が多く,地域でポルノ雑誌や酒・たばこを買うことが簡単であると考えていることを意味する。さらに,男子中学生においては,HLM係数の値が小さいが,個人レベルの「青少年に対する住民の働きかけ」が統計的に有意となっており,不良行為の多い者ほど,同じ学校の他の生徒よりも「子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は注意をしてやめさせるだろう」ととらえていないことが分かる。一方,学校/地域レベルの変数については,女子の小学生と中学生で「青少年に対する住民の働きかけ」のHLM係数が統計的に有意であり,負の関連から,不良行為の多い者ほど,「青少年に対する住民の働きかけ」の低い地域に住んでいることが分かる。さらに,男女の中学生で「有害雑誌や酒等の入手容易度」のHLM係数が統計的に有意であり,正の関連は,不良行為の多い者ほど,ポルノ雑誌や酒・タバコを買うのが容易な地域に住んでいることを意味している。


表3-8-5 多重レベル分析(HLM)の結果  <CSVデータ>

被説明変数→ 不良行為 犯罪行為
男子 女子 男子 女子
↓説明変数 小学生 中学生 小学生 中学生 中学生
個人レベル 学年 .172** .209** .178** .156** -.002 -.028
親との結びつき -.073* -.109** -.136** -.115** -.084** -.021
学業成績 -.194** -.164** -.167** -.204** -.141** -.132**
地域活動への参加 .173** .130** .130** .177** .107** .076*
青少年に対する住民の働きかけ -.032 -.056* -.045 -.042 -.012 -.102**
有害雑誌や酒等の入手容易度 .166** .379** .128** .239** .258** .160**
学校/地域レベル 地域活動への参加 -.007 .019 -.055 .061 .020 .046
青少年に対する住民の働きかけ .030 .017 -.092* -.113* .005 -.078*
有害雑誌や酒等の入手容易度 -.005 .113** -.060 .068* .021 .024
説明された分散の% 14.3 30.4 14.5 21.2 11.7 7.1

注) **P<.01, *P<.05


次に,犯罪行為を目的変数とする分析結果をみると,個人レベルの変数に関しては,中学生の男女ともに,「学業成績」「地域活動」「有害雑誌や酒等の入手容易度」の3変数で,正負の等しい統計的に有意なHLM係数が得られた。これらは,犯罪行為の多い者ほど,学業成績が悪く,同じ学校の他の生徒よりも,地域活動に対する参加が多く,地域でポルノ雑誌や酒・たばこを買うことが簡単であると考えていることを意味している。また,男子中学生では,「親との結びつき」が統計的に有意となっており,犯罪行為の多い者ほど,親との結びつきが弱いことを示唆している。さらに,女子中学生では,個人レベルの「青少年に対する住民の働きかけ」が統計的に有意となっており,犯罪行為の多い者ほど,同じ学校の他の生徒よりも「子どもがなぐりあいのけんかをしていたら,まわりの人は注意してやめさせるだろう」と考えていないことが分かる。一方,学校/地域レベルの変数については,女子中学生で「青少年に対する住民の働きかけ」のHLM係数が統計的に有意となり,負の関連は,犯罪行為の多い者ほど,「青少年に対する住民の働きかけ」の低い地域に住んでいることを示唆している。

以上の多重レベル分析の結果をまとめると,学年や親子関係や学業成績の影響を統制した上で,地域社会に関わる変数と自己報告非行との間で有意な関連が確認された。その場合,地域社会に関わる変数の関連を,個人レベルの変数(所属する学校の平均値からの偏差)の関連と学校/地域レベルの変数の関連とに分離して分析し,より客観的な地域指標である,学校/地域レベルの変数に有意な関連が見いだされた。すなわち,青少年に対する住民の働きかけが多い地域で女子の非行(不良行為と犯罪行為の両方)が少ないことと,ポルノ雑誌や酒・タバコが入手しやすい地域で男女の中学生の不良行為が多いことが明らかとなった。


5 まとめ

本稿では,地域社会の特性と少年非行との関連を検討し,興味深い知見が得られた。まず,顕著な傾向ではないが,非行の多い少年ほど,スポーツ活動やボランティア活動など地域活動に参加しており,地域活動への参加が非行を抑止することを示唆する結果は得られなかった。もっとも,非行傾向のある者の方が地域活動への参加を勧められる場合もあると考えられ,今回の結果だけでは,地域活動への参加が非行抑止効果をもたないとは言い切れない。今後,少年の社会参加活動について厳密な効果測定の検討がなされる必要があると思われる。

一方,ポルノ雑誌や酒・タバコなどの有害環境との接触については,今回の分析で一貫して,非行と正の関連がみられた。特に,多重レベル分析から,ポルノ雑誌や酒・タバコが入手しやすい地域ほど,男女中学生の不良行為が多いことが実証され,意義のある知見が得られた。このことは,環境浄化活動が非行防止活動として非常に重要であることを意味しており,これまで以上に地域の環境浄化活動を推進していくことが期待される。

さらに,地域住民の連帯感の低下については,それが少年非行を助長していることを示唆する分析結果が得られた。特に,多重レベル分析の結果として,他人の子どもに大人が無関心な地域ほど,女子の非行(不良行為と犯罪行為)が多いことが明らかとなった。男子については有意な関連が認められなかったが,地域住民全般に対して地域の少年非行に対する問題意識を喚起し,地域住民が非行問題に主体的に取り組むように働きかけることが重要であると考えられる。


1) それらは,ニューシカゴ学派と呼ばれる研究者による研究であり,ニューシカゴ学派については,文献1の第1章と第2章を参照されたい。

2) 中学生以上の調査対象者には,過去2〜3年の間の参加頻度を尋ね,小学生には,これまでの参加頻度を尋ねた。

3) こうした状況については,文献2を参照されたい。

4) HLMについては,文献3を参照されたい。

5) したがって,今回のHLMによる分析結果として出てくるHLM係数の値は,通常の重回帰分析における標準偏回帰係数の値と同様に考えればよいことになる。


参考文献

1) 細井洋子他(編) 1997 住民主体の犯罪統制, 多賀出版。

2) Bursik, R.J.Jr. & Grasmick, H.G., 1996 The Use of Contextual Analysis in Models of Criminal Behavior. in J.D. Hawkins(ed.): Delinquency and Crime: Current theories.

Cambridge University Press.

3) Bryk, A., Raudenbush, S., & Congdon, R., 1996 HLM: Hierarchical Linear and Nonlinear Modeling with the HLM/2L and HLM/3L Programs. Scientific Software International.



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